インタビュー

Corneliusが11年ぶりのアルバムを語る。この11年何があった?

Corneliusが11年ぶりのアルバムを語る。この11年何があった?

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:森山将人 編集:柏井万作、山元翔一

レコーディング周りのテクノロジーって、この10年大して進化してない。

―前作からの10年での変化ということで言うと、『SENSUOUS』まではテクノロジーの進化と作品が呼応していましたよね。一方でこの10年はテクノロジーの広がりによって、同じような音色で作品を作る人が増えてしまって、だからこそ、匂いのあるもの、癖のあるものを求めたということもあるのかなと。

小山田:レコーディング周りに関するテクノロジーの進化ってことで言えば、2000年代までは革新的な進化が時代ごとにあったけど、この10年って大して進化してないと思うんですよ。便利になっただけっていうか。

シンセが生まれて聴いたことのない音色を出せたり、サンプラーが出てきてヒップホップが生まれたり、ハードディスクレコーディングによって録音のシステムがガラッと変わったり、そういう大きな変化はなかったでしょ? だから、それより自分の中の変化の方が大きいかなって。

小山田圭吾

―では、音楽トレンドの変遷に関してはいかがでしょうか? 今作の揺らぎのある音像については、チルウェイブからインディR&Bに至る流れと比較することもできるし、メロウな雰囲気について、近年のジャズやネオソウルと比較することも可能かと思うのですが、そういった意識は多少なりともありましたか?

小山田:それについても、好きで聴いてたのはいろいろあるけど、トレンドとかはあんまりよくわからなくて。昔みたいに、ヒップホップが出てきて世の中がガラッと変わったとか、そういうレベルのトレンドって今はないじゃないですか? でも、面白いことをやってる人はどんなジャンルにもいて、そういうものから刺激を受けることはあります。

―特別何かにハマったりもしませんでした?

小山田:いろんな新しい音楽を聴いていたし、そこからの刺激も感じてはいたのかもしれないけど、何かにすごくハマっていたかというと、そういうこともなく。だから今作のモードも、「何となく」っていうくらいですね。

―トレモロを使った揺らぎのある音像に関しては、昔からお好きではありますよね?

小山田:そうですね。最初は意識してたわけじゃなくて、知らないうちにトレモロを多用してたんです。で、去年モリッシー(ex.The Smiths)のライブを観に行ったら、そのときThe Smithsの“How Soon Is Now?”をやっていて、あれがトレモロを使ったすごくかっこいい曲で。

The Smiths『Meat Is Murder』(1985年)収録曲

小山田:しかも、僕そのとき最前で観てたんだけど、モリッシーが歩み寄ってきて、手を差し伸べてきて、握手したっていう。それが衝撃体験で(笑)。

―小山田さんだって認識してたんですかね……?

小山田:いや、そんな感じはしなかった(笑)。でも、そのとき「自分もトレモロをよく使ってるな」って思って、そこから意識的に入れていった感じですね。

「ブルースロックとか、ちょっとエモーショナルな感じも面白いんじゃない?」って言われて(笑)。

―そんなアルバムを象徴するのが、やはり先行シングルにもなった1曲目の“あなたがいるなら”かなと。

小山田:作ったのはちょうど『攻殻機動隊』のサントラをやってた頃で、坂本真綾さんが歌った“まだうごく”(2016年6月リリース)の歌録りをした日に、作詞をしてくれた坂本慎太郎くんも来てくれて、終わった後に飲みに行って。

その頃には何となくアルバムの曲も揃ってきて、トーンも見えてたから、坂本くんに歌詞を書いてほしいって話をしたら、「ブルースロックとか、ちょっとエモーショナルな感じも面白いんじゃない?」って言われて(笑)。でも言ってることは何となくわかるというか、最終的には「ラブバラードみたいなのもいいね」って話になって、それを何となく頭に残して作ったのが、“あなたがいるなら”。

―この曲のトレモロ感は1970年代のメロウグルーヴって感じもしますよね。

小山田:そうだね。エレピにかけると気持ちいいからね。ジャズファンクとかフュージョン、こってり系のソウルバラードみたいなイメージもあったかな。それで坂本くんにトラックを渡して、返ってきたらその時点で完璧だなって。この曲ができて、アルバムの完成が見えた感じがしました。

―人間味や匂いの話で言うと、“あなたがいるなら”で象徴的なのはギターで、かなりラフに弾かれていますよね。

小山田:坂本くんが「ブルースロック」って言ったのが何となく引っかかってて(笑)、これまではブルージーなギターチョーキングとかやってなかったけど、ギリギリアリなところに落とし込めたかなって。

リズムとか楽器の絡みは試行錯誤して位置を決めていくのに対して、ギターソロはインプロビゼーションで何テイクか録って、気に入ったものをつなぎ合わせました。

―そこはアート・リンゼイの新作とも通じる部分というか、アートの作品もプログラミングを多用して、リズムは複雑に構築しつつ、ギターは非常にジャンクだったりして。

小山田:アート自身はめちゃめちゃやるから、あのバランスがやっぱり面白いよね。自分としても、構築して作り込む部分と、一発勝負の良さみたいなのを混ぜたいというか、不確定要素を入れることで、自分の想像を超えたいっていうのがありますね。

アート・リンゼイ『Cuidado Madame』収録曲

世の中には基本的に閉塞感があるんですよ。

―歌詞に関しては、坂本さんとテーマを共有したりはしてないわけですよね?

小山田:全然してない。1曲単位で渡しただけで、他の曲を聴かせたりもしてないし。

―でも、アルバム全体に共通するムードがありますよね。特に、“あなたがいるなら”、小山田さん作詞の“いつか / どこか”、坂本さん作詞の“未来の人へ”というアタマの3曲は、「時間の流れと、その中で失われていくもの」という共通のテーマを描いているようにも感じられました。

小山田:何か特別共通認識があったわけではないんだけど、もともと坂本くんの作品の歌詞が好きで、重なる部分は感じてたし、そもそも年が近くて、子供も同い年だったり、共通する部分がわりと多いんですよ。お互い中年も深まってきて、見てる景色がわりと近いのかなって。

まあ、特に自分に言及してるわけじゃないっていうか、誰でも、どこにでもあてはまる曲だと思うんです。“あなたがいるなら”は特にシンプルに、普遍的な言葉で当たり前のことを言っていて、それだけだとしっくりこないんだけど、その中で<まだましだな>って言ってるのがすごいと思ってて。諦観が最初にあった上での感じっていうか、そういうところは自分が歌ってもしっくり来る。

―なるほど。

小山田:あと自分で書くのは照れくさいとか、坂本くんも自分で歌うには照れくさいことがきっとあって、その距離感じゃないと歌えないことってあると思うんです。僕は自分で書いてない、坂本くんは自分で歌わない、その位置だからこそ成立する曲というか、そこがちょうどいい塩梅でできたなって思います。

―楽曲や歌詞のやや内向きなムードというのは、今の社会を覆っている閉塞感の表れだという言い方もできると思いますか?

小山田:まあ、閉塞感ってずっとだけどね(笑)。僕が子供の頃からずっと言われてることで、どんどんそうなってる感じもするけど……だから、世の中には基本的に閉塞感があるんですよ。坂本くんはそういうところを見つけてきて、表現するのがすごく上手いんだと思う。

あとはテクニック的な意味でもすごくよくできていて、発語して気持ちいいというか、違和感がないんですよね。一音で二音欲しいところに、小っちゃい「っ」とか「ん」を使って、上手くリズムを作ったり。そういうことって、自分で歌う人じゃないとできないし、そこはゆらゆら帝国の頃からものすごく研究してきたんだと思う。シンプルで、普遍的で、でも言葉が表に出過ぎずに、曲に溶け込むみたいな、そういうところもすごくいいなって。

―そっか、元ゆらゆら帝国の人って考えれば、このゆらゆらした音像で歌詞を書くにはうってつけの人選ですね(笑)。

小山田:ホントそうだよね。この人しかいない(笑)。

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リリース情報

Cornelius『Mellow Waves』
Cornelius
『Mellow Waves』(CD)

2017年6月28日(水)発売
価格:3,024円(税込)
WPCL-12660

1. あなたがいるなら
2. いつか / どこか
3. 未来の人へ
4. Surfing on Mind Wave pt 2
5. 夢の中で
6. Helix/Spiral
7. Mellow Yellow Feel
8. The Spell of a Vanishing Loveliness
9. The Rain Song
10. Crépuscule

イベント情報

Cornelius
『CORNELIUS「Mellow Waves」RELEASE SECRET LIVE』

2017年6月27日(火)
会場:東京都 某所
定員:40組80名

Cornelius
『Mellow Waves Release Party』

2017年7月11日(火)、7月12日(水)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:Cornelius
DJ:瀧見憲司
料金:6,800円(ドリンク別)

『Mellow Waves Tour 2017』

2017年10月9日(月・祝)
会場:新潟県 LOTS

2017年10月11日(水)
会場:宮城県 仙台 Rensa

2017年10月13日(金)
会場:北海道 札幌 PENNY LANE24

2017年10月14日(土)
会場:北海道 札幌 PENNY LANE24

2017年10月19日(木)
会場:香川県 高松 festhalle

2017年10月21日(土)
会場:大阪府 なんばHatch

2017年10月22日(日)
会場:愛知県 名古屋 DIAMOND HALL

2017年10月25日(水)
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST

2017年10月26日(木)
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST

2017年10月28日(土)
会場:神奈川県 横浜 Bay Hall

2017年11月3日(金・祝)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO

2017年11月4日(土)
会場:福岡県 DRUM LOGOS

「今月の顔」とは?

日々数多くの情報を発信しているCINRA.NET編集部が毎月1組だけ選出する、「今月のカルチャーの顔」。ジャンルや知名度を問わず、まさに今、読者の皆さんに注目していただきたいアーティストや作家を取り上げます。

プロフィール

Cornelius
Cornelius(こーねりあす)

1969年東京都生まれ。1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、1993年、Cornelius(コーネリアス)として活動開始。現在まで5枚のオリジナルアルバムをリリース。2017年6月28日には、11年ぶりのオリジナルアルバム『Mellow Waves』のリリースを控える。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。

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