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橋本絵莉子波多野裕文インタビュー 嗅覚と本能で惹かれ合う二人

橋本絵莉子波多野裕文インタビュー 嗅覚と本能で惹かれ合う二人

橋本絵莉子波多野裕文『橋本絵莉子波多野裕文』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:西槇太一 編集:山元翔一

チャットモンチーの橋本絵莉子と、People In The Boxの波多野裕文がデュオを結成。その名も「橋本絵莉子波多野裕文」。二人が完成させたアルバム『橋本絵莉子波多野裕文』は、橋本の「自分以外の誰かが作った曲を歌いたい」という想いから楽曲制作がスタートし、一切のゴールを設定せず、自然な流れに沿って作られた。結果的に、完成した楽曲たちは多くの新たな発見を含み、波多野は「時代を飛び越えた」とアルバムを評している。CINRA.NETでは二人に個別でインタビューを行い、「橋本絵莉子波多野裕文」の魅力に迫った。

えっちゃんからの話は、すごく自然なことに思えたんです。(波多野)

物語の始まりは今から1年ほど前、2016年の春にさかのぼる。自分の作る曲に対して自信を失っていた橋本が、「自分以外の誰かが作った曲を歌いたい」という願いを叶えるために、波多野に楽曲提供を依頼した。

橋本:去年がチャットモンチーのデビュー10周年で、2月に地元でフェス(『チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2016~みな、おいでなしてよ!~』)をやったあとは、ちょっと燃え尽きていたというか、次の取っ掛かりを探していた時期でした。そんななかで、「今までやったことのないことをやってみたい」と思ったときに、「他の人に曲を作ってもらおう」という発想が出てきて、以前からファンだった波多野くんに曲を作ってほしいとお願いしました。

チャットモンチーとPeople In The Box(以下、ピープル)は、2011年に行われた『チャットモンチーの求愛ツアー♡』で初共演。このときのライブで、チャットモンチーはピープルの“月曜日 / 無菌室”をカバーしている。

橋本:ピープルの何が好きなのかっていうと、なんでこうなるのかわからない不思議さだと思いました。「誰かに曲を作ってもらおう」と思ったときに、「自分からは絶対に出てこないけど、でも自分がすごくいいと思う曲を作っている人じゃないと」という気持ちがあって。それで浮かんできたのが波多野くんだったんです。

橋本絵莉子
橋本絵莉子

橋本:ピープルや波多野くんの曲は「ここで曲が完成」っていうポイントが不思議というか、そのアレンジをよしとして進んでいる感覚が不思議だなって思うんです。『求愛ツアー』で初めてライブを観たんですけど、その感覚をちゃんと三人が共有していて。そういう不思議な、言葉では言い表せないアレンジを、三人でガチッとやっていて、すごいなあって思いました。

一方、依頼を受けた波多野もまた、チャットモンチーのファンだったという。

波多野:もともとチャットモンチーはすごく好きで、尊敬していたので、連絡をもらってすごく嬉しかったです。ただ、僕は自分の音楽活動に関して、「どういったことを、どういった気持ちでやっていくか」って、ものすごく厳密に決めていて。バンドとソロ以外で何かをやるということは全く念頭になく、自分が「課外活動」と思ってしまうようなことは絶対にしないっていう決まりを課しているんです。

波多野裕文
波多野裕文

波多野:でも、えっちゃん(橋本)の話は「課外活動」って思えなかった。振り返ると不思議なんですけど、即座にすごく自然な話に思えたんですよね。「面白そうだから」みたいな興味本位の感じでは決してなく、一貫してやっていこうと思っている音楽活動の延長線上に、本流としてあるように感じました。

チャットモンチーが昨年デビュー10周年を迎えたのに対して、ピープルは今年がCDデビュー10周年。2015年までは毎年のように新作をリリースし続けてきたが、2016年に事務所から独立し、波多野は初のソロアルバム『僕が毎日を過ごした場所』を発表。そんな、ある種の区切りのタイミングだったことも、波多野が「自然」と感じた要因だったのだろうか?

波多野:気持ちの上でのタイミングという意味では、すごく関係があったと思います。「音楽とどう向き合っていくのか」ということを5年くらいずっと考えていたんですけど、「やりたいことしか絶対にしない」と決着をつけたのが、去年のそのタイミングだったんです。

もちろん今までもそうだったんですけど、やるかやらないかの精査をこれまで以上に厳しくするということですね。その上で、このデュオは確実に僕が責任をもってやりたいと思えることでした。

歌詞を送ると、もうほぼ完成した曲が返ってくるんです。(橋本)

二人は最初の打ち合わせですぐに意気投合。2回目の打ち合わせで波多野は、アルバムからのリードトラックになった“トークトーク”と“ノウハウ”のデモを作ってきた。

橋本:最初に持ってきてくれた2曲がすごくよくて、「まさにこういうのをお願いしたかった」って思いました。

波多野:僕のなかでは普段の曲作りとあんまり違いはなくて。もちろん、えっちゃんが歌うっていうのは土台にあったんですけど、逆に言うと、違いはそれだけです。あとは、ぼんやりとですけど、ことさら明るかったり、ことさら暗かったり、そういうものではないものにしたいなと意識していたように思います。たぶん、えっちゃんもどこかに振り切るという感じじゃなかった気がする。僕の勝手な印象ですけど。

その後いくつか曲作りのパターンを試したものの、最終的にはまず橋本が歌詞を書き、それに波多野が曲をつけ、アレンジをするというのが、ベーシックな曲作りの方法論となった。アルバムのオープニングを飾る“作り方”は、そんな二人の曲作りを歌にした1曲。

波多野:とにかく送られてきた歌詞がすごくよかったんです。曲の作り方は、普段チャットモンチーは詞先らしく、一方、ピープルはアレンジと曲順まで決めてからはじめて歌詞を書くという、それほどに真逆なんです。

なので、今回の手法は僕にとっては未知数だったのですが、実際にやってみると、えっちゃんから歌詞が送られてきた時点で、ピープルでいう「アレンジと曲順が決まって、あとは歌詞を書くだけ」っていう状況に、感覚としてはすごく近かった。単純にプロセスが逆になっただけというか、「あとは曲つければいいだけじゃん」くらいの、すごくイマジネーション豊かな歌詞だったんです。

波多野裕文

橋本:歌詞を送ると、もうほぼ完成した曲が返ってくるんです。その後プリプロに入ったりはしたけど、波多野くんが歌っているのを私が歌い直すくらいで、そのままレコーディングって感じでした。

波多野:えっちゃんは、他のインタビューでも「アレンジはほぼ波多野くん」って言っているみたいなんですけど、えっちゃんが作ったドラムフレーズを基に、アレンジを組み直したり、えっちゃんのアイデアで方向性そのものを変えたりもしてるんです。なので、僕の認識としては、職人として僕が動いたけど、棟梁としてえっちゃんが存在してる感じで(笑)。今回はやっぱり、えっちゃんが歌詞を作っている部分が作品に与えた影響は大きかったと思います。

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リリース情報

橋本絵莉子波多野裕文『橋本絵莉子波多野裕文』
橋本絵莉子波多野裕文
『橋本絵莉子波多野裕文』(CD)

2017年6月21日(水)発売
価格:3,024円(税込)
KSCL-2950

1. 作り方
2. 飛翔
3. 幸男
4. ノウハウ
5. トークトーク
6. 流行語大賞
7. アメリカンヴィンテージ
8. 君サイドから
9. 臨時ダイヤ

プロフィール

橋本絵莉子(はしもと えりこ)

徳島県徳島市生まれ。チャットモンチーのギター・ボーカルで、作詞・作曲を手がける。2000年にチャットモンチーを結成し、2004年春に橋本、福岡晃子(Ba,Cho)、高橋久美子(Dr,Cho)の体制となり、2005年11月に『chatmonchy has come』でメジャーデビュー。チャットモンチーとして、これまでシングル19枚、フルアルバム6枚をリリース。2015年11月にはデビュー10周年記念の日本武道館公演をソールドアウトさせ、翌2016年2月には郷里・徳島にて主催フェス『チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2016~みな、おいでなしてよ!~』を2daysで初開催。大成功を収めた。2016年9月からは、再度2ピース体制でライブを行っている。チャットモンチーとしての活動の他、作詞提供や歌唱などを活動を行っている。

波多野裕文(はたの ひろふみ)

福岡県北九州市生まれ。People In The Boxのギター・ボーカルで、作詞・作曲を手がける。2005年にPeople In The Boxを結成。2008年に福井健太(Ba)が加入し、現在のメンバーで活動を始める。3ピースの限界にとらわれない、幅広く高い音楽性と、独特な歌の世界観で注目を集めている。2017年にCDデビュー10周年を迎え、10thアニバーサリーアルバム『Things Discovered』をリリースした。2016年6月には初のソロアルバム『僕が毎日を過ごした場所』をリリースし、バンドと平行してソロとしての活動も行っている。

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