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実は歌が苦手だった夏代孝明、CDデビューまでの苦節を語る

実は歌が苦手だった夏代孝明、CDデビューまでの苦節を語る

夏代孝明『トランジット』
インタビュー・テキスト
阿部美香
編集:山元翔一
2017/06/02

インターネット上にアップしたカバー動画などで話題を集め、2015年、アルバム『フィルライト』でメジャーデビュー。5月17日には、現在放映中のテレビアニメ『弱虫ペダル NEW GENERATION』の第2期オープニングテーマ『トランジット』をリリースし、さらなる人気を獲得しているシンガーソングライター・夏代孝明。透明感あふれるやさしく深みのある歌声で紡がれる、聴く人の背中を押して元気を与えてくれる楽曲群には、夏代孝明というまっすぐな人としての魅力が、そのままに込められている。

そんな彼との対話は、夏代の歌の原点はもちろん、ニコニコ動画に投稿するようになった経緯、さらにはネットで音楽活動を経験した者だからこそ感じている、SNS時代のアーティストの在り方、今アーティストはどのようにSNSと関わっていくべきかにまで話が及んだ。

歌にコンプレックスがあった僕が、まさか人前で歌うようになるとは思わなかった。

―夏代さんは、今年でメジャーデビューから3年目を迎えているんですよね?

夏代:はい。インディーズ / インターネット上の動画で発表してきた曲をまとめたアルバム(『フィルライト』)をリリースしたのが2015年ですね。今月出した『トランジット』が3rdシングルなので、ネットでの活動を知らない人からしたら、 最近の人って感じがあるかも知れないですね。

夏代孝明
夏代孝明

―メジャーデビュー以降は取り巻く環境も変わったかと思いますが、自分が変化したと感じたことはありますか?

夏代:より聴き手を意識するようになりました。インディーズ時代の、全然人に聴いてもらえなかった頃は、主に「この曲を歌いたい」とか「楽しい!」っていう気持ちが原動力だったんですけど、聴いてくれる方が増えるにつれて、感謝の気持ちが膨らんできて。メジャーデビューしてからは「音楽を発信する立場として、どういうメッセージを誰に伝えたいのか?」ということを強く考えるようになりましたね。

―それは多くの人を前にする表現者が、誰もが通る道なのかもしれないですね。

夏代:そうですね。音楽に携わるうえで、いちばん大事なこと、本質に近づきつつあるのかなと思いますね。

2017年2月にリリースしたシングル表題曲

―夏代さんは、インターネット上の動画で注目されたのがデビューのきっかけですが、子どもの頃から歌手を目指していたんですか?

夏代:いえ。最初は、僕の歌は人に受け入れてもらえなかったんです。小学校で合唱をやるじゃないですか。そのとき、僕の歌い方にすごくクセがあって、声もやたら大きかったらしく、周りからかなり浮いていたんですよ。みんなと一緒に歌うのが苦手で、音楽の授業も好きじゃなくて。最終的には、歌で居残りをくらうようになったんです。

―先生、厳しいですね。

夏代:でも、その先生は僕をダメだと切り捨てるんじゃなく、世の中には合唱以外にもいろんな音楽があるということを教えてくれて。おかげで合唱でも、周りにちゃんと合わせて歌えるようになったんです。

―先生がきっかけを与えてくれたんですね。

夏代:あんなに歌にコンプレックスがあった僕が、まさか人前で歌うようになるとは思わなかったですけど(笑)、自分ができなかったことができるようになるのが楽しくて、苦手だった歌がちょっとずつ好きになっていって。たしかに、僕が音楽に向かうきっかけは、そこにあったかもしれません。

今は情報を選べるようになったけど、そもそも広い視野を持った音楽の聴き方をできる人は、そんなに多くないと思うんです。

―米津玄師さんなどもそうですけど、ネットへの動画投稿をきっかけにメジャーデビューしたアーティストはかなりたくさんいますし、多くのメジャーシンガーを輩出していますね。

夏代:そうですね。同じ時期に投稿していた方とともにメジャーシーンで活動をできていること、すごくうれしく思います。当時はまだTwitterがメジャーじゃなかったので、mixiのコミュニティーで、「俺のWindowsムービーメーカーで作った動画だと拡張子が合わなくて投稿できないから、誰か助けて」みたいな相談をみんなしていました(笑)。

そうやって活動していたら、歌い手さん同士で交流するための「シングリンク」というSNSが出てきて。そこに登録して歌詞とか動画とかのコラボ募集をしたり、有名な投稿者のやり方を見てみんなが学んだりっていう時期があったんです。その後にTwitterが流行し始めたんですけど、新しい出会いがより広がって、聴いてくださっているユーザーの方とも自由に交流できるようになったのは大きかったですね。

―その意味では、夏代さんは音楽コミュニティーの転換期を経験しているわけですが、Twitterが流行ってから、音楽の聴き方や音楽活動の在り方に、どんな変化を感じていますか?

夏代:どんな音楽が流行っているのかがわかりやすくなりましたね。昔は、メディアが取り上げているものしか基本的に目に入ってきませんでしたけど、今は情報を選べるようになった。見たい / 聴きたいと思うものの情報を追いかけやすくなっていますよね。だから、いろんなアーティストさんを見つけられるし、逆に僕らも見つけてもらえる。

今まではメディアの力に縛られていたけど、そこから解放されてきたように感じます。昔はテレビや雑誌の情報が先だったけど、今はTwitterで流行ってるものをテレビが取り上げていますよね。

―でも逆にSNSは、自分が追いかけたい情報はすぐ入手できますけど、それ以外のものは目に入らなくて、趣味の幅を狭めてしまっているのでは? という見方もありますよね。それは音楽活動をやるうえで、デメリットにならないですか?

夏代:うーん……どうだろう。僕も音楽を発信する側にいるので、なるべく広くインプットして、面白いものを作っていけたらなとは思うんですが、実際はなかなか幅を広げられないんですよね。潜在的に好きなジャンルがあるので。そもそも、広い視野を持った音楽の聴き方をできる人は、そんなに多くはいないんじゃないかなと思うんです。だから、僕はデメリットよりメリットのほうが大きい気がします。

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リリース情報

夏代孝明『トランジット』アーティスト盤
夏代孝明
『トランジット』アーティスト盤(CD+DVD)

2017年5月17日(水)発売
価格:1,836円(税込)
THCS-60144

[CD]
1. トランジット
2. ニア
3. 世界の真ん中を歩く
4. トランジット(Instrumental)
5. ニア(Instrumental)
6. 世界の真ん中を歩く(Instrumental)
[DVD]
“トランジット”ミュージックビデオ
“世界の真ん中を歩く”アニメーションミュージックビデオ

夏代孝明『トランジット』アニメ盤
夏代孝明
『トランジット』アニメ盤(CD)

2017年5月17日(水)発売
価格:1,296円(税込)
THCS-60143

1. トランジット
2. ニア
3. 世界の真ん中を歩く
4. トランジット(Instrumental)
5. ニア(Instrumental)
6. 世界の真ん中を歩く(Instrumental)

プロフィール

夏代孝明
夏代孝明(なつしろ たかあき)

大阪出身、2月25日生まれのシンガーソングライター。中学生の頃からバンドを始め、2000年代の邦楽ロックをコピーするなど、ライブハウスに通い詰める日々を送る。2017年2月15日、TVアニメ『弱虫ペダル NEW GENERATION』OP主題歌『ケイデンス』を発表、同5月17日には3rdシングル『トランジット』をリリース。歌うが為の存在意義を感じさせる天性のボーカルが、彼の音楽においての究極性でもある。一方、ビジュアルワークはポップアートの世界に傾倒。かとうみさと(A4A.inc)、深町なか、金田遼平(GROOVISIONS)ら同世代のクリエイターと、自らの世界観を一貫して表現している。

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