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青葉市子×マヒトが見つめる時代の混沌 NUUAMMの静かな反抗

青葉市子×マヒトが見つめる時代の混沌 NUUAMMの静かな反抗

NUUAMM『w/ave』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:濱田晋 編集:山元翔一

「ふたり」とは、人の営みの最小単位だ。恋愛も、友情も、争いも、嫉妬も、すべては「ふたり」から始まる。天にも昇るような幸福も、永遠に解決することのない受難も、「ふたり」という最小単位があってこそ、私たちは感じることができる。

青葉市子とGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポー。このふたりが「夜を縫う、朝を編む」というコンセプトから生み出したNUUAMMが、2年半ぶりとなる新作『w/ave』を完成させた。前作『NUUAMM』同様、青葉とマヒトが、誰に知らせることなくひっそりと、セルフプロデュースによって産み落とした珠玉の10曲が、ここには並んでいる。綿密に重ねられた音響は、前作を「牧歌的だった」と思わせるほどに、重く暗い現実感を表現しながら、同時に、そのすべてから解き放たれるような多幸感も感じさせる。歌われる言葉は、「人ならざるもの」への憧れを抱きながら、四季を感じ、恋と共に生きる「人」への深い愛情をも覗かせる。

『w/ave』――このタイトルが暗示するように、この作品には、延々と終わることのない「生」という名の波の満ち引きが刻まれているようにも思える。では、この波は、一体、私たちをどこへと運んでいくのだろう? 青葉とマヒトに話を聞いた。しかし、きっとこのふたりも、その答えは知らない。

俺にとってこのアルバムは、一番疲れ果てたときのBGMかなぁって。(マヒト)

―NUUAMMとしての2ndアルバムがリリースされること自体、とても意外だったのですが……新作『w/ave』、素晴らしかったです。

青葉:場所は、どこで聴きましたか?

―自分の家ですね。

青葉:時間帯はいつですか?

―最初に聴いたのは、夕方くらいだと思います。このアルバムに、聴く場所や時間は関係ありますか?

マヒト:「このアルバムって、どの時間帯の音楽なのかなぁ」って、この間、ぼんやりと考えていたんです。朝って、エネルギーが溜まっていて、一番、人間力があるじゃないですか。そこから日中、こうやって会話をしたりしながら、パワーをすり減らしていって、夜、眠りにつくと思うんですけど……お名前、何でしたっけ?

―天野です。

マヒト:夢のなかに入るか入らないかの境界線って、意思とか思考が曖昧になって眠りに落ちていくでしょ? 体と、天野さんの個性が離れていくというか。俺にとってこのアルバムは、そのキワキワっていう感覚なんですよね。だから、どのようなシチュエーションのBGMかというと、一番疲れ果てたときかなぁって思って。

たとえば俺は、寝るのはだいたい朝とか昼なのね。だから「寝る」っていうと、真っ白なイメージがあるんだけど、その真っ白のなかで疲れ果てて、「人間、疲れたわぁ。辞めたいなぁ」って感じている……それが、このアルバムかなって。

左から:マヒトゥ・ザ・ピーポー、青葉市子
左から:マヒトゥ・ザ・ピーポー、青葉市子

青葉:そもそも、頭でコンセプトを考えて作るものより、眠りに落ちて、夢を見るまではいかない、そのギリギリ意識が働いているような時間が、創作においても一番ピュアな時間なんですよね。やさしくて、いろんなものが体に入ってきやすいし、出ても行きやすい時間。そういう、はっきりと醒めているわけではない、輪郭があまりない時間と、このアルバムは直結しているなって思います。

―なるほど。

マヒト:こうやって話をしていても、体力があるときって、知識とか、上手く用意してきた言葉で恰好つけられるじゃないですか。でも、音楽をやるときには、そういうものを削ぎ落とした一番ピュアな部分がないと、自分が今どういう場所にいるのか? っていうことを、見失っちゃう感じがあって。NUUAMMの音楽は、自分にとってはバーッと走った後につく溜息みたいな感覚なんです。このアルバムは、そういう溜息がいっぱい集まってできたアルバムかなって思う。

俺と市子の境界線が曖昧になっているんですよ。(マヒト)

―「溜息」……たしかに、このアルバムを言い表している言葉かもしれないですね。

青葉:1stアルバム(2014年リリースの『NUUAMM』)のときもそうだったんですけど、レコーディングを始めるのはいつも、深夜0時を過ぎてからで。マヒトさんは、「まだ体力が有り余っているから、走ってくるわ」って、走りに行っちゃったりして(笑)。

マヒト:あまりお互いの時間が合わないから、結局、録音時間が深夜になっちゃうんですよ。なので、その日のレコーディングが終ってから帰りに阿佐ヶ谷の駅に向かって歩くときはいつも、ピカピカの朝日が照っているような感じで。

青葉:溶けてなくなりそうだったよね。

マヒト:うん。そのイメージは、アルバムのなかに入っているかもしれない。そういう時間って、24時間のなかでは本当に限られた時間なのかもしれないけど、その時間帯を忘れたくないっていう感覚があるから。……もう、NUUAMMに関しては、どの曲を誰が作ったのかも曖昧だもんね。

青葉:そうだね。

マヒト:今回はアーティスト写真も、俺と市子の境界線が曖昧になっているんですよ。この写真は、野田祐一郎さんっていう写真家の方が撮ってくれたんだけど、彼も、このアルバムの「曖昧さ」を理解してくれたんだと思う。

NUUAMM
NUUAMM

―今回、タイトルが『w/ave』になったのは、どうしてなのでしょうか?

マヒト:これは、皮肉みたいなところもあって。窓の外の世界には、いろんなものが流れているじゃないですか。車も、人も、情報も。携帯を見たら、タイムラインだって流れている。そういう「波」に、斜線を入れているんです。

―「wave(波)」を断ち切るために、「/」が入っているんですね。

マヒト:そう。俺らはその波の流れに乗るんじゃなくて、その流れを前に1回立ち止まりたくて。俺自身、その波に溺れてしまいそうになるときがあるから。

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リリース情報

{作品名など}
NUUAMM
『w/ave』(CD)

2017年6月28日(水)発売
価格:2,700円(税込)
JSGM-019

1. 飛行石
2. EDEN
3. MU-MIN
4. full of fool
5. MAHO
6. turn light
7. Vampire
8. 砂の城
9. Moon Hill
10. めのう

プロフィール

NUUAMM
NUUAMM(ぬうあむ)

青葉市子とマヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)によるユニット。2014年12月、1stアルバム『NUUAMM』でデビュー。マヒトゥ・ザ・ピーポーは、2012年よりうたいはじめ、2013年に自主レーベル「十三月の甲虫」より宅録1stアルバム『沈黙の次に美しい日々』をリリース。うたと向きあい様々なミュージシャンとコラボしながら都内を中心に活動中。青葉市子は、17歳からクラシックギターを弾き始め、2010年1月1stアルバム『剃刀乙女』でデビュー。これまで、細野晴臣、坂本龍一、小山田圭吾、七尾旅人、U-zhaanなど錚々たるアーティストたちと、作品やライブで共演を果たしてきた。2017年6月、2ndアルバム『w/ave』をリリース。

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