特集 PR

haruka nakamuraが語る、PIANO ENSEMBLEの活動を終える理由

haruka nakamuraが語る、PIANO ENSEMBLEの活動を終える理由

haruka nakamura PIANO ENSEMBLE『光』
インタビュー・テキスト
金子厚武
編集:矢島由佳子

坂本美雨さんに「生前葬みたいだね」って言われて(笑)。

―『光』は2枚組になっていて、DISC 1には『音楽のある風景』と同じくsonoriumで行われた公開録音から4曲が収録されています。

nakamura:sonoriumは、PIANO ENSEMBLEにとって特別な場所なんです。あそこのピアノはホントに素晴らしいし、響きも一番合ってて、僕たちのホームみたいな場所。会場自体大きくはないけど、目の前にお客さんがいる分、集中力も極限近くまで高まるんですよ。

特に、録音した日は3月11日だったから、震災のこともあって、最初場内を真っ暗にして黙祷から始めたんです。耳鳴りするくらい静かになって、そこから一音ずつ始めていきました。やっぱり、sonoriumでやるのは他の場所でやるのとは意味が違うので、sonoriumで始まって、sonoriumに還ってくるイメージだったんですよね。

haruka nakamura『光』
haruka nakamura『光』(Amazonで見る

―『光』に収録されている曲は、“CURTAIN CALL”“灯台”を除くと、『音楽のある風景』と同じですが、この2年半でアレンジはガラッと変わっていて、先ほどもおっしゃっていたように、熱量が外に向けられているのがはっきりと伝わってきます。

nakamura:ツアーを通じて、音楽の流れがみんなのなかで統一されてきたんです。もちろん、リハーサルはしないし、楽譜も頭のなかにしかないんだけど、その音楽の流れを共有できてるから、曲のアタマだったり、抜けるところがぴったり合う。小節数を細かく決めてるわけじゃないけど、“SIN”とかでパッと終われるのは、合図だけじゃなく、みんなの感覚が1つになってるからなんですよね。

最初はみんなそれぞれの音を聴いて、出方を見てたから間も多くて、「こう来たから、こういく」っていうタイムラグがあった。でも、録音したときにはもう1つの塊になってるから、タイムラグなくどんどん展開していって、曲の分数を見てみると、『音楽のある風景』よりそれぞれの曲がかなり短くなってるんですよ。

―エンジニアを務めた田辺玄さんもキーパーソンだったと言えますか?

nakamura:そうですね。まだ知り合って3~4年くらいなんですけど、ものすごく濃い日々を過ごしていて、彼のことはすごく信頼しています。今回は、録音からミックス、マスタリングまで一人の人にやってもらいたかったんです。何回もライブを観てもらって、同じ感覚を共有できてる人とじゃないと作れないと思ったので、録音する前からライブに来てもらって、実際に録音をして、ミックスは彼のStudio Camel Houseで合宿をして作りました。

―「信頼している」というのは、特にどんな部分が大きいのでしょう?

nakamura:何度か一緒にライブをして、二人とも同じ景色を見てるってことがわかったのも大きい。それに、彼の作ってきた音を聴くと、大事にしてるポイントにすごく共感できたんです。とにかく、彼はすごく大事に作るんですよ。

スタジオのある山梨で、合宿をしながら作るっていうのはとても気持ちのいいもの作りでした。切羽詰まって、地下のスタジオにこもって作業をするのとは全然違う。二人で一緒に温泉に入ったり、ご飯を食べたりしながら、自分の一番大切なものを親友と一緒に作るっていうのは、とても心地がよかったです。

―なにより音楽に対する向き合い方、スタンスが近いし、その上で音自体ももちろん素晴らしい。即興演奏の息遣い、生々しさが臨場感たっぷりに伝わりつつも、ただ「ライブ感がある」という話ではなくて、作品としての聴き応えもあるなと思いました。

nakamura:そうですね。その絶妙なバランス感を彼は持っているので、もちろん何度かやりとりはしつつ、最終的に「ここだね」っていうところに落ち着きました。作業自体は早かったです。ライブを何回も観てくれて、思い入れが全然違うというか、もはやメンバーみたいな感じでしたから。

それは照明のchikuniさん、音響の福岡さん、sonihouse万平さん、みんなそうで。このツアーはチームとして動いてた感覚がすごく大きくて。最後のカテドラル教会の日には、各地のオーガナイザーもみんな来てくれて、どんどん人と人がつながっていったんですよね。坂本美雨さんに「生前葬みたいだね」って言われて、「俺もう死ぬのかな?」って思いましたもん(笑)。

撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)
撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)

お客さんに喜んでもらうためにはいい演奏をしたくて、いい演奏をするために自我をなくしたい。

―DISC 2の3曲はそれぞれ違う場所で録音されていて、CANTUSのコーラスと、うららさん、baobabによる「うた」がフィーチャーされているのが特色ですね。まず改めて、聖歌隊のCANTUSは、harukaさんの音楽においてどんな存在だと言えますか?

nakamura:そもそも聖歌って、人に対して歌ってるものじゃなくて、神様とかにお祈りとして捧げるものじゃないですか? なので、PIANO ENSEMBLEの「祈り」っていうコンセプトとは親和性がものすごく高いと思うんです。

声も楽器の1つに捉えて、闇から光にいくときにその声と一緒にいきたかったし、CANTUSがいてくれたことによって、ようやく光にいけたっていうところもあるかもしれない。

撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)
撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)

―PIANO ENSEMBLEとしても、「人に対して」というより、祈りを捧げるように演奏している感覚ですか?

nakamura:それはPIANO ENSEMBLEだけじゃなくて、僕自身の基本姿勢です。もちろん、お客さんに聴いてもらいたいからライブをするんですけど、お客さんに喜んでもらうためにはいい演奏をしたくて、いい演奏をするために自我をなくしたい。それが結果として、お客さんにいい音を届けることになると思うので、自分は入れ物になって、降ってきたものをなるべく濾過しない、フィルターをかけないで出すっていうのが理想なんですよね。

撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)
撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)

―“CURTAIN CALL”では14歳のうららさんのうたがフィーチャーされています。

nakamura:出会ったのは彼女がまだ13歳のときで、すごい歌声だなって思ったんですけど、この年頃って声も中身もどんどん変わっていくじゃないですか? だから、今の彼女と一緒に音楽が作りたいけど、きっとそれが完成する頃は、お別れのタイミングだろうなとも思っていて。それで「別れの挨拶」を意味する“CURTAIN CALL”にしたんです。

Page 2
前へ 次へ

リリース情報

haruka nakamura PIANO ENSEMBLE『光』
haruka nakamura PIANO ENSEMBLE
『光』(2CD)

2017年8月8日(火)発売
価格:3,650円(税込)
AMIP-0111

[CD1]
1. nowhere
2. SIN
3. 四月の装丁
4. 音楽のある風景
[CD2]
1. 光
2. CURTAIN CALL
3. 灯台
※BOX仕様特殊パッケージ
※haruka nakamura本人の全曲解説を含む、32Pのライナーノーツ付
※CD盤のみボーナストラック2曲のダウンロードコード付

プロフィール

haruka nakamura
haruka nakamura(はるか なかむら)

音楽家。青森県出身。『grace』(2008年)、『twilight』(2010年)、『MELODICA』(2013年)の[ソロアルバム3部作]を発表後、ARAKI shin(Sax & Flute)、内田輝(Sax)、斎藤功(Percussion)、根本理恵(Violin)らと共にPIANO ENSEMBLEとして『音楽のある風景』(2014年)、『CURTAIN CALL』(EP / 2016年)、『光』(2017年8月)の[PIANO ENSEMBLE 3部作]を発表。ソロ活動の他、Nujabesとのコラボレーションや、坂本美雨 with CANTUS、畠山美由紀、まじ娘、Aimerのプロデュース、MV、remixを行う。また、NHKBSプレミアム『ガウディの遺言』テーマ曲、CITIZEN、SONY、BOTANIST、TOYOTAなどのCM音楽、自身の曲が原案となった映画『every day』の劇伴を手掛る。その他、画家・ミロコマチコ、朗読・柴田元幸、写真家の奥山由之や中川正子らとの他業種とのセッションも行う。ソロ活動と並行し、青木隼人、内田輝との「FOLKLORE」の旅を続けている。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

Nova Heart“My Song 9”

盛り上がりを見せる中国ミレニアル世代のなかでも要注目のバンド、Nova Heartの“My Song 9”MV。今週末開催の、中国ユースカルチャーを代表する実力派ミュージシャンが出演するイベント『秋音之夜』にも登場する彼女たちが、日本の夜にどんな姿を見せてくれるか楽しみだ。中国ミレニアルズの勢いは止まらない。(川浦)

  1. 『紅白歌合戦』出演者にWANIMA、三浦大知、エレカシ、竹原ピストル、TWICEら 1

    『紅白歌合戦』出演者にWANIMA、三浦大知、エレカシ、竹原ピストル、TWICEら

  2. 菊地成孔×湯山玲子対談 「文化系パリピ」のススメ 2

    菊地成孔×湯山玲子対談 「文化系パリピ」のススメ

  3. 長澤まさみが高橋一生の腕の中で眠る、映画『嘘を愛する女』新ビジュアル 3

    長澤まさみが高橋一生の腕の中で眠る、映画『嘘を愛する女』新ビジュアル

  4. 西野七瀬がドラマ『電影少女』でビデオガール・アイ役 初ショートカットに 4

    西野七瀬がドラマ『電影少女』でビデオガール・アイ役 初ショートカットに

  5. のんが少年ヒーロー・クボに変身 『映画秘宝』表紙&巻頭グラビア 5

    のんが少年ヒーロー・クボに変身 『映画秘宝』表紙&巻頭グラビア

  6. カクバリズムの新鋭・mei eharaが明かす、デビューまでの葛藤 6

    カクバリズムの新鋭・mei eharaが明かす、デビューまでの葛藤

  7. 最果タヒ×山戸結希 この時代の一番の共犯者たち「言葉」を語る 7

    最果タヒ×山戸結希 この時代の一番の共犯者たち「言葉」を語る

  8. 吉本ばなな×岡村靖幸×のん×川島小鳥のグラビア小説も 『Maybe!』第4号 8

    吉本ばなな×岡村靖幸×のん×川島小鳥のグラビア小説も 『Maybe!』第4号

  9. ジョン・レノン&オノ・ヨーコのベッドイン写真展 世界初公開作含む約40点 9

    ジョン・レノン&オノ・ヨーコのベッドイン写真展 世界初公開作含む約40点

  10. 『ファンタスティック・ビースト』最新作が来冬公開 主要キャストの初写真 10

    『ファンタスティック・ビースト』最新作が来冬公開 主要キャストの初写真