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haruka nakamuraが語る、PIANO ENSEMBLEの活動を終える理由

haruka nakamuraが語る、PIANO ENSEMBLEの活動を終える理由

haruka nakamura PIANO ENSEMBLE『光』
インタビュー・テキスト
金子厚武
編集:矢島由佳子

実はこの旅の最中に、PIANO ENSEMBLEのお手伝いもしてくれた方が、旅立ってしまったんです。

―“CURTAIN CALL”は、NHKの番組(『ガウディの遺言~サグラダ・ファミリア100年の夢~』)のテーマ曲でもありますね。

nakamura:そうなんです。ガウディはサグラダ・ファミリアを作りかけのときに亡くなったわけだから、サグラダ・ファミリアって、カーテンコールをずっとやってるような建築だなって思うんですよ。

サグラダ・ファミリアは、「未完である」ということがコンセプトだって見方もあって。ずっと作り続けることが、イコールお祈りだってコンセプトでもあると思うし、そこには「うららともまたいつか」という気持ちを重ねてもいます。

うらら 撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)
うらら 撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)

―この曲の録音は早稲田奉仕園スコットホールで行われていて、当然会場が違うとうたも演奏も変わりますよね。

nakamura:意味のある場所でやることが大事かなって思います。早稲田教会は“光”を初演した場所なんですよ。そこで初めてNujabesさんの話(参照:過去のインタビュー記事の3ページ目)をして、“光”を演奏した。その場所でうららがCANTUSと一緒に“CURTAIN CALL”を歌うというのは、すごく意味があったんじゃないかなって。

―最後の“灯台”が福岡で録音されていることも、やはり意味がありますか?

nakamura:これも初演のテイクなんです。もともと熊本には友達がいっぱいいたんですけど、震災のあとに九州に行ったら、いろんな知り合いの店が閉めなきゃいけなくなっていて。そのなかに湯布院のCREEKSっていうお店があって、そこのピアノで録音するために作ったのが“灯台”だったんです。それをいきなりPIANO ENSEMBLEでもやってみようと思って、リハで1回だけやってすぐ本番をやりました。

この曲に参加してるbaobabも大分の人たちだから、九州のみんなと震災のあとに、1つの灯りを目指してまた新しいスタートを切ろうって気持ちで演奏したんですよね。このあとも何回か演奏してるんですけど、やっぱりこの日のテイクが一番だったんです。「みんなで作った」って感覚が、ホント音に表れてるなって。

―DISC 1が3月11日に録音されていて、DISC 2の最後が被災地に捧げられていることを思うと、悲しみは繰り返されるけど、それでも灯台の光が闇を照らすように、未来を描いていこうというエンディングのように感じられました。

nakamura:実は、この旅の最中に、PIANO ENSEMBLEのことが大好きで、その人が住んでる土地に行った際はお手伝いもしてくれた方が、亡くなってしまったんです。なので、カテドラル教会での“光”から“灯台”はその人に捧げました。大事な人がいついなくなってしまうかは、ホントにわからない。個人的な話ではあるんですけど、今回のツアーはその人の存在を感じながらの旅でもあったんです。

撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)

撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)
撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)

―2年半の間には、様々な出会いと別れがあったんですね。

nakamura:僕、これまで「ちゃんと始まって、ちゃんと終わる」っていうのをやったことがなかったんですよ。いつも途中で終わってたというか、前にやってたバンドのkadanも解散というか、自然に途中でやらなくなったし、Nujabesさんとも一緒に作ってたけど、途中でやれなくなっちゃった。

でも、PIANO ENSENMBLEは「始めよう」と思って始めて、「終ろう」と思って終わらせられました。ずっとやりたい気持ちもあるんだけど、今は「終わったんだ」って感じなんです。

子どもと一緒にやりたい。純真な子どもって、自分にとっては師匠みたいなものなんですよ。

―気の早い話ですが、これ以降の活動についてはどうお考えなのでしょうか?

nakamura:今年の4月に篠山のrizmという会場で、画家のミロコマチコと『世界』というイベントをやったんですけど、その日に次にやりたいと思う音楽が見えたんです。それが見えたからPIANO ENSEMBLEのレコーディングが終わって、あとはファイナルというときに、新しい世界に行けたんですよね。おそらくは、バンド編成です。もっとエモーショナルな音になると思う。もっと外に向かっていくというか。

―現在のPIANO ENSEMBLEよりもさらに、外に向かいやすい編成になると。

nakamura:子どもと一緒にやりたいんですよ。PIANO ENSEMBLEって、最初の頃は特にそうなんですけど、静寂も音楽として捉えていたから、子どもと一緒に作るのが難しかったんです。

でも、純真な子どもって、自分にとっては師匠みたいなものなんですよ。美しい野生というか。『世界』では、子どもたちと一緒にできたんです。なので、さらに解放していくというか、とにかく「音を楽しむ」っていう方向にいきたい。

『ミロコマチコ いきものたちの音がきこえる』(佐野美術館にて、2017年9月3日まで開催)にて公開されている映像 撮影:井手内創

―それって、ある意味これまでの反動ということでもあるのでしょうか?

nakamura:うん、PIANO ENSEMBLEはものすごく楽しかったんだけど、その分ホントに苦しかった。1か月前から演奏のことが気になって、メンタル的にはストレスにもなってたし。

あと、僕はライブのブッキングを会社にお願いしてなくて、各地のオーガナイザーと直接やりとりをして、手作りでやってきたから、会場が大きくなってくるとその分大変でもあって。だからこそ、純度高く、普段だったらありえないような会場を使ったりすることもできたんですけど、それぞれへの負荷も大きかったんですよね。

―それでも2年半やって来られたのは、なにが原動力だったのでしょう?

nakamura:それはやっぱりPIANO ENSEMBLEで高まって起きる爆発が、何物にも代えがたい瞬間だったから。ルネスホールのあとからは、思わず叫んでしまうことも多くて(笑)。音楽的に、叫ぶことってなかったんですけど、思わず出てしまうくらいめちゃくちゃ楽しかったんです。

ただ、ここまでやってきて、自分のなかでタスクが終わった気がしていて、ずっとストイックに向き合ってきたけど、これからはより楽しく、自分を解放できるやり方でやりたいと思ってます。

―じゃあ、やはりPIANO ENSEMBLEとはしばしのお別れだと。

nakamura:もちろん、メンバーそれぞれとはなにかやると思うんですけどね。あ、途中で「やめたい」って言ったメンバーが、最後は一番終わりたくなさそうにしてたんですよ。途中まではちょっと苦しそうにしてたけど、それこそルネスホールから変わって、最後は「すごく楽しい」って言ってくれたから、このツアーをやってよかったなって思いました(笑)。

とにかく、メンバー以外も含めて、たくさんの人のおかげでこの旅は成り立ってたんです。しかも最後には、その人たちがみんなつながって、チームになった。この先も、いろんな灯台が生まれてくる気がする。それがこの2年半の一番の財産ですね。

撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)
撮影:Takeshi Yoshimura(TKC)

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リリース情報

haruka nakamura PIANO ENSEMBLE『光』
haruka nakamura PIANO ENSEMBLE
『光』(2CD)

2017年8月8日(火)発売
価格:3,650円(税込)
AMIP-0111

[CD1]
1. nowhere
2. SIN
3. 四月の装丁
4. 音楽のある風景
[CD2]
1. 光
2. CURTAIN CALL
3. 灯台
※BOX仕様特殊パッケージ
※haruka nakamura本人の全曲解説を含む、32Pのライナーノーツ付
※CD盤のみボーナストラック2曲のダウンロードコード付

プロフィール

haruka nakamura
haruka nakamura(はるか なかむら)

音楽家。青森県出身。『grace』(2008年)、『twilight』(2010年)、『MELODICA』(2013年)の[ソロアルバム3部作]を発表後、ARAKI shin(Sax & Flute)、内田輝(Sax)、斎藤功(Percussion)、根本理恵(Violin)らと共にPIANO ENSEMBLEとして『音楽のある風景』(2014年)、『CURTAIN CALL』(EP / 2016年)、『光』(2017年8月)の[PIANO ENSEMBLE 3部作]を発表。ソロ活動の他、Nujabesとのコラボレーションや、坂本美雨 with CANTUS、畠山美由紀、まじ娘、Aimerのプロデュース、MV、remixを行う。また、NHKBSプレミアム『ガウディの遺言』テーマ曲、CITIZEN、SONY、BOTANIST、TOYOTAなどのCM音楽、自身の曲が原案となった映画『every day』の劇伴を手掛る。その他、画家・ミロコマチコ、朗読・柴田元幸、写真家の奥山由之や中川正子らとの他業種とのセッションも行う。ソロ活動と並行し、青木隼人、内田輝との「FOLKLORE」の旅を続けている。

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