
藤井麻輝×出雲重機 森岡賢が欠けたminus(-)、新体制で本格始動
minus(-)『R』- インタビュー・テキスト
- 今井智子
- 撮影:豊島望 編集:矢島由佳子
「この2年間の森岡への敬意を?」とか感じてたんなら、僕のことわかってない。ふふふ。(藤井)
―続けることを選んだと明言してるわけですね。前作のタイトル『O』は閉じる、完結という意味もあったけれど、今回は『R』で「Restart」ですか?
藤井:その意味でもRだったりもするし。
―他のインタビューでは「Rejection」と?
藤井:「Rejection」の意味もありますよ。当然。
―以前のインタビュー(藤井麻輝が語る、相方・森岡賢を亡くしてもminus(-)を続ける決意)では、minus(-)のなかには常に森岡さんのバグがあるんだとおっしゃっています。
藤井:ああそれは去年の話で、1年経ってるから。もうなくなりましたね。
―アルバムには、以前の曲をリアレンジして収録していますね。
藤井:はい。だからいらない成分はリジェクトしつつ、ブラッシュアップ、進歩していく感じ。minus(-)はもう、完全に僕のソロなんで。ということにしました。
―森岡さんの遺した素材は?
藤井:今既存曲をやるときには、その「森岡のフレーズ」というものを削っていってる段階で。今回入ってる“LIVE-advanced”とかもそうですけど。どんどん違うものに置き換わっている状態。
minus(-)『R』ジャケット(Amazonで見る)
―ライブで森岡さんが歌っていた曲を藤井さんが歌うというのはどういう感じなんですか?
藤井:あれも、地味〜にアレンジ変えてるんで。別に、そもそもminus(-)って共作でやってるバンドだから、森岡の曲という意識は、実際問題なかったりして。今のところの持ち曲の問題で、必要ならやるし、新しく代替えできるものができたら、消えていくだろうし。
―やらないとは明言はせずに?
藤井:やらないと明言したらあと10数曲も書かなくちゃいけないから無理です。
―先日のライブ(8月24日、WWW Xにて)で“Peepshow”を歌っているときの森岡さん風の手つきは、なにか意味があったのでしょうか?
藤井:左手ですね。あの曲になると、みんなそうやるんですよ、森岡がやってたから。ステージ上から見ていて、これは僕もやっておいたほうがいいかなって。そんな、かる〜いことですよ。「この2年間の森岡への敬意を?」とか感じてたんなら、僕のことわかってない。ふふふ。
―藤井さんと思えないサービス精神が感じられましたけど。
藤井:そもそも僕はもともとサービス精神旺盛なんですよ、表してないだけで。
最終的に表れてくる形は違っても、思考過程は、多分もの作る人って同じですよね。(藤井)
―ライブでは新ロゴマークがずっとステージに投影されていましたが、大久保さんは今のminus(-)のライブをご覧になっていかがでしたか?
大久保:今回初めてminus(-)のライブを観て、安心した……と言うと変ですけど。SOFT BALLETが自分のなかではすごく強いんですよ。音楽の初体験に近いようなものなので、あの三人のトライアングルがデフォルトだったりするんですよね。
一度解散して、2003年の再結成したあとのライブも観たんですけど、そのときもしっくりきてなかったり……本人の前で言うのは怖いんですけど(笑)。そのあと、それぞれが活動をし始めて、なにか満たされないような状態がずっと自分のなかにあったんです。それもあって、あえて距離を置こうとか、違う世界を見たりしていて。
こういう機会があって、久しぶりに藤井さんの世界に触れたときに、全然新しいものになったという感覚がすごく強かったですね。そこに自分が参加したという感動もあったんですけど、常に見える世界が新しくて、ファンとして可能性を感じていました。
―新作『R』のジャケットのバルーンアートは大久保さんではないんですね?
藤井:松本壮由さんっていうバルーンアートをやられている方で。テレビを見ていて見つけたんですよ。僕は、大久保さんもそうだけど、人材を見つけるのが好きで。たまたまテレビで見て、なにかできるかもって連絡したら引き受けてくれたんです。
―なぜ『R』で金魚?
藤井:金魚の蘭鋳が、彼の作品にあったんですよ。これをやりたかったんです。自分も記号になりたかったというか。アー写がこれですからね、顔を出してないっていう。でもばっちりメイクはしてるんですよ、この裏で。
minus(-)の最新アーティスト写真。藤井がバルーンアートを被っている
―お二人がクリエイトされているものにはなにか共鳴するものがあるんだと思いますが、作品をそれぞれのなかで発酵させていくプロセスが似てるんじゃないかと。
藤井:似てるところはあるんでしょうね。最終的に表れてくる形は違っても、思考過程は、多分もの作る人って同じですよね。
大久保:そうですかね。
藤井:うん、なんかそういうものを感じるからこそ、オファーしたんだし。普通、20年以上前にニフティとかでやり取りしてた人に、いきなり頼まないですよ。
リリース情報

- minus(-)
『R』(CD) -
2017年9月27日(水)発売
価格:2,160円(税込)
AVCD-937291.Below Zero
2.Drop
3.Spell-subtraction
4.LIVE-advanced
5.Spell-ver.1.0
イベント情報
- 『minus(-)LIVE R2+1』
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2017年10月5日(木)、10月6日(金)
会場:東京都 渋谷 CHELSEA HOTEL
プロフィール

- minus(-)(まいなす)
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元SOFT BALLETの藤井麻輝によるユニット。2014年5月、森岡賢と共に結成。ニューウェーブ、エレクトロニカ、ノイズという要素を交え、他にはないオリジナリティに溢れたサウンドを構築。10月22日に1stミニアルバム『D』をリリースし、その後、LUNA SEA主催のフェスを始め、ヒカシュー、BELLRING少女ハート、石野卓球、SUGIZO、THE NOVEMBERSといった幅広い相手との対バンを行なう。2015年12月9日には2ndミニアルバム『G』をリリース。その後も精力的に活動を続けていた最中、2016年6月、森岡賢が急逝。その後、赤坂BLITZでのライブを経て、藤井麻輝のソロユニットとして活動を継続。12月28日には1stフルアルバム『O』と、赤坂BLITZワンマン公演を収録した、初映像作品「V」を同時リリースした。
- 大久保淳二(おおくぼ じゅんじ)
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フリーランスのデザイナー / イラストレーターとして映像作品・ゲーム・トイ・広告・グラフィックデザインなど幅広い分野で活動中。「出雲重機(いずもじゅうき)」は主にメカデザイナーとして活動する際の名義であると同時に、個人的なアートプロジェクトの名称。2016年末にクラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」にて1000toysによる「出雲重機アートトイ」開発の支援募集を行い110%でサクセス。現在シリーズ化に向けて企画が進行中。11月には「出雲重機」オフィシャルブック『INDUSTRIAL DIVINITIES 2017』を発売予定。