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Mr.とphaの「つながりながら、ひきこもりたい」理想の生き方対談

Mr.とphaの「つながりながら、ひきこもりたい」理想の生き方対談

『ヨコハマトリエンナーレ2017』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

やっていることは、表現というより生きるための行動なんです。(pha)

―他方でphaさんの文章には、身近な風景や行為の記述を文学にもつながるような良質な読み物に変えてしまう、視点の圧倒的な面白さがあります。単に新しい生き方を探すだけではなく、それを文章にしたい欲望があったんでしょうか?

pha:それはありますね。僕は飽きっぽくて、書くとひと段落して次に進める感覚があるんです。たとえば牛丼屋の楽しみ方だったり、散歩のときに履いている靴によって風景が変わるとか、日々の行為のなかで気になることが出てくる。

それを誰かにも教えたくなるし、書いて自分で納得したくなる。アートもそうですが、日常を外化したいという欲望は面白いですよね。それは表現というより、生きるための行動なんです。

pha

―社会学者の見田宗介がお好きだそうですが、分析癖にはその影響もありますか? たとえば著書『ひきこもらない』では、チェーン店が並ぶ「どこにでもあるような街」を好んで旅する過程も描かれていますが、語り口にはそう感じさせるところがあります。

pha:見田さんの影響はあるかもしれないですね。交換可能な街に行って、「どこも同じだ」と思うのが好きなんです。こういう特徴のない、システム化された街にみんな住んでいるんだと。そこで自分を客観的に、メタ的に見るのが好きですね。

見田さんも、認識を変えれば世界が変わることを書いてきた人ですが、僕も近い世界観で生きている。メタな視点の大切さは、それによって心が少し楽になることもあると思う。僕はよく「全部どうでもいい」みたいな書き方をしますが、そうやって現実との距離ができると、むしろお金がなくても面白いものはいっぱい見えてくる。「働いている場合じゃないな」と思いますね(笑)。

Mr.:(笑)。僕のスタジオは埼玉にあるんですが、振り返ると、制作において環境から積極的に受けている影響はあまりない気がします。埼玉に住んでいる理由はない。というか例外もありますけど、本当に海も特産品も特徴もない場所なんですよ、埼玉って。

pha:僕からすると、理想ですけど(笑)。

左から:Mr.、pha

Mr.:結果的にコンビニとか、どこにでもあるものを描くことになる。日本を売り出そうという気持ちはあまりないんですけど、商品を丁寧に描き込んだコンビニの絵などは、海外で人気が高いです。

近年、とくに東アジアだと、どの国でもコンビニはあるので、風景が均一化してますが、アニメだけはまだ日本のオリジナリティーだと思う。僕がPVを作らせていただいたファレル・ウィリアムスさんにも、そうした面を面白がってもらった。

Mr.:住む環境について言うと、むしろ最近は、地元の関西に戻りたいという気持ちがあります。兵庫県の加東市が地元なんですが、懐かしいなと。それで最近は、国内の旅番組ばかり見ています(笑)。埼玉で特別なことというと、村上さんのスタッフが来てよく飲み会をやるんで、それに参加するくらいで。基本的に、僕はひとりでいたいんです。

pha:でも、なんとなく集まれる機会があるのはいいですね。僕がシェアハウスを作ったのも、そんなゆるい場所が欲しかったから。いま台東区に住んでいるんですが、近所に家をいっぱい作り、ひとつの街というか拠点を作りたいと考えていて。それが生活の豊かさや、なにかが生まれることにつながる気はする。それはけっこう意識しています。

ある種の縛りから、わかり合えることもあると思うんです。(Mr.)

―「つながっていたい」と「ひきこもっていたい」という気分の同居は、phaさんの活動に特徴的なものだと思います。そこに、SNS文化からの刺激はありますか?

pha:いまの活動は、ネットなしではできなかったと思います。つながろうと思えばいつでもつながれるし、ただ見ていることもできる。だいぶ生きやすくなりました。

そもそも会社を辞めたとき、大して不安はなかったけど、「普通」とは呼ばれない生き方をしている人がこんなにいると可視化してくれたのがSNSだった。古本のせどりだけで生活している人がいるんだとか(笑)、そんなことが見えて勇気づけられた。でもオンラインだけでは満足できなくて、それがシェアハウスを作った動機でもありますね。

pha

―最近では、アート界隈でもネットを介した運動体が多く見られます。

pha:僕にとってシェアハウスは表現ではなく、むしろ学生時代に経験した寮文化の再現のようなものですが、それが結果的にアートの文脈と似てくるのは面白いですよね。

ギークハウスの様子
ギークハウスの様子

Mr.:僕もネット上の若いアーティストの交流はチラチラ見ますが、善かれ悪しかれ、同じコミュニティーでも、村上さんの組織とは違うなと感じます。というのも、最近の若い人は横のつながりを大事にする。その重要性はよくわかるんですが、村上さんの場合は縦の関係が強固にあって、そこでしかきちんとしたものは成立しないとされていた。いまの環境からは、村上さんのような人はなかなか出てこないのでは、と思います。

Mr.

pha:ギークハウスの住人もフラットな関係なのですが、たしかに縦の関係というか、集まるときの目的意識はあった方がいいなと思うこともあります。そちらの方がコミュニケーションはとりやすいし、一緒にやることがないと結局バラバラになってしまう。

Mr.:ある種の縛りから、わかり合えることもあると思うんです。でも、それを自分でできるかというと別の話で……。4人スタッフを雇っているんですが、「家じゃないと寝られない」という子や、「展覧会のオープニングに行くのは仕事ですか?」と聞いてくる子たちなんです(笑)。

僕はそれに無理強いすることができないし、したら誰もついてこないでしょう。その意味で、若い人の性質も変わって来ているし、僕自身は昔わりとガツガツしたタイプでしたが、最近は少しずつ考え方が変わってきましたね。

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イベント情報

『ヨコハマトリエンナーレ2017』
『ヨコハマトリエンナーレ2017』

2017年8月4日(金)~11月5日(日)
会場:神奈川県 横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館 地下
時間:10:00~18:00(10月27日~10月29日、11月2日~11月4日は20:30まで、最終入場は閉場の30分前まで)
参加アーティスト:
アイ・ウェイウェイ
ブルームバーグ&チャナリン
マウリツィオ・カテラン
ドン・ユアン
サム・デュラント
オラファー・エリアソン
アレックス・ハートリー
畠山直哉
カールステン・ヘラー、トビアス・レーベルガー、アンリ・サラ&リクリット・ティラヴァーニャ
ジェニー・ホルツァー
クリスチャン・ヤンコフスキー
川久保ジョイ
風間サチコ
ラグナル・キャルタンソン
MAP Office
プラバヴァティ・メッパイル
小沢剛
ケイティ・パターソン
パオラ・ピヴィ
キャシー・プレンダーガスト
ロブ・プルイット
ワエル・シャウキー
シュシ・スライマン
The Propeller Group、トゥアン・アンドリュー・グエン
宇治野宗輝
柳幸典
青山悟
ジョコ・アヴィアント
イアン・チェン
マーク・フスティニアー二
木下晋
小西紀行
Mr.
アン・サマット
瀬尾夏美
照沼敦朗
タチアナ・トゥルヴェ
ザオ・ザオ
『Don't Follow the Wind』

プロフィール

Mr.(みすたー)

村上隆の弟子として約20年、共に歩んで来た作家。画風は今現在の日本の住宅地の中にいるかわいい少女をアニメ風、ゲームキャラクター風に描く事に集中し続けている。アニメっぽい絵でキャンヴァスや紙にペィンティングやドゥローイングを描いていいんだ、、、とMr.の存在自体が免罪符となって、pixiv等のソーシャルネットワークの中で、Mr.のフォロワー作家が急増中。Mr.以前にはこうした作家は存在しなかった。最近日本で出現したカオス*ラウンジの展示方法等Mr.が開発したフォーム、「汚い自分の部屋の中に作品が転がってる」に強い影響を受けている。マイナーな、存在だった彼が、いまや、メジャーシーンへと飛び出して来ている。

プロフィール

pha(ふぁ)

1978年生まれ。小さい頃から労働意欲に欠け、京都大学を卒業して適当な会社に入社するも3年で辞め、以降ふらふらと定職に就かずにシェアハウスで暮らしている。著書に『持たない幸福論』『しないことリスト』『ひきこもらない』などがある。

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