特集 PR

大友良英が語る盆踊りと祭り。音楽が生まれる瞬間はどんなとき?

大友良英が語る盆踊りと祭り。音楽が生まれる瞬間はどんなとき?

『アンサンブルズ東京』
インタビュー・テキスト
大石始
撮影:豊島望 編集:宮原朋之、山元翔一

アスリートみたいに音楽を突き詰めていく音楽のあり方だけじゃなくて、もっといろんな音楽のあり方があっていいと思う。(大友)

大石:盆踊りに音楽のあり方の多様性を気づかされたと。

大友:そうやって考えていくと、音楽の場は本当に無数にある。一本締めだって世界最短の音楽だと思うよ(笑)。あれ、日本人だけでやるとピタッと合うけど、西洋人が入るとうまく合わないんですよ。手を合わせる前の「よ~お」のなかにリズムがあって、僕らは自然とそれを体得しているんだよね。

大石:そういう点でいうと、「飲んで飲んで~」という飲み会のコールもすごく音楽的ですよね。

大石始

大友:お坊さんのお経だってそう。感心するぐらいグルーヴが素晴らしいお坊さんっているでしょ(笑)。だから、『アンサンブルズ東京』にしても僕らのやり方に一般の人を巻き込んでいるわけじゃなくて、「こういう音楽だったら昔からみんなやってるでしょ?」ということなんだよね。

大石:音楽と社会はもともと分離していたものじゃなくて、常に密接に関わっていて、社会のあらゆるところで音楽と認識されないまま産み落とされてきた音楽もあったはずだ、と。

大友:野球の声援を録音してCD化しても何もおもしろくないかもしれないけど(笑)、アスリートみたいに音楽を突き詰めていく音楽のあり方だけじゃなくて、もっといろんな音楽のあり方があっていいと思うんだよね。

左から:大石始、大友良英

一般の人たちと音楽を生み出していくことに、大友さんが可能性を感じたきっかけは何だったんですか?(大石)

大石:そもそも『アンサンブルズ東京』が始まった経緯を教えていただけますか。

大友:アーツカウンシル東京の方から「東京で音楽フェスティバルをやりませんか?」と声がかかったんです。音楽フェスティバルというと、ひとつのテーマのもとに様々なミュージシャンをキュレーションするものというイメージがあると思うんだけど、震災以降、そういうフェスを自分でやることに意味が見出せなくなっていたんです。

そのときに出てきたのが、『プロジェクトFUKUSHIMA!』で始めた一般の人たちとひとつの音楽を作っていくというやり方。アマチュアもプロもなく、手作りでやっていくフェスをできないかと思ったんです。

左から:大石始、大友良英

大石:野球の応援や盆踊りみたいに、より生活とか社会に馴染んでいる音楽のあり方と同じような形で一般の人たちに参加してもらう、というのは先ほどお話いただきました。あくまで方法論として、一般の人たちと音楽を生み出していくことに大友さんが可能性を感じるようになったきっかけは何だったんですか?

大友:2005年に神戸の「音遊びの会」(知的障がいを持つ子供たちも含むアーティスト集団)に参加したのが最初ですね。

それまでの僕は、ずっとプロの音楽家と音楽をやってきたわけですけど、「プロの音楽家」っていうのはスポーツでいえばアスリートみたいなもの。100メートルを10秒以内で走れるような人ばかりが集まる世界でやってきたわけです。彼らはみんな「自由でいること」を語るわけですけど、「音遊びの会」に関わってみたら、自由のレベルが違いすぎたんですよ。「みんな自由に演奏していいよ」と言うと、教室を出ていってしまう(笑)。

大石:それは自由すぎますね(笑)。

大友:知的障がいを持つ子どもたちは、僕らの文脈と違うところで生きているんですよ。音楽やアートにおいて新しい文脈を見つけていくというのはとても大切なことなんですけど、いつの間にか忘れてしまっていることが多い。「頑張っているから素晴らしい」のではなく、僕らが想像もしない文脈が生まれる、「音遊びの会」はその意味で本当におもしろくて。奇跡みたいな瞬間がときどき起きるんです。

大友良英

震災直後に現地に入ってみたら、何をしていいかわからなかったけど、「とりあえず祭りだ!」と思った。(大友)

大石:「音遊びの会」で得た感覚が『プロジェクトFUKUSHIMA!』、そして『アンサンブルズ東京』につながっていくと。

大友:そう。それ以降も様々なワークショップをやっていたんだけど、「これは本格的にやらねば」と思ったのは震災以降からですね。

大石:どのような意識の変化があったんですか。

大友:僕はずっと音楽の世界で生きてきて、「他のことは知らないよ」っていうスタンスで生きてきたの。回覧板にハンコを押して回すぐらいの社会性はあるし、政治についても文句は垂れるけど、それ以上の何かをやるわけでもない。

でも、震災後の1、2か月間に現地に入ってみたら、文句を垂れてる場合じゃなかったんですよね。とにかくみんな困ってるし、僕も何をしていいかわからなくて困ったんだけど、「とりあえず祭りだ!」と思ったの。

大石:あくまでも直感として?

大友:直感だったね。祭りをやることで次に行けると思ったんですよ。祭りを通過して日常に帰ったとき、人は変わることができる――簡単なことじゃないけれど、祭りを体験することで震災の次のステップに進めるんじゃないかと思ったんです。そのなかで子どものころ嫌っていた盆踊りを自分でもやるようになった。

『フェスティバル/トーキョー15』オープニング・プログラム、『フェスティバルFUKUSHIMA!@池袋西口公園』撮影:Ryosuke Kikuchi
『フェスティバル/トーキョー15』オープニング・プログラム、『フェスティバルFUKUSHIMA!@池袋西口公園』撮影:Ryosuke Kikuchi

大石:ただ、『プロジェクトFUKUSHIMA!』やそこから派生した盆踊りには使命感だけじゃなく、大友さんの音楽的好奇心を刺激するものもあったわけですよね。

大友:どこかにおもしろさがないと、使命感だけじゃとてもできないよね。あまりに大変すぎて(笑)。だから、2015年にアーツカウンシル東京から声がかかったときも、何かおもしろいことができそうだから引き受けたんですよ。

Page 2
前へ 次へ

イベント情報

『アンサンブルズ東京』

2017年10月15日(日)
会場:東京都 東京タワー(正面玄関前エリア、南側駐車場など)
時間:14:30~ 料金:無料(ただし、事前に実施予定の音楽ワークショップは有料)
主催:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、アンサンブルズ東京実行委員会(ピースリーマネジメント有限会社、特定非営利活動法人大丸有エリアマネジメント協会、株式会社文化放送)
助成・協力:東京都
協力:株式会社三陽商会、東京タワー、公益財団法人日本デザイン振興会、レッドブル・スタジオ東京

ワークショップ
『プロジェクトFUKUSHIMA! 大風呂敷をみんなで作って会場をアートで飾ろうワークショップ』

Aプログラム(土日・市ヶ谷)
2017年10月7日(土)、10月8日(日)
会場:東京都 市ヶ谷 株式会社三陽商会 九段ファーストプレイスビル1F
時間:各日12:00~18:00
料金:無料

Bプログラム(平日・丸の内)
2017年9月27日(水)、9月28日(木)
会場:東京都 丸の内 GOOD DESIGN Marunouchi
時間:各日12:00~20:00
料金:無料

※両プログラム全日程とも上記の日時でオープンしていますので、ご都合に合わせてご参加ください。

『楽器何でもビッグバンドワークショップ』大友良英スペシャルビッグバンド

2017年10月14日(土)
会場:東京都 渋谷 Red Bull Studios Tokyo
時間:14:00~18:00
定員:100名程度
料金:一般2,000円 学生1,000円 60歳以上・小中学生500円 未就学児無料

プロフィール

大友良英(おおとも よしひで)

1959年横浜生まれ。音楽家。10代を福島市で過ごす。常に同時進行かつインディペンデントに即興演奏やノイズ的な作品からポップスに至るまで多種多様な音楽をつくり続け、その活動範囲は世界中におよぶ。映画音楽家としても数多くの映像作品の音楽を手がけ、その数は70作品を超える。近年は「アンサンブルズ」の名のもとさまざまな人たちとのコラボレーションを軸に展示する音楽作品や特殊形態のコンサートを手がける。また障がいのある子供たちとの音楽ワークショップや一般参加型のプロジェクトにも力をいれている。2011年の東日本大震災を受け、遠藤ミチロウ、和合亮一とともに『プロジェクトFUKUSHIMA!』を立ち上げる。2012年芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門を受賞。2013年、NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」の音楽を担当。著書に『MUSICS』(岩波書店)、『シャッター商店街と線量計』(青土社)など

大石始(おおいし はじめ)

旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」ライター / 編集。著書・編著書に『ニッポンのマツリズム』『ニッポン大音頭時代』『大韓ロック探訪記』『GLOCAL BEATS』『関東ラガマフィン』など。連載は月刊サイゾーなど。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 東京スカイツリー天望デッキから配信されるライブ『天空の黎明』全演目発表 1

    東京スカイツリー天望デッキから配信されるライブ『天空の黎明』全演目発表

  2. 常田大希提供曲に隠れたジャニーズらしさ SixTONES“マスカラ” 2

    常田大希提供曲に隠れたジャニーズらしさ SixTONES“マスカラ”

  3. 異才スティールパン奏者、電子音楽家の2つの顔 小林うてなの半生 3

    異才スティールパン奏者、電子音楽家の2つの顔 小林うてなの半生

  4. 在宅ワークを快適に。コロナ禍でさらに注目の音声メディアを紹介 4

    在宅ワークを快適に。コロナ禍でさらに注目の音声メディアを紹介

  5. お父さんはユーチューバー / 美術のトラちゃん 5

    お父さんはユーチューバー / 美術のトラちゃん

  6. シンセと女性たちの奮闘物語『ショック・ドゥ・フューチャー』 6

    シンセと女性たちの奮闘物語『ショック・ドゥ・フューチャー』

  7. カンヌ4冠『ドライブ・マイ・カー』の誠実さ 濱口竜介に訊く 7

    カンヌ4冠『ドライブ・マイ・カー』の誠実さ 濱口竜介に訊く

  8. 「ドラえもんサプライズ誕生日会」の「招待状」広告が朝日新聞朝刊に掲載 8

    「ドラえもんサプライズ誕生日会」の「招待状」広告が朝日新聞朝刊に掲載

  9. 「千葉=無個性」への反抗。写真展『CHIBA FOTO』を語る 9

    「千葉=無個性」への反抗。写真展『CHIBA FOTO』を語る

  10. ROGUEが語る、半身不随になってから再びステージに上がるまで 10

    ROGUEが語る、半身不随になってから再びステージに上がるまで