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瀬々敬久が、衝撃作『ヘヴンズ ストーリー』からの7年を振り返る

瀬々敬久が、衝撃作『ヘヴンズ ストーリー』からの7年を振り返る

『ヘヴンズ ストーリー』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:中村ナリコ 編集:川浦慧、矢島由佳子

かつては、みんなの希望の証だったような集合住宅が、今は凋落してしまっている。

―この映画は、ロケーションがすごく印象的でした。

瀬々:そう、岩手のほうの鉱山廃墟なんですけど、ここを初めて訪れたときのショックが忘れられずにいて。いつかここで本格的に映画を作りたいと思っていたのは、ひとつ動機としてあったんですよね。

―もう一か所、海辺の集合住宅も、象徴的な場所として繰り返し登場しますよね。

瀬々:あれは、浦賀の「かもめ団地」。ただ、そこは外観撮影だけで、集合住宅の内部や敷地内は、茨城県の高萩市で撮っています。

瀬々敬久監督

―いずれも、高度経済成長期に建てられた集合住宅ですよね。

瀬々:そうですね。この映画を作ろうと思ったときに、いろんな団地を見に行ったんですよ。たとえば今、都内で有名なのは、多摩ニュータウンとかですよね。で、この映画の準備期間に多摩ニュータウンに行ってみたら、それこそ老人と子どもしか目につかないわけです。若者の姿が見られないという。

かつては華やかなりしニュータウンが、今はある意味、限界集落みたいになって。何か時代の変化みたいなものを、すごく感じたというか。かつては、みんなの希望の証だったような集合住宅が、今は凋落してしまっているという。そういうものをあちこち見てまわったのは、実際この映画を作る上で、ひとつ大きな影響を与えられたとは思います。

1990年代だったら、廊下ですれ違った青年が殺人者かもしれない恐怖が日常だった。2000年代に入って、自分の息子が殺人者になるかもしれない恐怖に変わった。

―改めて今この映画を見て、監督自身は、どんなことを感じましたか?

瀬々:この映画でやりたかったのは、被害者と加害者の関係性……被害者も個人、加害者も個人であるというか、個人と個人がぶつかり合うことだったんですよね。この映画では、あえて司法や国家の問題を描いていないんですが、そうではなくて、個人対個人という二者のあいだで、どう気持ちを解決していくかを描こうと思ったんです。個人が個人としてどう発言し、どう対応するのか。そこを最終的に問おうと。

ただ、そういうものが、最近は個人が発言しにくい時代になってきましたよね。SNSはもちろんのこと、記者会見とかを見てもそうじゃないですか。

―ある意味、個人であることが非常に難しい時代になっているというか。

瀬々:はい。誤解を招きかねない言い方で申し訳ないのですが、たとえば、かつての秋葉原の通り魔事件とかって、匂いとしてすごく個人として屹立していますよね。変な話、ああいう個人が屹立する犯罪って、最近あまり起こってないような気がして。そういう意味で、何か気持ち悪い時代になっているというか、個人の声が消されてしまうような世の中になっているんじゃないかと思うんです。

瀬々敬久監督

―そんな中で『ヘヴンズ ストーリー』は「個人」を撮っている。

瀬々:ひとつの方法論として、その渦中に入って、そこにいる「個人」を撮りたいと思ったんです。だから、僕たち映画を作る人間も、その渦中に入ったような気分でやっていたんですけど、「個人の声」が打ち消されようとしている今、同じような事件を同じような取り組み方で撮れるかっていうと、わからないですよね。時代とかいろんなものが見えてこないのかもしれないし。

―なるほど。

瀬々:それと同時に、この映画は、当事者であるということを、すごく問題にしたいと思ったんですね。自分たちを当事者として描いていくという。例えば、1990年代だったら、アパートの廊下ですれ違った青年が、ひょっとしたら殺人者かもしれないとか、そういう恐怖が日常だった。で、それが2000年代に入って、自分の息子が殺人者になるかもしれない、自分の奥さんが被害者になるかもしれないという恐怖に変わって……それは映画だけではなく、当時の社会って、そんな感じがあったような気がするんですよね。

瀬々敬久監督

―この映画を今の人たちに、どんなふうに見てもらいたいですか?

瀬々:まあ、4時間38分ある映画で、こういう内容に慣れていない人にとっては、ちょっときついとは思うんです。けどやっぱり、価値観っていうのはひとつだけではないと思うんですよね。いろんなことが存在していいし、いろんなものがあっていい。自分の趣味や嗜好、意見と違うなと感じることもあるかもしれないけど、そういうものも存在するし、そういうものに触れたときに意外にハマったり。

なので、この長さや内容にへこたれることなく、この世界に触れてみてくださいという感じですかね。この映画には、老若男女、いろんな世代の人が出てくるから、きっと自分に近しい世代の人物を発見することができると思うので……そういう意味では、見ていて楽しいというか、見ていて飽きるということはないと思います(笑)。

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リリース情報

『ヘヴンズ ストーリー』
『ヘヴンズ ストーリー』(Blu-ray)

2017年12月6日(水)発売
価格:6,264円(税込)
PCXP-50532

[封入特典]
・特製アウターケース
・60Pスチル写真集ブックレット
[映像特典]
『ヘヴンズ ストーリーの10年』 (瀬々敬久 構成・演出映像作品 / 42分)

『ヘヴンズ ストーリー』
『ヘヴンズ ストーリー』(DVD)

2017年12月6日(水)発売
価格:5,184円(税込)
PCBP-53669

[封入特典]
・特製アウターケース
・60Pスチル写真集ブックレット
[映像特典]
『ヘヴンズ ストーリーの10年』
(瀬々敬久 構成・演出映像作品 / 42分)

プロフィール

瀬々敬久(ぜぜ たかひさ)

1960年生まれの映画監督。京都大学在学中に『ギャングよ 向こうは晴れているか』を自主制作し注目を浴びる。その後「ピンク映画四天王」として日本映画界で独特の存在感を放つ。以後、大規模なメジャー作から社会性を取り入れた作家性溢れるものまで幅広く手がけ、国内外で高く評価されている。『雷魚』(1997)、『HYSTERIC』(2000)、『MOON CHILD』(2003)、『感染列島』(2009)、『アントキノイノチ』(2011)などの劇場映画作品からテレビ、ビデオ作品まで様々な分野で発表。近年は『なりゆきな魂、』(2017)、『8年越しの花嫁』(17年12月16日公開)、また公開待機作に自身の企画の『菊とギロチン-女相撲とアナキスト-』(2018年夏公開)や『友罪』がある。

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