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向井太一がyahyel篠田と語る。新しい音楽シーンをどう築く?

向井太一がyahyel篠田と語る。新しい音楽シーンをどう築く?

向井太一『BLUE』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:馬込将充 編集:山元翔一、久野剛士
2017/11/28
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新しい時代が、始まっている。シンガーソングライター、向井太一の1stフルアルバム『BLUE』は、そのクオリティーにおいても、分業やコラボレーションが当たり前である国外のメインストリームポップの潮流と共振する一枚という点においても、2017年の日本に産み落とされた意味はあまりに大きい。

そして、去年リリースされた2nd EP『24』に引き続き、今作でも向井と見事なコラボレーションを見せているのが、yahyel(ヤイエル)だ。メンバーである杉本亘、篠田ミル、そして荘子itの三人と共に制作されたアルバム3曲目“Can't Wait Anymore”は、ミニマルなトラックと向井の歌が絶妙に絡み合う、アルバム屈指の一曲。そこで今回は、yahyelから篠田に登場してもらい、向井太一とそれぞれの音楽に対する向き合い方について存分に語り合ってもらった。

ジャンルの定義づけっていまはもう問う必要のないこと。(篠田)

―向井さんとyahyelの音楽や佇まいからは、共通する「自由」を感じるんです。ジャンルレスな音楽性、ボーダレスな存在感……そういったすべてが自由で、そして新世代的な感覚なのかなと。

篠田:「ジャンルレス」っていうのは、もはや前提というか、当たり前のことになっている感じがあるよね?

向井:そうだね。前の世代の人たちに比べて、音楽に触れるプラットフォームのバリエーションが多いから、インプットする音楽が莫大だし、そのぶん、ジャンルに対してのボーダーはなくなっていくし。

左から篠田ミル(yahyel)、向井太一
左から篠田ミル(yahyel)、向井太一

篠田:最近、「『ミクスチャーロック』という単語は消滅した」っていう内容の記事を読んだんですよ。ロックとかメタルとかヒップホップとか、いろんな音楽の用法をミックスすることはいまや当たり前になっていて、わざわざ「ミクスチャーロック」という単語で説明する必要はないっていう。

同じように、僕らも「オルタナティブR&B」って括られてきて、海外で言えばフランク・オーシャンやThe Weeknd以降の人たちがそこに当たる存在だったと思うんですけど、もはや、彼らを一括りに「オルタナティブR&B」という単語では説明しきれないじゃないですか。

向井:そうだよね。僕、「ジャンルは何?」と聞かれても、自分がどういうジャンルの音楽をやっているのか、よくわからないもん(笑)。R&Bをやっているっていう感覚もないし。

篠田:太一くんの歌い方は、ルーツに根差したR&Bやソウルみたいなときも、ヒップホップのようなときもあるしね。海外でも、アンダーソン・パークのような人にしても、もはやラップと歌の切れ目はないし、ドレイクも、「俺はラップしているのか、歌っているのかわからないようにやる」みたいなことを言っているし。

ジャンルの定義づけっていまはもう問う必要のないこと、という感じがしますね。もちろん、「俺はゴリゴリのスウィングジャズをやる!」っていうアーティストだったら意味があるけど。

向井太一

「合っていないけど、合っている」っていうバランス感覚って面白い。(向井)

―向井さんの新作『BLUE』は、そういった意味でも、いまの時代を強く反映しているアルバムだと思いました。篠田さん、杉本亘さん、荘子itさんのyahyelチームと作った“Can't Wait Anymore”を始め、SALUさん、LUCKY TAPESの高橋海さん、BACHLIGICさん、starRoさん、mabanuaさん……本当に多方面のミュージシャンがクレジットされていて。ジャンルの壁を超えたポップアルバムだと思います。

向井:一緒にやりたいと思うアーティストの名前は常にリストアップしているんですけど、やっぱり「鮮度」は大事かなって思っていて。温めて出すというより、そのときに自分が聴いている音楽の要素を、なるべく早い段階でアウトプットしていきたい。その辺は、いつも衝動的ですね。yahyelも、初めてライブを見たその場で、「彼らと一緒にやりたい」って言いました。

向井太一がyahyelチームと共作した“Can't Wait Anymore”

向井太一『BLUE』ジャケット
向井太一『BLUE』ジャケット(Amazonで見る

―最初に世に出た向井さんとyahyelのコラボレーションは、『24』(2016年)に収録の”STAY GOLD”と”SALT”ですよね?。

向井:そうですね。去年、恵比寿LIQUIDROOMで初めてyahyelのライブを見たんですけど、それが衝撃だったんですよ。楽曲はもちろん、VJの視覚的なパフォーマンスも、いままで僕が触れてこなかったものだったので。もう純粋にハマっちゃって(笑)。

篠田:太一くんが声をかけてくれたのは嬉しかったですね。僕らも、名前がちょっとずつ知られていく中で、「一緒にやりたい」という声をかけていただくことが増えていて。でも、その全部を受けるわけではなく、お互いのクリエイションが相乗効果を生む人としかやりたくない。その点で、太一くんに関しては、「この人とは合うだろうな」という直感がありました。

yahyel のVJ、山田健人がMVを監督した“SLOW DOWN”

―その直感の所以とは?

篠田:コラボレーションって、一緒にやることでしか生まれないアウトプットがあってこそ、やる意味があると考えていて。たとえば、黒人由来の音楽を日本語に置き換えて歌うとき、言語の構造的に、どうしても母音と子音の関係が難しいんですよ。でも、太一くんは、それを非常に上手くやられていて。

うちのボーカルの池貝峻も、ブレスの多い、ちょっと黒人っぽい発声の仕方ではあるんですけど、yahyelでやるときは、日本語でやることはないですから。そういう点で、池貝の毒と色気とは、また違った表現ができる可能性が、太一くんとのコラボレーションにはあったんですよね。

向井:そもそも、アーティストとして、僕とyahyelがミックスしているのって、自分で客観的に見ても不思議だと思うんですよ。でも、「合っていないけど、合っている」っていう、そのバランス感覚って面白いんだよね。

篠田:うん、面白い。トラックを作って、それを太一くんの曲として落とし込んでいく作業って、すごく楽しいんですよね。今回、太一くんと一緒に作った“Can't Wait Anymore”の、あのトラックの池貝が歌ったバージョンを僕らが出すことがあるかというと、絶対にない。あのトラックは「yahyelっぽい」けど「向井太一のもの」でしかないんです。

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リリース情報

向井太一『BLUE』
向井太一
『BLUE』(CD)

2017年11月29日(水)発売
価格:2,500円(税込)
TFCC-86626

1. 楽園
2. FLY
3. Can't Wait Anymore
4. Lost & Found
5. Great Yard
6. Blue
7. 空 feat.SALU
8. 眠らない街
9. Conditional
10. Teenage
11. ONE
12. 君にキスして (Bonus Track 1)
13. FREER (Bonus Track 2)

イベント情報

『向井太一 1st ALBUM「BLUE」リリース記念インストア・イベント』

2017年12月2日(土)
会場:大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース
※ミニライブ+サイン会

2017年12月8日(金)
会場:東京都 YouTube Space Tokyo(六本木ヒルズ29階)
※ミニライブ+サイン会

向井太一“BLUE" TOUR 2018

2018年1月13日(土)
会場:大阪府 心斎橋 VARON
料金:前売3,500円

2018年1月19日(金)
会場:東京都 渋谷 WWW
料金:前売3,500円

プロフィール

向井太一
向井太一(むかい たいち)

シンガーソングライター。幼少期より母親の影響でブラックミュージックを聴き育つ。その後、地元の音楽高校へ進み、卒業後、2010年に上京。ジャズとファンクをベースとしたバンドにボーカルとして加入し、東京都内を中心にライブ活動を経て、2013年より柔軟に音楽の幅を広げる為、ソロ活動をスタート。ファッション誌のウェブサイトでのコラム執筆やモデルなど音楽以外でも活動の場を広げる。2016年3月、初のE.P「POOL」をインディーズよりリリースし、発売日に即完。自身のルーツであるブラックミュージックをベースに、エレクトロニカ、アンビエント、オルタナティブなどジャンルを超えた楽曲、そして「日本人特有の言葉選び、空間を意識した音作り」で常に進化を続ける新境地を見事に提示し、各媒体・リスナーから高い支持を得る。2016年4月、更にアクティブで自由な制作活動を行うべくsoundcloudを中心としたインターネットに表現したい音楽をタイムラグなく継続的にアップ。そのオントレンドで自己発信型な音楽活動が目に止まり、TOY’S FACTORY / MIYA TERRACEとマネジメント契約。その後、自主イベント「BDP」等、ライブ活動をメインにジャンル問わず様々な仲間と繋がり継続的にシーンを構築。ハイブリッドなアーティストとして、更なるステータスを目指す為、アグレッシブに活動している。

yahyel
yahyel(やいえる)

2015年3月に池貝峻、篠田ミル、杉本亘の3名によって結成。古今東西のベース・ミュージックを貪欲に吸収したトラック、ブルース経由のスモーキーな歌声、ディストピア的情景や皮肉なまでの誠実さが表出する詩世界、これらを合わせたほの暗い質感を持つ楽曲たちがyahyelを特徴付ける。2015年5月には自主制作のEPを発表。同年8月からライブ活動を本格化し、それに伴いメンバーとして、VJに山田健人、ドラマーに大井一彌を加え、現在の5人体制を整えた。映像演出による視覚効果も相まって、楽曲の世界観をより鮮烈に現前させるライブセットは既に早耳たちの間で話題を呼んでいる。2016年1月には、ロンドンの老舗ROUGH TRADEを含む全5箇所での欧州ツアーを敢行。その後、フジロックフェスティバル〈Rookie A Go Go〉ステージへの出演やMETAFIVEのワンマンライブでオープニングアクトを経て、9月に初のCD作品『Once / The Flare』をリリースすると、発売と同時に売り切れ店舗が続出。Apple Music「今週のNEW ARTIST」にも選出されるなど、今最も注目を集める新鋭として期待されている。

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