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最果タヒ×山戸結希 この時代の一番の共犯者たち「言葉」を語る

最果タヒ×山戸結希 この時代の一番の共犯者たち「言葉」を語る

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』
インタビュー・テキスト
羽佐田瑶子
撮影:永峰拓也、編集:野村由芽

過去の集積だと思っていた素晴らしい物語たちは、もしかしたら未来からの手紙かもしれない。(山戸)

―はじめに、最果さんは子どもの頃のクリスマスには「おとぎ話」のような感覚があるとおっしゃっていましたが、大人になると日常生活と「おとぎ話」は、相反するものだと思っている方がほとんどだと思います。でもお話を伺っていると、おとぎ話と現実世界は地続きにあると感じる。今回のキャンペーンのテーマでもあったという「おとぎ話」は、真実と相反するものではないのでしょうか?

最果:逆に、おとぎ話のほうが真実だと思います。現実に起きていることは真実ではなく、事実ですよね。だって、私たちの感性を育てたものはすごい数のおとぎ話で、その感性を通じて日常を見ているんです。おばあちゃんから聞いた話や本で読んだもの、夢に見たものなど、事実に私の感性がプラスαされて、真実がつくられる。「おとぎ話」は「本当」の一部分だと思います。

山戸:太古から人は物語がないと生きてこられなかった。そして今もなお、素晴らしい物語が生まれ、後世に受け継がれてゆく。この永遠のような営みは、人間の存在証明にもなると思います。奇跡も悲劇も含めて、おとぎ話みたいなことは現実に起きているのだから、おとぎ話=現実逃避ではないんですよね。過去の集積だと思っていた素晴らしい物語たちは、もしかしたら未来からの手紙かもしれない。

左から:最果タヒ、山戸結希

最果:それで言うと、クリスマスというのはおとぎ話ではあるけれど、でも「あり得るかもしれない」と抵抗なく信じることができる奇跡的なものだったかもしれません。妖精とかそうしたものは「本当にいるの?」と疑うところから始まるけれど、サンタクロースの場合は、最初、信じることから始まりますよね。サンタさんからのプレゼントを子どもの枕元に置いて、大人も「信じる」ことをまずは応援している。街中もきらびやかで、何かが起こりそうな予感に満ちている。

山戸:うんうん。おとぎ話と現実の境界線がなくなっていくような感覚は、とてもよくわかります。私たちは情報として知らないだけで、この宇宙のどこかでおとぎ話のような真実が今まさに起こっているし、最果さんの詩の中に生きる人にも、その予感を察知しているような眼差しを強く感じます。

最果:眼差しは、私も意識しているものだったので、指摘していただいて嬉しいです。人は自分の感性を通じてしか、物事を見ることができないので、一人称の言葉を書く限り、その人だけの眼差しが描写にも入り込むのだと思っています。「赤いリンゴ」と書いているけれど、他人から見たら緑かもしれない。でも、その人は「赤」と確信をしている。そして、その確信が読む人にも伝わる瞬間があって……。それってある一人の人間の感性が丸ごと、他者に伝わっていくことだと思うんです。そうした、感性が事実を貫いていくような瞬間を言葉にするのが楽しくて、詩を書いているのだと思います。

山戸:『グッドナイト』という詩の中に現れる「バターと塩とキャラメル」というシンプルなフレーズも、本当はバターじゃないかもしれませんよね。彼にとってはバターと名指しただけであって、妖精なのかもしれなかった。そうやって、風景がいくつも重なってくる多層性は最果さんの詩の魅力でもあり、そうした目線を射し込まれることで、自分だけの世界の輪郭も深まる。

自分のためにこしらえる「愛情」もあるはずなんです。(最果)

―「恋人と過ごすクリスマス」だけが幸せのかたちではなくなってきている今、「誰かと過ごす」ことではなく「自分の眼差しで世界を見ること」を描いたこれらの詩はメッセージの強い作品にもなったと思います。今、愛情や幸せのありかたが変わってきていると思いますが、お二人は「愛」をどのように捉えていますか?

最果:愛は恋人からもらうものではなくて、もともと持っている原始的な感覚だと思います。とくに、幼い記憶の中にある両親や周りから与えられたり、求めたりした愛情は、自分にとっての「愛」の定義を形作っているように思います。教えられるのではなくて、潜在的に知っているから、誰かを求めたり、愛したいと思うのではないですかね。

山戸:なるほど。愛情は受け取り方次第で変わってしまうものでもあります。「愛している」という言葉に恐らく事実性はなくて、何を愛と指すのか、きちんと受け取らないといけないんです。そう思うと、言葉によって引き起こされる多くの誤謬も生まれているのですが、同時に言葉があることによって、お互いの真実を探し合いながら生きることのおもしろさも、存在するのだと思います。言葉は愛の証明ではないが、愛を証明する楽しさがある。

最果:「愛」という言葉があることによって、愛というものの定義がとても狭く、息苦しいものになる瞬間もあると思います。「愛」という言葉を使うことで、自分だけの愛情が、一般的な「愛」の形に落とし込まれてしまったり。けれど、自分だけの愛情を、相手がそのまま受け取ってくれているなら、そこに使う言葉は「愛」でもいいんですよね。それだけですべてが通じてしまう。それに、もしかしたら相手がいなくても、その人がその人だけの感情を「愛」というものを確信できているなら、言葉の一般化に飲まれることはないのかもしれない。

左から:最果タヒ、山戸結希

―「孤独」という言葉が詩の中で多用されているのも印象的でした。孤独というのは、決して寂しさと等しいわけではないですよね。孤独であることと、愛があることは、共存し得るとも感じました。

最果:愛情は他人とやり取りすることで生まれて、ひとりだと生まれないなんて、そんなことはないはずです。幼い頃の愛されていた記憶が薄れて、「恋人との愛」だけが「愛」のような気がしてくると、だんだん自分の中にある愛情を忘れてしまうのかもしれません。

山戸:孤独だけが知る愛情ですね。過去に最果さんの本の帯に「わたしの指先だけが知る孤独に、そっと光を注ぐように、 あなたの一人称で同時代を生きさせていただきました」という言葉を書かせていただいたことがありましたが、私だけが知っている、知り得る内的な孤独というものが存在して、そこにスポットライトを当ててもらうと、孤独の美しさや得難い感覚が立ちのぼるのだと思いました。クリスマスも、未来への期待と、過去への失望がつまっている、それを内包しているのは、優しい孤独の精神だと思います。

最果:そうですね。孤独は、辛くて悲しくて涙が出るような、悪いものではないと思います。もっと、愛おしいものですよね。「クリスマスだからひとりでいたくない」というお決まりのフレーズがありますけど、本当にひとりは嫌ですか? と思います。ひとりでいる時間から逃げ出したくなるときもあるかもしれないけれど、でもたくさんの人といる時間だって逃げ出したくなるときだってあるはずで。さみしさや辛さって、孤独とは全く別のところからきた感情なんじゃないかなあ、と思うんです。ひとり=孤独=寂しい、ではないはず、と。逆にいえば、ひとりがなによりも心地よいときもたくさんあって……。

だから、自分のためにこしらえる「愛情」もあるはずなんです。そういうことを思い出せる人は、孤独にさみしさを感じないし、他人からの愛情も自分でこしらえた愛情も、きちんと受け取っていける人なのだと思います。

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キャンペーン情報

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』では、最果タヒさんに5編の詩を書き下ろしていただきました。期間中、この5編の詩を、各方面で活躍のクリエイターが独自の手法で表現し、イメージビジュアルから館内装飾や、ウェブサイトにいたるまで、ルミネ全体を詩の世界で包みこみます。さらに、23日24日はルミネゼロにて2日間限定の『LUMINE LYRICAL CHRISTMAS~五感で読む、ルミネ×最果タヒの詩の世界~』を開催。

イベント情報

『LUMINE LYRICAL CHRISTMAS~五感で読む、ルミネ×最果タヒの詩の世界~』

2017年12月23日(土)、12月24日(日)12:00~18:00
会場:東京都 新宿 LUMINE 0(NEWoMan新宿 5F)

ルミネクリスマスの世界を体感できるスペースとして、最果タヒさんの詩を、五感で楽しむことができる、2日間だけの幻想的な空間がルミネゼロに登場します! この会場限定で聴くことの出来る、成田凌さんによる詩の朗読の試聴体験のほか、視覚、触覚、味覚、嗅覚のインスタレーションをお楽しみいただけます。さらに、ルミネのアプリ「ONE LUMINE」会員さまには、抽選で各日200組400名さまをスペシャルライブにご招待いたします! ここでしか見ることの出来ない、ここでしか体験することのできない2日間を展開します。

『SPECIAL LIVE』
会場:東京都 新宿 LUMINE 0(NEWoMan新宿 5F)

2017年12月23日(土)14:00~15:00
出演:青葉市子

2017年12月24日(日)14:00~15:00
出演:NUUAMM

応募方法:
1.ルミネのアプリ「ONE LUMINE」をダウンロード
2.「ONE LIMINE」のマイページ内にあるイベント応募バナーをタップして応募画面へ

プロフィール

最果タヒ(さいはて たひ)

詩人。中原中也賞・現代詩花椿賞。最新詩集『愛の縫い目はここ』がリトルモアより発売中。その他、詩集に『死んでしまう系のぼくらに』『空が分裂する』『グッドモーニング』などがあり、2017年5月に詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化された。また、小説に『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞』、対談集に『ことばの恐竜』などがある。11月22日に、清川あさみとの共著『千年後の百人一首』が発売予定。

山戸結希(やまと ゆうき)

2014年、『5つ数えれば君の夢』が渋谷シネマライズの監督最年少記録で公開され、『おとぎ話みたい』がテアトル新宿のレイトショー観客動員を13年ぶりに更新。2015年、第24回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞。2016年、乃木坂46、Little Glee Monster、RADWIMPSのMVを監督し、小松菜奈・菅田将暉W主演『溺れるナイフ』が全国ロードショーされ異例のヒットを記録。2017年、ブルボン「アルフォートミニチョコレート」や、カネボウ化粧品「suisai」の広告映像も手がけている。

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