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『アッセンブリッジ・ナゴヤ』でL PACK.が作る新名所UCOの魅力

『アッセンブリッジ・ナゴヤ』でL PACK.が作る新名所UCOの魅力

『アッセンブリッジ・ナゴヤ2017』
インタビュー・テキスト
竹内厚
撮影:武田陽介 編集:宮原朋之

昔ながらの商店が数多く営業を続ける名古屋の港まち。この個性的なエリアを舞台にした、クラシック音楽と現代美術のフェスティバル『アッセンブリッジ・ナゴヤ』が今年も開かれている。

今年の『アッセンブリッジ・ナゴヤ』の開催会場のひとつとなっているのが、かつて寿司屋だった建物に手を加えたUCOというスペース。空間を手がけた小田桐奨と中嶋哲矢によるユニットL PACK.は、昨年に続いて『アッセンブリッジ・ナゴヤ』に参加している唯一のアーティストだ。

そんなL PACK.が行っている活動といえば、いつもより早く起きてモーニングを食べるイベントを開催したり、コーヒー豆を販売したり、日用品店を開いたり……。知れば知るほどよくわからなくなるL PACK.とは一体なんなのか? 取材中も関係者や来場者がふらっと訪れ、ゆるやかな雰囲気が漂うスペースUCOで、『アッセンブリッジ・ナゴヤ2017』のディレクターを務める服部浩之とともに、L PACK.の活動の真意を聞いた。

L PACK.の活動は、コーヒーが「建築」の最小単位なんじゃないかってところからはじまってるんです。(中嶋)

―L PACK.の二人は、いつもより早く起きてモーニングを食べるイベントを2011年から続けていますね。

小田桐:シンプルに言えば、参加したい人は朝早く起きて、その場所に来るだけっていう、ただそれだけのイベントなんです。あるとき展覧会の準備で僕らが徹夜をしたことがあって、そのときに迎えた朝の光がすごくきれいだったんですよ。それをいろんな人と共有したいなと思ったことがそもそものきっかけでした。

中嶋:大げさに言うと、いつもより1時間早く起きて始発の電車に乗ったら、きれいな人と出会うかもしれないし、その人と結婚までいくかもしれない。イベントをはじめた2011年は、大震災という大きな出来事があった年ですけど、日常と地続きのモーニングのイベントからでも世界がポジティブに変わるかもしれない。そう思って、現在まで続けてきました。

元寿司屋のスペースUCOの店先にて。左上:中嶋哲矢(L PACK.)、左下:小田桐奨(L PACK.)、右:『アッセンブリッジ・ナゴヤ2017』ディレクター・服部浩之
元寿司屋のスペースUCOの店先にて。左上:中嶋哲矢(L PACK.)、左下:小田桐奨(L PACK.)、右:『アッセンブリッジ・ナゴヤ2017』ディレクター・服部浩之

―イベントは美術館やギャラリーといった店舗空間でない場所でも積極的に行われています。会場ではなにが起こっているんでしょうか?

中嶋:僕らがいつもより3時間くらい早く起きて、朝ごはんなどの仕込みをして、みんなを待っています。すごく普通ですね(笑)。

小田桐:イベントはアーティストの方と一緒にやることが多いんです。なので会場にアーティストがいたり、朝3時間だけの作品展示をしてもらったり。一見すると普通だけど、気づきはじめると喫茶店のモーニングとはちょっと違うところがある。

でも逆に、その日かぎりの喫茶店として、ただ単純にコーヒーを飲みにくる人もいる。そういうことが普通に行われてる状況を作って、僕らはただただ楽しんでいる。それだけでいいんです。

L PACK.の小田桐奨と中嶋哲矢
L PACK.の小田桐奨と中嶋哲矢

―一見、焙煎人によるコーヒーイベントのようにも見えます。お二人ともコーヒーが好きなんですか?

中嶋:いや、発端はそういうことではないんです。僕らは二人とも大学で建築を勉強していて、「これから建築家になるってリアリティーがないよね」とよく話してました。そんななかで、「建築の最小単位ってなんだろう?」という話になったんです。

ただ単純にハコのことを「建築」というんじゃなくて、人が集まっている状況だったり、そこでなにかが生まれようとしている空間も「建築」だと考えていくと、コーヒーが「建築」の最小単位なんじゃないかって。L PACK.の活動はそこからはじまりました。

取材時にも、L PACK.がおいしいコーヒーを淹れてくれた
取材時にも、L PACK.がおいしいコーヒーを淹れてくれた

「この先なにが起こるかわからないぞ」って、いつも期待しながら作っています。(小田桐)

―場作りには、なにか建築的な仕掛けがあるんでしょうか。

小田桐:スタンドを作ることもありますけど、構造物を作るというよりは、デザインや機能を作っている感覚です。なにを置けば、人が居心地よくたまることができるかを考えていますね。

中嶋:あとは、会期がはじまってからも、なにかができる余白を常に残しています。たとえば、2013年の『あいちトリエンナーレ』で、ゲリラ的に作った「VISITOR CENTER AND STAND CAFE」という場所では、なにも手を加えなかった壁に参加作家がライブペインティングをしてくれました。壁に棚を作ったりしてたら、そういう出来事は起きなかったでしょうね。

左から:小田桐奨、中嶋哲矢

『あいちトリエンナーレ2013』でアーティストと参加者の交流拠点になった「VISITOR CENTER AND STAND CAFE」の店内の様子 / 撮影:怡土鉄夫 画像提供:NAKAYOSI
『あいちトリエンナーレ2013』でアーティストと参加者の交流拠点になった「VISITOR CENTER AND STAND CAFE」の店内の様子 / 撮影:怡土鉄夫 画像提供:NAKAYOSI

服部:L PACK.には2016年3月の『アッセンブリッジ・ナゴヤ』のプレイベントから関わってもらっていますけど、まさに彼らがそういった余白を作れるところが重要だと思っているんです。

―それはどういうことでしょうか?

服部:芸術祭でもアートプロジェクトでも、大きなイベントが各地で開かれていますが、展示がたくさんありすぎて来場者が疲れてしまったり、参加アーティストが互いに交流できる場所があまりなかったり、来場者と出品作家それぞれに多少なりとも感じるストレスがあると思うんです。そこでオーガナイザーや行政側が人が溜まれる場所を作ろうとするんだけど、なかなかうまくいかないことが多いと思うんです。

L PACK.が面白いのは、アーティストとして場所を開きながら、他の作家を自然とプロジェクトへ取り込んでいるところです。結果、その場所へ休憩しに来るだけのアーティストがいたり、地元の人がふらっと入ってきたりする。そうやって異なったものを許容できる場を自然に作れるのは、二人が建築を学んできたからなのかと思います。

『アッセンブリッジ・ナゴヤ2017』ディレクター・服部浩之
『アッセンブリッジ・ナゴヤ2017』ディレクター・服部浩之

―お二人には人が集いやすくなるような、何か方法論があるのでしょうか。

小田桐:毎回、場所に合わせて考えるので、明確になにかやり方を設定しているわけではないですけど、いつもやりすぎないようにはしています。それと、「この先なにが起こるかわからないぞ」って、いつも期待しながら作っていますね。

中嶋:僕らは建物に手を加えるときにも、図面は引かないんです。やっていくなかで決まっていくことがほんとに多いですね。アーティストがなにかやりたいって言いだしたときも、僕らは基本、ノーとは言わない(笑)。いつも、「それ、いいっすね!」って感じでやってます。

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イベント情報

『アッセンブリッジ・ナゴヤ2017』

2017年10月14日(土)~12月10日(日)
会場:愛知県 名古屋港、築地口エリア一帯
休催日:月~水曜

プロフィール

L PACK.(えるぱっく)

小田桐奨と中嶋哲矢によるユニット。共に1984年生まれ、静岡文化芸術大学空間造形学科卒。アート、デザイン、建築、民藝などの思考や技術を横断しながら、最小限の道具と現地の素材を臨機応変に組み合わせた「コーヒーのある風景」をきっかけに、まちの要素の一部となることを目指す。2007年より活動スタート。主な活動に廃旅館をまちのシンボルにコンバージョンする「竜宮美術旅館」(横浜 / 2010~2012年)や、室内の公共空間を公園に変えるプロジェクト「L AND PARK」(東京 / 2011~2012年)、みんなのアトリエ兼セカンドハウス「きたもとアトリエハウス」(埼玉 / 2012年~)、ビジターによるビジターのためのスペース「VISITOR CENTER AND STAND CAFE」(名古屋 / 2013年)などを展開。また、各地のプロジェクトやレジデンスプログラム、エキシビションにも参加。

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