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人生最大の勝負は何だった? 山田佳奈×増子直純×あっこゴリラ

人生最大の勝負は何だった? 山田佳奈×増子直純×あっこゴリラ

□字ック『滅びの国』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:伊藤惇 編集:山元翔一

ヒップホップは「自分最強」って文化ですから。(あっこゴリラ)

—あっこさんのラップについて、ミュージシャン目線ではいかがですか?

増子:俺、ラップって女性だったら「私いいオンナ」的なヤツばっかりってイメージだったけど、あっこちゃんはそこに切り込んでいったのが痛快。

あっこ:ヒップホップは「自分最強」って文化ですからね。私、彼氏がラッパーなんですけど、彼はアインシュタインのことを下に見てます。

増子:半端ねえな!

あっこ:で、キリストが同レベルみたいな。普通のテンションで「俺、宇宙人だから」って言うんですよ。ヤバいんだけど、でも自分の生れ育った町、性別とかカルチャーにすごい誇りがあって、そこがすごくいいと思う。そういう自信が自分に一番欠けていたところだったし、だからヒップホップに惹かれたんだと思うんです。

あっこゴリラ

山田:出会ったばっかりの頃とあっこちゃんの根本的なキャラは変わってないけど、どこか自信なさそうな感じはたしかにあった。

あっこ:常に何かにがんじがらめになってるんですよ。だからそこから解き放たれたくて。その両極で、自分と自分が常に戦っていた。

—じゃあ「対社会」というよりも「対自分」だった?

あっこ:そうです。だから、“ウルトラジェンダー”も自分のことなんですよ。ヒップホップの世界って、わかりやすいくらいに男女差別がまかり通ってますからね。

性別に対する嫌悪感が小さい頃からあって、はじめて生理になった日とかマジで発狂だった。(あっこゴリラ)

—山田さんが作・演出した『荒川、神キラーチューン』(初演は2014年、2016年に再演)も、自分のことを描いているのかなと思いました(参考記事:がむしゃらに走ってきた20代。狭間の世代が語る30代の脱力論)。

山田:それよく言われるんです。でも最近、長編の作品に関しては「物語を作る」っていう意識が強くなっているので、自分の人生の延長線にあるものは書かなくなりましたね。もちろん、実生活で経験した小ネタはたくさん織り込まれているんですけど。初期の作品はかなり自分自身のことを書いています。

—『荒川、神キラーチューン』は、過去・現在・未来を通じた女性たちの交流の話ですよね。そこには、ある種の息苦しさもあって。

山田:私、26歳くらいまで、女性性に対する嫌悪感をずっと持って生きてきたんですよ。その時期をようやく超えて、やっぱり私は女性でしかないから、男性に張り合ってもしょうがないな、って許せるようになった。

そういうバックグラウンドがあるからこそ、女性についてわかるところが多いし、興味があるんです。昔は「女の人を描きたい!」って信念があったんですけど、むしろ今は人間を描きたい。男でも女でもいいなって。ただ、女性について描くのが□字ックのカラーになっていると思うんですけど。

あっこ:すげえわかるー! 私も性別に対する嫌悪感が小さい頃からあって、はじめて生理になった日とかマジで発狂だった。だから□字ックが描いてる女性には「うんうん!」って頷きながら見てました。でも私も、最近の山田さんの気持ちとまったく同じで、「男も女も関係ないな」って思えるようになった。

左から:増子直純(怒髪天)、山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ

増子:あっこちゃんのMCバトルを映像で見たりするけど、男だ女だってすごいよな。でもさ、要は口喧嘩じゃない? 音楽で喧嘩するっていうのはすごく建設的。これは、いわゆるロックバンド、パンクパンドが見習うべきところだと思うんだ。

あっこ:MCバトルって、そもそもアメリカのラッパー同士の殺し合いをなくすために始まったものなんですよ。そういう点ではパーカッションも近くて、アフリカの部族同士の争いの暴力をハッピーに変えるために始まった文化なんです。MCバトルもドラムも、超コミュニケーション。

シェアハウスに住む男娼の青年と、デリヘルを利用せざるをえない主婦の恋愛劇を書こうと思った。(山田)

山田:今、あっこちゃんが「超コミュニケーション」と言ったけど、私の作品って「コミュニケーションのかけ違い」で起こったことについての話が多いんですよね。新作の『滅びの国』はシェアハウスに住む男の子と、団地に住む主婦の話なんですけど、男の子のほうが女性用風俗のデリヘルで働いてるって設定で。

あっこ:へえ!

山田:男性が派遣されるデリヘルって、実際にあって大人気らしいんです。1か月先まで予約が埋まっていて、需要に供給が追いついてない状況で。興味があったので、私も実際に働いている人に話を聞いてみたんです。「どうしてこの仕事を始めたのか?」とか。そしたら最初はオイルマッサージをやってたそうなんですけど、それじゃあ儲からないのでエロ要素を足したら収入が3倍になったって言うんです。

山田佳奈(□字ック)

山田:実際、どういうお客が来るかと言えば、20代から50代までと広くて、本当に性欲が高い方もいらっしゃれば、セックス恐怖症でリハビリ的に使っている人もいるというのを聞いて。それがめちゃくちゃ興味深いなと思って。ルールも面白くて、5回以上頼まないと、LINEの交換ができないとか。

増子:スタンプ制度があるんだ。

山田:それで、シェアハウスに住む男娼の青年と、デリヘルを利用せざるをえない主婦の恋愛劇を書こうと思ったんです。私、これまで恋愛劇を書いたことがなかったんですけど、不倫が日常的に話題に上がる昨今、自分が不倫そのものに対して「ああ、そうしてしまうのも仕方ないよね」って思うようになってきて。30歳過ぎて、そういう人間のサガを許せるようになって、このタイミングなら書けるかもしれないと思ったんです。

□字ック『滅びの国』ビジュアル
□字ック『滅びの国』ビジュアル(サイトを見る

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公演情報

□字ック本公演
『滅びの国』

2018年1月17日(水)~1月21日(日)全7公演予定
会場:東京都 下北沢 本多劇場
脚本・演出:山田佳奈
出演:
吉本菜穂子
三津谷亮
小野寺ずる
日高ボブ美
山田佳奈
大竹ココ
Q本かよ
滑川喬樹
大鶴美仁音
小林竜樹
冨森ジャスティン
水野駿太朗
東谷英人(DULL-COLORED POP)
キムラサトル
ホリユウキ(犬と串)
オクイシュージ
黒沢あすか
柏崎絵美子
倉冨尚人
近藤洋扶
三丈ゆき
JUMPEI
照井健仁
難波なう
橋本つむぎ

プロフィール

山田佳奈(やまだ・かな)

1985年、神奈川県生まれ。劇作家、演出家、女優、映画監督、□字ック主宰。レコード会社勤務を経て、2010年に□字ックを旗揚げ。ほぼ全公演の脚本、演出、選曲を担当。演劇ポータルサイト「CoRich 舞台芸術まつり!2014」でグランプリ受賞。映画監督としても注目を集めており、『夜、逃げる』で初監督のメガホンをとり、『今夜新宿で、彼女は、』では、「第1回 渋谷TANPEN映画祭 CLIMAX at佐世保」でブロンズバーガー賞と最優秀女優賞、「第13回 山形国際ムービーフェスティバル」では大西金属賞と船越英一郎賞を受賞。2018年1月17日より、下北沢・本多劇場にて『滅びの国』の公演を控える。

増子直純(ますこ なおずみ)

1966年4月23日生まれ、北海道札幌市出身。ロックバンド怒髪天のボーカルを務める。ダミ声で歌い上げるスタイルが特徴で、気さくなキャラクターで「兄ィ」の愛称で親しまれている。実力に裏打ちされたライブパフォーマンスで観客を魅了し、JAPANESER&E(リズム&演歌)という独自の世界観を切り開く。2014年1月に行なった結成30周年の日本武道館公演は満員御礼。2017年5月、シングル『赤ら月』をリリース。2018年3月にはライブ映像作品『怒髪天presents"響都ノ宴"10周年記念「夢十夜」』のリリースを控える。

あっこゴリラ

レペゼン地球のラッパー、あっこゴリラ。リズムで会話する動物、ゴリラに魅了され、ドラマー時代に「あっこゴリラ」と名乗りはじめる。ラップ・トラックメイクを自身が行い、また元々ドラマーという異色な経歴から自由に生み出されるラップスタイルは、唯一無二の形を提示している。様々なジャンルのイベントに参加するが、彼女がステージに立てばどんな場所でも其処はBack to the Jungleと化す。

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