人生最大の勝負は何だった? 山田佳奈×増子直純×あっこゴリラ

怒髪天のボーカル、増子直純。異色の女性ラッパーとして活躍する、あっこゴリラ。そして、劇団「□字ック」を主宰する山田佳奈。バンド、ヒップホップ、演劇と、異なるフィールドで活動する三者には意外な接点があった。「□字ック」が旗揚げする以前、山田はあるレコード会社のプロモーターとして怒髪天を担当し、さらにあっこゴリラがかつて所属していたガールズバンドとも交流があったのだ。それぞれ異なる道を突き進み、そしてブレイクを果たした女性二人と、彼女たちをずっと見守ってきた先輩ミュージシャン。その三人が、久々に一堂に会することとなった。

小劇場界の「日本武道館」とも言える下北沢本多劇場で新作『滅びの国』の上演を控える山田佳奈にとって、今年はまさに大勝負の年だ。それは、渋谷WWWでのワンマンライブを成功させたあっこゴリラも同じことと言えよう。そして増子もまた、数々の大勝負に打ち勝ってきた音楽界の猛者である。何につけ厳しさがキワ立つ昨今の日本で、表現者たちはどんな大勝負に挑み、「勝ち」を得ようとしているのか?

バンド活動に関しては、俺は冒険しないタイプだからね。(増子)

—いきなり直球の質問ですが、みなさんがこれまでの人生で「大勝負だ!」と感じたのは、どんなときでしょう。

増子:人生の一番の大勝負。そうだなあ……40歳のときの私生活でのアレだな(笑)。

一同:(笑)

左から:増子直純(怒髪天)、山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ
左から:増子直純(怒髪天)、山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ

増子:(笑)。まあ、バンドとしてはやっぱり30周年の武道館ライブ(2014年)だよね。あれは大大大勝負だった。28年間、怒髪天をやってきて、それまでの客席が最大で3000とかなのに、あと2年でどうして3倍(武道館のキャパシティーは最大で1万超)にできるのよって話じゃない?

「バカじゃねえか!」って思ったけど、これを逃したら武道館でやる機会はないだろうし、メンバーもみんな「やりたい!」って言うからね。そうしたら、もうやるしかないじゃない。そこからはできることは全部やって、1年間猛烈にプロモーションしまくったよ。俺にとっては驚きの連続だった。バンド活動に関しては、俺は冒険しないタイプだからね。

—そうなんですね、なんだか意外です。

増子:楽曲制作では冒険するんだけどね。札幌から東京に出て来たのも、友だちのバンドが全員上京しちゃって、遊ぶヤツらがいなくなったからだしね。そのテキトーさからしたら、武道館でやるなんて「嘘だろ!?」って感じよ。みんな「怒髪天が狂った!」って思ったんじゃないかな(笑)。まあでも、おかげさまでチケットも売り切れて本当によかった。

増子直純(怒髪天)

怒髪天は演奏のできないパンクバンドから始まった愚連隊みたいなもんでさ、それが武道館なんだから、バンドって夢があるよな。(増子)

あっこ:「怒髪天が武道館でライブする」ってこと自体がめちゃくちゃエモかったですよ! 活動の全部を知ってるわけではない私ですらアガってるんだから、ずっと応援してたファンの方、それこそマネージャーの方とか、本当にヤバかっただろうと思います。案の定、みんなライブで号泣してましたよね。

増子:泣いたねー! ステージも客席もみんな泣いてるっていう、わけのわからない状態。でも実際に立ってみると、ひとつ勲章をもらっただけって感じだよ。それで一生食っていけるわけじゃない。もっと、すごいことやりたくなるしな。

山田:増子さんが、その感慨を舞台上で噛み締めているのがわかったから、こっちもガンガン泣いてしまいましたよ。MCしてる増子さんが、何度も言葉を詰まらせて……。

増子:そりゃあ詰まるよ(笑)。誰も武道館でやるなんて思ってなかったんだから。しかもステージ上でメンバーにお礼を言われたりしたらさ、涙も出て来るよ。

あっこ:私、勇気もらいましたよ。

増子:「自分にもできるんじゃねえか?」って思ったでしょ。バンドの勝ちパターンって、動員力があるとか、超ヒット曲があるとかじゃない? でも俺たちみたいにこれといったヒット曲もなく、ただただ楽しくてバンド続けてきたヤツらでも、長く続けていることでできることもあるんだぞっていうのを、多少無茶してでも後進の者たちに見せたかったんだ。

左から:増子直純(怒髪天)、山田佳奈(□字ック)

増子:そもそも、怒髪天は演奏のできないパンクバンドから始まった愚連隊みたいなもんでさ、当時の札幌バンド界隈って各地域の一番悪いヤツらがそれぞれバンドをやってて。

—三国志みたいな世界ですね。

増子:まさにそう! ギターケースのなかに金属バット入れてライブ行ってたんだからどうかしてたよ! それが武道館なんだから、バンドって夢があるよな。

会社を辞めて演劇の世界に行くって真っ先に相談をしたのは増子さんだったんです。(山田)

—そんな怒髪天のドラマを山田さんは間近で見ていたんですよね。

山田:プロモーション担当としてご一緒していました。じつは、会社を辞めて演劇の世界に行くって真っ先に相談をしたのは増子さんだったんですよ。怒髪天の現場もそうですけど、音楽での仕事が楽しくなってきたときに演劇のほうにも揺らいでしまっている自分に葛藤があって……。

左から:山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ

増子:狂ったかと思ったよ! これだけ苦労してきたバンドを間近で見てるのに!

山田:増子さんが包丁の実演販売のバイトしてた話なんかも聞いてたのにねえ(笑)。

増子:でもさ、やりたいことをやるべきなんだよ。安全で確実な道か、ちょっとヤバいけど夢のある道かってあるじゃない? 岡本太郎も言ってたけどさ、そこで迷っている時点で、もう後者に惹かれてるんだよね。だから、そのときは必ずヤバいほうに賭けるんだ。そして一度賭けたからには、一生それに賭け続けないとすべてがパーなっちゃう。だから、山田もあっこちゃんも賭け続けてるよね。

増子直純(怒髪天)

山田:会社を辞めて、はじめてライブ演出させてもらったのがあっこちゃんの前のバンド(HAPPY BIRTHDAY。現在は解散)だったんですよ。

あっこ:そうそう。□字ックともコラボした。

増子:バンド辞めて、紙芝居と一緒にラップやるって言い出したときは、やっぱり狂ったかと思ったよ(笑)。

ラップを始めたのはカウンセリングみたいなもので、「自分を取り戻すため治療」でした。(あっこゴリラ)

—あっこさんの大勝負は、やはりラッパーへの転身ですか?

あっこ:自分では勝負かけたって感じはあまりなくて。とにかく生きることに無我夢中だったんです。バンドをずっとやっていると人間関係も複雑になっていくんですけど、そのなかで自分もバンドがよくあるために努力していたら、気づいたときには自分の本心を表に出せなくなっちゃっていて。

自分が何が好きで、何が嫌いかもわからないくらい気持ちが麻痺しちゃっていたときに、ストレス発散みたいな感覚で、ラップを始めたんです。ラップの表現ってめちゃくちゃ直接的だから、自分のことを一つひとつ確認していくように。だから、ラップを始めたのはカウンセリングみたいなもので、大勝負じゃなくて、「自分を取り戻すため治療」でした。

左から:山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ

—“ウルトラジェンダー”とか、外に向かっている曲が多い印象ですけど、じつは真逆の「自分の世界」から始まってたんですね。

あっこ:ほんと真逆! 人に気を遣うばかりで、自分が感じることをうまく理解して吐き出せない人間だったからこそ、言いたいことを言いたいし、自由になりたい。そういう気持ちが今は強いです。

山田:あっこちゃんが悩んでいるのは当時なんとなく感じてたよ。前のバンドが女の子2人組だったから、やっぱり煮詰まるじゃない? □字ックも女ばっかりの劇団だからわかるな。

会社を辞めて、演劇一本に絞るのは大勝負だった。(山田)

あっこ:山田さんの大勝負は何?

山田:私はやっぱり会社を辞めるとき。レコード会社で仕事をしてる自分って、増子さんやアーティストのために働いていたんですよね。でも自分がしたい他の活動って当然自分のためじゃないですか。だからそれが演劇活動と会社員の二足のわらじで生きるようになったら、たとえば怒髪天との仕事を、おざなりにしてしまうんじゃないかって。

—アーティストのためでなく、自分の生活や演劇活動のためになってしまうんじゃないかと。

山田:はい。そういう葛藤がありました。だから会社を辞めて、演劇一本に絞るのは大勝負だった。それで8年が過ぎて今に至るんですけど、正直、次の公演は大勝負。下北沢の本多劇場は、バンドで言えば武道館みたいな特別な場所ですから。

増子:山田は一生懸命働いていたよね。何しろレコード会社の社員って大変だから。しかも、決して大手レコード会社ではないから、非常に地味な積み重ねしかなくて、足で稼いでくるような仕事に命を賭けてた。

そんな生活のなかで、やっぱり演劇をやりたいって気持ちが強かったんだから、そりゃあそっちのほうがいいんだよ。二人とも俺にとっては娘みたいな存在だからさ。いろんなところで名前を見ては「よしよし、やっとるなあ!」っていう気持ちだよ。

左から:増子直純(怒髪天)、山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ

ヒップホップは「自分最強」って文化ですから。(あっこゴリラ)

—あっこさんのラップについて、ミュージシャン目線ではいかがですか?

増子:俺、ラップって女性だったら「私いいオンナ」的なヤツばっかりってイメージだったけど、あっこちゃんはそこに切り込んでいったのが痛快。

あっこ:ヒップホップは「自分最強」って文化ですからね。私、彼氏がラッパーなんですけど、彼はアインシュタインのことを下に見てます。

増子:半端ねえな!

あっこ:で、キリストが同レベルみたいな。普通のテンションで「俺、宇宙人だから」って言うんですよ。ヤバいんだけど、でも自分の生れ育った町、性別とかカルチャーにすごい誇りがあって、そこがすごくいいと思う。そういう自信が自分に一番欠けていたところだったし、だからヒップホップに惹かれたんだと思うんです。

あっこゴリラ

山田:出会ったばっかりの頃とあっこちゃんの根本的なキャラは変わってないけど、どこか自信なさそうな感じはたしかにあった。

あっこ:常に何かにがんじがらめになってるんですよ。だからそこから解き放たれたくて。その両極で、自分と自分が常に戦っていた。

—じゃあ「対社会」というよりも「対自分」だった?

あっこ:そうです。だから、“ウルトラジェンダー”も自分のことなんですよ。ヒップホップの世界って、わかりやすいくらいに男女差別がまかり通ってますからね。

性別に対する嫌悪感が小さい頃からあって、はじめて生理になった日とかマジで発狂だった。(あっこゴリラ)

—山田さんが作・演出した『荒川、神キラーチューン』(初演は2014年、2016年に再演)も、自分のことを描いているのかなと思いました(参考記事:がむしゃらに走ってきた20代。狭間の世代が語る30代の脱力論)。

山田:それよく言われるんです。でも最近、長編の作品に関しては「物語を作る」っていう意識が強くなっているので、自分の人生の延長線にあるものは書かなくなりましたね。もちろん、実生活で経験した小ネタはたくさん織り込まれているんですけど。初期の作品はかなり自分自身のことを書いています。

—『荒川、神キラーチューン』は、過去・現在・未来を通じた女性たちの交流の話ですよね。そこには、ある種の息苦しさもあって。

山田:私、26歳くらいまで、女性性に対する嫌悪感をずっと持って生きてきたんですよ。その時期をようやく超えて、やっぱり私は女性でしかないから、男性に張り合ってもしょうがないな、って許せるようになった。

そういうバックグラウンドがあるからこそ、女性についてわかるところが多いし、興味があるんです。昔は「女の人を描きたい!」って信念があったんですけど、むしろ今は人間を描きたい。男でも女でもいいなって。ただ、女性について描くのが□字ックのカラーになっていると思うんですけど。

あっこ:すげえわかるー! 私も性別に対する嫌悪感が小さい頃からあって、はじめて生理になった日とかマジで発狂だった。だから□字ックが描いてる女性には「うんうん!」って頷きながら見てました。でも私も、最近の山田さんの気持ちとまったく同じで、「男も女も関係ないな」って思えるようになった。

左から:増子直純(怒髪天)、山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ

増子:あっこちゃんのMCバトルを映像で見たりするけど、男だ女だってすごいよな。でもさ、要は口喧嘩じゃない? 音楽で喧嘩するっていうのはすごく建設的。これは、いわゆるロックバンド、パンクパンドが見習うべきところだと思うんだ。

あっこ:MCバトルって、そもそもアメリカのラッパー同士の殺し合いをなくすために始まったものなんですよ。そういう点ではパーカッションも近くて、アフリカの部族同士の争いの暴力をハッピーに変えるために始まった文化なんです。MCバトルもドラムも、超コミュニケーション。

シェアハウスに住む男娼の青年と、デリヘルを利用せざるをえない主婦の恋愛劇を書こうと思った。(山田)

山田:今、あっこちゃんが「超コミュニケーション」と言ったけど、私の作品って「コミュニケーションのかけ違い」で起こったことについての話が多いんですよね。新作の『滅びの国』はシェアハウスに住む男の子と、団地に住む主婦の話なんですけど、男の子のほうが女性用風俗のデリヘルで働いてるって設定で。

あっこ:へえ!

山田:男性が派遣されるデリヘルって、実際にあって大人気らしいんです。1か月先まで予約が埋まっていて、需要に供給が追いついてない状況で。興味があったので、私も実際に働いている人に話を聞いてみたんです。「どうしてこの仕事を始めたのか?」とか。そしたら最初はオイルマッサージをやってたそうなんですけど、それじゃあ儲からないのでエロ要素を足したら収入が3倍になったって言うんです。

山田佳奈(□字ック)

山田:実際、どういうお客が来るかと言えば、20代から50代までと広くて、本当に性欲が高い方もいらっしゃれば、セックス恐怖症でリハビリ的に使っている人もいるというのを聞いて。それがめちゃくちゃ興味深いなと思って。ルールも面白くて、5回以上頼まないと、LINEの交換ができないとか。

増子:スタンプ制度があるんだ。

山田:それで、シェアハウスに住む男娼の青年と、デリヘルを利用せざるをえない主婦の恋愛劇を書こうと思ったんです。私、これまで恋愛劇を書いたことがなかったんですけど、不倫が日常的に話題に上がる昨今、自分が不倫そのものに対して「ああ、そうしてしまうのも仕方ないよね」って思うようになってきて。30歳過ぎて、そういう人間のサガを許せるようになって、このタイミングなら書けるかもしれないと思ったんです。

□字ック『滅びの国』ビジュアル
□字ック『滅びの国』ビジュアル(サイトを見る

バンドって、自分の核にあるものをさらに増幅して出すわけだから「超自分」だよね。(増子)

—増子さんは過去に□字ックの公演を見ていらっしゃると伺いました。山田さんが演劇に惹かれる理由についてはどう思われますか?

増子:去年さ、俺も演劇に出たんだけど(宮藤官九郎作・演出の『サンバイザー兄弟』)、もう大変だった。安請け合いするもんじゃないってくらい大変だった。でもやってみて、山田が会社辞めるだけのものが芝居にはあるなって思った。バンドと全然別ものだけど面白い。

山田:どのへんが別物だと思いました?

増子:役者は「自分以外のもの」にならないといけないじゃない? でもバンドって、自分の核にあるものをさらに増幅して出すわけだから「超自分」だよね。だけど芝居は、一度自分のなかのものをアンインストールして空にして、身振りや言葉を入れないといけない。

増子直純(怒髪天)

山田:今回、珍しく自分も俳優として出るんです。最近はディレクションに専念していたんですけど、ちょっとでもいいから本多劇場の舞台に立ちたいなと思って(笑)。演技を考えていて思うのは、俳優は自分の生活と地続きなんだってことです。

実生活で泣いているときの感情ですら、芝居のために覚えていないといけないっていうのは、すごくキツい。いろんな泣き方があるから、シクシク泣くとき、号泣するとき、その感覚の違いを自分でちゃんと持っていないとどっちもできなくなるというか。

—興味深いですね。役を演じるために人格を空っぽにしないといけないけど、感情は演技のためにストックしている必要がある。

増子:そうだね。ところでさ、あっこちゃんは女優向きだと思うんだよね。

あっこ:え、そうかな? でも、私は今の話を聞いてて「役に食われちゃうな」と思った。役になりきって、それが自分だと思ってわけわかんなくなっちゃう。崩壊しそう、自分が。

あっこゴリラ

増子:さっき話した舞台では瑛太くんと一緒だったんだけど、彼はその前に人間魚雷についての作品(野田秀樹作・演出『逆鱗』)をやっていて、それが最終的に死ぬ役なんだ。長台詞を言いながら次第に狂っていって、そして死ぬっていう。それを3か月毎日やってたら、本当にそれ以外何もできなくなるって言ってた。

あっこ:私、CMの撮影で演劇の人に演技指導やってもらったことがあるんですよ。それで「あのときのことを思い出して」って指導されながら演技するんだけど、本当に思い出すし、本当につらくなってきちゃうの。知らない感情を演じるのは無理だけど、知っている感情のスイッチを押されると、入っちゃう。

増子:それって、じつは俳優の才能があるのかも。

あっこ:いやあ、毎回やるのは無理だと思った。

山田:日々その繰り返しの仕事だからね。俳優って。

たくさん辛酸なめてきて、ようやく本多劇場まで来た。(山田)

—最後に、もう一度「大勝負」について。今後、勝負するとしたらコレ! というのはありますか?

あっこ:増子さんが言ったように、絶対にわくわくドキドキするほうを選ぶって決めちゃってるので、常に大勝負といえば大勝負ですね。ちょっとでも日和ると、どこかのタイミングで人生の純度も濃度も薄くなってしまうから、こういう生き方を選んだ以上は腹くくってやります。

こういう生き方はしんどいけど、めちゃくちゃ楽しいです。私もこの歳になって「この生き方を選んで本当によかった!」と思うんです。ちょっと前までは「私ってどうしてこんなめちゃくちゃな人間なんだ!」って思ったりしたのに。

山田:わかる、わかる。

左から:増子直純(怒髪天)、山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ

あっこ:でも、今はマジで楽しい。最高。世間で言うところのバカな生き方を選んでいるから、もう相当にバカなことやりたいっすね! 子ども産んでもバリバリやりたい。もし子どもが生まれたら、出産発表はゴリラの赤ちゃん抱いてやりたいです。

あとは村を開拓したい。村を借り切って、地産地消の生活を送りたい。音楽って現象だし、もっと言うと、人生が変わることまで含めて音楽だと思うんですよ。ライブハウスのステージだけでやるものだけが音楽とは私は思ってなくて、いろんな新しいことをやりたい。

山田:私はやっぱり、今回の『滅びの国』が大勝負だと思ってます。劇団旗揚げして「2年で本多劇場行ってやります!」なんてバカなこと言ってたけど、こんなに大変だと思わなかったですから。たくさん辛酸なめてきて、ようやく本多劇場まで来た。しかも、今回はキャストがめちゃくちゃ豪華なんです。だから俳優に対して、そして□字ックの作品に期待してくれる人に対して確実に応えたいと思ってます。

人生には元手かかってないからな。生まれたときは裸だし、失敗しても命まではとられねえよ。(増子)

—ここまで来ると背負うものも増えていきますよね。

山田:私、「なぜ、演劇は楽しいか?」ってよく考えるんですけど、娯楽には人の人生を変える瞬間があるからなんですよね。そして私にそれができるのは演劇しかない。

これまで、くさくさした気持ちにたくさんなったし、大人になってしまった自分もいるけれど、見ている人たちの人生が変わってしまうようなものを作っている自分も誇らしいし、それに共鳴してくれる人にも「生きてても大丈夫だから!」って言える作品を作っていきたい。そして、この作品で「ほれ見たことか!」って言いたいです。

あっこ:ちょーわかる! 「ほれ見たことか!」って言いたいよね。

山田:(笑)。あとは増子さんにもですけど、今までの人生で関わってくださった人たちの親心に対して親孝行がしたい。

あっこ:今日とか、私、エモいんすよ! お父さん(増子)とお母さん(山田)と並んで話してるようなものだから。あっこゴリラは、少し成長して戻ってきました、みたいな!

左から:増子直純(怒髪天)、山田佳奈(□字ック)、あっこゴリラ

増子:とにかく、すごい面白いことに突き抜けて二人ともやっているのが痛快だよね。俺は賭け事とか一切やらないんだけど、それは人生というとんでもないものにバンドで賭けちゃっているから。それ以上のギャンブルはないからね。他のギャンブルをやっている暇がないんだよ。それはこの二人も一緒だと思う。一度賭けたら賭け続けるしかない。

あっこ:うん。

増子:まあでも、人生には元手かかってないからな。生まれたときは裸だし、失敗しても命まではとられねえよ。

山田あっこ:いい台詞だ!

公演情報
□字ック本公演
『滅びの国』

2018年1月17日(水)~1月21日(日)全7公演予定
会場:東京都 下北沢 本多劇場
脚本・演出:山田佳奈
出演:
吉本菜穂子
三津谷亮
小野寺ずる
日高ボブ美
山田佳奈
大竹ココ
Q本かよ
滑川喬樹
大鶴美仁音
小林竜樹
冨森ジャスティン
水野駿太朗
東谷英人(DULL-COLORED POP)
キムラサトル
ホリユウキ(犬と串)
オクイシュージ
黒沢あすか
柏崎絵美子
倉冨尚人
近藤洋扶
三丈ゆき
JUMPEI
照井健仁
難波なう
橋本つむぎ

プロフィール
山田佳奈 (やまだ・かな)

1985年、神奈川県生まれ。劇作家、演出家、女優、映画監督、□字ック主宰。レコード会社勤務を経て、2010年に□字ックを旗揚げ。ほぼ全公演の脚本、演出、選曲を担当。演劇ポータルサイト「CoRich 舞台芸術まつり!2014」でグランプリ受賞。映画監督としても注目を集めており、『夜、逃げる』で初監督のメガホンをとり、『今夜新宿で、彼女は、』では、「第1回 渋谷TANPEN映画祭 CLIMAX at佐世保」でブロンズバーガー賞と最優秀女優賞、「第13回 山形国際ムービーフェスティバル」では大西金属賞と船越英一郎賞を受賞。2018年1月17日より、下北沢・本多劇場にて『滅びの国』の公演を控える。

増子直純 (ますこ なおずみ)

1966年4月23日生まれ、北海道札幌市出身。ロックバンド怒髪天のボーカルを務める。ダミ声で歌い上げるスタイルが特徴で、気さくなキャラクターで「兄ィ」の愛称で親しまれている。実力に裏打ちされたライブパフォーマンスで観客を魅了し、JAPANESER&E(リズム&演歌)という独自の世界観を切り開く。2014年1月に行なった結成30周年の日本武道館公演は満員御礼。2017年5月、シングル『赤ら月』をリリース。2018年3月にはライブ映像作品『怒髪天presents"響都ノ宴"10周年記念「夢十夜」』のリリースを控える。

あっこゴリラ

レペゼン地球のラッパー、あっこゴリラ。リズムで会話する動物、ゴリラに魅了され、ドラマー時代に「あっこゴリラ」と名乗りはじめる。ラップ・トラックメイクを自身が行い、また元々ドラマーという異色な経歴から自由に生み出されるラップスタイルは、唯一無二の形を提示している。様々なジャンルのイベントに参加するが、彼女がステージに立てばどんな場所でも其処はBack to the Jungleと化す。



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