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音を使って千住の町を面白くする。アサダワタルの実践に迫る

音を使って千住の町を面白くする。アサダワタルの実践に迫る

『音盤千住』レコ発企画『聴きめぐり千住!』
インタビュー・テキスト
大石始
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

どこにテーマを置くのか考えていくことは、雑誌の特集テーマを決めることと同じだと思うんです。

—そうした発想が今回の「千住タウンレーベル」というプロジェクトにも繋がってきそうですね。今回のプロジェクトではどのようなことをやろうと考えたのでしょうか?

アサダ:町の情報誌ってありますよね。一定の地域で流通しているミニコミ誌。

—タウン誌みたいなイメージですね。

アサダ:以前から音を使ってそういう町のメディアみたいなものができないかと考えていて、音楽レーベルでもありつつ、町のメディアでもある「タウンレーベル」という発想がまずあったんです。

「千住タウンレーベル」ビジュアル イラスト:宮田篤
「千住タウンレーベル」ビジュアル イラスト:宮田篤(サイトをみる

—プロジェクトとしての最初の活動はタウンレコーダーの募集説明会だったそうですね。

アサダ:タウンレコーダーというのはいわゆる雑誌の記者のような存在です。人に取材する人もいれば、町の環境音を録ってくる人もいる。そういう人たちをまず募集しました。

タウンレコーダーのなかには千住に住んでいる方もいるし、初めて千住に来たという方もいました。最年少が中学1年生、最年長で50代。いろんな目的を持った人が集まってるんですよ。

千住の町で取材するタウンレコーダー
千住の町で取材するタウンレコーダー

—取り扱うテーマについてはタウンレコーダーの方に委ねられているんですか?

アサダ:委ねています。テーマを考えるのは、雑誌の特集を決めるのと同じだと思っていて、今回一番参考にしたのが1960年代の『月刊 朝日ソノラマ』(インタビューなどを録音したテープやソノシートを収録した音の出る雑誌)。活字メディアであると同時に音楽メディアでもある、いわば「あわいのメディア」ですね。

そうしたものを参照しながら、タウンレコーダーの方々が千住の町の何を特集したいか考えて、市場のせりのダミ声とか、ターミナル駅である千住の電車の音とか、地元の人の町の思い出話なんかを特集として録音したんです。

アサダワタル

今残さないといけないものを記録していこう、というプロジェクトじゃないんです。

—実際にできあがった『音盤千住』の13のトラックを聴かせていただきましたが、通常の音楽とは異なるものが多いですよね。ボッタという千住特有の食べ物が焼ける音を録音したものだったり、メロディーやリズムではなく、環境音と人の言葉で町の風景を描写したものがほとんどです。なかでも僕は市場や魚屋で働く方々のダミ声をひたすら繋いだ“千住D-1グランプリ 2017”が好きでした(笑)。

アサダ:これを作ったVNDOさんは浪曲が好きで、声そのものに関心があるんですね。ダミ声を拾うためには町に出なきゃいけなかったわけで、結果的に町の方々と仲良くなっていったんです。そうやって音への関心から出発し、町と関わりを持つようになっていった方もいますね。

実際にできあがったレコード『音盤千住』
実際にできあがったレコード『音盤千住』

—インタビュー録音や音響作品だけじゃなくて、“さんさ踊り”“千住節”といった地域で歌い継がれてきた民謡を演奏したものもありますね。

アサダ:音盤全体の構成として、全部がインタビュー集やサウンドアートのようなものだけだと、音としてちょっと弱い感じがしたんですね。この曲を担当した岡野勇仁さんはプロのピアニストの方なんです。演奏には僕もドラムで参加させてもらいました。

アサダワタル

—今回の作品作りに関しては、俳優で芸能研究者でもあった小沢昭一さん(2012年に逝去)が1970年に日本各地の大道芸や門付け芸(大道芸の一種で、門口に立ち行い金品を受け取る形式の芸能の総称)を録音した『日本の放浪芸』がヒントになっていたそうですね。それぞれのトラックを聴いていると、確かに『日本の放浪芸』を連想させられるものもあります。

アサダ:僕自身、『日本の放浪芸』にはすごく影響を受けました。ただ1970年代当時、小沢さんはギリギリ残っていた放浪芸を記録することに目的意識があったと思うんですね。でも、千住タウンレーベルは「今残さないといけないものを記録していこう」というプロジェクトじゃないんです。現段階ではそれが残さないといけないものなのかどうか、よくわからないものに興味がある。後々になって、「あれを記録しておいてよかったね」と思うことって結構あるんですね。

アサダワタル

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イベント情報

『音盤千住』レコ発企画『聴きめぐり千住!』
『音盤千住』レコ発企画
『聴きめぐり千住!』

2018年1月21日(日)
会場:東京都 北千住 千住エリア各所

料金:無料(事前申し込み優先)
※受付・音盤貸出は仲町の家
野村誠 千住だじゃれ音楽祭 第2回定期演奏会
『かげきな影絵オペラ』

日時:2018年2月4日(日)
会場:東京都 北千住 東京藝術大学 千住キャンパス 第7ホール
出演:
野村誠
だじゃれ音楽研究会
梅津和時
川村亘平斎
神谷未穂
竹澤悦子
中原雅彦
定員:200名(先着順、事前申込優先)
料金:無料

千住・縁レジデンス 表現(Hyogen)
『茶MUSICA(チャムジカ)』

2018年1月28日(日)、2月10日(土)、11日(日・祝)、17日(土)
会場:東京都 北千住 仲町の家
参加:
表現(Hyogen)
神崎悠輔
定員:各回20名(事前申込優先)
料金:各回1,000円
※演奏とお茶の時間以外は入場無料、出入り自由

プロフィール

アサダワタル
アサダワタル(あさだ わたる)

1979年生まれ。2002年、バンド「越後屋」のドラマーとして、くるり主宰レーベルNMRより2枚のCDをリリースし解散。のちに紆余曲折を経て、大阪でNPOや寺院に勤めながらアートによる独特なコミュニティ活動を展開。2009年に提唱したソーシャルコンセプト「住み開き」が話題に。2010年以降は、音楽を軸に全国で様々なアートプロジェクトの企画演出と執筆に取り組む。著書に『住み開き』(筑摩書房)、『コミュニティ難民のススメ』(木楽舎)など。大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員、博士(学術)。またグループワークとして、ドラムを担当するサウンドプロジェクト「SjQ/SjQ++」では、アルス・エレクトロニカ2013デジタル音楽部門準グランプリ受賞。

千住タウンレーベル

千住で生活してきた市井の人々の人生譚(記憶)、千住のまちならではの風景や人間模様にまつわるエピソード、千住に根づき息づく音楽など、これらすべてをテキスト(文字)だけではなく、「音楽」として編集し、まちなかの拠点を編集室(スタジオ)として、発信・アーカイブしていくプロジェクトです。

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