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evening cinemaが現代に継ぐ、松本隆・渋谷系・椎名林檎らの功績

evening cinemaが現代に継ぐ、松本隆・渋谷系・椎名林檎らの功績

evening cinema『CONFESSION』
インタビュー・テキスト
矢島由佳子
撮影:西槇太一

「ロマンチックの申し子」とも呼ばれている原田夏樹によるプロジェクト・evening cinemaが、バレンタインデーである2月14日に、『CONFESSION』(=告白)と題した1stフルアルバムをリリースする。

「ラブソング、足んなくないすか?」と前回のインタビューでサラリと発言していた原田は、新たに10種類のラブソングを産み落とした。ただ、「ラブソング」と言っても、「幸せ」「寂しい」など一面的な感情を歌っているだけでは決してない。大学で哲学を専攻している原田と「恋」について紐解いていくと、言葉というものの尊さ、相手と理解し合うためのコミュニケーション方法、失敗という名の経験の価値など、日々を人と生きていくための大切なことがたっぷり詰まった話へとたどり着く。

音楽的には、はっぴいえんどを代表とする1970年代のニューミュージックから、1980年代の岡村靖幸感、フリッパーズ・ギターやORIGINAL LOVEら1990年代の渋谷系とSMAPなどのJ-POP、そして2010年代の椎名林檎の活躍から生まれた要素まで、「日本のポップスのいいとこどり」が成された一枚で、ソングライターとしての器用さと多才さ、そして、過去の日本のポップスを現代に継いでいく使命を自ら背負う覚悟が見える。「ロマンチックの申し子」であり、「日本のポップス史の後継者」である、原田夏樹の熱き言葉が次々とサラリと吐き出されるインタビューを、どうぞ。

「今の邦楽っていうのはこういうふうに作られています」というものを提示したかった。

—1stフルアルバム『CONFESSION』は、「あれっぽいな」と思わせるサンプリングや遊び心が随所に散りばめられていて、聴いていて何度もクスっとさせられました。

原田:嬉しいです(笑)。

—でも実際、たとえばYouTubeのミュージックビデオのコメント欄に「岡村ちゃん(岡村靖幸)っぽい」「田島貴男(ORIGINAL LOVE)っぽい」みたいなことを書かれているのを見ると、どう思うんですか?

原田:してやったりって感じですかね。気付いてくれることは嬉しいし、誉れですから。

—『CONFESSION』を制作するうえで、改めていろいろな時代の日本の音楽を聴き返したのではと思ったのですが、いかがでしょう?

原田:そうですね。インプット元はたくさんあるんですけど、一番意識的に聴いたもので言えば、渋谷系だと思います。ピチカート・ファイヴ、フリッパーズ・ギター、ORIGINAL LOVEあたりを、作る側の視点ですごく分析的に聴きました。

—分析的に聴いて、どういう魅力を自分の作品に入れたいと考えたのでしょう?

原田:あの頃の人たちの「オタク気質」というか、収集癖があるかのようにいろんなものを自分の引き出しに集めて、「机のなかの宝箱を見せちゃいました。よくないですか、このコレクション!」みたいな姿勢(笑)。そこに僕も憧れたし、「今の邦楽っていうのはこういうふうに作られています」というものを提示したいと思ったんです。

原田夏樹
原田夏樹

—「この曲のこの部分では、これをサンプリングしています」って、具体的に明かせるものはありますか?

原田:1曲目の“告白”でいうと、クラップはピチカート・ファイヴが使っているクラップを、音色は変えたけど、そのまま引用させていただいたのと、イントロの最初のほうに入っている「Let's Go」という声は、フリッパーズ・ギターが“GROOVE TUBE”(1991年発表のシングル曲)で使った音を、レコードから抜いて。

あとは『ローマの休日』(1953年製作、ウィリアム・ワイラー監督)の、最後にオードリー・ヘプバーンが言う「Each, in its own way, was unforgettable(和訳:すべて忘れられないものだった)」というセリフを、Aメロに入る前の最初のブレイクで入れてますね。「忘れられない」みたいなことは、今回のアルバムのテーマのひとつにしたかったことだから、ちょうどいいセリフだなと思って。

—その雑多なイントロのなかに、自分の曲“わがまま”のワンフレーズも混ぜたりして(笑)。

原田:そうですね(笑)。

僕らが何気なく使っている「言葉」というのは、僕らが思っているよりも尊いものなんじゃないか。

—「忘れられない」がアルバムのテーマのひとつだったとのことですが、タイトルにもなっている「告白」とか「伝える」ということが、今作では全面的に歌われていますよね。それを歌おうと思った理由は?

原田:今作は、これまでよりも断然、言葉、歌詞に力を入れたんです。サウンドよりも歌詞のほうが思い入れあるかもしれないっていうくらい。そもそも人間にとって一番大切なのって、「言葉、言語にすること」だと思うんですよね。前に話したことともつながるんですけど、僕らは、まったく違う心を持った人間同士なのに、それでも分かり合おうとするじゃないですか。

—前回のインタビュー(evening cinemaインタビュー 日本のポップス史を継ぐ新たな才能)で、原田さんが勉強している哲学では「他者の心は分からない」という立場があって、人間同士が分かり合うことは絶対にできない、ということを話してくれましたね。

原田:そう。分かってもらえないからこそ、「言葉」というのは大切なんだなと思って。分かり合おうとするために、言語というツールがある。だから、僕らが何気なく使っている「言葉」というのは、僕らが思っているよりも尊いものなんじゃないか、ということを伝えたいという意識で全曲書きました。

よく「行間を読め」とか、会話でも「発している人の気持ちを考えろ」って言うじゃないですか。それって、言うのは簡単ですけど、ある意味、けっこう暴力的なことだなとも思うんです。だからこそ歌詞も「僕は本当にこう思ってます」っていうのを、無駄なフレーズは入れずに、それこそ告白するかのごとくストレートに書き上げたいと思いました。

原田夏樹

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リリース情報

evening cinema『CONFESSION』
evening cinema
『CONFESSION』(CD)

2018年2月14日(水)発売
価格:2,916円(税込)
LUCK-3001

1. 告白
2. さよならは今度のために
3. ラストイニング
4. 忘れるまえに
5. サマータイム
6. can't do that
7. make it alright
8. jetcoaster ~ baby, I'm yours ~
9. 原色の街
10. わがまま

プロフィール

evening cinema
evening cinema(いゔにんぐ しねま)

フェイヴァリット・アーティストに大瀧詠一、岡村靖幸、小沢健二を挙げるボーカル兼コンポーザー原田夏樹を中心に結成。80年代ニューミュージックに影響を受けたメロディーセンスと現代の20代男子の瑞々しい感性で90年代初頭のPOPSを現代に再構築するAOR系POPSバンド。無名の新人ながらその作家能力に注目が集まり、2016年7月、1st mini AL『Almost Blue』でCDデビュー。以後他アーティストへの楽曲提供やコラムの執筆等、活動の幅を広げている。

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