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evening cinemaが現代に継ぐ、松本隆・渋谷系・椎名林檎らの功績

evening cinemaが現代に継ぐ、松本隆・渋谷系・椎名林檎らの功績

evening cinema『CONFESSION』
インタビュー・テキスト
矢島由佳子
撮影:西槇太一

相手に届けるべきだった言葉、届かなかった言葉に「気付く」というのが、一番大切なのではないかなと思っていて。

—言葉でちゃんと「伝える」という行為は、恋愛面とか歌詞を書くときだけでなく、日常生活において人間関係を築くうえで大事だという意識が、原田さんのなかにある?

原田:言葉にしないのは、ある意味傲慢だとも思っていて。もちろん、あれこれ伝えようとした結果、僕らは失敗するし、間違える。どんな人間も語弊を招くときがあるし、どうやって伝えたらいいんだろうって悩むこともある。でも、その葛藤を落とし込みたかったんです。

Robert Indiana『LOVE』と原田夏樹
Robert Indiana『LOVE』と原田夏樹

—歌詞のなかでは、告白したけど上手くいかなかった、というストーリーの描写が多いですよね。極端な聞き方をすると、「あのとき言えばよかった」って後悔するよりも、フラれたとしても気持ちを伝えるほうが大事だと思いますか?

原田:僕は、相手に届けるべきだった言葉、届かなかった言葉とか、どこかに葬られてしまった言葉に「気付く」というのが、一番大切なんじゃないかなと思っていて。失敗したときに、言葉の大切さが分かるし、「あの言い方が悪かった」「あれを言わなかったから伝わらなかったんだ」とかを学ぶじゃないですか。そういうことに気付けるのは、なにか壁にぶち当たったときだから。

告白に限らずですが、言うか言わないかは人それぞれあると思うし、なんでもかんでも言ったら身も蓋もないので、言わないほうがいいこともありますよね。ただ、そういう言えなかったこととか、伝え方を失敗したことに、気付くのか気付かないまま生きていくのかで、だいぶ人生の濃さに差が出てくると思うんですよ。

—なるほど。だから上手くいかなかったときの場面こそ、歌詞になっていく?

原田:根本的なマインドとしてあるのが……困難にぶち当たったり失敗したりすること、すなわち悪、みたいに僕らは思うじゃないですか。でも実は違うんじゃないか、ということで。

困難とか失敗って、向き合いたくないし、生理的に不快だから悪だと捉えてしまうと思うんですけど、それによってなにかに気付けたりすることが自分を一番発展させるものかもしれないから、大切にしたい。そういうことって、普通に暮らしてるだけでは気付けないものに気付かせてくれるトリガーだからこそ、そっちのほうを描きたいと思ってるのかな。

原田夏樹

“流動体について”(小沢健二)もそうですけど、「昔のことを思い出す」というものが、今の自分は特に沁みるんですよね。

—歌詞を書くうえでも、これまでの日本のポップスを聴き返したりしましたか?

原田:歌詞だと、小説とか本のほうが多いかもしれないです。でも、オザケンさん(小沢健二)の歌詞はめっちゃ読みました。そういうところからも影響はあると思いますね。

—具体的に、オザケンさんの歌詞のどういう魅力に改めて気付かされました?

原田:『LIFE』(1994年発売、小沢健二の2枚目のアルバム)は、人生の絶頂の多幸感をこれでもかと押し出した、素晴らしい作品だと思うんですけど、当時のオザケンさんみたいな「イケイケハッピー」の歌詞が、まだ僕には書けなくて。それよりは『LIFE』のなかで一個だけ浮いてるなって思う“いちょう並木のセレナーデ”に、自分のアウトプットにつなげるという意味では、すごく魅力を感じました。

“流動体について”(2017年発表、小沢健二のシングル曲)もそうですけど、「昔のことを思い出す」というものが、今の自分は特に沁みるんですよね。自分の書く歌詞も、「あのときにこうしていれば」と思ったことをもとに作られている気がしていて。

原田夏樹

—原田さんがそうやって昔のことを思い出して綴るのは、前を向くために過去を振り返る行為であるのか、それとも、過去の出来事を忘れないように作品という形で真空パックしておきたいのか、どちらのモチベーションだと言えますか?

原田:前者、ですかね。過去を振り返ることで現在を再確認するというか。そういう作業な気はします。そういう考え方が、歌詞だけじゃなくて、音楽を作る上で全体的にあるのかなって思いますね。

原田夏樹

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リリース情報

evening cinema『CONFESSION』
evening cinema
『CONFESSION』(CD)

2018年2月14日(水)発売
価格:2,916円(税込)
LUCK-3001

1. 告白
2. さよならは今度のために
3. ラストイニング
4. 忘れるまえに
5. サマータイム
6. can't do that
7. make it alright
8. jetcoaster ~ baby, I'm yours ~
9. 原色の街
10. わがまま

プロフィール

evening cinema
evening cinema(いゔにんぐ しねま)

フェイヴァリット・アーティストに大瀧詠一、岡村靖幸、小沢健二を挙げるボーカル兼コンポーザー原田夏樹を中心に結成。80年代ニューミュージックに影響を受けたメロディーセンスと現代の20代男子の瑞々しい感性で90年代初頭のPOPSを現代に再構築するAOR系POPSバンド。無名の新人ながらその作家能力に注目が集まり、2016年7月、1st mini AL『Almost Blue』でCDデビュー。以後他アーティストへの楽曲提供やコラムの執筆等、活動の幅を広げている。

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