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evening cinemaが現代に継ぐ、松本隆・渋谷系・椎名林檎らの功績

evening cinemaが現代に継ぐ、松本隆・渋谷系・椎名林檎らの功績

evening cinema『CONFESSION』
インタビュー・テキスト
矢島由佳子
撮影:西槇太一

恋って、不安定なほうが燃え上がって、安定すると崩壊するという構造を持っているじゃないですか。

—日本語の代表的なラブソングを書いてきた人というと、やっぱり一番には、原田さんがリスペクトとして挙げている松本隆さんが浮かびます。松本さんが1970~80年代に描いた恋愛と、2018年の恋愛って、あり方がそもそも全然違うと思うんですけど、歌詞に滲み出てる恋愛観とか匂いみたいなものは、近いものがあるなと思ったんです。それは、原田さんの考えとして、結局時代が変わっても恋愛の根本は変わらない、という意識があるからなんですかね?

原田:まず、僕がテーマにしてるのは恋であって、愛についてはまだ歌えないんですよね。だから、あくまで恋についてなんですけど……恋の本質的なものとして、不安定なほうが燃え上がって、安定すると崩壊するっていう構造を持っているじゃないですか。

ただ、今はすぐ相手にアクセスできるから、なかなか「困難」というほどの困難が生み出されないんですよね。そんななかで困難を見つけて、歌詞を書いています(笑)。たとえば“さよならは今度のために”では、今って手紙は書かないけど、“木綿のハンカチーフ”(1975年発表、太田裕美の楽曲。歌詞は松本隆)みたいに遠く離れている相手に向けて、本当に手紙を書いているような詞にしてみたりして。

原田夏樹

—歌詞のなかにも<会えない時には手紙でも書くよ 待つよ>と、「手紙」という言葉が出てきますね。

原田:これ、詞先なんですよ。前からあった“jetcoaster”“わがまま”と、“make it alright”以外、今回はすべて詞先なんです。

—松本さんは、はっぴいえんどの全曲含め、ほぼ詞先で作られているそうですね。過去のORICONのインタビューでは、「曲先の作り方しか知らないのは、モノづくりの1/3くらいしか理解していないということで、要するに音楽の作り方を知らない人が主流を占めてしまっているから音楽のマーケットが縮小しているんだと思う」とまでおっしゃっていました。

原田:“木綿のハンカチーフ”も、松本さんが「これに曲は絶対つけられないだろう」って言って筒美(京平)さんに出したら名曲が返ってきたっていうエピソードが大好きで。僕も歌詞に力を入れると決めたからには、詞先でやろうと思ったんです。実際にやってみて、こっちのほうがいいんじゃないかって思いましたね。

原田夏樹

ボーカルのイメージとしてあったのは、椎名林檎さん。

—ボーカル面においても、これまでとかなり変化を感じましたが、誰かをインプットしたりなどありましたか?

原田:歌に関していえば、それこそ僕は岡村ちゃんの大ファンなので、できることなら全部“わがまま”みたいな歌い方をしたかったんです(笑)。でも、曲の性格とかを考えるようになって。イメージとしてあったのは、椎名林檎さんでした。

—それは、どの曲においてですか?

原田:いや、全体を通してですね。彼女の場合、曲によってすごく豹変するじゃないですか。すごく感情的で力強い歌声で歌うものもあれば、一度も熱唱しないで終わる曲もある。「なんでこの歌い分けって生じているんだろう?」と考えたときに、やっぱり曲とどこまで向き合ったかの結果だと思ったんですよね。“さよならは今度のために”とかは、1年前とかにはできなかった歌い方だと思います。

原田夏樹

—椎名林檎という名前が出てくるのは意外でしたが、“原色の街”の巻き舌とかも……。

原田:完全にそうですね(笑)。“原色の街”は、“人生は夢だらけ”(2017年発表、椎名林檎が「かんぽ生命」のCMに提供した楽曲)が頭にありました。Aメロが椎名林檎さんで、サビはSMAP、みたいなざっくりすぎるイメージを葛西(敏彦)さんに伝えて。

—葛西さん(蓮沼執太、トクマルシューゴ、D.A.N.などのエンジニアを手がける)は、今回「共同プロデューサー」という立ち位置で入っていますが、どういう役割分担があったんですか?

原田:葛西さんには、「ただコピーするだけじゃだめだ」ということを作る前からずっと言われていて。どうせやるなら元ネタよりいいものを作りたいのはもちろんなんですけど、そういうものを生み出すためにはなにが必要なのかを考えて、プラスアルファを与えてくれる存在でした。

たとえば“原色の街”でいうと、ビート感的なものとしては「“東京は夜の七時”(1993年発表、ピチカート・ファイヴのシングル曲)みたいにしたいです」って伝えていたんです。実はこの曲、リオ五輪閉会式(椎名林檎がスーパーバイザーと音楽監督を務め、“東京は夜の七時”のアレンジバージョンが起用された)を見て、熱烈に感動してしまって、その影響で書いた曲で。

そうすると、葛西さんは“東京は夜の七時”の元ネタまで掘って、ハウスシーンまで聴いてくれていて。イメージがあっても、それをどうやって音に落とし込むかは技量や知識がないとできないことだから、こればっかりは葛西さんがいないとできなかったなと思います。

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リリース情報

evening cinema『CONFESSION』
evening cinema
『CONFESSION』(CD)

2018年2月14日(水)発売
価格:2,916円(税込)
LUCK-3001

1. 告白
2. さよならは今度のために
3. ラストイニング
4. 忘れるまえに
5. サマータイム
6. can't do that
7. make it alright
8. jetcoaster ~ baby, I'm yours ~
9. 原色の街
10. わがまま

プロフィール

evening cinema
evening cinema(いゔにんぐ しねま)

フェイヴァリット・アーティストに大瀧詠一、岡村靖幸、小沢健二を挙げるボーカル兼コンポーザー原田夏樹を中心に結成。80年代ニューミュージックに影響を受けたメロディーセンスと現代の20代男子の瑞々しい感性で90年代初頭のPOPSを現代に再構築するAOR系POPSバンド。無名の新人ながらその作家能力に注目が集まり、2016年7月、1st mini AL『Almost Blue』でCDデビュー。以後他アーティストへの楽曲提供やコラムの執筆等、活動の幅を広げている。

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