
SAKANAMONは、「ヘンなこと」をやってるから売れないのか?
WIZY- インタビュー・テキスト
- 黒田隆憲
- 撮影:鈴木渉 編集:矢島由佳子、川浦慧
ただ「TENGAとSAKANAMONでふざけたことやってるな」と思われるのは嫌だった。(藤森)
—もうひとつ「ヘンなこと」を挙げると、昨年公開されたTENGAのインタビュー記事は、藤森さんの写真のインパクトなどから、かなりネット上でざわつきましたよね。さらにそのあと、清水監督によるTENGAとのコラボビデオ“DAPPI”が公開されました。この企画はどのように始まったのですか?
藤森:僕たちのマネージャーが、TENGAの方と銭湯仲間だという縁から始まりました(笑)。昨年のインタビューのときに、「来年はSAKANAMON10周年、TENGAのテン=10だし、バッチリじゃないですか!」って盛り上がって。そんなダジャレから、ミュージックビデオ(以下、MV)にまで発展していったんです。ただ「TENGAとSAKANAMONでふざけたことをやってるな」みたいに思われるのは嫌だったので、楽曲はめちゃくちゃかっこよくしたんですよ。
清水:MVに関しても、藤森くんから「TENGAもSAKANAMONもかっこよくしてください」って言われて。そこのバランスは結構考えましたね。というのも、映像まで完璧にかっこよくしすぎてしまうと、突っ込みどころがなくなって逆にかっこ悪くなってしまうと思ったから。
藤森:そこは本当に、すごくいいバランスだなって思いました。TENGAが犬になって走ってきたり、シンセのフレーズに合わせて無数のTENGAが回転したりして(笑)。
—さらにもうひとつの「ヘンなこと」を振り返ると、“TSUMANNE~妄想バージョン~”こそ、藤森さんの特異性というか、変態さが全開になっているMVですよね。
藤森:この曲は、ドラマ『妄想彼女』(フジテレビ系列)の主題歌だったんですけど、彼女がいない男が「彼女がいる設定」で作り込んだ自撮りをSNSに上げるという、『妄想彼女』の元ネタを再現した映像です。自分の手の爪にマニキュアを塗って、それを彼女の手に見立てて乾杯したり、カツラを使って肩寄せ合っている風の写真を撮ったり。カツラが特に気持ち悪いですよね(笑)。実際に撮った画像や動画は、自分のTwitterに投稿もしたんですよ。
今夜も1時間後に「妄想彼女」第2話が放送されますよ!楽しみだー!!
— 藤森元生 (@finemanart) 2015年5月30日
彼女と言えばそうそう!
この間はデートで海に行ったよ!
肩寄せ合って海を見たりして。
こんな幸せがずっと続くといいなぁ。#妄想彼女 #妄想元生 #頭でけぇ pic.twitter.com/yNzdytdcgR
—こういう男の気持ちって理解できます?
藤森:めちゃくちゃわかりますね!(笑) 基本的に僕は、悲しい人、切ない人、卑屈な人、地味な人が好きなんです。頑張ってるのに、いつも報われないような人に共感してしまう。だって、自分も青春なんて一切送ってこなかったですから。きっと、僕みたいにこじらせた人ってたくさんいると思うんですよ。SAKANAMONは、そういう人たちを救えるような音楽でありたいんです。
清水:そうだね。まだSAKANAMONの音楽に巡り会えず、ひとり悶々と悩んでいる人たちにもちゃんと届くような活動を、もっともっとしていかなければならないよね。
ハンディーカメラ1台持って、密着ドキュメントを撮る……みたいなのはすでにたくさんあるから、他との違いを見せたほうがいいのではと。(清水)
—それこそが今回、SAKANAMONデビュー10周年を記念して制作される映画、『SAKANAMON THE MOVIE ~サカナモンは、なぜ売れないのか~』のメインテーマとも言えますよね。
清水:さっきも言いましたけど、これは僕が「SAKANAMON」というフォーマットを使ってやりたかったことを詰め込んだ映像作品です。もちろん、バンドのアニバーサリーは加味しつつ、バンドのファン以外の人にも楽しんでもらえる作品にしたいですね。SAKANAMONの音楽的なかっこよさをきちんと描きながら、メンバー三人の人間としての魅力を浮き彫りにできたらいいなと思っています。
メンバー全員による、映画制作に向けたコメント動画(プロジェクトの詳細を見る)
—フェイクドキュメンタリー仕立てになるそうで、「映画」というよりもバラエティー番組っぽい内容になる感じでしょうか。
清水:フェイクドキュメンタリーにしようという話は、最初の段階から決めていました。ハンディーカメラ1台持って、監督もツアーバスに乗り込んで、粗い映像の密着ドキュメントを撮る……みたいなものは、すでにたくさんあるじゃないですか。だから今回は、SAKANAMONにしかできないことをやって、他との違いを見せたほうがいいのではと。
藤森:フェイクドキュメンタリーとはいえ、「嘘」ではないですよね。いきなり髪を切って染められるメンバーがいたり、滝に打たれたり(笑)。
清水:そんななかで最もフェイクなのは、「SAKANAMONを一旦解散して、新バンドで曲を作ってみる」というコンテンツかな(笑)。「売れるためのバンド」を結成し、そのなかで藤森くんが本気で曲を書いたらどんなものができるのか? っていう。
藤森:これは結構、チャレンジングな企画ですよ(笑)。だって、「本気でかっこいい曲を書こう」と思ったら、それはSAKANAMONの曲になっちゃうし。ある程度、おふざけで「売れる曲」風を狙うのか、でもそんなことしたらダサくならないかな? とか、その辺をちゃんと考えないと、上手くいかない気がする。といいつつ、実はもう曲はだいぶできあがっていて、来月くらいにレコーディングする予定なんです。
—映画自体の撮影も、すでに始まっているのですか?
清水:今クラウドファンディングで資金を募ってるところで、本来なら制作費がいくら使えるかが決まった時点で撮り始めたほうがいいんでしょうけど、実はすでに、あまりお金がかからないところから少しずつ撮り始めています。SAKANAMONのライブ会場へ行って、ファンの声を集めたり。「SAKANAMONは、なぜ売れないのか?」というテーマで聞いて回ったんですけど、面白い答えがたくさん返ってきましたよ(笑)。
—実際、SNSに上がっているSAKANAMONのファンの声には、「こんなにいいバンドなのに、なんでもっと売れないんだろう?」というものが多いですよね。
藤森:そう、よく聞きます。ありがたいですよね。もし自分がファンの立場だったら、「こんなすげえ音楽、どうせその辺のやつなんかにはわかんねえよ」とか、「このバンドのよさは俺だけが知ってる。逆に売れて欲しくない!」みたいな気持ちもないまぜで、「なんで売れないんだろう?」って思うかもしれない(笑)。
プロジェクト情報
- 『バンド結成10周年!SAKANAMONドキュメンタリー映画制作プロジェクト』
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プロジェクト受付期間:2018年5月27日(日)23:59まで
サービス情報

- WIZY
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アーティストがつくりたいもの、ファンがアーティストとしたいこと、みんなの夢が、ひとつでも多く実現できますように。WIZYはそんなみなさんの願いを叶えるプラットフォームです。
リリース情報

- SAKANAMON
『・・・』(CD) -
2018年1月17日(水)発売
価格:2,800円(税込)
TLTO-0081. ロックバンド
2. STOPPER STEPPER
3. 乙女のKANJOU
4. DAVID
5. SYULOVER
6. 凡庸リアライズ
7. テヲフル(・・・MIX)
8. 反照
9. ケーキ売りの女の⼦
10. DAPPI
イベント情報
- SAKANAMON
『延々々』 -
2018年4月5日(木)
会場:香川県 高松 TOONICE2018年4月6日(金)
会場:広島県 Cave-Be2018年4月7日(土)
会場:福岡県 INSA2018年4月13日(金)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn2nd2018年4月15日(日)
会場:北海道 札幌 DUCE2018年4月20日(金)
会場:愛知県 名古屋 クラブクアトロ2018年4月21日(土)
会場:大阪府 梅田 BananaHall2018年4月26日(木)
会場:新潟県 GOLDEN PIGS BLACK2018年4月27日(金)
会場:石川県 金沢 vanvan V42018年5月19日(土)
会場:東京都 Zepp Tokyo
プロフィール

- SAKANAMON(さかなもん)
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「聴く人の生活の“肴”になるような音楽を作りたい」という願いを込めて“SAKANAMON”と命名。2009年より現在の編成で都内を中心に活動開始した、藤森元生(Vo,Gt)、森野光晴(Ba)、木村浩大(Dr)の3ピースギターロックバンド。2012年12月5日、フルアルバム『na』でメジャーデビュー。2017年5月10日にshibuya eggmanのレーベルである「murffin discs」内に発足した新ロックレーベル「TALTO」よりニューミニアルバム『cue』(読み:キュー)をリリース。日本語の解体と再構築を自由自在に繰り返し紡ぎ出す独特のシュールな歌詞世界に、中毒性の高いポップなメロディーはまさに“肴者世界”。“サカなもん”という摩訶不不思議なマスコットキャラクターを従え独特のライブパフォーマンスを展開中。

- 清水康彦(しみず やすひこ)
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1981年生まれ。福井県出身。2001年映像ディレクターとして活動開始。ミュージックビデオを多数演出。2015年ロボット所属。映像ディレクター・プランナー・脚本家など、活動は多岐にわたる。<広告>楽天、三菱電機、エアウィーヴ、サイバーエージェント、Anecan、IKEA、シチズン、コカ・コーラ、サッポロ、モッズヘアなど。<MV>金子ノブアキ、平井堅、安室奈美恵、嵐、美川憲一、川本真琴、KinKi Kids、GLAY、KREVA、桑田佳祐、コーネリアス、斉藤和義、佐々木希、Superfly、ポルノグラフティ、マキシマムザホルモンなど。