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未来の家電を考える。SXSWで起こっている新しいもの作りの兆し

未来の家電を考える。SXSWで起こっている新しいもの作りの兆し

パナソニック「Game Changer Catapult」
インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

大手企業から生まれた「未来の家電」創出プロジェクトは何を目指しているのか?

Game Changer Catapultのオフィス内の黒板になっている壁面はイラストやメッセージで溢れ、カジュアルな雰囲気。中には「Unlearn and Hack」(先入観を捨て、ハックせよ)というフレーズも見える。スポーツなどで途中交代して試合を一気に変えてしまう選手を「ゲームチェンジャー」ということから、変革をもたらす人やものもそう呼ばれることがある。その発射台=カタパルトとなるのが彼らの目標だ。

鈴木:Game Changer Catapultが目指すことのひとつに、五感にまつわる体験の再定義があります。たとえば映像を見る / 音楽を聴く行為は、デジタル化を機に大きく変化しました。残る味覚、嗅覚、触覚にもそうした可能性はあって、さらに五感の組み合わせで一人ひとりに合った楽しみ方ができるのではないか? 今回『SXSW』で提案したものの中には、料理にまつわるアイデアや、体調や予定に合わせた香りで部屋を満たしてくれる「Aromation」などがありました。

左から:真鍋馨、鈴木講介
左から:真鍋馨、鈴木講介

香りと音楽の新たな体験を提供する「Aromation」。会場ではノブを置く場所によって音楽やリズムが変わるインタラクティブテーブルを展示した。
香りと音楽の新たな体験を提供する「Aromation」。会場ではノブを置く場所によって音楽やリズムが変わるインタラクティブテーブルを展示した。

また、パナソニックは従来も化粧品会社やMITメディアラボのような異領域と交流・協働してきた経緯があり、これを活かした「知の組み合わせ」による創造も、より進めたいという。

鈴木:簡単に言えば、多様な新テクノロジーを、家電でどう使えるかには常にチャレンジしていきたい。これは入山章栄先生(早稲田大学ビジネススクール准教授)に教えて頂いたのですが、イノベーションには自分たちに馴染みのない未開の領域に飛び込む「知の探索」と、ひとつの領域を深める「知の深化」の両軸が必要です。だとすれば我々も「深化」だけでなく、外の世界への「探索」に飛び込んで、新たな組み合わせのチャンスを見つけていきたいと考えています。

たとえば、ブロックチェーンはまだ仮想通貨のための技術というイメージが強いと思いますが、コミュニティーデザインや、シェアハウス、食べ物交換などのライフスタイルにも応用可能かもしれない。『SXSW』でもそうしたアイデアを示すと、お客さんから「僕はクリーニング店をやってるんだけど、ブロックチェーンって何か取り入れられるかな?」なんて話しかけられたりもする。『SXSW』ではそうした様々な方からの反応も、刺激になりました。

左から:鈴木講介、真鍋馨

新規事業には、社員なら誰でも応募可能。担当業務も関係ない

2016年に立ち上げたGame Changer Catapultは、社員を対象に新規事業を公募する試みを始めた。毎年、募集を通じて優れた案を選考、これを通過したプロジェクトには予算がつき、社のサポートを得て実現性を探る仕組みだ。

社員なら誰でも応募ができ、担当業務内容との関係も問わない。たとえば開発系ではない社員による、固いものを食べられない母の介護を通じて発想した「料理の見た目と味はほぼそのままに、柔らかくする調理家電」といったアイデアなどもある。

さらに、プロジェクトチームに社外の人材を引き込むこともOK。イベント的な社内コンテストではなく継続的な仕組みにしたのは、「イノベーションの土壌」を育てることを重視した結果だという。そして、審査を勝ち抜いたプロジェクトは、『SXSW』出展のチャンスを得ることになる。

「DeliSofter」介護体験から発案された料理を柔らかくする調理家電。開発担当ではない社員から発案された
「DeliSofter」介護体験から発案された料理を柔らかくする調理家電。開発担当ではない社員から発案された

事業性検討会の様子
事業性検討会の様子

Game Changer Catapultは何をゲームチェンジする?

大企業らしからぬ新しい挑戦が形になったとき、大企業として培ってきた様々なものがそれを支える強靭な力にもなる。2人の言葉からは、そんな自負も感じられる。最後に、彼らが究極的に何を「ゲームチェンジ」したいのか? それぞれの想いを聞いた。

鈴木:私の考えとしては、大きくは2つですね。ひとつは、大量生産、大量消費という形から、ユーザーの方々が自分に合わせて選択のできる暮らし方への変化です。そこにはユーザーと作り手、双方の変化が必要でしょう。

鈴木講介

鈴木:もうひとつは、働き方や企業活動のあり方という点です。たとえば最初の就職先で定年まで勤め上げるという働き方だけでなく、企業は人材が出たり入ったりする場でも良いのではと。中途採用や外部との連携などもそうですし、一度退社しても、プロジェクトによってはまた復帰する人も実際にいます。そのあたりがよりフレキシブルになれば良いなと、私は思っています。

真鍋:これまで家電メーカーが「こんな便利なものはいかがですか?」と「モノ」を提案し続けてきた中で、これからは必ずしも「モノ」だけでなく、「コト」起点でユーザーの願いに応えることがより増えていって良いと思います。もちろん必要なときは「モノ」を用意すれば良いのですが、それだけにこだわる必要はないでしょう。そして、自分たち自身がそういう存在になれたらと考えています。

パナソニックの祖、松下幸之助はこんな言葉を残している。

とにかく考えてみること、工夫してみること、そしてやってみること。 失敗すればやり直せばいい。(中略)やってみれば、そこに新しい工夫の道もつく。
(『松下幸之助 成功の金言365』2010年刊、PHP研究所)

創業者のこの言葉は、冒頭で紹介したGame Changer Catapultのスローガン「Unlearn and Hack」に受け継がれているのだろう。もちろん、失敗も、やり直しも、そう簡単にはできないご時世だが、それを恐れず「発射台」を作り始めた彼らのこれからと、そこから生まれる「未来の家電」に期待したい。

左から:真鍋馨、鈴木講介

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プロジェクト情報

Game Changer Catapult

パナソニック アプライアンス社による企業内アクセラレーター。より新しい生活文化や心躍る体験を実現する、未来の「カデン」を生み出すため、今までとは違うスピード感で、ゲームチェンジャーたちの挑戦が始まっています。

イベント情報

『SXSW 2018』

インタラクティブフェスティバル
2018年3月10日(土)~3月13日(火)

プロフィール

鈴木講介(すずき こうすけ)

2003年にパナソニックへ入社し、BtoBソリューション営業でキャリアを開始。2010~2011年米国社費留学を経て、家電事業の経営企画を担当。主な業務は、中期計画・事業計画立案、新規事業創出プロジェクト推進、M&A、IR等。経済産業省主催のグローバル企業家育成プログラム「始動 Next Innovator」第一期生。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。ミシガン大学Ross School of Business経営学修士。

真鍋馨(まなべ かおる)

2003年にパナソニック株式会社へ入社。乾電池事業部にて購買・調達を担当。2008~2009年英国社費留学後、コーポレート戦略本部経営企画部にて、グローバル経営体制構築・M&Aを推進。2015年に冷蔵庫事業部経営企画部課長。2016年から「Game Changer Catapult」の立上げに従事。現在は事業開発総括として新規事業開発を推進。大阪大学大学院基礎工学研究科修了。ケンブリッジ大学経営学修士(MBA)

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