インタビュー

mabanuaがプロデューサー視点で語る、「流行」を無視すべき理由

mabanuaがプロデューサー視点で語る、「流行」を無視すべき理由

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:池野詩織 編集:山元翔一
mabanua

ゴッチさんの知恵を拝借できるんだったらこれ以上のことはないなと。

—そんなアルバムのなかに、ゴッチさん(ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文。ソロ名義はGotch)が作詞をした“Heartbreak at Dawn”も収録されていますね。

mabanua:ゴッチさんのソロの2ndアルバム(2016年リリースの『Good New Times』)ってほとんど英語じゃないですか。1stアルバム(2014年リリースの『Can't Be Forever Young』)は全部日本語で歌っていたのに。だから自分と逆なんですよね。もともと日本語で歌ってたゴッチさんが最近英語で歌いはじめて、英語で歌っていた俺は最近日本語で歌いはじめた。

そういうこともあって、ゴッチさんには作詞を依頼しました。あの人は英語と日本語のメリットとデメリットをすごく把握しているし、もともとASIAN KUNG-FU GENERATIONで養ってきたあの歌詞力があるわけで。その知恵を拝借できるんだったらこれ以上のことはないなと思って。

Gotch『Can't Be Forever Young』を聴く(Apple Musicはこちら mabanuaがドラムで参加したGotch『Good New Times』を聴く(Apple Musicはこちら

—もともと日本語に対するこだわりがすごい人ですもんね。

mabanua:そうですね。あとうちの奥さんが、英語で歌った自分の曲より、日本語で歌ってるゴッチさんの曲を気に入ってるんです。「“Can't Be Forever Young”の歌詞がすごくいい」みたいなこと言われると、「そっか、じゃあ俺も日本語で歌うか」ってなって(笑)。直接的な内容を日本語で書くのは嫌だけど、少なくとも、自分の奥さんをそういう気持ちにさせるような歌詞をちょっとでもいいから書きたいなと(笑)。

—いい話ですね。まさに、パーソナルな側面が出てる(笑)。

mabanua:そうです、そうです。世間の流行りじゃなくて、うちの奥さんの流行り(笑)。

mabanua

安全牌でいくほうが楽だし、安心じゃないですか。でも、こういう時代だからこそ、逆にそれはしちゃいけない。

—最後に、ソロアーティスト、プロデューサー、バンドマンなど、様々な顔を持つmabanuaさんから見た、これからの音楽家にとって重要だと思うことを話していただけますか?

mabanua:やっぱり、アーティストの意思が見えないものはよくないと思います。ポップミュージックになればなるほど、売れれば売れるほど、いろんな人の意見や想いが入り込むわけじゃないですか? そうすると、アーティストのやりたいこと、作品としてあるべき姿というのが薄れていくような気がする。

mabanua

mabanua:でも今、メジャーなフィールドで生き残れているアーティストは、自分のやりたいことを明確に具現化できている人だと思うんです。サカナクションの山口一郎さんとか、椎名林檎さんとか、ゴッチさんもそう。そういう人じゃないと、たぶん2~3年で契約を切られて終わっちゃう。そういう意味でも、何がしたいのかがはっきりわかるようにしたほうがいいと思います。

去年、RHYMESTERのプロデュースをやったときに、宇多丸さんが「RHYMESTERはアルバムを出すごとに、半分のファンがいなくなる。でも、いなくなった分だけ新しいファンがつくんだよね」と言っていて、それってかっこいいなあと。まさにそれが、「自分たちのやりたいことを優先させる」ということなのかなって思ったんです。

mabanuaがボーカル・プロデュースで参加したRHYMESTER『ダンサブル』収録曲

mabanua:結局、流行りとか周りからの要望に合わせて作っていくと、それ以上のものはできない。それは音楽に限らないと思うんです。メディアにしても、「こんな人を取り上げるの?」とか「こんな視点で捉えるなんて今まで想像できなかった」みたいなもののほうが、書いている側も読む側もワクワクするし、「次どんな記事を出してくるんだろう?」って思われたほうがきっといいじゃないですか?

—そうですね。メディアの話にとどまらず、あらゆることに通じる話だと思います。

mabanua:みんなリスクを恐れるというか、安全牌でいくほうが楽だし、安心じゃないですか。でも、こういう時代だからこそ、逆にそれはしちゃいけない。

mabanua

mabanua:今回のアルバムを作るのも辛かったんですけど、そういう苦しみや不安の上に、新しい面白いものができると思っているんです。きっと、1stアルバム(2008年リリースの『done already』)みたいにずっとヒップホップのアルバムだけを作っていたら、今の自分はいないんじゃないかな。ファーストを聴いてくれた人のなかには、2ndアルバムを聴いてがっかりした人もいるとは思うんです。でも、セカンドを作ったことで広がったもののほうがむしろ大きかった。

だから、結論としては、自分がそのときにやりたいものをやればいいっていうだけの話なのかなと思います。だって、「この6年のプロデュースで培った大衆性を今回のアルバムに盛り込んでみました!」なんて言われても、そんな音楽、絶対聴きたくないと思うんですよね。

mabanua
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リリース情報

mabanua『Blurred』限定盤
mabanua
『Blurred』限定盤(2CD)

2018年8月29日(水)発売
価格:3,240円(税込)
OPCA-1039

[DISC 1]
1. Intro
2. Blurred
3. Heartbreak at Dawn
4. Night Fog feat. Achico
5. Fade Away
6. Overlap
7. Cold Breath
8. Tangled Up
9. Call on Me feat. Chara
10. Scent
11. Imprint
[DISC 2]
DISC 1のインストゥールメンタルバージョンを収録

mabanua『Blurred』通常盤(CD)
mabanua
『Blurred』通常盤(CD)

2018年8月29日(水)発売
価格:2,700円(税込)
OPCA-1038

1. Intro
2. Blurred
3. Heartbreak at Dawn
4. Night Fog feat. Achico
5. Fade Away
6. Overlap
7. Cold Breath
8. Tangled Up
9. Call on Me feat. Chara
10. Scent
11. Imprint

イベント情報

『mabanua tour 2018“Blurred”』

2018年11月1日(木)
会場:福岡県 BEAT STATION

2018年11月14日(水)
会場:東京都 渋谷 WWW X

2018年12月14日(金)
会場:大阪府 心斎橋 CONPASS

料金:各公演4,000円

プロフィール

mabanua
mabanua(まばぬあ)

日本人ドラマー、プロデューサー、シンガー。ブラック・ミュージックのフィルターを通しながらもジャンルに捉われないアプローチで全ての楽器を自ら演奏し、国内外のアーティストとコラボして作り上げたアルバムが世界各国で話題に。また、プロデューサーとして100曲以上の楽曲を手がけ、多数のCM楽曲や映画、ドラマ、アニメの劇伴も担当。またToro Y Moi、Chet Faker、Madlib、Thundercatなど海外アーティストとも多数共演。さらに、Shingo Suzuki、関口シンゴとのバンド “Ovall” としても活動し、大型フェスの常連となる。また、ビートメイカー・Budamunkとのユニット「Green Butter」、タブラ奏者・U-zhaanと共に「U-zhaan × mabanua」、ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文のソロプロジェクト「Gotch BAND」のメンバーとしても活動中。

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