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Jamiroquaiが、Suchmosやブルーノ・マーズらに与えた影響とは?

ユニバーサルミュージック
テキスト
宇野維正
編集:矢島由佳子
2017/03/30
Jamiroquaiが、Suchmosやブルーノ・マーズらに与えた影響とは?

「アシッドジャズ」と名付けられたシーンが生まれるまで

1992年の秋に『When You Gonna Learn』でJamiroquaiがデビューした時のインパクトを正確に伝えるのは、なかなか難しい。当時毎晩のようにクラブで遊んでいたような人間にとって、彼らの音楽とその存在感はあまりにも「異物」であり、その「異物」感によって誰もが夢中にならずにはいられない強烈な磁力を発していた。

80年代末に英国の音楽シーン全体を覆ったアシッドハウスと呼ばれるダンスミュージックのムーブメントの肝は、「スターの否定」と「メッセージの否定」にあった。アンダーグラウンドのシーンからは、誰がやっているのか顔さえわからないインストゥルメンタル主体の匿名的なブレイクビーツテクノやハウスミュージックが次々と生まれ、毎月のようにクラブのダンスフロアで新たなトレンドを作っていた。その一方で、以前から英国のDJの間で起こっていた60~70年代のソウル、ファンクを中心とするブラックミュージックの発掘・再発見の運動=レアグルーヴのムーブメントからも、DJを中心とするSoul II SoulやMassive Attackといったグループが頭角を現して、アシッドハウス以降の時代の流れとも歩調を合わせるように、メインストリームのヒットチャートを賑わすようにもなっていた。

1989年発表

1991年発表

そんな時代に、アシッドハウスとレアグルーヴが交差した場所に生まれたのがアシッドジャズと呼ばれる新しいシーンで、そこに彗星のように登場したのがJamiroquaiだった。Jamiroquaiの中心人物であるジェイ・ケイは、「スターの否定」の時代にあってパントマイムやブレイクダンスをアレンジした独自のダンス、ネイティブアメリカンをモチーフとした奇異なファッション、アボリジニの伝統楽器であるディジュリドゥの耳慣れない音色といった脈略のない要素をブレンドして、強烈なスター性を放っていた。また、環境問題の視点から地球の危機を告発したその歌詞や発言も、「メッセージの否定」の時代の真逆をいくものであった。

その後Jamiroquaiは、世界的ポップスターの地位へと駆け上がっていった

Jamiroquaiを世に送り出したのがジャイルス・ピーターソンとエディー・ピラー(両者ともアシッドジャズシーンのキーマン的なDJだった)が設立したその名もACID JAZZ RECORDSであったこと、そして「スティーヴィー・ワンダー」イズムとでも呼ぶべき音楽的嗜好を同じシーンのバンドたちと共有していたこと、それらによって当初Jamiroquaiはアシッドジャズシーンを代表する存在とされていた。しかし、Jamiroquaiの音楽のポップミュージックとしてのポテンシャル、そして稀代のトリックスター=ジェイ・ケイの野心は、最初からそんな狭いシーンに収まるものではなかった。

ヨーロッパや日本ではデビューの翌年、1993年に1stアルバム『Emergency on Planet Earth』をリリースした時点でいきなりブレイクしたJamiroquaiだが、1996年にリリースした3rdアルバム『Travelling Without Moving』で遂にアメリカでも大ブレイク。同作は全世界で1150万枚以上を売り上げ、結果的にJamiroquaiは90年代の英国音楽シーンが生み出した最大のポップスターとなった。

Jamiroquai『Travelling Without Moving』収録曲

Suchmos、Maroon 5、ブルーノ・マーズら、次世代に受け継がれている「Jamiroquai」感

2002年にMaroon 5がブレイクした時には、世界中で「まるでJamiroquaiみたいな音楽をやってるバンドだ」と声があがった。昨年、日本でもSuchmosをめぐって同じような言説が多く見られた。言うまでもなくMaroon 5とSuchmosは、世代的にもその文化背景的にもまったくタイプの違うバンドだが、Jamiroquaiの音楽はまるでプリズムに反射した光のように、そうして様々な国の様々なミュージシャンに現在も影響を与え続けている。

ジャスティン・ティンバーレイク、ブルーノ・マーズ、THE WEEKNDといった現在のアメリカやカナダを代表する男性ポップスターにとっても、音楽的な影響のみならず、ステージ上での立ち居振る舞い、あるいはスーパーカーを偏愛しコレクションしそれをミュージックビデオでひけらかすことに象徴される不遜なライフスタイルなどなど、ジェイ・ケイからの直接的、間接的に受けた様々な影響を見てとることができる。

しかし、Jamiroquaiは「異物」だ。7年ぶりの新作で再確認

そんなJamiroquaiがリリースする7年ぶりのアルバム『Automaton』。今年1月末に解禁されたタイトルトラック“Automaton”のミュージックビデオで電気仕掛けの奇怪な帽子をかぶって踊るジェイ・ケイのインパクトは、まるでデビュー当時の「異物」感を思い出させてくれるものだった。アルバム『Automaton』全編を貫いているのも、そのタイトルが意味するところの「自動人形」にも通じる「電気仕掛けのJamiroquai」感。明確にエレクトロファンクを標榜している点では時代ともリンクしているが、バンドのメンバーが変わっても不変のあの有機的で生々しいブギー感は今作においても健在で、結果、やはり他に替えの効かない「異物」としての独自のグルーヴミュージックを生み出している。

思えば、ポップミュージックのスーパースターたちがほとんど例外なく互いの作品でコラボレーションやフィーチャリングを繰り返して音楽シーンを活性化させているこの時代にあって、デビュー以来、自分のバンドの外でほとんど誰とも音楽的に交わってこなかったジェイ・ケイ(唯一の共作曲は1996年に発表したM-Beatとのドラムンベース曲“Do You Know Where You're Coming From?”)は、現在も強固なまでに「異物」であり続けている。ソウル、ファンク、ジャズ、ハウス、ロック、同時代のエレクトロニックミュージック……Jamiroquaiの音楽にあらゆる音楽の血が今もドクドクと流れ込んでいるにもかかわらず、それが「Jamiroquaiの身体」を通った瞬間、Jamiroquai以外の何ものでもない音楽となっていく。活動初期は天邪鬼な発言やゴージャスなライフスタイルからその「軽薄さ」を批判されることもあったジェイ・ケイだが、「2017年のJamiroquai」を体験した今、彼にそんな言葉を投げかける者はもう誰もいないだろう。

リリース情報

Jamiroquai『AUTOMATON』日本盤
Jamiroquai
『AUTOMATON』日本盤(CD)

2017年3月31日(金)発売
価格:2,700円(税込)
UICW-10011

1. Shake It On
2. Automaton
3. Cloud 9
4. Superfresh
5. Hot Property
6. Something About You
7. Summer Girl
8. Nights Out In The Jungle
9. Dr Buzz
10. We Can Do It
11. Vitamin
12. Carla
13. Nice And Spicy(ボーナストラック)

イベント情報

『Jamiroquai来日公演』

2017年5月24日(水)
会場:東京都 お台場 Zepp DiverCity Tokyo

2017年5月25日(木)
会場:東京都 有楽町 東京国際フォーラム ホールA

プロフィール

Jamiroquai
Jamiroquai(じゃみろくわい)

デビューアルバムを発売して以来、地球上で最も成功したバンドとして、1992年に結成されたJamiroquai。Chance the Rapper、Black Madonna、Anderson .Paak、ファレル・ウィリアムスやスティーヴィー・ワンダーなど著名なアーティストのファンも多く、着実に最も影響力のあるバンドとしてその実力が証明されてきた。これまでにリリースされた7つのアルバムは、全て全英チャートTOP10に入り、その内3枚のアルバムは1位を獲得している。さらにグラミー賞を受賞したバンドとして世界中で2,600万枚以上のセールスを記録し、最も売れたファンクアルバムというギネス記録も持っている。

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