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台湾の音楽シーンが多様な理由 台湾インディーの番長が希望を語る

台湾の音楽シーンが多様な理由 台湾インディーの番長が希望を語る

『TAIWAN PLUS 2018 文化台湾』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
通訳:池田リリィ茜藍 撮影:豊島望 編集:木村直大

今からおよそ30年前に戒厳令が解除され、欧米や日本の影響を受けつつ独自の進化を遂げてきた台湾ミュージック。日本の九州とほぼ同じ大きさの島国に暮らす数多くの民族たちが、自らのアイデンティティーを投影させたそのサウンドは今、アジアはもちろん世界中から大きな注目を集めている。

そんな台湾の音楽や、カルチャーを「体験」できる入場無料のイベント『TAIWAN PLUS 2018 文化台湾』が9月22日、23日に東京・上野の上野恩賜公園で開催される。

国内外に向けて台湾文化を紹介している「中華文化総会」が手掛けるこのイベントでは、マーケットと音楽イベントを同時開催。音楽イベントでは、「台湾一周旅行」というコンセプトのもと、台湾全土から各地域を代表する6組のアーティストが出演。出演者全員が台湾の音楽賞『ゴールデン・メロディ・アワード』の受賞者であり、台湾に混在する様々な民族の、一流の演奏を東京で堪能できる絶好の機会だ。

そこで今回CINRA.NETでは、台湾の音楽レーベル「角頭音樂(Taiwan Colors Music)」を主宰する張四十三(チョウ・スーサン)にインタビュー。Maydayをはじめ数多くのアーティストを発掘したほか、台湾最大の音楽イベント『Ho-Hai-Yan Music Festival貢寮国際海洋音楽祭』を手がけるなど、台湾ミュージックの発展に大きく貢献してきた彼に、台湾ミュージックシーンの「今」を訊いた。

貧しい環境で育ったから、The Beatlesすら知らなかった。ロックの洗礼を受けたのは高校生になってからなんです。

—まずは、チョウさんが「角頭音樂(Taiwan Colors Music)」(以下、角頭音楽)を立ち上げた経緯を教えてください。

チョウ:実を言うと、最初は映像業界へ進みたかったんですよ。台湾には兵役があって、全ての台湾男性は兵役を終えた後に職業をどうするか考えるのですが、私は映画に関わる業種、例えば脚本や撮影、映画音楽に携わる仕事を探していました。しかし、1990年代半ばの映画業界は大変不景気で就職が難しかったし、テレビ業界は仕事が忙し過ぎて「自分には向いてない」と思ったんですね。

そんな中、「レーベルを運営してCDをリリースする」というのは、わりかし現実的に思えたんです。当時はCDの売り上げも上々でしたし、「どうせ起業するなら、勝算があるものにしたい」と。そうした取捨選択の中で、音楽業界に絞っていきました。

張四十三(チョウ・スーサン)
張四十三(チョウ・スーサン)

—なるほど。純粋に「音楽が好き」ということだけではなく、ビジネス的な観点からも選んだと。

チョウ:起業する前に、まずは業界の仕組みを知るためメインストリームの音楽に携わりました。でも、どうしてもその環境に馴染めなくて。

—というのは?

チョウ:メジャー業界というのは自分が生まれ育った土地との関係性が希薄で、感情や思い入れも浅いんですね。自分のやりたいことともかなり違いましたし、数年でそこを辞めました。その後たくさんお金を借りて、自分が本当に発信したい音楽のために角頭音楽を作ったというわけです。

—角頭音楽の「角頭」というのは「ヤクザもん」という意味なのだとか(笑)。

チョウ:私の住む雲林(台湾の中部に位置する県)は、チンピラやヤクザが多い貧しい農林地域でした。親戚にもヤクザは何人かいますし、身近な存在だったんです。貧しい環境で育ったから、同世代の人たちと違ってThe Beatlesやジョン・レノンすら知らなかった。ラジオから流れてくる中国の音楽くらいしか聴いたことがなく、ロックの洗礼を受けたのは高校生になってからなんですよね。

ただ、何もない環境で育ったからこそ、自分で自分の状況を打破する術を身につけたともいえます。過去のしがらみにとらわれない発想ができるようになったのも、そうした環境のおかげかもしれません。

張四十三(チョウ・スーサン)

台湾のインディーズは、親世代やメジャーには全く理解されず、「どうせあいつらは麻薬常習者だ」といった偏見もまかり通っていました。

—角頭音楽を立ち上げる上で、何か参考にしたレーベルなどはありましたか?

チョウ:私が大学生だった頃にとても影響を受けていたのが、Crystalという台湾国内のインディーレーベルでした。メジャーに比べて資本力もないし知名度も決して高くないのですが、当時の若者に与えた影響力はメジャーレーベル以上でした。残念ながらもう倒産してしまったのですが、自分が角頭音楽を立ち上げたのは「Crystalの後を引き継ぎたい」という気持ちも強くありましたね。

—その頃のインディーシーンはどのような状況だったのですか?

チョウ:1990年代半ばはインディーレーベルよりも、ラジオ局が大きな影響を持っていました。それ以前のラジオ局は全て政府の管轄下で運営されたものだったのですが、この頃になると民間で非合法にラジオ局を開設する動きが活発になってきました。商業的なプレッシャーなく、自分たちが作りたい番組を作り、流したい音楽を勝手に流していたんです。

張四十三(チョウ・スーサン)

チョウ:実は私も、メジャーレーベルを辞めた当初は、こうしたアングラなラジオ局でボランティアをしていたんです。後に正式なスタッフとなり、そのラジオ局を合法化させました。政府もそういった民間のムーブメントを、無視できなくなっていたんですね。今の台湾人なら誰でも知っている『News98』なども、その時に作られた番組です。

—そうしたラジオ局から流れる音楽が、シーンを形成していったというわけですね。

チョウ:ちょうど台湾の戒厳令(1948年から1987年まで、政治活動や言論の自由が厳しく制限されていた)が解かれた時期でもあり、若者たちはバンドを組んで、自分たちの伝えたいメッセージを歌うようになりました。台湾のインディーズは、政治と切っても切り離せない関係があります。

最初の頃は、彼らの親世代やメジャーシーンには全く理解されず、「どうせあいつらは麻薬常習者だ」といった偏見もまかり通っていましたが、それも徐々に払拭されていきます。音楽の楽しみ方も「レストランで食事をしながら音楽を聴く」というスタイルから、「ライブハウスで酒を飲みながら音楽を聴く」という具合に変わっていきました。

張四十三(チョウ・スーサン)
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イベント情報

『TAIWAN PLUS 2018 文化台湾』
『TAIWAN PLUS 2018 文化台湾』

2018年9月22日(土)、9月23日(日・祝)

会場:東京都 上野 上野恩賜公園

出演:
阿爆
黃連煜
女孩與機器人
桑布伊
謝銘祐
陳建年
and more

出店:
富錦樹FUJIN TREE
地衣荒物Earthing Way
+10・加拾
蘑菇MOGU
印花樂 inBlooom
and more
料金:無料

プロフィール

張四十三(ちょう すーさん)

本名は張議平(チョウイーピーン)、角頭音楽のレーベルオーナー。『TAIWAN PLUS 2018』の出演アーティスト陳健年、紀曉君や、五月天(Mayday)などの人気アーティストを発掘、大きく飛躍させてきた。台湾最大の音楽イベント『Ho-Hai-Yan Music Festival貢寮国際海洋音楽祭』をスタート、張四十三氏は、台湾インディーズシーンの番長である。角頭音楽に所属するミュージシャンは、一般的なメジャーレーベルのようなスーパースターと異なり、台湾本島の各地で活動しているインディペンデントなミュージシャンで、音楽には純粋で豊富なパワーが満ちている。

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