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ミヤケマイ×石井美加対談 アートが誘うホリスティックな美の体験

ミヤケマイ×石井美加対談 アートが誘うホリスティックな美の体験

資生堂
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:川浦慧 撮影協力:SHISEIDO THE TABLES

資生堂の「資生」は、中国の古典『易経』の一節、「至哉坤元 萬物資生(万物の根源は、大地から至る)」に由来している。自然の循環は、エコロジーを整え、ある調和、ある美を世界と人にもたらす。この思想を根幹に置くからこそ、資生堂は化粧品やアート、カルチャーを通した活動を続けてきたのだろう。

今年1月にリニューアルオープンした資生堂のフラッグシップストア「SHISEIDO THE STORE」。その4階にあるカフェ&コミュニティースペース「SHISEIDO THE TABLES」では、日本の生活文化や東洋的な思想を大切にした活動を展開しているという。同スペースのプロデュースに関わる資生堂の石井美加、そしてここでアートディレクション協力に携わる美術家、ミヤケマイに話を聞いた。

若い人は、望んでいない自分として生きることに苦しんでいる。(ミヤケ)

—ミヤケさんと石井さんは、仲が良さそうにお見受けいたします。

ミヤケ:はい(笑)。でも、子どもの頃からの同級生、とかではないんです。2016年に(石井)美加さんが企画された『LINK OF LIFE エイジングは未来だ』展に出品したのが本格的な付き合いの始まりです。

石井:それ以前から(ミヤケ)マイさんの作品は何度も拝見していて、いつかご一緒したいと思っていました。仕事がら日本やアジアならではの表現って何なのだろう、と考えることが多いのですが、マイさんは襖絵、掛け軸といった和の世界を扱いながら、テーマへのアプローチも制作手法も常に進化しているし、新作ごとに違う驚きを受けます。その姿勢から学ぶ物事は、本当に多いです。

左から:ミヤケマイ、石井美加
左から:ミヤケマイ、石井美加

—『LINK OF LIFE エイジングは未来だ』展では、『真実の鏡』というタイトルの作品を発表なさっていました。

『LINK OF LIFE エイジングは未来だ』展で展示した作品『真実の鏡』
『LINK OF LIFE エイジングは未来だ』展で展示した作品『真実の鏡』

ミヤケ:作家と資生堂の研究者がチームを組み、それぞれに「サクセスフル・エイジング」をテーマにしたプロジェクト・作品を作ろう、という展覧会だったんですよ。

「よりよく年齢を重ねる」と聞いたときに私が思い浮かべたのは「自己受容性」という言葉でした。若い頃って、肌もキレイで、未来もあって、親元に暮らしている人であればお金にもそう苦労はしないのに、なぜか生きることにしんどさを感じる人が多い。私は、その理由のひとつが「自己受容性の低さ」なのではという仮説を立てました。

—というと?

ミヤケ:つまり、若いと自分はこうあるべきだ、こうなるはずだという親や友人からの同調圧力にかかりやすくて、自分が望んでいない自分として生きることに苦しみを感じている。もちろん歳をとれば肌は荒れてくるし、モテなくなってきたりして、好ましくないことも多くなる(苦笑)。

でも一方で、人生の先輩方は「40代はラクよ。50代って楽しいわよ」とおっしゃる。だとすれば、自分を取り巻いているいろんな呪縛から解放され、本来の自分を認められる、受容できるようになることは幸せなことなのでは、と思ったんです。

ミヤケマイ
ミヤケマイ

—「真実の鏡」と言えば、童話『白雪姫』の魔法の鏡ですね。物語の中で、女王は自分が年老いていくことに恐怖を抱いていました。

ミヤケ:まさに、それです。作品について説明すると、まず展示空間に大きな鏡があって、そこに知らない人の姿が映っています。鏡の前に置かれたPCに向かって、体験者は鏡の中に映る人について「結婚していると思いますか?」「子どもがいるとしたら何人いると思いますか?」「何色のパンツを履いていると思いますか?」といった50くらいの質問に回答します。

それを終えて先に進んでいくと、また別の鏡がある。じつはそこにカメラが隠されていて、体験者がにこっと笑った瞬間に人工知能が察知しシャッターがおりる仕掛けになっている。

『LINK OF LIFE エイジングは未来だ』展で展示した作品『真実の鏡』
『LINK OF LIFE エイジングは未来だ』展で展示した作品『真実の鏡』

—その写真はもしかして、最初の鏡に映っていた人ということですか?

ミヤケ:そうです。そして知らず知らずジャッジする側から他人にジャッジを下される側にまわっている。その査定結果に対して、後から自分で「合っている」「合っていない」を判定していくことで、自他の認識の隔たりが明らかになる。

それに応じてステッカーをもらえるようになっていて、衣服に貼って会場を歩いていると、来場者同士で会話やアイコンタクトといったコミュニケーションが生まれる仕組みにしました。客観性はコミュニケーション無しには存在し得ないので。この他に、自分の特徴によって異なる香りが吹き付けられた封筒に結果を入れお土産として持ち帰ることもできるようにしました。

石井:その香りは資生堂のグローバルイノベーションセンターの研究員と一緒に開発していただきました。5日間という短い会期の展覧会だったんですが、約4000人の来場者があり盛況でした。

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サイト情報

『こちら、銀座 資生堂 センデン部』

『こちら、銀座 資生堂 センデン部』は、資生堂の「美」を世界に発信することを目的に、資生堂 クリエイティブ本部が中心となり、運営しているサイトです。私たちはテレビや雑誌の広告だけでなく、世界各地で販売されている化粧品のパッケージから、お店の空間デザイン、商品のブランドサイトまで、さまざまな「美」のクリエイションを手がけています。アイデアからフィニッシュワークまで手がけるそのスタイルは、企業の中にありながら、まるで一つの工房のようでもあります。この連載では、私たちのサクヒンが世の中に誕生するまでのストーリーや、作り手の想いを語るハナシなどを、次々とご紹介しています。

店舗情報

SHISEIDO THE TABLES

住所:東京都中央区銀座7丁目8−10 SHISEIDO THE STORE 4F
営業時間:11:00~20:00(19:30 LO)

プロフィール

石井美加(いしい みか)

プロデューサー。学習院大学大学院哲学科修了後、1994年資生堂に入社。販売会社、化粧品開発部、宣伝制作部、経営戦略部市場情報室を経て、2017年7月より現職。2015—2016年、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アートといった領域をデザインがつなぐプロジェクト「LINK OF LIFE」を企画・プロデュース。

ミヤケマイ

美術家。日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自のエスプリを加え、過去と現在、未来までをシームレスにつなげながら物事の本質を問う作品を制作。媒体を問わない表現方法を用いて骨董、工芸、現代アート、デザインなど既存のジャンルを問わずに天衣無縫に制作発表。大分県立美術館(OPAM)、水戸芸術館、Shanghai Duolun Museum of Modern-Art、POLA美術館、森美術館、世田谷美術館での展示及びワークショップのほか、村越画廊、壺中居、Bunkamuraギャラリーなどで個展多数。銀座メゾンエルメス、慶應大日吉キャンパス来往舎ギャラリーなど、企業や大学でもサイトスペシフィックなインスタレーションを手がける。2008年パリ国立美術大学大学院に留学。『膜迷路』(羽鳥書店/2012年)、『蝙蝠』(2017年)など4冊の作品集がある。2018年 SHISEIDO THE STOREのショーウィンドウのアートディレクターに就任。京都造形芸術大学客員教授

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