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中井圭が主催する『偶然の学校』 内容も講師も隠された理由とは?

中井圭が主催する『偶然の学校』 内容も講師も隠された理由とは?

偶然の学校
インタビュー・テキスト
村上広大
撮影:八田政玄 編集:久野剛士

川の向こう側を羨望の目で眺めているのと、超えてくる人の差ってすごく大きいなと思うんです。

—そうすると、1回1回の授業がカルチャーショックみたいなものですよね。

中井:まさに。僕は、人が興味や関心を抱くためには「セレンディピティ」(思いがけないものを偶然に発見すること)が必要だと思っていて。だから、講師や授業に関する情報を一切与えないようにしているんです。

—確かに事前情報があると、どうしても調べたくなってしまう気がします。

中井:僕が映画業界の人間だから映画関連の講師が多いと思われがちなのですが、むしろ映画はほとんどやっていません。本当にさまざまなジャンルから人を呼んでいます。そして、毎回の授業は座学とワークショップがセットになっているんですけれど、必ず1~3位まで順位をつけるようにしているんです。そうすると競うことになるので、思わぬ気づきがあったりするんです。

中井圭

中井:参加者は年齢も職業もバラバラな人たちですけれど、それぞれに得意だと思うジャンルがあるんですね。たとえば役者であれば演技、デザイナーであればデザインって。でも、公務員の人がクリエイティブな力を発揮することも起こっています。それがまた面白いわけです。

あるとき『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)の中野量太監督に講師をお願いして、ワークショップで演技指導をしていただいたのですが、そのときに参加していたある役者は1位を取ることができず、演技経験のない人が首位を獲得したのです。そこに物事の本質に繋がる気づきがあるなと。しかも講師側も未経験者と直にやりとりすることってほとんどないので、新しい発見がある。参加者双方に得難い経験がある場だと僕は思っています。

—『偶然の学校』は大々的な告知をしていないですよね?

中井:大きく露出するのはこのインタビューが初めてなのではないでしょうか。現状では、僕のTwitterとFacebookを中心に募集しています。しかも講師も授業内容も非公開だから、たまたま情報を見つけて面白そうだなと感じてくれた方しか来ません。だから、生徒を選定するための面接に来るだけで「すごい」と感じています。僕はそこに「大きな川」があると感じていて。

—「川」ですか?

中井:川の向こう側を羨望の目で眺めている人と、越えてくる人の差ってすごく大きいと思うんです。たとえば、すごく行きたいライブがあったとして、本当に行きたい人はどうにかして予定を調整してチケットを手に入れようとする。でも、本気じゃない人は申し込みもせずにSNSに「ライブ行きたかった」とだけ書き込む。でも、それってある意味でポーズじゃないですか。興味がある自分を演出しているだけだと思うんですよ。

中井圭

—本当にやりたかったらやろうとするし、やらない人は永久にやらないと?

中井:はい。たまに昔のことを振り返ることもあるのですが、「なぜ若い頃にいろんなことをしてこなかったんだろう」って後悔するんですよね。本当にさまざまな機会を逃している。でも、人生なにが起きるかわからないですから。そもそも「NECと映画」って結びつかないじゃないですか。そういう偶然の出来事があるのに、僕が気づいた範囲では若い世代は勝手に蓋をしている子が多いので、そこを開けていこうと考えてます。

ある程度のポジションにまでたどり着いた人は「持てる者の義務」があると思うんです。

—実際、『偶然の学校』に参加された生徒さんにはどのような変化が起きてるのでしょうか。

中井:2期生の中にすごく大人しい女の子がいたんですね。とても内気な性格だけど、勇気を出して面接を受けに来てくれた。僕はもうそのこと自体が素晴らしいと思っていたんですけれど、それ以上に驚いたのが、卒業を迎える頃にはすごく明るく積極的な生徒へと成長していたことなんです。その背景には、彼女の性格を理解し、気持ちを盛り上げてくれた生徒同士の絆があります。

—すごく仲がいいんですね。

中井:そうですね。ファミリー感はすごくあります。運営スタッフも最初は僕と昔から手助けしてくれているスタッフのふたりだけだったのですが、現在は学校のOBやOGたちも手伝ってくれていて。すごくありがたいですし、彼らにとっても大事な場所だからやってくれているのかなと思います。あと卒業生が期をまたいで授業に参加したり飲んだりすることもあって、すごくいい連帯感が生まれていますね。

でも、ただの仲良しというわけでもなくて。「トムとジェリーのように仲良く喧嘩しなよ」とよく言うんですけれど、生徒には友だちであるけれど、ライバルでもあってほしいんです。

『偶然の学校』は授業と講師が前もってわからないので、準備もできない。だから、それぞれの立場が完全にフラットなんですよ。でもそれは、各々がそれまでに培ってきたものすべてを投じないといけないという意味でもあって。だから、みんな恥もプライドも捨てて全身全霊を捧げられるんです。その場では、ヌーディストビーチと同じで、自分をさらけ出さないほうが逆に恥ずかしいっていう(笑)。

中井圭

—そういう状態で魂を込めてやりきろうとする人たちが集まるからこそ、一体感が生まれるわけですね。ちなみに、それは映画業界への還元も考えているのでしょうか?

中井:それはまったくないですね。僕は「あるジャンルだけが幸せになればいい」とは思ってなくて。どちらかと言うと、どうすれば人生がもっと豊かになるのかという視点で考えています。

もちろん、自分が映画に育てられた経験から「映画を通じて多くの人を幸せにしたい」という気持ちは常々あるのですが、その一方でみんながみんな映画を好きになるとは1ミリも思っていないんです。多様性はすごく大事だと感じています。

—では、なにを目的にしているのでしょうか?

中井:面白いことをする人が増えて、僕たちがもっと年を取ったときに「なんか若い子たちが楽しそうなことやってるな」っていう社会になっていたらいいなって。個人的に、経験を積んである程度のポジションにまでたどり着いた人は「持てる者の義務」があると思うんです。年を重ねれば、やれることも広がる。それをどう社会に還元していくのかが大事だなと。

僕はたまたま異能の人に出会える機会があり、たまたま仲よくしていただいていることもあるので、そうやって知り合えた人たちと、まだなにものでもない若い人たちを衝突させることで、なにかを生む手伝いができるんじゃないかなと考えています。

—中井さんにとってのそれが『偶然の学校』だと?

中井:はい。最近は面倒臭い大人が増えていて、若い世代ほど諦めを感じている気がするんです。でも、社会を面白くするためには彼らに奮起してもらわないといけない。よく「大人しい」とか「元気がない」とか世間で言われていますが、ポテンシャルは僕らの世代以上にあると思うんです。こんな時代だからこそ、彼らにチャンスを与えたいし、期待もしています。

それで点と点が繋がって線になり、それがさらに面になるという状況が生まれているので、いずれは一緒に面白いものを生み出していけたらいいなと思っています。

中井圭が主催する『偶然の学校』ロゴ
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イベント情報

『偶然の学校』
『偶然の学校』

1年間をかけて、参加者が予期していない文化・学問・技術を体感してもらう学校プロジェクト。

『NEWTOWN 2018』4F「ワクワクWORK図書室」
『NEWTOWN 2018』4F「ワクワクWORK図書室」

2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)4F
時間:各日10:30~19:00(予定)
株式会社それからデザイン
小柳津林太郎(2代目バチェラー)
鳴海淳義(BuzzFeed Japan)
恩納力(Abema TV)
偶然の学校
インフォバーン 新卒採用担当タクミ
僧侶 稲田ズイキ
前田隆弘
BOOK LAB TOKYO
料金:無料
※一部プログラムは有料

プロフィール

中井圭(なかい けい)

映画解説者。WOWOW「映画工房」「ぷらすと by Paravi」、シネマトゥデイ×WOWOW「はみだし映画工房」、TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」、ニコ生公式「シネマのミカタ」等に出演中。「POPLETA」「Numero TOKYO」「CUT」「観ずに死ねるか!」シリーズ、映画広告ポスター等に寄稿。「映画の天才」「偶然の学校」運営。

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