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折坂悠太という異能の歌い人、終わりゆく平成へのたむけを歌う

折坂悠太という異能の歌い人、終わりゆく平成へのたむけを歌う

折坂悠太『平成』
インタビュー・テキスト
大石始
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一
2018/10/02
折坂悠太

自分の身体から出たものにウソはないし、生身の個体から発せられたものってオリジナルだと思う。

—今回のアルバムではありとあらゆる歌唱法が駆使されていますよね。“逢引”には演劇的な語りが出てきますが、こうした語りはどこから出てきたものなのでしょうか?

折坂:自分としては浪曲(三味線を伴奏にして独特の節と語りで物語を進める語り芸。浪花節ともいう)と口上、それとポエトリーリーディングのミックスというイメージです。ライブではお客さんに向けた口上をやることもあるんですが、それは完全に河内音頭からの影響なんですよ。浪曲のような語りものは河内音頭で初めて触れましたし、そのインパクトがすごく大きくて。ライブのなかでやってきたそうした口上が、少しずつ曲のなかに浸出してきたということだと思います。

—浪曲的な語りと音楽がシームレスに繋がっている表現って、遠藤賢司さんとも通じるものだと思うんですよ。

折坂:もしかしたら遠藤賢司さんの影響もあるかもしれないです。遠藤さんはライブ中に歌舞伎の見得みたいなことをやったりされていましたけど、僕はああいうものに熱くなるところはあって。あと、ライブ中に故人のものまねをしながら説法みたいなことをやるAZUMIさん。あのすごさに触れた影響はどこかにあるかもしれません。

折坂悠太

—今回はバンド編成のアルバムですが、アンサンブルの中心になっているのはあくまでも折坂さんのガットギターですよね。ドラムとベースによるリズムが中心にあるのではなくて、ガットギターを弾く折坂さんの身体性が真ん中にある。そうした身体性は折坂さんが意識されてきたことでもありますよね。

折坂:身体性に関してはものすごく意識しています。さっきもお話したように、コンプレックスとして抱えていた自分の「出自のなさ」を補うために身体性を高めてきたような感覚がある。自分の身体から出たものにウソはないし、生身の個体から発せられたものってオリジナルだと思うんですよ。

—いうなれば、「折坂悠太」という替えの存在しない個体から発せられている以上は、唯一無二のものであると。ホーミーやヨーデルのような歌唱法をされますが、ああいった歌唱法もまさに声を通して身体性を表現するものですよね。

折坂:そういう表現方法をどんどん増やしていきたいと思っています。ただ、ホーミーを取り入れているからといってモンゴル音楽をやりたいわけではないんです。

僕自身、あるジャンルや文化的潮流のなかに自分がいるという実感を全然持てず、どこにいてもしっくりこなくて。ホーミーやヨーデルも身体性を表現する手段というか、その歴史や文化的な背景とは別に、自分という生身の身体を通してオリジナルな表現をしているという感覚なんです。

僕らは「戦争の気配」みたいなものを常に感じながら生きてきたと思うんです。

—“逢引”は「恋と戦争」をテーマにしたダブルミーニングの曲だそうですね。

折坂:そうですね。若い世代が何も言わずに死んでいくということと、若い男女が夜の町に消えていくという意味を重ね合わせた、ちょっときわどい曲なんです。僕は「割り切れないもの」が好きなんですけど、恋も戦争も割り切れないものだと思っていて。そういうものをともに提示したいという感覚は常に自分のなかにあります。

—先ほど「平成というお題に合わせてさまざまなエッセイを書いた感覚」とおっしゃっていましたが、平成は戦争がなかった時代でもありますよね。

折坂:日本に限ればそうですけど、海外では絶えず戦争が起こっていたわけで。それに僕らは、親や祖父の代から遠くない過去に戦争があったということを聞かされ続けて育ってきた世代でもある。そうした過去の戦争と、今まさに迫っている戦争の両方のイメージがこの曲の背景にはあると思っていて。平成の日本で戦争はなかったけど、僕らは「戦争の気配」みたいなものを常に感じながら生きてきたと思うんです。

折坂悠太

—そうですね。しかもその気配がより現実的なものになりつつある。

折坂:僕、Twitterでも政権批判の投稿をする寸前までいくんですけど、最終的にはいつも投稿できないんです。「俺の表現はそこじゃないだろ」という意識がどこかにあるんでしょうね。わかりやすい反戦歌を作るんじゃなくて、“逢引”みたいな形で表現したいんです。50年後に聴いてもおもしろいと思えるものとして形にしたい。

その時代固有の背景から生まれた切実なものがあれば、何十年も前に生まれた音楽だとしても決して古くならないと思うんですよ。歌としておもしろいものを作りたいし、日々暮らしているいまの日本の空気感をそのまま出すことが必要だと思っているんです。

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リリース情報

折坂悠太『平成』
折坂悠太
『平成』(CD)

2018年10月3日(水)発売
価格:2,700円(税込)
ORSK-005

1. 坂道
2. 逢引
3. 平成
4. 揺れる
5. 旋毛からつま先
6. みーちゃん
7. 丑の刻ごうごう
8. 夜学
9. take 13
10. さびしさ
11. 光

イベント情報

『平成 Release Tour』

2018年11月22日(木)
会場:愛知県 名古屋 Live & Lounge Vio
料金:3,000円(ドリンク別)

2018年11月24日(土)
会場:大阪府 心斎橋 CONPASS
料金:3,000円(ドリンク別)

2018年12月2月(日)
会場:東京都 渋谷 WWW
料金:3,300円(ドリンク別)

プロフィール

折坂悠太
折坂悠太(おりさか ゆうた)

平成元年、鳥取生まれのシンガーソングライター。幼少期をロシアやイランで過ごし、帰国後は千葉県に移る。2013年よりギター弾き語りでライヴ活動を開始。2014年、自主製作ミニアルバム『あけぼの』を発表。2015年、レーベル『のろしレコード』の立ち上げに参加。2016年には自主1stアルバム『たむけ』をリリース。その後は合奏(バンド)編成でのライヴも行う。2017年8月18日には、合奏編成にて初のワンマンライヴとなる「合奏わんまん」を代官山 晴れたら空に豆まいてにて行い、チケットは完売。同日より合奏編成で録音した会場限定盤「なつのべ live recording H29.07.02」を販売開始する。2018年1月17日、合奏編成による初のスタジオ作EP「ざわめき」をリリースする。2018年2月より半年かけて、全国23箇所で弾き語り投げ銭ツアーを敢行。10月3日に最新作『平成』をリリース。独特の歌唱法にして、ブルーズ、民族音楽、ジャズなどにも通じたセンスを持ち合わせながら、それをポップスとして消化した稀有なシンガー。その音楽性とライヴパフォーマンスから、宇多田ヒカル、ゴンチチ、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、伊集院光、小山田壮平(ex: andymori)、坂口恭平、寺尾紗穂らより賛辞を受ける。

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