インタビュー

ポール・マッカートニーが日本で語る、感受性豊かな若い人たちへ

ポール・マッカートニーが日本で語る、感受性豊かな若い人たちへ

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
通訳:染谷和美 編集:矢島由佳子、柏井万作

9月7日に5年ぶりのニューアルバム『Egypt Station』をリリースし、36年ぶりの全米ナンバーワンを獲得したポール・マッカートニーが、10月29日に来日。本日より『フレッシュン・アップ ジャパン・ツアー2018』を東京ドーム、両国国技館、ナゴヤドームで開催する。

来日した翌日の30日には、東京ドームにて念入りなリハーサルを行ったポール。そのリハーサル終了後、「若くて感受性豊かな人たちに自分の想いを届けたい」という彼の要望を受け、CINRA.NET独占インタビューを行うことに成功した。

「Sir」の称号を持ち、ロックミュージックの歴史を半世紀以上も更新し続けてきたレジェンド中のレジェンド。しかし目の前の彼は、ステージでの振る舞いとまったく変わらない、気さくでチャーミングなジェントルマンだった。

(メイン画像:© MPL Communications / MJ Kim)

50年がこんなにあっという間だったってことは、やっぱり楽しんでいたんだろうなと思う。

—あなたは音楽だけでなく絵画にも造詣が深く、ご自身でも絵を描かれます。最新作『Egypt Station』のアートワークも、1999年にご自身が描いた同名の絵画がモチーフになっていました。

ポール:うん、そうだね。

ポール・マッカートニー『Egypt Station』ジャケット
ポール・マッカートニー『Egypt Station』ジャケット(Amazonで見る

—この記事は10~20代の読者も多く読むことになると思うのですが、その頃のあなたはどうやって感受性を磨いていましたか? 音楽やアート、ファッションなど、どんなふうに吸収し、アウトプットしていたのでしょうか。

ポール:僕は17歳で学校を卒業したのだけど、最初に興味を持っていたのは英文学や詩だった。芝居を観るのも好きで、アートに興味を持ったのはそのあと。特にモダンアートがお気に入りで、よくギャラリーには通っていたね。

音楽に夢中になったのはさらにそのあとで、とあるグループに加入することになった。それがThe Beatlesだったというわけ(笑)。しかも、そのメンバー全員がアートに興味を持っていて、特に映画が好きだった。みんなで映画の監督をするのが夢でね。

—そうだったんですか。

ポール:「俺たちなら絶対になれる」と思っていたし、なんなら今もそう思ってる(笑)。とにかく想像力が豊かだったね。The Beatlesのいい点ってたくさんあるんだけど、中でも「想像力」と「知性」は他のグループよりも、少しだけ秀でていたと思う。学校の成績もよかったし、音楽一筋って感じではなかったからこそ、僕らはどんどん進化することができたんだ。

The Beatles。Photos by John Kelly © Apple Corps Ltd.
The Beatles。Photos by John Kelly © Apple Corps Ltd.
1963年発表曲。映像は、1964年2月9日のテレビ番組出演時。当時ポール・マッカートニーは21歳

—そんなクリエイティビティやイマジネーションは、どうやって磨いていたのでしょう。ネットもまだなかった時代に、どうやって情報をインプットして、それを昇華し作品としてアウトプットしていたのですか?

ポール:そうだよね、きっと若い人たちには想像つかないかも知れないな。もちろんSNSもなかったから、人との直接的なやり取りがすべて。今、こうやって君たちとしているように、面と向かい合って話をすること、あるいは電話をすることくらいしかなかった。「今度、こんな映画があるから一緒に観に行こうよ」とか、電話だったり面と向かってだったり、とにかく声を直接聞くことが、今思うととてもよかったんじゃないかな。

—今じゃ用件は、ほとんどメールやメッセンジャーで済ませられますからね。

ポール:もちろん、便利だと思うよ? でもさ、「明日の朝どうしてる?」ってメールを送ったとして、「仕事です」って返ってきたらそれで会話は終了だよね(笑)。電話だったら、「なんで会えないの?」「気分はどう?」みたいに会話が続いていくだろう? メールよりもずっと多くの情報を交換し合っていたと思うんだ。

ジョークも伝えやすいよね。「明日の朝どうしてる?」も、言い方によっては冗談めかして笑わすことだってできるけど、メールでは字面でしか判断できない。想像力を発揮しながら相手と言葉のキャッチボールをしていた時代のほうが豊かだったと思わない?

—The Beatlesの4人はいつも一緒で、しょっちゅうジョークを言い合っていましたよね。

ポール:あの頃の僕らは、電話も時間の約束をするくらいで、対面で話してばっかりだったよ。お互いの家にしょっちゅう行き来して曲を書いていたし、すごく親密な関係だった。だから、誰かがなにかを言えば、それはどんな気持ちから出た言葉なのか、本当はなにを言いたかったのかまで、お互いに理解し合っていたんだ。ちょっとした表情でも伝わることがたくさんあったしね。

そうやって、インターネットのなかった時代のコミュニケーションは、クリエイティビティやイマジネーションを磨く上でも役に立ったんじゃないかな。

The Beatles。© Apple Corps Ltd.
The Beatles。© Apple Corps Ltd.

—『The Beatles(The White Album)』がリリースされたのは、ちょうど今から50年前ですからね。

ポール:50年だって! 信じられないよ(笑)。時間って不思議だと思うんだ。特にアーティストは、時間の経過をあまり感じなくなるというか。

「Time flies when you're having fun(楽しい時間はあっという間に過ぎる)」という言い回しがあるけど、まさにそれなんだよね。50年がこんなにあっという間だったってことは、やっぱり楽しんでいたんだろうなと思う。

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イベント情報

『ポール・マッカートニー フレッシュン・アップ ジャパン・ツアー2018』

2018年10月31日(水)
会場:東京都 東京ドーム

2018年11月1日(木)
会場:東京都 東京ドーム

2018年11月5日(月)
会場:東京都 両国国技館

2018年11月8日(木)
会場:愛知県 ナゴヤドーム

リリース情報

ポール・マッカートニー『Egypt Station』
ポール・マッカートニー
『Egypt Station』(CD)

2018年9月7日(金)
価格:2,808円(税込)
UICC-10040

 

1.Opening Station
2.I Don’t Know
3.Come On To Me
4.Happy With You
5.Who Cares
6.Fuh You
7.Confidante
8.People Want Peace
9.Hand In Hand
10.Dominoes
11.Back In Brazil
12.Do It Now
13.Caesar Rock
14.Despite Repeated Warnings
15.Station II
16.Hunt You Down/Naked/C-Link
17.Get Started(ボーナルトラック)
18.Nothing For Free(ボーナルトラック)

プロフィール

ポール・マッカートニー

1942年6月18日、セールスマン兼アマチュア・ジャズ・ミュージシャンの父の下、リヴァプールに生まれる。1962年10月5日、ビートルズは『ラヴ・ミー・ドゥ』でレコード・デビューを果たす。1966年6月29日に初来日を果たし、6月30日、7月1日、2日に日本武道館において初のロック・コンサートを開催。ザ・ビートルズは1970年4月に事実上解散するまでの活動期間内に母国イギリスで12作のオリジナル・アルバムを発売し、その内11作が全英アルバムチャートで1位を獲得。ギネス・ワールド・レコーズでは最も成功したグループアーティストと認定されている。1970年4月10日にポールは音楽的な意見の相違などを理由にザ・ビートルズ脱退を表明したが、その1週間後に発売した初のソロ・アルバム『ポール・マッカートニー』はビルボードとキャッシュボックスでも1位を獲得。1971年には妻のリンダとの連名でアルバム『RAM』を発表。さらに同年、妻リンダ、元ムーディー・ブルースのデニー・レインの3人を中心に構成されたロック・バンド、ウイングスを結成。ウイングスは1981年の解散までに7枚のオリジナル・アルバムと1枚のライヴ・アルバムを発表。代表曲に“心のラヴ・ソング”“マイ・ラヴ”“バンド・オン・ザ・ラン”“007 死ぬのは奴らだ”“ジェット”がある。中でも1973年のアルバム『バンド・オン・ザ・ラン』は全世界で600万枚以上のセールスを記録し、ザ・ビートルズ解散後のマッカートニーのアルバムとしては最大級の商業的成功を収めた。ウィングスは1981年4月のデニー・レインの脱退表明によって自然消滅に近い形で終焉を迎える。1980年に10年ぶりとなるソロ名義のアルバム『マッカートニーII』を発表。しかし、12月8日のジョン・レノンの突然の訃報にポールは大きな衝撃を受け、数か月間、自宅に引き篭もることに。1982年に3枚目のオリジナル・ソロ・アルバム『タッグ・オブ・ウォー』と1983年に4枚目『パイプス・オブ・ピース』を発表。『タッグ・オブ・ウォー』では、スティーヴィー・ワンダーとのデュエット曲“エボニー・アンド・アイヴォリー”が大ヒットし全米・全英No.1に。『パイプス・オブ・ピース』にはマイケル・ジャクソンが参加し、デュエット曲“セイ・セイ・セイ”が全米・全英No.1を獲得。1990年3月には、ビートルズ公演以来となる24年ぶりの来日公演が実現。1993年にアルバム『オフ・ザ・グラウンド』を発表したポールは、『ニュー・ワールド・ツアー』を敢行。この年の秋にソロとして2度目の来日公演も果たしている。1998年、長年連れ添った妻のリンダが乳癌で他界。1999年にはロックの殿堂入りを果たした。2002年に7月には元モデルで平和運動家のヘザー・ミルズと再婚。11月には、3度目のソロでの来日公演が実現。2003年にはロシアのモスクワにある「赤の広場」で、外国人アーティストとして初となる大規模なコンサートを開いて話題に。2008年、ヘザー・ミルズとの離婚が成立。2011年、ナンシー・シェヴェルと3度目の結婚。2013年、オリジナル作品としては5年ぶりとなる『NEW』を発表。全英・全米では3位、日本では2位(デイリーチャートでは1位)とヒットし、ゴールドディスク(10万枚売上)にも認定された。11月には『アウト・ゼアー・ツアー』の一環で11年ぶり4回目となる来日公演を大阪、福岡、東京で実施し26万人を動員。2015年4月には『アウト・ゼアー ジャパン・ツアー2015』が京セラドーム大阪、東京ドームで計4回、そして追加公演として1966年のザ・ビートルズ以来49年ぶりの日本武道館公演が実現。2016年、4月13日のカリフォルニア・フレズノ公演を皮切りに新たなワールド・ツアー『ワン・オン・ワン・ツアー』をスタート。6月10日には45年のソロ・キャリアの集大成となるオール・タイム・ベスト『ピュア・マッカートニー~オール・タイム・ベスト』をリリース。2017年、『ワン・オン・ワン ジャパン・ツアー2017』で来日、4月27日、29日、30日の東京ドーム3公演を実施。2018年、5年ぶりのオリジナル・アルバム『エジプト・ステーション』が9月7日に発売すること、そして新しいツアー『フレッシュン・アップ・ツアー』を9月からスタートすることを発表。デビューから半世紀以上経過した現在でも、第一線で活躍し、ギネス世界記録で「ポピュラー音楽史上最も成功した作曲家」として認定されている最高のロック・レジェントである。

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