インタビュー

tofubeatsが「他人任せ」から「自分でやる」に変わったこの3年

tofubeatsが「他人任せ」から「自分でやる」に変わったこの3年

インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:伊藤惇 編集:川浦慧

「ポストトゥルース」という、時代を象徴するテーマをもとに作り上げられた前作から約1年半。tofubeatsがリリースする4作目のフルアルバム『RUN』は、一聴すると、かなり不思議な聴き心地のするアルバムだ。ゴツゴツとした、どこか歪な手触りをもった本作を聴いていると、もし、前作が「時代」というものを形作っていたとするなら、本作はそんな時代の中で、小さく強く息を吐きながら生きるtofubeatsという「個人」を形作っているのではないか?――そんなことを考えさせられる。

これまで、森高千里や藤井隆など華々しい客演を招いて作品を作ってきたtofubeatsだが、今作では初めて演奏やボーカルに客演を招かず、マスタリング以外の全編をひとりで作り上げたという。なぜ、ここに来て彼は「ひとり」になったのだろうか? 「何事も時代のせいにしすぎていたんじゃないか?」――そう語る彼の眼差しは、過去でも未来でもなく、確かに「今」を捉えている。

ニュータウンが冷徹な街だとするなら、そこをよくしていくのは、自分なんじゃないか?

—新作『RUN』を最初に聴かせてもらったとき、「このアルバムは、どう捉えるべきなんだろう?」と、少し戸惑ったんです。

tofubeats:はい。

—前作『FANTASY CLUB』(2017年)の完全に作りこまれた質感とは違う、もっとゴツゴツとした歪な手触りのようなものを感じて。でも、聴いていくうちに、その歪さの中に感じる温度が、心地よくなってきたというか。

tofubeats:それはよかった(笑)。

—初回限定盤に付属される制作日誌も読ませていただいたんですけど、今作は『ニュータウンの社会史』(金子淳著 / 青弓社)という本が制作の指針になったそうですね。この本には、どのように出会ったのでしょうか?

tofubeats:新譜を教え合うみたいな感じで、知人と面白そうな本の情報交換もやっているんですけど、その中で勧められて。それで読んでみたら面白かったんです。いわゆる「ニュータウン」って、犯罪とか、いじめとか、自殺っていうネガティブなイメージと隣り合わせの感じがあるじゃないですか。

tofubeats
tofubeats

—そうですね。かつては新興住宅地として栄えていたんだけど、今は寂れてしまって問題が山積している場所、というイメージがあります。

tofubeats:僕もニュータウンの出身なんですけど、この『ニュータウンの社会史』を読むと、多摩ニュータウンの創成期に、住民たちがどのようにして未整備な状態を乗り越えようとしてきたか? ということが書かれていたんです。そもそも、ニュータウンが作られることなったとき、その地上げに反抗した人たちの歴史もあるわけで、そこも含めてすごく克明に記録されているんですよね。

最近、民俗学者の畑中(章宏)さんも書いていたんですけど、「ニュータウンに神社はない」というけど、歴史がそこで途切れてしまっているだけで、ニュータウンが来る前には神社はあったんだっていう。そういうことを知っていく中で、決して人間味がない場所ではないんだなっていうことを改めて思い直したんですよね。

tofubeats

—なるほど。ニュータウンを作ってきた人たちの姿が見えてきた。

tofubeats:そういうことを知っていく中で、これまで自分は、どこかで「自分が生きている場所がニュータウンである」ということを言い訳にしていた部分もあったんじゃないか? と思って。そこから、ニュータウンにある人間性みたいなものを、もっと取り出すことができるんじゃないかと考えたり、「ニュータウンが冷徹な街だとするなら、そこをよくしていくのは、自分なんじゃないか?」と考えたりするようになったんですよね。そういうところから、1曲目の“RUN”ができて、アルバムの全体的なテーマも浮かんできたんです。

tofubeats『RUN』ジャケット
tofubeats『RUN』ジャケット(Apple Musicで聴く

—“RUN”は、ほとんどパンクロックのようなエナジーというか。時間も2分弱と、短いですし。

tofubeats:でき上がったときにはもっと短くて、1分ぐらいしかなかったんですよ。本当に、バッとできた曲だったんですよね。曲ができて3日後にはMVも撮影していたし、本当に大急ぎで出したっていう感じで。

スケジュール面で急がなきゃいけなかったっていうのもあるんですけど、それがいい感じの焦燥感になってMVにも出ている感じがします。あと、MVを撮った翌日に大阪で地震が起こったんですよ。よくないことだけど、そういうこともまた焦燥感に作用して。「やらなきゃ、やらなきゃ」ってなったというか。今年の夏は、関西は本当に大変だったので。

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リリース情報

tofubeats
『RUN』
tofubeats
『RUN』(CD)

2018年10月3日(水)発売
価格:3,024円(税込)
WPCL-12943

1. RUN
2. skit
3. ふめつのこころ
4. MOONLIGHT
5. YOU MAKE ME ACID
6. RETURN TO SENDER
7. BULLET TRN
8. NEWTOWN
9. SOMETIMES
10. DEAD WAX
11. RIVER
12. ふめつのこころ SLOWDOWN

※初回プレス分のみブックレット特殊仕様
※tofubeats本人によるライナーノーツ封入

プロフィール

tofubeats(とーふびーつ)

1990年生まれ、神戸在住。在学中からインターネット上で活動を行い、2013年にスマッシュヒットした“水星 feat.オノマトペ大臣”を収録したアルバム『lost decade』を自主制作で発売。同年『Don't Stop The Music』でメジャーデビュー。森高千里、藤井隆、DreamAmi等をゲストに迎えて楽曲を制作し、以降、アルバム『First Album』(14年)、『POSITIVE』(15年)をリリース。2017年には新曲“SHOPPINGMALL”“BABY”を連続配信し、アルバム『FANTASY CLUB』をリリース。SMAP、平井堅、Crystal Kayのリミックスやゆずのサウンドプロデュースのほか、BGM制作、CM音楽等のクライアントワークや数誌でのコラム連載等、活動は多岐にわたる。

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