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ベランパレードが歌で救おうとする、痛々しくて苦しい過去の自分

ベランパレードが歌で救おうとする、痛々しくて苦しい過去の自分

Eggs
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:鈴木渉 編集:石澤萌、川浦慧

自分じゃない誰かが、自分に心を許して笑ってくれるって、奇跡みたいなことだと思うんです。(あび)

—『スクラップ イン マイ ルーム』の歌詞を読んで僕が気になったのは、全曲に「笑う」という言葉が出てくるんですよね。ほとんどの曲が、人が「笑う」ということに着地点を置いている。

あび:うわっ、気づかなかったです!

—たとえば、1曲目の“スクラップ イン マイ ルーム”には<生きるという名前借りて / 部屋を離れ君を忘れ / それでも笑ってみたくなった>というラインがありますよね。先ほど、あびさんは「歌は角度だ」と仰いましたけど、「生きる」という言葉は、そのままだとあまりに響きが重い。もしかしたら「笑う」と表現することが、「生きる」という言葉に対する、あびさんなりの「角度」なのかな、と思って。

あび:本当、そういうことです。もちろん僕らの人生は借り物じゃないし、生きていることに間違いはないけど、そこに対する迷いというか、「俺は生きているんだ!」って、どこか言い切れない部分を表現したくて、「借りる」っていう言葉が出てきたんですよね。

僕らはよくライブをするけど、「LIVE」って「生きる」という意味もあるじゃないですか。ライブをすることが、なんで「生きる」ことなんだろう? ってよく考えるし、ロックバンドである以上、ステージに立っているときは「誰よりも生きなきゃ」っていう感覚もあります。

左から:モッコリ、Kota Kamimura、歌王子あび、ゆりえちゃん

—それを自分が表現するとき、「笑う」という角度に持っていくのはなぜだと思います?

あび:「願い」みたいなものですかね。日常会話でもライブでも、対面している相手がどういう顔をしているのか一番気になるんですよね。やっぱり、自分の顔を見て誰かが笑ってくれると嬉しいし、安心するし……極端な言い方をすると、「生きてていいんだ」って思える。

自分じゃない誰かが、自分に心を許して笑ってくれるって、奇跡みたいなことだと思うんです。自分がおどけたり必死になって歌っている姿を見て、誰かが笑ってくれるのがこんなに嬉しいことなんだって、ロックバンドを始めてから気づきました。そういうことに対する願いが滲み出ているのかもしれない。

もし過去の自分のように苦しんでいる人がいるんだとしたら、僕が歌わないとなって思うんです。(あび)

—6曲目の“BOYS”では<忘れられない人を想うたび / 変な髪形になってゆく君を / 誰かが笑ってくれるだろう>と歌われています。ここで歌われる「君」というのは、自分自身のことでもある?

あび:いや、この「君」は僕の後輩のことを歌っています。“BOYS”はモテない人の歌なんです。後輩も本当にモテないんですけど、どこか昔の自分を見ているようで、ほっとけなくて。

—自分自身と重なる部分がある?

あび:自分が歌を歌うとき、『ドラえもん』でのび太がへこたれているときに、大人になったのび太がタイムマシンでやってきて、「お前、大丈夫だよ」って言ってやる、みたいな感覚があるんですよね。

自分と同じような誰かを救いたいとか大それたことではないんですけど、今の僕が歌うことで、僕の記憶の中で一番つらかった頃の自分がちょっとは元気になるかもしれない。……僕、学生の頃に、ものすごく好きな人ができたんですよ。

—はい。

あび:今は、このメンバーとやっていく上で「売れたい」とか「いろんな人に聴いてもらいたい」っていう気持ちがあるけど、バンドを始めた当時は、ただ、「その子に聴いてもらいたい」っていう一心だった。でもそれって、不健康ですよね。誰かひとりに褒められるために、自分のすべてを注ぎこんで頑張るのって、正直、キモいじゃないですか。

—相手や周りの気持ちを考えない一方的な愛情表現って、若者にはありがちだけど、大人になると、その愚かさに気づくものですよね。

歌王子あび

あび:そうなんですよね。愛情表現が間違っていたかもしれないって、今でも思い出して苦しくなるんです。今考えると「お前、めっちゃキモいよ」って言えるんですけど、自分のことだから「お前は正しいよ」「そのままいけ!」って言いたくなる自分もいる。あの頃の苦しさは、他の人にはわからないと思うけど、もし過去の自分のような人がいるんだとしたら、僕が歌わないとなって思うんです。

僕の愛情表現は間違っていたかもしれない。でも、ロックバンドを始めたことで、誰かが笑ってくれたり、誰かに寄り添える手段を自分は見つけることができた。僕が今、それを言葉にすることによって、なにかが生まれるかもしれないと思うんです。

—過去の自分のように、感情の表現方法がわからなくて苦しんだり、足掻いたりしている若者たちがこの世界にはいるんだっていう確信が、あびさんにはありますか?

あび:ありますね。世の中、モテる人よりモテない人のほうが多いと思うし、それに、一般的に「お前、モテるからいいよな」って言われているような人たちの中にも、「モテなさ」は絶対にあると思うんですよ。多くの人は、心のどこかでモテていないと思うんですよね。どこか、自分に対する引け目があったりすると思う。モテないって、キツいじゃないですか。

—うん。自分に笑顔を向けてくれる人は、この世にひとりもいないんじゃないか?……そういう気持ちをどこかで抱えながら生きていくのは、本当に苦しいことだと思う。

あび:そういう気持ちって、放っておくと心が曲がってしまうと思うんですよね。僕はそれを、自分ごと叩き直したいです。曲がっていることを、自分で肯定してしまったら終わりだと思う。「モテないなら、闘うことをやめるなよ」って言ってやりたいんです。

左から:Kota Kamimura、歌王子あび、ゆりえちゃん、モッコリ
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アプリ情報

『Eggs』
『Eggs』

アーティストが自身の楽曲やプロフィール、活動情報、ライブ映像などを自由に登録・公開し、また、リスナーも登録された楽曲を聴き、プレビューや「いいね」等を行うことができる、アーティストとリスナーをつなぐ新しい音楽の無料プラットフォーム。登録アーティストの楽曲視聴や情報は、「Eggsアプリ」(無料)をダウンロードすると、いつでもお手もとでお楽しみいただけます。
料金:無料

推奨環境:iOS8.2以上(iPhone、iPad および iPod touch)、Android 4.3以上

リリース情報

ベランパレード『スクラップ イン マイ ルーム』
ベランパレード
『スクラップ イン マイ ルーム』

2018年9月19日(水)発売
価格:1,944円(税込)
Lucky-1006︎

1. スクラップ イン マイ ルーム
2. アイスクリーム
3. ラブレターフロム
4. わたしを海につれてって
5. 風邪のビリア
6. BOYS
7. パン

イベント情報

『「スクラップ イン マイ ルーム」リリースツアー」

2019年9月30日(日)
会場:宮崎県 SoundGarageMONSTER

2018年10月17日(水)
会場:大阪府 Live House Pangea

2018年10月26日(金)
会場:福岡県 UTERO

2018年11月17日(土)
会場:東京都 Shinjuku Live House Marble

プロフィール情報

ベランパレード
ベランパレード

2013年、夏。宮崎在住の4人が組んだロックバンド。ハッピーなのにどこか胸がギュッとなるメロディ。誰の何も分からなくなる位に、目一杯で表情豊かに歌われる言葉たち。あの日のべランダから見た景色は僕たちをどこへ連れて行ってくれるんだろう。『本当のことも嘘もごちゃまぜでそれでも笑う君と。僕は恋をしていた。』

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