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Chim↑Pom卯城竜太×中島晴矢 日本郊外でいかにサバイブするか

Chim↑Pom卯城竜太×中島晴矢 日本郊外でいかにサバイブするか

『NEWTOWN 2018』『SURVIBIA!!』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:江森康之 編集:宮原朋之

多摩ニュータウンの旧小学校で行われるCINRA.NET主催の文化祭『NEWTOWN』。音楽ライブやカフェ、フリーマーケットなど、バラエティーに富んだ演し物の一つに、アートの展覧会もある。

アーティストの中島晴矢がキュレーションする『SURVIBIA!!(サバイビア)』は、舞台となるニュータウンを含んだ日本の「郊外」について考察すべく、アーティストだけでなく、映画制作集団の空族や、音楽ライターで神奈川県川崎市のラップシーンについての著作を上梓した磯部涼など、異色の顔ぶれを参加作家として呼んでいる。そこには、郊外だけでなく、日本における「個」や「公共」に対する批評的な視点が込められているという。

展覧会に先駆けて、都市に対するさまざまなアプローチを試みているアーティスト集団Chim↑Pomの卯城竜太を招き、中島との対話を収録することとなった。2人のアーティストが交わした郊外、近代、個と公を巡る議論をここにお届けする。

ニュータウンのヤバさは、「何も起きない」ことのヤバさ。(卯城)

中島:去年の『NEWTOWN』の展覧会『ニュー・フラット・フィールド』のテーマがまさに「ニュータウン」だったんですけど、その際に重視していたのは都市郊外にある集合住宅地帯「から」語ることの当事者性でした。企画者3人はみんなニュータウンの生まれで、ニュータウンで生まれ育った連中がニュータウンについて語るという展覧会でした。

卯城:(中島)晴矢くんはどこで育ったの?

中島:横浜の港北ニュータウンです。ショッピングモールのなかにシネコンがあって、モールの屋上には観覧車まである。テーマパークっぽい場所でした。

左から:卯城竜太(Chim↑Pom)、中島晴矢
左から:卯城竜太(Chim↑Pom)、中島晴矢

卯城:ニュータウンが少子高齢化の影響で廃墟化してるって話を聞いたことがあるけど。

中島:じつはそんなこともないんですよ。例えば多摩ニュータウンは、実際、入居数の減少で衰退した時期もあるんですが、いまはまた復活して少しずつ住人が増えているそうです。祖父母も郊外に居を構え、両親がニュータウンで暮らしてきて、言ってみれば(郊外)三世が自分なんです。

卯城:でも、晴矢くんみたいな文化人気質な人としては、ニュータウン育ちってひとつのアイデンティティでもあるわけでしょ。それはプロレスの作品を見て感じたよ。作家としては表現に活かしやすい環境なのかな。

中島晴矢『バーリ・トゥード in ニュータウン-パルテノン-』映像, 2017
中島晴矢『バーリ・トゥード in ニュータウン-パルテノン-』映像, 2017

中島:活かしやすいというよりは、作家としてのバックボーンになるような大きな物語が無いんですね。ゲットーで育ったとか(笑)。結局、自身のルーツを見つめ直してみたら、ある意味で情けない故郷としてのニュータウンしかなかった。

卯城:映像のテイストや演出が妙に無機質で独特だった。そういうニュータウンのイメージは、みんなどこかで共有しているもので。すごく均質で、大勢の人間が生きてるはずなのに空気が動いている感じがしない。そのヤバさは1980年代くらいのアメリカのホラー映画が扱ってた郊外とは別の、「何も起きない」ことのヤバさというか。

今、郊外を取り扱うとしたら「川崎ノーザンソウル」と「川崎サウスサイド」の両方を表現しないとダメだと思うんです。(中島)

卯城:うち(Chim↑Pom)のメンバーの稲岡(求)くんが、練馬の光が丘ニュータウン出身なんだけど、すげー変な人なの。狂っているんだけど、掴みどころがない。

エリイちゃんはマッドに狂っているし、岡田(将孝)くんはシュールでカスい狂い方をしてるけど、二人とも可愛げがあって、日本の自虐的な文化の美観にハマるから愛でられる狂気ではある。でも稲岡くんは、十何年も付き合っているのにマジで誰も理解できない時が多いんだよね(笑)。え、この人いったい何考えているんだろ、みたいな。環境ってより天然なのかもだけど、でも、ニュータウン出身と聞いて「なるほどな」って腑に落ちた感じがあった。フラットで浮き沈みがなく、でも狂ってる、という。

卯城竜太(Chim↑Pom)
卯城竜太(Chim↑Pom)
11月10日(土)の『NEWTOWN』ではChim↑Pomエリイによる占いも実施予定
11月10日(土)の『NEWTOWN』ではChim↑Pomエリイによる占いも実施予定(サイトを見る

中島:ニュータウンは人も街自体も静かに狂っていると思います。表面は綺麗にコーティングされているから表に出てこないんだけど、じつはいろんなものを排除して成立してる空間ですからね。

卯城:ニュータウンのヤンキー文化はどうなの?

中島:僕の生まれ育った港北ニュータウンやたまプラーザに限って言うと、ヤンキーはいなかったんです。ヤンキーは地域社会に根差すもので、その頃のニュータウンではローカル=地域があるように見えても、新しいもので歴史が浅い。でもいっぽうで建設から半世紀が経って、あらためて地域として見直す時期に差し掛かっているとも思うんです。

展覧会を企画するうえでヒントになったのが、音楽ライターの磯部涼さんが書いた『ルポ 川崎』という本です。ヒップホップグループのBAD HOPを皮切りとしたルポルタージュなんですが、前提として神奈川県川崎市の北部と南部の空気がまったく違うということを言っています。小沢健二やスチャダラパーが出てきた北部は静かに狂っているけれど、逆に明るさもあって、ある種の憂鬱さに支配されている。

中島晴矢
中島晴矢

中島:小沢健二はそれを「川崎ノーザンソウル」っていう風に表現しましたが、BAD HOPは川崎南部をゲットー的な「川崎サウスサイド」と言うわけです。たしかに彼らの拠点である池上町は、工業地帯で殺伐としていて、リアルな現場の空気がある。今、大都市周辺に広がる郊外を取り扱うとしたら、その両方を表現しないとダメだと思ったんです。

卯城:工業地帯って特有の文化があるよね。ヤンキー的にはエリートなイメージがある(笑)。

『NEWTOWN』美術展:『SURVIBIA!!』(サバイビア!!)会田誠や磯部涼が出演するトークイベントも予定している メインビジュアルA illustrated by かつしかけいた
『NEWTOWN』美術展:『SURVIBIA!!』(サバイビア!!)会田誠や磯部涼が出演するトークイベントも予定している メインビジュアルA illustrated by かつしかけいた(サイトを見る

中島:あと見方を変えれば、ある世代以降の日本人は出身地に関係なく、みんな郊外的な空間で育ったとも言える。かつて言われたような「都市 / 農村」「都会 / 地方」っていう二項対立は成立しにくくなっていて、1970年代以降はすべてが郊外化して、どの都市に行ってもだいたい駅前にショッピングモールがあってイオンがあるというような風景になっている。

卯城:近所づきあいがなくなって、住んでいるところに対して「自分たちの街」ってリアリティーがわかない。実際、俺もそうだもん。いま住んでいる高円寺は、街としては特色のすごいある場所だけど、何世代にもわたって受け継がれてきたような伝統によってそうなっているとは言い難い。変な人たちが外からたくさんきている感じだから、特に誰かに気をつかう必要もなくて気楽。ていうか俺、マジで近所って概念が超苦手なんだよね(笑)。

左から:卯城竜太、中島晴矢
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イベント情報

『NEWTOWN 2018』
『NEWTOWN 2018』

2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)

『SURVIBIA!!』
美術展:『SURVIBIA!!』(サバイビア!!)

校舎内を利用して、「郊外を、生き延びろ。」(Survive in Suburbia.)をテーマにした美術展を開催。「ノーザン・ソウル」+「サウスサイド」+「ロードサイド」からなる「郊外」を提示することを試みます。映画部屋で参加作家の作品も上映予定。

日程:2018年11月10日(土)、11月11日(日)
時間:10:30~19:00
キュレーション:中島晴矢

『EXPO-SURVIBIA -千里・万博・多摩-』
秋山佑太
石井友人
キュンチョメ
中島晴矢
FABULOUZ
原田裕規

『変容する周辺、近郊、団地』
[URG]
石毛健太
衛藤隆世
EVERYDAY HOLIDAY SQUAD
垂水五滴
中島晴矢
名越啓介
BIEN
yang02

『PERSISTENCE_suburb』
[PERSISTENCE]
新井五差路
百頭たけし
藤林悠

『川崎ミッドソウルーーアフター「ルポ 川崎」』
細倉真弓
磯部涼

映画『サウダーヂ』上映
空族

トークイベント『死後の〈郊外〉—混住・ニュータウン・川崎—』
11月10日(土)14:00~15:30
小田光雄
磯部涼
中島晴矢

トークイベント『都市・郊外・芸術ー計画と無計画の間で』
11月11日(日)14:00~15:30
会田誠
中島晴矢

『SURVIBIA!!』クロッシング・トーク
11月11日(日)17:30~19:00
出展作家多数

チケット料金:無料

イベント情報

Chim↑Pom
『グランドオープン』

2018年11月22日(木)~2019年1月26日(土)
会場:東京都 天王洲アイル ANOMALY
時間:11:00~18:00(金曜は20:00まで)
休廊日:日曜、月曜、祝日、12月23日~1月14日

プロフィール

Chim↑Pom(ちんぽむ)

2005年、卯城竜太・林靖高・エリイ・岡田将孝・稲岡求・水野俊紀により結成。時代と社会のリアルに全力で介入した強い社会的メッセージを持つ作品を次々と発表。東京をベースに、世界中でプロジェクトを展開する。2015年アーティストランスペース「Garter」をオープン、キュレーション活動も行う。福島第一原発事故による帰還困難区域内で、封鎖が解除されるまで「観に行くことができない」国際展『Don't Follow the Wind』をたちあげ作家としても参加、2015年3月11日にスタートした。近年の主な著作に『芸術実行犯』(朝日出版社)、『SUPER RAT』(パルコ)、『エリイはいつも気持ち悪い』(朝日出版社)、『Don't Follow the Wind』(河出書房新社)、『都市は人なり「Sukurappu ando Birudo プロジェクト」全記録』(LIXIL出版)がある。

中島晴矢(なかじま はるや)

Artist / Rapper / Writer。1989年、神奈川県生まれ。法政大学文学部日本文学科卒業・美学校修了。美術、音楽からパフォーマンス、批評まで、インディペンデントとして多様な場やヒトと関わりながら領域横断的な活動を展開。重層的なコンテクストをベースに、映像や写真を中心としたミクストメディアで作品を発表している。主な個展に「麻布逍遥」(SNOW Contemporary / 東京 2017)、「ペネローペの境界」(TAV GALLERY / 東京 2015)、「上下・左右・いまここ」(原爆の図 丸木美術館 / 埼玉 2014)、「ガチンコーニュータウン・プロレス・ヒップホップー」(ナオ ナカムラ / 東京 2014)、グループ展に「The Calm Before the Parade」(space dike / 東京 2018)」、「ニュー・フラット・フィールド」(NEWTOWN / 東京 2017)、「ground under」(SEZON ART GALLERY / 東京 2017)、アルバムに「From Insect Cage」(Stag Beat / 2016)、テキストに「アート・ランブル」(Ohta Collective / 2018~)など。

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