
Kacoが語る歌手人生のスタート地点 根拠なき自信で人生は変わる
Eggs- インタビュー・テキスト
- 黒田隆憲
- 撮影:垂水佳菜 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
Charaや藤原さくらなどのライブサポートでも知られるKan Sanoに見出されたシンガーソングライター、Kacoが通算3枚目となるミニアルバム『たてがみ』を1月16日にリリースする。
表題曲は、高橋久美子(ex.チャットモンチー)と歌詞を共作。代わり映えのしない日々を生きる主人公に、月のように静かに寄り添い、<あなたは あなただ 幸せになれ>と語りかける歌詞が心に響く。大貫妙子や荒井由実、山下達郎らに影響を受けた懐かしくも美しいメロディーと、その可憐なルックスからは想像できないほどパワフルかつ、包み込むような優しい歌声も大きな魅力のひとつだ。
はち切れんばかりの好奇心を胸に秘め、愛媛から上京してきたKaco。いくつかの「試練」を乗り越えながら、確実にチャンスをものにしてきたそのパワーは、どこからきているのだろうか。高橋との共作についても、ユニークな比喩を交えながら生き生きと話してくれた。
根拠は全くないんですけど、「私は歌を歌わなければいけない」と思っている。
—今作『たてがみ』には、歌詞を共作された高橋久美子さんはじめ、ドラムに伊藤大地さん(ex.SAKEROCK)、ベースに星野源のサポートなどで知られる伊賀航さんなど、錚々たるアーティストが参加されています。なかでも、2016年発表の自主制作盤(『影日和』)にKan Sanoさんが関わっていらっしゃるのに驚きました。Kan Sanoさんとの出会いはどんな経緯だったのですか?
Kaco:当時、音楽活動のひとつとして、自分が歌っている動画を定期的にアップしていたんですけど、それをたまたまTwitterでKanさんが見てくださったんです。ちょうどその頃、ユニットを組むのに女性シンガーを探していらっしゃったみたいで、それで連絡をくださったのが最初の出会いでした。そこから親交がはじまり、『影日和』でピアノを弾いてくださったんです。
Kaco『影日和』収録曲
—あのアルバム、個人的にとても好きなんですよ。特にピアノの響きが独特で。
Kaco:ありがとうございます。でも私、コードってよくわからなくて(笑)。バンドアレンジをしているときに、「こうやって押さえてるんだけど、なんていうコード?」って未だにメンバーに訊いたりしています(笑)。
―翌年10月に全国流通盤としてリリースされた『身じたく』は、Superflyなどを手がける松岡モトキさんがサウンドプロデューサーについていましたよね。
Kaco:『身じたく』はずっとやりたかったことを形にできた作品ですね。『影日和』はピアノ主体のシンプルな作品だったんですけど、実は頭のなかにはいろんな楽器が鳴っていたんです。それを、『身じたく』では松岡さんが具現化してくれたという感じでした。
Kaco『身じたく』を聴く( Apple Musicはこちら )
—初音源から2作続けて充実した作品を残されていますけど、そこからは今作に向けて順調に進んでいたのですか?
Kaco:実は大きなつまずきがありました。というのも、『身じたく』を作った直後に、私を担当してくださったスタッフの方が音楽業界を離れてしまったんです。そのときは、「ああ、私またひとりになっちゃうんだ」って、今まで築き上げたものが全て弾けてしまったような心境でした。
でも、「ここで立ち止まっているわけにはいかない。とにかく、この『身じたく』を持って動かなきゃ」と思い直し、持っていた名刺の連絡先や、控えてあったメアド全てに音源を送ったんです。返事をくださった人もいれば、宛先不明で戻ってくる人、返事が来なかった人ももちろんいました。
Kaco:そんななか、5年前に一度お誘いをいただいたのに、私のほうから「自分がやりたいこととは違う」と断ってしまったことのあるディレクターから連絡をいただいたんです。「これ、決まるかどうかわからないけど、(楽曲を)コンペに出してみたら?」って。
それが、アニメ『魔法使いの嫁』の挿入歌のお話だったんですよね。一度チャンスを逃してしまっているわけですし、「絶対にこの仕事を手に入れなければ、私は終わってしまう!」と思って、寝ずに曲を作りました。それが採用された“Rose”で、その曲がきっかけとなって今のスタッフと繋がったんです。
—なるほど。今作『たてがみ』の冒頭曲“夢から醒めた夢”に、<理想と違ってもそれは 僕らの未来図の愛すべき構成物だ><肝心な場所で空回りの ついてなさ また振り出しか>というラインがありますが、これはそのときのことを歌っていたのですね。
Kaco:まさにそうです(笑)。
—一度は絶望しかけながら、またチャンスを掴もうと行動できたのはどうしてだったのでしょうか。
Kaco:「私の歌は、絶対に他の人と違う」という自信があったんですよね。「こんなふうに気持ちを込めて歌える人、他にいる?」って(笑)。
Kaco:根拠は全くないんですけど、「私は歌を歌わなければいけない」と思っているから、やめるという選択肢はありませんでした。一瞬は絶望したし、しばらく落ち込んではいましたけど、常にメラメラしたものを持ち続けていられたのは、根拠のない自信のおかげだと思います。
—根拠が「必要」な自信よりも、根拠のない自信のほうがブレないし強いんじゃないかと、僕自身も思っています。
Kaco:そうなんですよね。
アプリ情報

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料金:無料
リリース情報

- Kaco
『たてがみ』(CD) -
2019年1月16日(水)発売
価格:2,160円(税込)
EGGS-0371. 夢から醒めた夢
2. 涙の割りかた
3. 書きかけのファンタジー
4. 猫になれたら
5. あいそうろう
6. たてがみ
イベント情報
- 『exPoP!!!!! volume117』
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2019年1月31日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest出演:
Kaco
絶対忘れるな
ロイ-RöE-
and more!!!!!
プロフィール

- Kaco(かこ)
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2018年1月に発売されたNEWSのシングル『LPS』では「madoromi」の楽曲提供を行い、アニメ『魔法使いの嫁』第14話では挿入歌「Rose」を作詞、作曲、歌唱にて参加するなど、今、注目の新進気鋭のシンガーソングライター。15歳から作詞作曲を始め、高校ではコーラス部に所属しイタリア歌曲のレッスンへ通い、進学の為に上京。在学中に本格的に音楽活動を開始する。2016年にリリースした自主盤『影日和(かげびより)』では、運命的な出会いからChara、藤原さくら等のライブサポートをしているKan Sano氏がピアニストとして参加することになる。2017年10月には、全国流通盤としてリリースした『身じたく』において、Superflyやアンジェラアキを手がけた松岡モトキ氏をサウンドプロデューサーとして迎え、ピアノ弾き語りはもとより、バンド編成を主体にした骨太の内容に仕上がる。2018年10月22日、自己紹介盤として、ワンコインCDをリリース。この作品は、ギタリスト、サウンドプロデューサーとして数多くのアーティストから信望の厚い小倉博和氏がアコースティックギターで参加した。2019年1月、3rdミニアルバム『たてがみ』をリリース。3月には東京、大阪にてワンマンライブが決定している。