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Maison book girlの変化。暗がりの語り部から、物語の主人公へ

Maison book girlの変化。暗がりの語り部から、物語の主人公へ

Maison book girl『SOUP』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:垂水佳菜

歌の中の主人公のストーリーが繋がっていることが、より一層わかりやすく感じられるようになってきたと思う。(コショージ)

—では、ブクガが媒介になって伝えてきた物語ってどういうものなんだと思います?

コショージ:うーん………。なんて言えばいいんでしょうね。………うまく言えないですね(笑)。

—では少し聞き方を変えますね。たとえば前作の『yume』を聴いていても、まさにリアルではない世界への夢想が歌のテーマになっていましたよね。でも、キラキラしたファンタジックな夢とは違うものが歌われていると思って。<狭い部屋をずっと求めてる><安心していいよ、全部無くなるの。>と歌われる“rooms__”を象徴にして、日常から逃避するための防護シェルターに近いニュアンスで「夢」が歌われているように感じたんです。『yume』に限らず、そういう密室性と無機質さが表れてくるブクガの歌って、4人はどう捉えてるんですか。

和田:私個人で言えば、“rooms__”の<安心していいよ、全部無くなるの。>っていう歌詞が好きなんですよ。………昔から私は、こういう歌詞を歌っているとシックリくるところはあるし、むしろ「共感してくれる人がいるんじゃないかな」っていう希望を持って歌ってきました。だから、ある種私みたいな人が持っている「夢」とか物語の歌なのかもしれないですね。

井上:でも、(ブクガがこれまで歌ってきたのは)決して今幸せそうな主人公の歌ではないですよね(笑)。そもそもブクガって、『bath room』(2015年9月リリースの1stアルバム)から始まったわけで。お風呂場みたいに狭くてパーソナルな場所……さっき言われた通り、すごく狭いところに篭って自分を守っていた人のストーリーが歌になってきたというか。

聴く人を選ばないライブ、曲になってきた。Maison book girlの歌が開けてきたのがわかるんです。(井上)

—それこそ顔が見えないところに追いやられたり、あるいは自ら逃げ込んでまずは自分の場所を守らないといけなかったり。そういう人を照射する「現代の歌」だと思います。人の匂いのしない音だけで構成されている楽曲自体にも、それを感じて。

井上:でも、ブクガが始まった頃はさらに篭っている音楽だったと思うんです。なおかつ、私個人は元々ミーハーな趣味だったので、ブクガに入るまでは複雑な構成の音楽に触れたことすらなかったんですね。

だけど、そんな自分だからこそ最近はサクライさんの楽曲がだんだん開けてきたなっていうことがわかるんです。もちろん難解なリズムもありますけど、人を選ばないライブ、曲になってきたと思うんですよね。

井上唯
井上唯

—それは、具体的に言うとどういう点で感じますか。

井上:たとえば“rooms_”で言ったら、さっき言われたように歌の主人公が狭い部屋に逃げ込んだとしても、そこでカーテンを開けて外を眺める情景が歌に出てきたりして。だんだん部屋の外を意識し始めたというか……そうやって歌の内容も開けてきたと思うし、実際に曲もポップな感じになってきた気がして。

コショージ:それから今回の『SOUP』でいえば、“鯨工場”で<青いカーテンが隠してた景色。>と歌った後に、海の情景が出てくる。そういう情景にしても、歌の中の主人公のストーリーが繋がっていることがより一層わかりやすく感じられるようになってきたと思うんです。そうやって流れで楽しめるのが、人を選ばず伝わる部分になっているんじゃないかと思いますね。特に今回は曲調も爽やかだし、歌の内容も、今までいた「部屋」の外を感じさせるものだと思うんですよ。

—そうですよね。ビート感が際立つ音楽なのは変わらずですが、その音色がキラッとした質感になっているところにこそ開けた感覚を覚えました。歌詞で言っても、防護シェルターを作って自分を守っていたのがこれまでの歌なら、この4人の視点で外の世界の情景を歌っているのが今回だと思って。

和田:ああ、そうですね。実際に、今回の“鯨工場”と“長い夜が明けて”は、Maison book girl自身を描いた歌になっているんですよ。<夢の中のあの話、本当は何処かで続いていた。/ 本の家の少女たち、気付かないまま。>とかはまさにそうなんですけど。

—「こういう物語がありました」という歌を歌ってきたこれまでがあった上で、今こそブクガ自身を表す歌が出てきたのはなぜだと考えられてます?

和田:それはきっと、私たちの歌や表現が上達してきたからこそだと思います。楽曲的にも、複雑な世界観じゃなくて歌に焦点を当てる曲が増えてきていて。

井上:前作の『yume』を振り返ると、「夢」っていうテーマが大きい概念な分、いろんな毛色の曲があったんです。だから歌も上達しないといけなくて、ボイトレに通わせてもらって。それで初めて、歌が好きになったんですよ。それによって自分たち自身も、歌に焦点を当てられるようになってきたんですよね。そういう成長をサクライさんも見てくれていたからこそ、「自分たち自身を歌う」っていう曲が出てきた気がしていて。

—歌に焦点を当てていくというのは、ステージ全体で見せるというより、それぞれのキャラクターを前に出していくということでもあると思うんですが。

和田:そうなんでしょうね。それぞれの歌の個性にフォーカスするというのは、まさに個々のパーソナリティーを前に出していくということでもあると思います。これまでとは違うタームに入ったのかな、という印象を持っているシングルですね。

—「首のない鳥」や「首だけの鳥」。さらには「小さい部屋」、「カーテン」や「神社」といった、これまでの歌に多く出てきたモチーフが次々に登場しつつ、<首だけの鳥は神社から飛び立った。>というラインがあったりする。集大成とキックオフが同時に感じられるというか。

矢川:それこそ“長い夜が明けて”っていう曲タイトルもそうですよね。朝がきて、ここからさらに広い世界に届いていくのが私たちも楽しみなんですよ。

コショージ:まあ、<夜がない世界が始まってゆく>っていうところに関して言えば、夜のない世界もそれはそれで怖いんですけどね(笑)。

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リリース情報

Maison book girl
『SOUP』初回限定盤
Maison book girl
『SOUP』初回限定盤(CD+Blu-ray)

2019年4月3日(水)発売
価格:4,000円(税込)
PCCA-04771

[CD]
1. 鯨工場
2. 長い夜が明けて
3. まんげつのよるに
4. 鯨工場(instrumental)
5. 長い夜が明けて(instrumental)
6. まんげつのよるに(instrumental)

[Blu-ray]
2018年12月16日開催
「Solitude HOTEL 6F yume」@ヒューリックホール東京 全編収録

  • Apple Musicで聴く
  • Maison book girl 『SOUP』通常盤(CD)

    2019年4月3日(水)発売
    価格:1,300円(税込)
    PCCA-04772

    1. 鯨工場
    2. 長い夜が明けて
    3. まんげつのよるに
    4. 鯨工場(instrumental)
    5. 長い夜が明けて(instrumental)
    6. まんげつのよるに(instrumental)

    ライブ情報

    『Maison book girl tour 2019 spring』Final
    『Solitude HOTEL 7F』

    2019年4月14日(日)
    会場:東京都 昭和女子大学・人見記念講堂

    プロフィール

    Maison book girl(めぞん ぶっく がーる)

    矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミによるポップユニット。音楽家サクライケンタが楽曲から世界観の構築までを手がける。2016年11月にメジャーデビュー。2018年11月にはセカンドフルアルバム『yume』をリリースし、『Solitude HOTEL 6F hiru / yoru /yume』と冠したワンマンライブ3公演を行った。2019年4月14には、昭和女子大学・人見記念講堂にて『Solitude HOTEL 7F』を開催する。

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