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キイチビールを変貌させた、終わった恋、新しい恋。本秀康と話す

キイチビールを変貌させた、終わった恋、新しい恋。本秀康と話す

キイチビール&ザ・ホーリーティッツ『鰐肉紀譚』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:今井駿介 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「ふたりの男女がいる」っていう景色を、すごく美しいものだと思ってしまっている。(キイチ)

:ここでキイチくんの彼女の話をしようかどうか迷うけど(笑)、確実に、このアルバムは彼女の存在がひとつのカラーになっているよね。

キイチ:そうですね。このアルバムはレコーディングを2回に分けているんですけど、7インチシングルで出した“こーかい”“今夜浮かれたい”“透明電車が走る”“平成がおわる”を去年の8月くらいに録っていて、それ以外の曲を今年の1月に録ったんです。

その2回のレコーディングの間に、元カノと別れて、新しい彼女と出会っているので、モードが全然違うんです。アルバム1枚のなかで陰影がすごく濃いというか……振り切っちゃっているんですよね(笑)。なのでまぁ、時系列に曲が並んでいるわけではないんだけど、僕はそのときのテンションが曲に出るので、一応、物語的にはなっているアルバムなのかなっていう気がします。

キイチビール&ザ・ホーリーティッツ『鰐肉紀譚』を聴く(Apple Musicはこちら

:“鰐肉紀行”って、キイチくんがワニの肉を食べに行ったお店で、新しく彼女になる女性に出会ったことで生まれた曲なんでしょ? 実は、そのワニの肉を出すお店に、僕も津田大介さんとU-zhaanに連れていかれたことがあるんだよ。でも、僕はワニの肉をテーマにして漫画を描こうとは思わなかったから……これがクリエイターとしての差かなぁ(笑)。

キイチ:いや、問題はワニの肉を食べたかどうかより、恋に落ちたかどうかです!(笑)

—(笑)。改めて、キイチさんの曲は女性との関係性を歌う曲が多いですね。

キイチ:そうですね。最近は、だんだん直接的に書くことが恥ずかしくなってきたんですけど……。でも基本的には、「ふたりの男女がいる」っていう景色を、すごく美しいものだと思ってしまっているので。

キイチビール(キイチビール&ザ・ホーリーティッツ)

:キイチくんって、Instagramとかでも彼女との関係を包み隠さず出すじゃない? そういう赤裸々な活動はThe Beatlesからの影響?(笑)

キイチ:違います(笑)。……でも、丸見えですよねぇ。

:実は、キイチくんがインスタで新しい彼女との関係をチョロチョロと出しはじめたときに、「これ、大丈夫なの?」って軽く注意したことがあるんです。そのとき、キイチくんは「気をつけま~す」なんて言っていたんだけど、結局、控えるどころか、むしろエスカレートしていって……実は、ちょっと落ち込んだんだよ。「俺は旧世代なんだなぁ」って(笑)。

キイチ:すみません……(笑)。でも「隠す必要もないかなぁ」って思って。

:それでいいんだよ。ロックはこうあるべきだと思う。まぁ一番びっくりしたのは、ライブハウスで、出番を終えたキイチくんが膝の上に彼女を乗せて、他のバンドを観ていたときだけどね(笑)。

キイチ:あはははは!

「こういうことを体験したよ」「こういうことを思ったよ」っていうことを伝えたいから、僕らは作家をやっている。(本)

:端から見ていると、キイチくんと今の彼女の関係って、ポール・マッカートニーとリンダ・マッカートニーみたいだなって思う。ジョン・レノンとオノ・ヨーコには思想があるけど、ポールとリンダには思想はないんだよね。ただ、じゃれ合っているっていう(笑)。キイチくんの彼女も漫画家だし、お互いクリエイターっていうところも似ているよね。

あと、バンドメンバーや運営サイドが、キイチくんの赤裸々な活動の仕方や、彼女との関係によって音楽性まで変化していくことを受け入れてくれているのも、いいことだなって思う。チェンジしながらよくなっているって判断してくれているんだろうね。

キイチ:そうですね。みんな、僕の変化を快く受け入れてくれています(笑)。

:……でも、最初に言った『ワイルドマウンテン』の主人公だけじゃなくても、たとえば『あげものブルース』も、ほとんど体験談で。やっぱり、自分の身に起こったことしか作品にできない。思うことがいっぱいあって、「こういうことを体験したよ」「こういうことを思ったよ」っていうことを伝えたいから、僕らは作家をやっているんだよね。

キイチ:うん、そう思います。そういうものだけが自分を満たしてくれるというか。どれだけ偽りのものが評価されても、きっと空洞のままなんですよね。

左から:本秀康、キイチビール(キイチビール&ザ・ホーリーティッツ)

—ちなみに、“なんでも知ってる女の子”は、今お付き合いされている女性のことが歌われているんですよね?

キイチ:うん、そうですね。彼女は僕が今まで出会った人のなかで、一番エネルギーがギラギラと出ている人なんです。音楽や映画のことも、なんでも知っていて。僕が必死で「さすがに、この映画は見てないだろう」と思うようなものを探し出しても、「あぁ、あれね」みたいな感じで……「マジかよ」みたいな(笑)。スペイン語も話せるんですよ(笑)。知識が豊富で、考え方に芯があって、強い人なんです。僕は、いつも弱気になってしまうので、その芯の強さに惹かれるんですよね。

—憧れの対象となるような女性なんですね。

キイチ:まさに、僕の憧れです。

:じゃあ、キイチくんはポールだけど、彼女はリンダというよりは、ヨーコ的な存在なんだね(笑)。

キイチ:うん、そうかもしれないです(笑)。

左から:キイチビール(キイチビール&ザ・ホーリーティッツ)、本秀康
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リリース情報

『鰐肉紀譚』(CD)
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
『鰐肉紀譚』(CD)

2019年5月15日(水)発売
価格:2,300円(税込)
KBHT-0006

1. 鰐肉紀行
2. 今夜浮かれたい
3. Tシャツ
4. こーかい
5. 日照りになれば裸になって
6. 平成がおわる<album take>
7. 透明電車が走る
8. 軽めな二人
9. なんでも知ってる女の子
10. 終電でまた会おうぜ
11. 海老肉志向

イベント情報

『キイチビール&ザ・ホーリーティッツ 2ndフルアルバム「鰐肉紀譚」リリースツアー』

2019年6月7日(金)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
ゲスト:FINLANDS

2019年6月9日(日)
会場:北海道 札幌 Spiritual lounge
ゲスト:さよならミオちゃん

2019年6月20日(木)
会場:福岡県 the voodoo lounge
ゲスト:バレーボウイズ、yound、ハチマライザー

2019年6月22日(土)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK‘N’ROLL
※ワンマン公演

2019年6月23日(日)
会場:大阪府 Shangri-La
※ワンマン公演

2019年6月29日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW X
※ワンマン公演

リリース情報

『あげものブルース』
『あげものブルース』

2019年4月25日(水)発売
著者:本秀康
価格:1,080円(税込)
発行:亜紀書房

プロフィール

キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ

2016年4月にライブ活動をスタートとさせた、東京の5人組ロックバンド。ライブ会場といくつかの店舗/通販サイトにて枚数限定で販売された1stEP「俺もハイライト」/1stミニアルバム「世の中のことわからない」がいつしか全国的に評判になり、完売し、各地のライブハウスを賑わす存在に。2017年の夏には二つのフェス系コンテストを勝ち抜き、ROCK IN JAPANとSUMMER SONICにいきなり出演。注目度が加速度的に上がる。2019年5月15日、2ndフルアルバム『鰐肉紀譚』をリリース。

本秀康(もと ひでやす)

1969年京都府生まれ。イラストレーター、マンガ家。1990年よりフリーイラストレーターとして活動。その後95年にマンガ家としてもデビュー。音楽への造詣が深く、音楽誌への寄稿、CDジャケットのイラストレーションも数多く手がける。2014年には7インチレコード専門レーベル「雷音レコード」を立ち上げる。マンガ『たのしい人生完全版』(青林工藝舎)、『レコスケくん』(ミュージック・マガジン)、『ワイルドマウンテン』(小学館)、『アーノルド』(河出書房新社)、絵本『まじかるきのこさん』(イースト・プレス)など著書多数。

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突然少年“火ヲ灯ス”

教室でも放課後でも負け続けたこと、弱さ故に大事な友達も傷つけてきたことーー振り返るほど情けなさでズタズタになってきた自分達の青春を全部吐き出しながら、だからこそ今まで裏切らず側にいてくれた人を離さず抱き締めて生きていきたいのだと表明する1stアルバムが『サンキュー・マイ・フレンド・アンド・マイ・ファミリー』だ。ブッチャーズ、eastern youth、NUMBER GIRLを抱き締めて離さない号泣ファズは変わらぬまま、アルバムタイトルの通り「誰に何を歌いたいのか」に重心を置いた結果としてバンドサウンドが撚られ、歌がグッと前に出た。汗と唾を撒き散らす激情の成分はやや減ったが、あなたと友達になりたい、友達との絆を目一杯歌いたい、だからまずは自分達が素っ裸になってあなたと向き合いたいという意志がスウィートなメロディに乗って突き抜けている。「たったそれだけ」をたったひとりに伝えるためにもんどり打つ、バンドの核心がそのまま映し出されたMV。端からライブの中核を担ってきた名曲がさらに躍動している。(矢島大地)

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