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雪下まゆは、後味悪いラース・フォン・トリアー映画に救われる

雪下まゆは、後味悪いラース・フォン・トリアー映画に救われる

『ハウス・ジャック・ビルト』
インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影・編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

希望を与えられるより、人間の本質を教えてくれる。雪下が暗い映画を見る理由

―そこで描かれる世界は、決して明るいものではないですよね。

雪下:そうですね。「俯瞰でみてしまう」感覚はずっと昔からあって、絵を描きはじめて、続けていくうちに、諦めがついたというか(笑)、もうこれが私の特性だ、って。

夢を見させられても、そこにうまくなじめないということと関係しているかもしれない。現実を現実のまま受け入れることの方が安心する感じがしますね。

『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真 ©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN
『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真 ©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN

―「安心する」というのはどういうことでしょう。

雪下:人間の嫌な本質とか、理想と離れた現実があることを改めて見せてくれる作品が好きです。そういった絶望を共有してくれる作品は自分に寄り添ってくれる気がするので安心します。

―雪下さんのイラストのリアルなタッチも、そうした感覚のもとにあるのでしょうか。

雪下:そうだと思います。写実はもともとの私のタッチでもあるんですけど、完全にその場にいる人間の姿ではなくて、客観的に見ている人間の視点で描けたらいいなと思っているんです。アニメや漫画を読んできた人間なので、顔にはアニメっぽいテイストも融合している。ある瞬間のことを思い出したり、その記憶に自分の想像を加えたりして、ちょっと表情の口角をアニメっぽく変えつつも、全体的に見ると写実的というバランスで仕上げています。

雪下まゆのイラスト作品
雪下まゆのイラスト作品

―そうして再構成しているときに、ほの暗さが紛れ込むのかもしれませんね。

雪下:私の絵はトリアーの映画みたいに残酷な描写はないですけど、かわいい女の子の絵とか、男友だちが楽しそうにしている絵でも、見た人から「悲しさを感じる」といわれることが多くて。自分の感覚を嗅ぎ取ってくれているんだなと思って、それはとても嬉しいことなんです。

―暗い感情を他の人が持っていることに、SNSでみんな気づきやすくなったんでしょうか。

雪下:それはあるかもしれないですね。誰しも少しは薄暗い面を持っているから、そういうものに魅かれることがあるのかな。私が中高生のときは自分の中でしかそうした感情を消化することができなかった。でもSNSが出てきてから、「みんなもそういうことを考えているんだ」という体験が生まれやすくなったかもしれないです。

でも、狭い空間で、暗い気持ちを抱えている時期もあって自分にとってはよかったんです。SNSでは、共感してくれる人に対してバーッと発散できちゃいますけど、私は孤独に過ごした時期があるから、いろんな映画を見るきっかけにもなったし、いまではよかったな、って思います。

『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真 ©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN
『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真 ©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN
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作品情報

『ハウス・ジャック・ビルト』
『ハウス・ジャック・ビルト』

2019年6月14日(金)から新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:
マット・ディロン
ブルーノ・ガンツ
ユマ・サーマン
シオバン・ファロン
ソフィー・グローベール
ライリー・キーオ
ジェレミー・デイビス
配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム
©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN

プロフィール

雪下まゆ(ゆきした まゆ)

1995年12月6日生まれ、多摩美術大学デザイン卒。イラストレーター。TwitterやInstagramといったSNS上にアップした、女の子をモチーフにしたイラストが、10代、20代の女子を中心に人気を集める。アパレル、CDジャケット、雑誌、またイベントでのライブペイントを行う。主な活動に、国府達矢「ロックブッダ」アルバムジャケットや渋谷PARCOでのライブペイントなど。

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