インタビュー

KOHHとワンオクが歌う「見えない抑圧」 大谷ノブ彦×柴那典放談

KOHHとワンオクが歌う「見えない抑圧」 大谷ノブ彦×柴那典放談

テキスト
柴那典
撮影:CINRA.NET編集部 編集:中島洋一、中田光貴(CINRA.NET編集部)

CINRA.NETで連載中の、大谷ノブ彦(ダイノジ)と、音楽ジャーナリスト・柴那典による音楽放談企画「心のベストテン」。第5回となる今回は、2019年2月にそれぞれアルバムをリリースした、KOHHとONE OK ROCKについて。

ビリー・アイリッシュの躍進に重なるNirvanaの存在や、KOHHとONE OK ROCKが解き放つ「見えない自由」のアンセムなど、自由に話題を横断する音楽トークをお届けします。

彼女(ビリー・アイリッシュ)のやったことは、まさにグランジの時代にNirvanaがやったことと同じ。(大谷)

:大谷さん、ビリー・アイリッシュの新作聴きました?

大谷:聴いた、聴いた! 最高!

:めちゃくちゃすごいですよね。まだ17歳ですよ? だけどデビューアルバムの『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』が世界中で大騒ぎになった。実際、“bad guy”とか聴くと否応なしに彼女の虜になっちゃう感じがある。本当に圧倒的。

大谷:聴いてると価値観がガラッと変わる感じがするんですよね。それまでの時代の主流だったものがひっくり返されるような。

:ミュージックビデオを見ると一発でわかりますよね。ダークで危ういんだけど、それがなによりポップになっている。ビジュアルやファッションのセンスも抜群。

左から:柴那典、大谷ノブ彦
左から:柴那典、大谷ノブ彦

大谷:前にデイヴ・グロールがビリー・アイリッシュを見て「1991年のNirvanaと同じ現象が起きてる」って言ったんですよね。それもすごくわかるなって思った。

Foo Fightersのinstagramより

大谷:だって、彼女のやったことは、まさにグランジの時代にNirvanaがやったことと同じだもん。それまでの格好よさの基準を全部変えちゃった。そういうことができるのって、音楽性だけじゃなくて、存在自体がオンリーワンのスターだからなんですよね。

:そうそう! Nirvanaが登場する前の1990年代初頭のロックシーンは、Guns N' RosesとかMötley Crüeみたいなヘアーメタルと呼ばれる派手なバンドが主流だったけど、それが一気にひっくり返った。

そう考えると、ここ数年の女性ポップシンガーの主流って、ケイティ・ペリーみたいなインスタ映えしそうなキラキラしたポップスターだったわけですよね。

でも、ビリー・アイリッシュは内面の奥の深いところに闇や絶望がある。たとえば“bury a friend”なんて、自分の中の怪物と対峙している曲なんです。MVを見るとわかる。

大谷:なるほど。それに超低音がブンブン鳴ってるサウンドもめちゃくちゃ革新的で、今までのやり方を新しく塗り替えちゃってる感じがするな。しかも、ライブだと大合唱になってるし、絶叫してるファンすらいる。

:そうそう。こういうヘビーでダークな曲をやりながら、確実に大スターになっている。そこもNirvanaと同じ。最高ですよ。

ビリー・アイリッシュ“WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?”を聴く(Apple Musicはこちら

Takaが今の日本を代表するロックスターなのは間違いないんだけれど、僕はKOHHにも同じようなものを感じた。(柴)

:で、今回はそこからONE OK ROCKとKOHHについて語りたいんです。

大谷:いいね、最高!

:ONE OK ROCKは『Eye of the Storm』、KOHHは『UNTITLED』と、どちらもアルバムが2月に出たんですけれど、これがめちゃめちゃいい。

ONE OK ROCK『Eye of the Storm』を聴く(Apple Musicはこちら

KOHH『UNTITLED』を聴く(Apple Musicはこちら

大谷:しかもKOHHのアルバムにONE OK ROCKのTakaがフィーチャリングで参加してるじゃないですか。あの“I Want a Billion feat.Taka”がとにかくヤバい! 新しい時代が来ている象徴みたいな気がします。

:これを聴いて思ったんですけど、KOHHって、ヒップホップアーティストであると同時に、存在感が完全にロックスターなんですよね。

大谷:おお、わかる!

:前にも「心のベストテン」でONE OK ROCKがMr.ChildrenとELLEGARDENをロックスターとして蘇生させたという話をしたじゃないですか(参考記事:大谷ノブ彦×柴那典が語る、ミスチル、ワンオク、エルレの2018年)。

Takaが今の日本を代表するロックスターなのは間違いないんだけれど、僕はKOHHにも同じようなものを感じた。

大谷:なんか、今回のアルバム聴いたらTHE BLUE HEARTSみたいな感じがするんですよ。ラップとしてというより、歌として聴いちゃう。街を歩きながら口ずさんだりするようなポピュラリティがあるというか。

:KOHHの歌声はヤバいですよね。今年の1月に88risingのツアーにゲスト参加してたときも、声の強さとパフォーマンスの身体性で圧倒してました。ラッパーなんだけどメロディもすごく伝わってくるし、シャウトがとにかく迫力がある。

大谷:そうそう! 甲本ヒロトとか尾崎豊を思い出すような感じがある。

:僕はNirvanaのカート・コバーンを思い出しました。

柴那典(しば とものり)<br>1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA』『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。
柴那典(しば とものり)
1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA』『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。
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プロフィール

大谷ノブ彦(おおたに のぶひこ)

1972年生まれ。1994年に大地洋輔とお笑いコンビ、ダイノジを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。音楽や映画などのカルチャーに造詣が深い。相方の大地と共にロックDJ・DJダイノジとしても活動。著書に『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』、平野啓一郎氏との共著に『生きる理由を探してる人へ』がある。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA』 『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRAにて大谷ノブ彦(ダイノジ)との対談「心のベストテン」連載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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