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なぜAlfred Beach Sandalは名義を変えた? 北里彰久が語る

なぜAlfred Beach Sandalは名義を変えた? 北里彰久が語る

北里彰久『Tones』
インタビュー・テキスト
松永良平
撮影:前田立 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

シンプルさと「ゆるい」みたいな感覚は、俺にとってはイコールじゃない。

―アルバムは全9曲ですが、制作の起点になった曲はどれですか?

北里:起点か……。ライブで早くからやっていた曲だと“夏のさなか”とか“出発”とかですけど、「いけるんじゃないか?」って自分で思えたのは“子午線”ですね。順番的には“夏のさなか”“出発”が一番古くて、そのあとが“チークタイム”“Easy Tempo”、それで“子午線”って感じですね。

北里彰久“子午線”を聴く(Apple Musicはこちら

―“子午線”が決め手の曲だと思えたのはなぜ?

北里:とにかく音を減らしたかったんですよ。音の密度を減らして、隙間に気配があるような曲にしたかった。“子午線”はそれを全体的なアンサンブルの構成含めてうまくやれたし、自分で作っていてハッとできたという感じですね。“子午線”ができたときに「これが1曲目だな」と思ったんですよ。全体の流れもはっきり見える感じがして、あとは今あるパーツの情景をつなげられる曲があればいいと思った。

―過去のアルバムにはドーンと迫力のある曲もハイライト的に入っていたりしたけど、そういう意味での主張も本当に控えめになっていますよね。

北里:それも「(音を)減らしたい」という主張ですね。とにかく引く。隙間を鳴らしているような感覚で音楽をやりたいんです。自分が思うドープさっていうのは、音そのものは軽いけど奥にある情景が深いってこと。そういうことがやりたい、って今回一緒にやる人みんなに言いました。

―それは、周りや同時代を見て何か感じている部分もある?

北里:わかんないすね。年齢的な部分もあるのかな? 自分と人を比較してどうこうって感じじゃないんで。時代に対しては思うことめちゃありますけど。

北里彰久

―そういう意味で今回は、こういうリファレンスとなる音源があって、みたいな話でもないですよね。

北里:あるっちゃあるけど言わないですね。それに、リファレンスっていうのともちょっと違うんですよね。「あのアルバムのここが」っていう感覚は俺にはあんまりないし、そういうことよりは別のことがきっかけになるって感じで。結局、リファレンスも先に外枠を決めるっていう話になるじゃないですか。

―そうか、外枠じゃなく、むしろリファレンスすべきは自分の内側ということかもしれない。

北里:内を形にするために外がある、って感じですね。

―そういう意味では自分の歌声で外に向けて実現できている何かがある、というのは多かれ少なかれ感じるでしょう?

北里:まあ、この声だったことしかないからいいも悪いもないんですけど、音楽を作ってくうえで声は出してますからね。この声が自分の音楽に向いてるってことなんだなと思いはしますね。

北里彰久

―これだけシンプルな音作りしていても、歌声がひとつの楽器として機能してるからプアな感じはまるでないし、むしろ歌が前面に出たことでさらに豊かになっていますよね。

北里:その豊かさは言葉の意味もあってのことだし、本当にいろんな要素があると思います。音の積み重ねというか、一つひとつの音をもっとシンプルにして、一音一音に音量という意味でない重さがあるものにしようという意識はあったかな。シンプルさと「ゆるい」みたいな感覚は、俺にとってはイコールじゃない。

―その一音へのこだわりって、「この一音の置き場がちょっとでもズレたら全体が成立しない」っていうような窮屈さとも違いますよね。

北里:自由度というか、よいルーズさは欲しいですね。それが音楽なんだとも思うし。本当にすべてをひとりでやったらストイックな方向にいくのかもしれないですけど、フレーズを指定したとしても他人に弾いてもらったらその人の音に変わるじゃないですか。自分と他人との関係性が作用する部分は絶対あるから、それも含めて自分の音楽は懐の深いものでありたいなと思います。

北里彰久“Fortune”を聴く(Apple Musicはこちら

―そういう意味で『Tones』は、これまで人とやることで得ていたバンド感を自分発信のものとして作られた作品だと言えるのかも。これを作ったことで、北里彰久としてのこれからのビジョンも見えている?

北里:そうですね。それを語るのは野暮だから言わないですけど。でもまあ、名義の変化はそんなに劇的なものでもないんですよ。俺はもともと北里彰久として生まれてきてるから(笑)。今までやってきたことも間違ってないし、今作もそれがあったからできたことだと思うし。Alfred Beach Sandal名義も自分のなかでは地続きのことだから、捨ててしまうわけではないんで。使い方が思い浮かべばまたいつか使うかもしれないですね。

北里彰久
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リリース情報

『Tones』
北里彰久
『Tones』(CD)

2019年7月10日(水)発売
価格:2,700円(税込)
PECF-1175

1. 子午線
2. Easy Tempo
3. チークタイム
4. Flowers for a Stranger
5. エンドオブヴァケイション
6. 夜光のスケッチ
7. 出発
8. 夏のさなか
9. Fortune

イベント情報

『北里彰久“Tones”release tour』

2019年7月28日(日)
会場:長崎県 崇福寺 Coffee & clayworks 笠
Live:北里彰久(Acoustic Band Set)
料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

2019年7月30日(火)
会場:福岡県 正屋 本店
ライブ:
北里彰久(Acoustic Band Set)
Cobalt boy
料金:前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

2019年9月1日(日)
会場:兵庫県 神戸 旧グッゲンハイム邸
ライブ:北里彰久(Band Set)
前売:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

2019年9月14日(土)
会場:東京都 青山 CAY
ライブ:北里彰久(Band Set)
DJ:nutsman
料金:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

2019年10月5日(土)
会場:愛知県 名古屋Live&Lounge Vio
ライブ:北里彰久(Band Set)/ odd eyes
DJ:nutsman
料金:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

プロフィール

北里彰久
北里彰久(きたざと あきひさ)

2009年よりフリーフォームなソロユニットAlfred Beach Sandalとして活動開始。3枚ほどアルバムを作る。ロックからMPB、ブラックミュージックまでを三次元的にイビツに迷走していく手腕には一定の評価をいただく。「DJ的発想で曲を作っている」と言われ、いい気になって「そうですね」と答えたことがある。最近はよりひとりぼっち方面の活動が増え、歌にフォーカスしていく傾向がみられる。ギターもちょっと弾ける。

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