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町田康からbetcover!!へ。約40年の表現活動で得た確信を伝える

町田康からbetcover!!へ。約40年の表現活動で得た確信を伝える

betcover!!『中学生』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:前田立 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

今は時代的に、現実ではないものや、「わからないもの」をわからないまま受け入れてもらえないような気がしていて。(ヤナセ)

ヤナセ:僕は最近、空想世界というか、現実世界ではないものの意味合いをすごく考えるんです。僕の歌詞は、ほとんど自分でもよくわからないようなところから生まれている感覚もあって。

ヤナセジロウ(betcover!!)

ヤナセ:そもそも小さい頃から、僕はずっとイメージのなかの空想世界に現実逃避をしてきたし、未だにその世界を突き詰めて音楽にしている感覚があるんです。

町田さんが書く歌詞にも、僕は現実世界ではないものが描かれているような気がするんですけど、今は時代的に、現実ではないものや、「わからないもの」をわからないまま受け入れてもらえないような気がしていて。でも、僕はなぜ「わからない」ものを表現するのか、自分でもわからないくらいなんです。その答えを探す過程を、ずっと続けていたいっていう気持ちで今はいるんですけど……。

町田:それでまったくいいと思いますよ。ある種のフィクションを作るということは、この世に生きている僕たちが、自分の体というフィルターを通して、もうひとつの「この世」を作ることだと思うんですよね。だから、現実にどんどんのめり込んで、リアルを突き詰めていくことも、もうひとつの「この世」を作っていることなのかもしれないし、個人の世界にグッと凝縮していくことも、もうひとつの「この世」を作ることなのかもしれない。

それが、どこか甘美だったり、美しかったり怪しかったりすると、人は「そこに行きたい!」と思うわけで。そういうものを突き詰めて作ろうとすることが、表現する者のエロスや衝動として、とても大切なものだと思いますね。自分自身を振り返ってみても、そういうものを作りたいと思って、いろいろ失敗しながらやってきたんだと思います。

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―先ほどヤナセさんがおっしゃった、「わからないもの」をわからないまま受け入れてもらえない今の時代感というのは、とても感じるところがあります。町田さんが今のヤナセさんと同じ20代前半だった頃と比べても、今はかなり様子が違っているのかなと思うのですが。

町田:たしかに時代は変わりましたよね。でも、こういうことを言ってしまうのは年寄りの悪い癖で、「昔がよくて今が間違っている」なんていうことはないですからね。時代が変わると、人の心も変わるのは当たり前ですから。

―たしかに、そうですよね。

町田:ただ、それこそ『アース・ビート伝説』の頃なんかは、みんな「わからない」もののほうがなにかあるんじゃないかと思って、見世物小屋に入っていくような感覚で、わからなければわからないほど興味を持ったし、好きでしたね。情報という名の照明が不足していたので、今よりもっと世の中が薄暗かったんですよ。なんでもないゴミの山を見て「あっち行ったら素晴らしいんだろうな」っていう夢や希望を持てたんです。

でも今は照明が明るいから、「ここもゴミや、あそこもゴミや」って見えるわけですよね。で、遠くのほうに山があって、その山に行くまでにはいくつもの貧民窟があるんだけど、山頂には白亜の豪邸が立っている。その山頂だけはボンヤリして見えないんだけど、「どうやら、そこに行ったやつもおるらしい」っていう噂だけは流れている(笑)。そんな感じですよね、今は。……どうです、今はキツいですか。

町田康

ヤナセ:おっしゃるように、今は照明が明るくて世間の見通しがいいなと思うんです。でも、それだけ見通しがいいと、色の強いものしか目につかないんじゃないかっていう気がしてくるんですよね。闇だと、すべてが平等じゃないですか。でも、今の時代の明るさのなかでは、僕くらい色彩の弱い人間は見てもらえないんじゃないかっていう不安もあるんです。わかる / わからない以前に、スルーされてしまうんじゃないか? っていう。

町田:それは大丈夫ですよ。世間って、意外に公平なんです。頑張っていると、気づいてくれる人はいます。自分の知らないところで、「betcover!!、ええな」と思っている人はたくさんいると思いますよ。そういう人たちの思いが、現実的に自分に届くかどうかは別にしてね。

それに、大事なのは結局「自分」なんですよ。世の中がどうあろうと、自分が自分のやっていることに対してどれだけ真面目になれるかっていうことが、なにより大事だと思います。周りを見たら、「大したことのないやつが派手にやっているな」って思うこともあるかもしれないけど、そいつのせいで自分がどうにかなっているわけではないですから。

自分が妥協せず、ちゃんとしたことをやっているかどうか。それだけがものを表現する人間のポイントですね。結果はすぐには出ないですよ。結果というのは「売れる / 売れない」ということではなく、自分にとっての「やれたな」という実感。これはある種、人生を賭けた博打なので。それをやると自分で決めたのであれば、腹を決めて、自分のやりたいことをやっていくしかないですね。

左から:町田康、ヤナセジロウ(betcover!!)
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リリース情報

betcover!!
『中学生』(CD+DVD)

2019年7月24日(水)
価格:3,564円(税込)
CTCR-14973/B

[CD]
1. 羽
2. 水泳教室
3. 異星人
4. 決壊
5. 雲の上
6. 世界は広いよ
7. ゆめみちゃった(アルバムver.)
8. 海豚少年(アルバムver.)
9. 素直な気持ち
10. 中学生

[DVD]
・“異星人”PV
・“海豚少年”PV
・レコーディングドキュメント

betcover!!
『中学生』(CD)

2019年7月24日(水)
価格:3,024円(税込)
CTCR-14974

1. 羽
2. 水泳教室
3. 異星人
4. 決壊
5. 雲の上
6. 世界は広いよ
7. ゆめみちゃった(アルバムver.)
8. 海豚少年(アルバムver.)
9. 素直な気持ち
10. 中学生

イベント情報

『1st.フルアルバム発売記念 単独公演「中二魂」』

2019年8月23日(金)
会場:東京都 渋谷WWW

プロフィール

betcover!!(べっとかばー)

1999年生まれ多摩育ちのヤナセジロウによる音楽プロジェクト。小学5年生でギター、中学生のときに作曲をはじめ、2016年夏に本格的に活動を開始。同年レーベル主催企画で初ライブ、その次はロッキングオン主催の『RO JACK for COUNTDOWN JAPAN』で優勝し『COUNTDOWN JAPAN 16/17』に出演。2019年7月24日、メジャーデビュー作となる1stフルアルム『中学生』をリリースした。

町田康(まちだ こう)

1962年大阪生まれ。作家・詩人・パンクロッカー。町田町蔵名義で歌手活動を始め、1981年パンクバンド「INU」の『メシ喰うな!』でレコードデビュー。96年、処女小説『くっすん大黒』で文壇デビュー。2000年『きれぎれ』で『芥川賞』、2005年『告白』で『谷崎潤一郎賞』、2008年『宿屋めぐり』で『野間文芸賞』を受賞。

関連チケット情報

2019年10月5日(土)
新宿フィールドミュージアム -shin-音祭 2019
会場:新宿文化センター(東京都)
2019年11月21日(木)
NITRODAY/betcover!!
会場:Shibuya WWW(東京都)

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