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いとうせいこう×三浦康嗣 かつての新宿、変わりゆく東京の街を思う

いとうせいこう×三浦康嗣 かつての新宿、変わりゆく東京の街を思う

『-shin-音祭 2019』『-SHIN-夜祭 2019』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:永峰拓也 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

有名な映画館やスポットがいくつかあって、そこが発信地・巣窟だったんだよね。(いとう)

―おふたりと新宿のゆかりというと、まだまだありそうですよね。

いとう:そうだね。スペースシャワーTVで『スペ中(熱血! スペシャ中学)』(2003~2006年)の収録をしてたのもスタジオアルタだったし。収録後はよく新宿で呑んでた。

三浦:そうだったんだ。当然見てましたよ。

いとう:□□□を呼んだのもスペースシャワーTVのクイズ番組だしね。そんなこと滅多にないんだけどMVを見て「これはいい! こいつら呼んでくれ!」っていうのが最初だから。

三浦:じゃあ、いとうさんはまさに新宿で□□□のMVを見た可能性がある、と。

いとう:そうそう、そしてメンバー加入にまで至ると。

三浦:無理やり新宿につなげましたね。加入を決めたのは渋谷の飲み屋でしたけど。

三浦康嗣

いとう:そこも新宿だったらなー(笑)。新宿にまつわる思い出といえば、まずは映画かな。『フリークス』(トッド・ブラウニング監督 / 1932年)の再上映とか、過激でヤバい映画はだいたい新宿で観てる。マルクス兄弟とか、古いコメディ映画を観たのも新宿。

三浦:演劇も盛んじゃないですか。花園神社でテント芝居やったり。そういうものとも関係してたんですか?

いとう:有名な映画館やスポットがいくつかあって、そこが発信地・巣窟だったんだよね。俺が大学生くらいのころだと、かつての全共闘世代が新宿の顔みたいな時代だから、正直「めんどくせえなあ……」って思いつつ距離を置いてた。

とはいえ、なにかに触れたいと思ったら新宿以外なかったからね。みうら(じゅん)さんもよく新宿に来てたと言ってたから、1980年代は絶対どこかですれ違ってたはず。同じ映画館で同じ映画を観てたかもしれない。

それから音楽に関しては、いちばん最初にライブハウスに行ったのも新宿。The Specialsが来日して、本当は中野サンプラザかどっかで公演するはずがキャンセルになったんだよね。それで場所がよくわからないライブハウスになって。なにも知らない大学1年生の俺はドキドキで足を踏み入れたよ。

左から:いとうせいこう、三浦康嗣

三浦:小さいところは危険感ありましたよね。なにかあっても店員も味方になってくれなさそうな無法地帯。

いとう:よい意味で人の自立心を養ってくれるよね(笑)。そういった経験を経て、クラブやディスコに出入りするようになるわけだ。ツバキハウスで藤原ヒロシとか(高木)完ちゃんと出会ってね。一般的に、新宿の1980年代をすっ飛ばして原宿・渋谷文化に行っちゃいがちだけど、そんなことはないのよ。みんな新宿を経由してた。

三浦:地理的にも近いですもんね。

いとう:みんな新宿の匂いがあった。パンクにロック、それを経由したうえでのヒップホップ。

三浦:いきなりヒップホップが輸入されて「じゃあやろう!」じゃないですもんね。その衝撃を受ける前提として、それ以前のアンダーグラウンドなものに浸った経験があるわけだから。

いとう:みんなアディダスを紐なしで履いててB-BOY感あるけど、そのうえはボンデージパンツで、それってロンドンパンクじゃない。混ざってる(笑)。その流れでヒロシたちがヴィヴィアン・ウエストウッドの帽子をかぶってたわけだけど、それから数十年が経ってアメリカのやつらがそっくり真似てるのを見ると、感慨深いものがあるよね。

要は、ヒップホップ以前の豊かで過激なカルチャーはだいたい新宿から入ってきてた。というか、新宿ぐらいしか受け止める場所はなかったと思うんだよ。

左から:いとうせいこう、三浦康嗣

この街には、「東京ジャマイカ」な感じがあるよ。(いとう)

―キーマンになるような人もいたんでしょうね。

いとう:そう思う。あとは、昔から拠点になるライブハウスがきちんとあったのが大きいかな。ヒップホップ全盛になってくると、アンダーグラウンドからメジャーを志向する動きも出てくる。そうするとオオバコが湾岸にできて、人の移動が起きる。懐かしいね。

三浦:そのあたりの1990年代がまさに僕の青春期というか。新宿の雑多な感じを体現するものとして新宿LIQUIDROOMは大きかったです。1000人ちょっとくらいの規模のハコに、海外の面白いやつらがライブをやってた。LIQUIDROOMは、のちに現在の恵比寿に移転するから、そのあたりにも新宿から渋谷へっていう流れが見える。

たぶん僕にとってのせいこうさんのThe Specialsにあたるのが、イギリス出身のRoni Sizeあたりで、バンドでドラムンベースをやるってやべえな、とか。そういう新しいものを見たくて通っていました。非アメリカ発という意味では、MCのラップみたいな感じもラガ(ラガマフィン)もジャマイカの移民文化から派生したものだし。

いとう:意外と新宿はジャマイカの雰囲気とつながってるのかも。ギャングスタ的な意味でも、路上にいるホームレスのおじさんとか(笑)。この街には、「東京ジャマイカ」な感じがあるよ。

三浦:「東京ブロンクス」って言ってたおじさんがこう言ってるんだから間違いない(笑)。

左から:いとうせいこう、三浦康嗣

いとう:他には、僕よりも10年くらいうえの世代だとジャズ、「ズージャ(敗戦後の日本のバンドマンの間で使われていたジャズの隠語)」の文化も。はっぴいえんども出入りしてたレコード喫茶の新宿風月堂だと、当時のフーテン、ドラッグ文化とも絡み合うし、若き日の坂本龍一も通ってた。

三浦:commmons(坂本龍一が代表する音楽レーベル、プロジェクト。□□□もかつて在籍していた)までつながってきましたね(笑)。

いとう:あと、俺の嫌いな文壇バー! 銀座以外に新宿にもあって、本当に嫌なんだけど無理矢理つれていかれてさ。案の定カウンターで論争・ケンカしてる。

三浦:村上春樹といとうせいこうが嫌いなことでおなじみの文壇ですね。まあ、できるだけ関わり合いになりたくない。

いとう:もうそのアフターのしらけ世代だったからね。熱かった時代を冷ややかに見るという感じで、批判的に出てきたのが僕らだから。

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イベント情報

『新宿フィールドミュージアム「-shin-音祭 2019」』
『新宿フィールドミュージアム「-shin-音祭 2019」』

2019年10月5日(土)
会場:東京都 新宿区立新宿文化センター
出演:
GRAPEVINE
あらかじめ決められた恋人たちへ
bonobos
□□□
MONO NO AWARE
サンガツ
KAKATO(環ROY&鎮座DOPENESS)

国府達矢バンド
betcover!!

haruru犬love dog天使
Kaco
室井雅也
and more
料金:3,000円

『新宿フィールドミュージアム「-SHIN-夜祭 2019」』
『新宿フィールドミュージアム「-SHIN-夜祭 2019」』

2019年10月4日(金)
会場:東京都 新宿 LOFT、ROCK CAFE LOFT、MARZ、ACB HALL
出演:
石野卓球
菊地成孔(DJ) feat. FINAL SPANK HAPPY
三浦康嗣(DJ)
999999999
Compact Club
and more
料金:3,000円

プロフィール

□□□
□□□(くちろろ)

1998年に三浦康嗣を中心にブレイクビーツユニットとして結成。以降、徐々にポップス中心のスタイルへと移行。現在のメンバーは村田シゲ、いとうせいこうと、「契約社員」として募集したボーカリスト9名を含めた計12名。2004年にHEADZ内のWEATHERより1stアルバム『□□□』をリリース。2006年には坂本龍一らが設立したcommmonsへ移籍、2007年にブレイクビーツアルバム『GOLDEN LOVE』をリリースする。2009年にはフィールドレコーディングオーケストラと銘打った『everyday is a symphony』、声のみで構成した『マンパワー』など作品毎にさまざまなコンセプトを提示している。2016年、the band apart主宰のasian gothic labelに移籍。the band apartのメンバー全員をボーカリストに迎えたコラボレーション作品『前へ』をリリース、2017年7月に移籍後初の単独音源『LOVE』を発表した。

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