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『バジーノイズ』むつき潤とカムラ ミカウが語る、人間関係の葛藤

『バジーノイズ』むつき潤とカムラ ミカウが語る、人間関係の葛藤

カムラ ミカウ『ENVY』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:西槇太一 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)

「嫉妬」は健全なものだと思う。冷笑的になるよりはよっぽどいいよね。(むつき)

―そもそも、それぞれの「作品を作って残す」ということに向けるモチベーションは、どこから湧いてくるものだと言えますか?

カムラ:僕は小さい頃から「なにかを残したい」という気持ちが強いんですよね。子供の頃から、ビビりだし引っ込み思案なんですけど、心の奥のほうでは「でも、目立ちたい」みたいな気持ちが強くて……言ってしまえば、承認欲求が強いんだと思うんです。

カムラ ミカウ

むつき:カムラくんが承認欲求が強いっていうのは、意外やね。

カムラ:僕、かなり嫉妬深い性格なんですよ。

―今回のEPのタイトルも『ENVY』ですもんね。

カムラ ミカウ『ENVY』ジャケット。この絵はカムラミカウ自身によるもの
カムラ ミカウ『ENVY』ジャケット。この絵はカムラミカウ自身によるもの(Amazonで見る

カムラ:そう、そのくらい嫉妬深いんです。学生の頃から、目立つやつがいると気になってゾワゾワしてくる。いつも「俺のほうが面白いことができるはずや!」って思っていたんですよね。でも、あくまで「思っている」だけで、実際にはなにもできなかった。ずっと「なにかしたい」って悶々としていた中で音楽に出会ったんです。「こんなに自分を表現できるものって、他にはないな」って思ったのが、音楽をやっていこうと思った理由だと思います。

突き詰めると、僕はかまってほしいんですよ。「俺を見てくれ!」ってずっと心の中で思っているし、その気持ちが音楽活動に直結していると思う。

カムラ ミカウ

―その嫉妬心や承認欲求には、なにか理由があるものなのでしょうか?

カムラ:理由はないんですよ。理由もなく、満たされない。それで誰に対しても、心の中で嫉妬の矛先を向けてしまうんです。でも、「もの作りをしている人って大体、嫉妬深いんじゃないか?」とも思うんですよね。

むつき:そうだね、たしかに嫉妬は健全なものだと思う。冷笑的になるよりはよっぽどいいよね。ものを作る人は、みんなどこかでセルフィッシュだと僕も思う。

左から:カムラ ミカウ、むつき潤

特に1巻は、僕が誰にも言えなかったことを、独白のように描いた。(むつき)

むつき潤

むつき:『ENVY』を聴いて、どの曲も「カムラ ミカウだな」って思ったんよね。そういうものが作れるのは羨ましい。カムラくんは自分の本質を抽出するときに、それが「ENVY(嫉妬)だ」と認識できていることが、そもそもすごいことだと思う。

カムラ:はじめから認識しているというよりも、この6曲が出揃ったときに「これらの曲に共通している感覚は、ENVY(嫉妬)だ」って気づいたという感じではあるんですけどね。

むつき:なるほどなぁ。『バジーノイズ』で言うと、僕の場合、1巻はゴロッと「自分自身」やったんよね。そもそもこの作品は、外部から「バンド漫画を描いてみませんか?」って題材をもらう形で出発したから、尚更「これは僕の作品なんや」と強く意識しながら描こうと思っていて。どれだけ音楽について描いていても、結局は、僕が漫画を描く中で思っていることしか描いていない。

特に1巻は、ほとんど僕の思想の羅列に近くて。僕が「思っているけど、どこかで言うまでもないこと」として抱えていたものを、独白のような感じで描いたから、それを外に出しホッとするような感覚があった。それに対して共感の声を聞くことで、報われる感覚があったというか。誰にも言えなかったことを漫画にすることで、「こういうタイプの人、俺以外にいないですか?」って問いかけていくような感覚があったんよね。

『バジーノイズ』1巻より
『バジーノイズ』1巻より
『バジーノイズ』1巻より

むつき:そこからストーリーが進むにつれて、どんどんとフィクションを紡いでいった感覚があるんやけど……『ENVY』の6曲って、カムラくんの内部的には並列なの? それとも「こっちのほうが自分の深い部分を言っているな」って階層になっている感じ?

カムラ:例えば1曲目の“scandal arts”は、自分以外の人たちも恐らく思っているであろう、SNSを通じて感じたりする嫉妬や妬みをまとめた曲で。だから自分の内部の階層としては浅いんですよね。でも、2曲目の“狼”や5曲目の“バルカロール”は、完全に自分から溶け出してきたどろっどろの嫉妬の感覚が歌われている曲で、自分の中でも深いです。「この救われない自分を、どうにか救いたい」という気持ちで曲にしている感覚がありますね。

カムラ ミカウ『ENVY』を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

カムラ ミカウ『ENVY』
カムラ ミカウ
『ENVY』(CD)

2019年8月7日(水)発売
価格:1,728円(税込)
DDDPCD-00433

1. scandal arts
2. 狼
3. ふしだらにさよなら
4. dance dance dance
5. バルカロール
6. kitsune pride

書籍情報

『バジーノイズ』
『バジーノイズ』

著者:むつき潤
発行:小学館

プロフィール

カムラ ミカウ
カムラ ミカウ

1994年生まれ。from 大阪。電子音楽、ロックに特に影響を受け、作詞、作曲、編曲、トラックメイク、プログラミング、ミックスまで行うシンガーソングクリエイター。アンビエントやエレクトロニカなどの電子音楽の影響下にある浮遊感に満ちたトラックに、温かみのあるギターと繊細に言葉を紡ぐ歌声が特徴。2016年より現スタイルで本格的に活動スタート、1st E.P『ペトリコールと産声』をリリース。2018年4月にYouTube上で発表したミュージックビデオ“はるたちのぼる”が、早耳リスナーの間で注目を集め、同年9月に同楽曲が収録された2nd E.P『chaouen』をリリース。フジテレビ系音楽番組『Love music』番組スタッフイチオシのニューカマーを紹介する「Come music」での紹介、日本テレビ系『バズリズム 02』新春企画「これはバズるぞ2019」にランクイン。さらには「myblu」テレビCM「新しい選択」篇の楽曲制作・歌唱を担当するなど、様々なCMへの楽曲制作・歌唱抜擢でも注目を浴び始めている。

むつき潤(むつき じゅん)

マンガ家。兵庫県出身。大学時代に新人賞を2度受賞。大学卒業後、新聞社でバイトをしながらマンガを描きつづけ、2015年『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載された『ハッピーニューイヤー』でデビュー。2018年5月から『週刊ビッグコミックスピリッツ』で初の連載マンガ『バジーノイズ』を執筆中。自身がプロデュースする漫画と音楽の融合ライブ『BUZZY NOISE LIVE』を開催し、好評を博す。

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