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小林清乃が関心を持つ、市井の人が残した記録物と世界との関係

小林清乃が関心を持つ、市井の人が残した記録物と世界との関係

Shiseido art egg
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

「何者でもない人の『語り』の集積に興味があるんだな、と気づいたんです」

『Polyphony 1945』は、朗読の声を使って、かつての時代の感触を表現した作品だが、このようなアイデアのきっかけは、小林が小学生のころにしていた遊びに遡るのだという。担任の先生が持っていたカセットテープレコーダーを借りて、友だちと一緒に昔話の登場人物になりきって録音してみたり、それを校内放送で流してみたり。そんな音を使った遊びはその後も断続的に続いたようで、中学では演劇部、高校では放送部に入部した。

小林:NHKの放送コンクールのために、ラジオドラマ風味のドキュメンタリーを作ったんです。高校が甲子園の強豪校だったので、野球部の応援をする応援部部員にインタビューして、編集をして、応援部の視点から一夏の物語を語る、という内容でした。

この他にも文化祭や体育祭を記録するためにビデオカメラを持ち出して、半分エッセイみたいなドラマを作ったり。そういう経験から、映像を学べる日本大学芸術学部映画学科に進学しました。

映画だけでなくアニメーションやドキュメンタリーなど映像に関わる多くのことが学べる映像専攻に進んだ小林は、自分の進みたい方向を探るため、さまざまな表現を試し、さまざまな場所へと足を運んだ。2004年に起きた「イラク日本人人質事件」で誘拐された3名が出演するイベントの記録撮影に加わったり、戦場にカメラを持ち込み世界初の映像ドキュメンタリーを撮ったジョン・アルパートと津野敬子に会うためにニューヨークのスタジオを訪ねたのも、好奇心に突き動かされてのことだったかもしれない。

小林:「映像ってなんだろう?」という根源的な疑問に心が向かっていたんですね。大勢で作るビデオアートみたいなのも撮ったし、ナレーションのないドキュメンタリーもやったし、自分の内面へと潜っていくようなアニメーションも作って……模索していましたね。

―今に通じる要素もあれば、ちょっと違うようなことにも触れてみる、という感じですね。

小林:そうですね。その後、ある出版社に入社したんですが、じつはその経験も大きかったんですよ。

そこはエッセイや自伝、自作の詩集を出版したい人のための自費出版部門がある会社で、仕事柄、普通の人たちの原稿をたくさん読むんです。プロの書き手ではないので未熟なところも多々あるんですけど、筆の迷いや熱量の込もった個人的な想いみたいなものに触れていると、やっぱり私は、何者でもない人の「語り」の集積に興味があるんだな、と気づいたんです。

小林清乃

日常の経験から「声」や「語り」への興味の発見と同じように、「アート」との出会いも突然だった。

小林:東京都現代美術館で行われた、オノ・ヨーコの個展(『YES オノ・ヨーコ』展、2004年)に行ったんです。そのなかで、文字を使った作品を見た瞬間に私のなかの何かが開いた感じがしました。

たった一文字で想像力をかきたてる、インストラクション(指示)の作品が印象に残っています。いろんな映像表現を勉強するなかで、スクリーンやモニターを使ってイメージを映し出すものが映像なんだという考えに固執してきましたが、自分にとってリアリティーのある映像というのは、頭のなかのイメージや過去の記憶、もしくは未来の出来事を予感させる感覚でもあったんです。

ドキュメンタリー映画などからは、死者がまるで生者のようなリアリティーを持って映される映像の具体的な特徴を学びましたが、ヨーコの、たとえば「IMAGINE(想像してごらん)」の一言からは、自分の頭のなかで時間軸を伴ったイメージとして再生される、別の映像の可能性を学んだように思います。これが、自分のなかでアートと映像が結びついたきっかけかもしれません。

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イベント情報

『shiseido art egg 13th』

小林清乃展
2019年8月2日(金)~8月25日(日)
会場:東京都 資生堂ギャラリー
平日11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
入場無料

遠藤薫展
2019年8月30日(金)~9月22日(日)
会場:東京都 資生堂ギャラリー
平日11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
入場無料

作家によるギャラリートーク

小林清乃
2019年8月3日(土)14:00~14:30
会場:東京都 資生堂ギャラリー

遠藤薫
2019年8月31日(土)14:00~14:30
会場:東京都 資生堂ギャラリー

※事前申し込み不要。当日開催時間に直接会場にお越しください。
※予告なく、内容が変更になる場合があります。
※やむを得ない理由により、中止する場合があります。
中止については、資生堂ギャラリー公式Twitterにてお知らせします。
※参加費無料

プロフィール

小林清乃(こばやし きよの)

1982年生まれ。日藝映画学科卒。市井の人々が残した記録物から、特に日記や手紙などに書かれた言葉、話された会話に関心を持ち、パーソナルな語りを集め展開していくことで、個人の視点からみた世界と俯瞰的または普遍的な観察点からみた世界との内的関係を探る。2017年、第二次世界大戦中に書かれた手紙の音声化を手掛けたボイスサウンド作品《Polyphony1945》を制作。2018年夏はポートランドのレジデンスプログラムEnd of Summerに参加。

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