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パブリック娘。が、おちゃらけたノリを卒業 3人に何があった?

パブリック娘。が、おちゃらけたノリを卒業 3人に何があった?

パブリック娘。『アクアノート・ホリデイ』
インタビュー・テキスト
高岡洋詞
撮影:垂水佳菜 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

聴く人と1対1で対峙する音楽にしたかった。(齋藤)

左から:清水大輔、齋藤辰也、文園太郎

―2ndアルバムを作るにあたっては、どんな青写真があったのですか?

齋藤:とにかく自分にとって価値のある作品にしたかったんです。自分がすごく好きなレコードと並べても恥ずかしくないものにしたかった。今、The Velvet Undergroundの3枚目(1969年発表の『The Velvet Underground』)にハマってるんですけど、初めて聴いたときに、こんなにも年代が関係ない、一昨日録ったって言われても不思議じゃない音楽があったのかという衝撃を受けたんです。

あのアルバムにはルー・リードが自分でミックスした「Closet Mix」というのがあって、それはとにかく声が大きくミックスされていてエフェクトもオーバーダブもほとんどないんですけど、なぜそうしたのか考えると、ひとつには、自分の歌と詞に自信があるからだろうと思うんです。

パブリック娘。“泡feat. 城戸あき子”を聴く(Apple Musicはこちら

―声が大きくミックスされているのには、そんな理由があったんですね。

齋藤:(文園)太郎に「クラブでかけたら本当にそこに人がいるみたいに聴こえそう」って言われましたけど、僕はそういうことがしたかったんです。真紀夫さん(萩谷真紀夫、今作のエンジニア)がヴィンテージの真空管を通して声を録音してくれたので、そのよさも活かしたかった。この音楽を聴く人と作った僕たちと、1対1で対峙したかった。といっても暑苦しい感じじゃなくて、ジャケ写みたいに部屋の片隅に佇むような感じで。

作り手側で「歌声は楽器ぐらいにしか思ってない」って言う人がたまにいますけど、少なくともラップみたいに声が前面に出てくる音楽で「歌詞は気にしなくていい」みたいな考え方をしてしまったらダサいし怠慢だと僕は思います。そういうこともあって今回は大きなテーマを歌うことにも価値があると思ったし、“空”は友達や近しい人の死、“水槽”は閉塞感のイメージを書いたんです。

パブリック娘。“空”を聴く(Apple Musicはこちら

齋藤:“LOVE”なんて、ジョン・レノンを筆頭にあらゆるミュージシャンが歌ってるテーマでありタイトルですけど、それを自分たちが真正面からやったときにどうなるか知りたいし、やるべきだと思いました。僕はパーティーがどうのこうのみたいなアッパーな音楽はもう聴かないし、自分でやろうなんて思えません。

―ヒップホップって、ルーツがダンスミュージックでありパーティーミュージックだし、聴き手との対峙をそこまで考えるのは、わりとラディカルかもしれませんね。

齋藤:少なくともパーティーミュージックっていう意識では作らなかったですね。このジャケも含めて、どっちかというとフォークに近い。フォークって聴いてる人とやってる人の距離が近いじゃないですか。

最近、ニック・ドレイクとかすごくよく聴いていて、そういう音楽を頭のどこかで意識していました。“LOVE”のトラックでパーティーチューンを作るのは簡単だったと思うんですけど、それはしたくなかったんです。聴く人と1対1で対峙する音楽にしたかった。

パブリック娘。“LOVE”を聴く(Apple Musicはこちら

ふたりに言われて追い込まれたほうがいい曲ができるんだなって思いました。(文園)

―“どうする”で<今年で俺らも、30歳>と歌っていますが、今作の背景には、年齢的なことも関係があるのでしょうか?

齋藤:特にないですね。太郎が歌ってるだけです。2年前は<28歳>って歌ってたわけで、たまたまだと思います。強いて言えば、20代のうちに何か納得できるものを作っておきたい気持ちはあったかもしれない。The Beatlesも20代のうちに解散してますからね。たまたまじゃなく、そういうものを作ろうと意図して作れたのはよかったなって思います。今回、太郎からアイデアが出てこなかったから、全部僕が仕切ったんです。そこは前作と大きく違う点です。

パブリック娘。“どうする”を聴く(Apple Musicはこちら

清水:今作は、指揮官的な仕事が齋藤に移りつつ、太郎が作るビートのクオリティーが上がったことが作品のキーになってるんです。それも今回うまく進んだきっかけのひとつだと思います。

文園:実際、ふたりに言われて追い込まれたほうがいい曲ができるんだなって思いました。

文園太郎
文園太郎

―文園さんのトラックということでいうと、今日何度も話にあがった“水槽”はまさに「キー」という感じですね。

齋藤:そのとき表現したかったことは全部そこで書けたぐらいの気持ちがあったかもしれないです。アルバムのなかでも重要な曲だと思います。CDのブックレットに曲の英題を記載したんですけど、この曲は「Invisible Walls」にしたんです。水槽のなかから見たら、見えない壁があるっていうイメージの曲で。

僕は水槽に喩えましたけど、たぶんみんな何かしら見えない壁を感じてると思うんですよ。その壁がどこにあるのかも、高さもそれぞれ違うと思うんですけど。少なくとも僕は感じてたし、書けば誰かしらにわかってもらえるだろうという期待はありました。

齋藤辰也
齋藤辰也

齋藤:壁をどうこうしたいというのではなくて、そういうものがあるという感覚を音楽で表現したかったんです。誰だって趣味も見ているものも違うけど、これだけは今多くの人が感じているだろうと思える唯一のことでした。だから言及してくれるとすごくうれしいし、やっぱりそうなんだ、って思います。これが書けたのはうれしかったですね。こういうことをラップで歌ってくれてる人っていないなって思っていたんで。

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リリース情報

パブリック娘。『アクアノート・ホリデイ』
パブリック娘。
『アクアノート・ホリデイ』(CD)

2019年7月3日(水)発売
価格:2,484円(税込)
PCD-83014

1. Intro
2. PS8
3. 川
4. LOVE
5. どうする
6. あるく
7. 水槽
8. 鉄道
9. ショットガンキス
10. 泡 feat. 城戸あき子
11. 空
12. 白夜
13. お風呂

プロフィール

パブリック娘。(ぱぶりっくむすめ)

文園太郎、清水大輔、齋藤辰也の平成元年生まれの3人集まったラップユニット。2019年7月3日、2ndアルバム『アクアノート・ホリデイ』をリリース。

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