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吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る

吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る

『全裸監督』
インタビュー・テキスト
村上広大
撮影:沼田学 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

もしかしたら今年一番の問題作になるかもしれない。そんな予感に溢れたNetflixオリジナルシリーズ『全裸監督』が、2019年8月8日より世界190ヶ国で配信開始された。本作では、アメリカ司法当局から370年の懲役を求刑されたり、50億円の借金を背負ったりといった数々の逸話を残す伝説のAV監督・村西とおると、その仲間たちの青春と熱狂が史実に基づくフィクションとして描き出されている。

地上波では間違いなく放送できない過激な描写も多く、Netflixだからこそ実現できた映像作品といえる。また、主人公・村西とおるを演じる山田孝之をはじめ、満島真之介、玉山鉄二、リリー・フランキーなど豪華俳優陣を揃えたキャスティングも話題だ。今回はこの『全裸監督』を、村西監督とも親交が深いプロインタビュアーの吉田豪に視聴してもらった。1980年代カルチャーにどっぷり浸かっていた彼の目には、この作品はどう映ったのだろうか。シーズン2の制作も決定し、『全裸監督』の波が広がる本作について、当時の思い出も交えて感想を伺った。

アイドルもヤンキーの嗜みだった。1980年代に惹かれた、いかがわしい文化

―村西監督は1984年にAV監督デビューしているので、『全裸監督』の舞台となっている時代に吉田さんは青春を過ごしていたことになるのですが、当時どのような目で村西監督を見ていたのでしょうか?

吉田:ボクが18歳になるのは1988年なので、表向きにはそれまで村西作品を見ていないってことになるんですけど(笑)。もちろん村西とおる直撃世代で、存在をはじめて知ったのはフジテレビで放送されていた深夜番組『オールナイトフジ』でした。女子大生がAVの内容を説明する「ビデオソフト情報」っていう、いまだったら確実にセクハラ&パワハラで問題になるコーナーがあって。そこで村西監督の作品も紹介されてたんですよ。なんだこれは! と視聴者側も出演者側も衝撃を受けましたね。

その後、番組のレギュラーだった片岡鶴太郎さんが番組中や『オレたちひょうきん族』(フジテレビ / 1981~89年放送)で村西監督のモノマネをするようになったこともあって、村西語録のひとつである「ナイスですね!」が学校内の流行語大賞を獲るんじゃないかってくらい流行ってました。あだ名が「ナイス」なクラスメートとかもいました。ボクの世代にとって、ああいう独特な英語の使い方をする人の原点は長嶋(茂雄)監督じゃなくて、村西監督だったんですよ。

吉田豪(よしだ ごう)<br>1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。
吉田豪(よしだ ごう)
1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。
『全裸監督』で山田孝之が演じた村西とおる
『全裸監督』で山田孝之が演じた村西とおる

―そんなに盛り上がっていたんですね。

吉田:ちなみに1980年代は鶴太郎さんがいちばん面白かった時代だと思っていて。まあ、なかなか再評価されないんですけど(笑)。ボクシングやアートや俳優業に目覚める前は、とにかく下品かつ破壊的で、そこが村西監督ともシンクロしてたんでしょうね。

―それでいうとテレビからの影響が大きかったですか?

吉田:そうですね。1980年代は死ぬほど暇でなにもすることがなかったので、ずっとテレビを見ていました。それに当時はフジテレビの黄金時代でしたから。片岡鶴太郎さんだけじゃなくて、とんねるずやおニャン子クラブとか、いわゆる『夕やけニャンニャン』が青春だった世代で。学校のヤンキーたちと一緒におニャン子クラブ初の卒業公演に行ったこともあるんですよ。

おニャン子クラブ“セーター服を脱がさないで”(Apple Musicはこちら

―ヤンキーとですか?

吉田:当時、「アイドル」はヤンキーの嗜みだったんです。人気のあるアイドルはヤンキーに牛耳られていて、「俺はこの子が好きだからお前らは応援するな!」って謎の圧をかけられるっていう。それでおニャン子の武道館公演に行ったら、いまと違ってインターネットもないからセットリストも簡単に入手できないんですよね。で、どうするのかっていうと公演が2部制だから、連れのヤンキーが1部公演終わりのオタクを暗がりに連れ込んで、胸ぐらを掴みながら「おい、1部のセットリスト教えろ!」って恫喝するんですよ(笑)。

その後、入場口の荷物検査でヤンキーたちの鞄から三段式警棒とか物騒なものが次々と出てきて没収されたりもして。「アイドルのコンサートは怖い!」と思いましたね。当時は親衛隊が腕っぷしの強さで会場を制圧していた時代でもありましたし。

―怖いと思いながらも一緒にコンサートに行ってたんですね。

吉田:悪のニオイに惹かれちゃうんですよね。あんまり平和なものとか無難なものが好きじゃなくて、もっと不穏なものが好き。世の中に受け入れられない、白い目で見られてるぐらいの状態が心地いいんだと思います。だからこそ、アニメ好きのオタクがやがてヤンキー文化に興味を持つようになったわけです。パンクを好きになったのもアイドルにハマったのも理由は共通していて。「危険なニオイがするぞ、ここ!」っていう。

―それでいうと、当時のとんねるずも不良のニオイがしますよね。

吉田:完全にそうだと思います。秋元康さんがとんねるずを高卒として打ち出したことで、ちょっと前のキャロル(矢沢永吉がリーダーを務めたロックバンド)とかクールス(舘ひろしが所属したロックバンド)と同じように当時の不良たちから支持を集めることになりましたから。秋元さんが命名した「学歴の途中下車」というフレーズ、いまでも忘れられないです。

吉田豪
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作品情報

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』

Netflixにて全世界独占配信中
総監督:武正晴
監督:河合勇人、内田英治
原作:本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版)
音楽:岩崎太整
出演:
山田孝之
満島真之介
森田望智
柄本時生
伊藤沙莉
冨手麻妙
後藤剛範
吉田鋼太郎
板尾創路
余貴美子
小雪
國村隼
玉山鉄二
リリー・フランキー
石橋凌

プロフィール

吉田豪(よしだ ごう)

1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。

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