特集 PR

解散寸前だった荒川ケンタウロス いつまでも青春を続けたい人達へ

解散寸前だった荒川ケンタウロス いつまでも青春を続けたい人達へ

荒川ケンタウロス『情熱の船』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:鈴木渉 編集:柏井万作(CINRA.NET編集長)

2018年3月、荒川ケンタウロスは「今後の活動に関するお知らせ」を発表し、解散や休止も考えた上で、バンドの継続を決めたことを伝えている。それは以前までの荒川ケンタウロスのユーモラスなイメージを失わないまま、その裏側にあるシリアスな表情を垣間見せるものであった。楠本純一による言葉の中から、一部を抜粋してみよう。

「結成当時から僕たちはそれぞれが仕事をしている中で活動を始め、現在に至るまでその両立を続けてきています」。「年齢を重ねてきたバンドが直面するような『音楽か仕事か』というような決断は不要だし、そんな時期はとっくに過ぎている」。「自分たちを取り巻く状況をもう少しオープンにして活動をしてみてもいいのではないか。(中略)バンドマンのあり方のひとつと思ってもらえたら良いかもしれない。と考えるようになりました」。

「音楽か仕事か」。「音楽」をそれぞれの思う夢や目標に置き換えてもいいだろうし、「仕事」を「家庭」に置き換えてもいいかもしれない。かつては「何かを得るためには、何かを諦めなくてはならない」という価値観が一般的で、今もそれに苦悩している人は多いだろう。しかし、意志を持って表現を続ける人々によって、その価値観は少しずつ塗り替えられ、それぞれの自己実現を追求できる社会の枠組みがぼんやりと輪郭を現しつつある。

今年で結成10周年を迎えた荒川ケンタウロスは、青春を諦めることなく、音楽と仕事を生活の両輪にしてきたバンドだ。セルフプロデュースで自主レーベルから発表されたサードアルバム『情熱の船』には、10年に及ぶ航海を経て、未だ瑞々しく輝き続ける現在の姿がそのまま投影されている。楠本と一戸惇平に、最高傑作に辿り着くまでの歩みを訊いた。

メンバーに対しての不満というか、「もっとできることがあるだろ?」って思うようになってしまったんですよね。(楠本)

―CINRA.NETとしては、2015年にメジャーからアルバム『時をかける少年』をリリースしたタイミング以来の取材となります。2018年3月に「今後の活動に関するお知らせ」として、休止や解散という選択肢もあった上で、活動を継続するという結論に至ったという発表がありましたが、当時のバンドはどんな状況で、メンバーはそれぞれどんな心境だったのでしょうか?

楠本(Gt):どこから話せばいいんでしょうね……すごいドロドロした話もありますし。

左から:楠本純一、一戸惇平
左から:楠本純一、一戸惇平

―順番に、じっくり話していただければと。

楠本:もともとこのバンドは僕が中心となってやってきたんですけど、パワーバランス的に、僕の割合が大きくなり過ぎてしまって。そこで、メンバーに対しての不満というか、「もっとできることがあるだろ?」って思うようになってしまったんですよね。

なので、この状況が変わらないんだったら、もう俺は辞めると……こう言うとすごい簡単になっちゃうんですけど、それまで何回も話をして。別に仲が悪くなったわけじゃないし、みんなそれぞれのやり方で頑張ってくれてるのもわかってたけど、僕は曲を作って、別の仕事もして、子育てもやりながらだったんで……。

荒川ケンタウロス(あらかわけんたうろす)<br>2009年、東京にて結成された5人編成のバンド。バンド名は「おしゃれ手帖」(長尾謙一郎著)より。2015年、ミニアルバム『玉子の王様』でメジャーデビュー。美しいメロディと胸を打つ詞で、後世に残る名曲をこれからも作る。
荒川ケンタウロス(あらかわけんたうろす)
2009年、東京にて結成された5人編成のバンド。バンド名は「おしゃれ手帖」(長尾謙一郎著)より。2015年、ミニアルバム『玉子の王様』でメジャーデビュー。美しいメロディと胸を打つ詞で、後世に残る名曲をこれからも作る。

―それは負担がかなり大きいですよね。

楠本:自分の中でライフワークバランスはしっかり取れてたので、それ自体が大変だとは思ってなかったんです。ただ、バンドの中で考えたときに、何で僕ばっかり……って思っちゃって。

でも、いろいろ話し合う中で、もちろん僕だけのバンドじゃないですし、「楠本さんが辞めたら、荒川じゃない」って言ってくれたし、子供の存在も後押しになったので、もう一度リスタートじゃないですけど、やってみようかなと思って、今に至るっていう……そんな感じだったのかな。

一戸(Vo,Gt):何で楠本さんがそういうことを言い出したかって、メジャーからアルバムを出したあと、配信用シングルの3曲のデモを上げてくれたときに、メンバーからのレスポンスが遅かったり、誰かが何かをしたことに対する反応が薄くなってきてたんですよね。それって些細なことだけど、でもすごく大事なことで。そういうことをちょっと蔑にしちゃってて。

もちろん、それぞれバンドのことを考えて、何かやっていたとは思うんですけど、でもちゃんと話し合ったりはしてなかったから、お互い不満がたまってたのかもしれない。

一戸惇平
一戸惇平

―そういうことって、バンドに限らずありがちなことですよね。同じ目的のためチームで一緒にやっているはずなのに、段々とお互いに対する感謝が希薄になっていったり、個人の動きが共有しきれず不信が生まれていったり。

一戸:バンドをやってると、ライブがあったり、アルバムを作ったり、団結する瞬間がちょいちょいあるから、何となくやれてる気になっちゃうんですけどね。でも少しずつ溝が生まれていて、本当はちゃんと話をして溝を埋めていかなきゃいけなかったのに、それすらも疎かになってて……それで亀裂が入ったのかなって。

Page 1
次へ

リリース情報

荒川ケンタウロス『情熱の船』
荒川ケンタウロス
『情熱の船』(CD)

2019年7月17日(水)発売
価格:2,700円(税込)
MYUN-4

1. かぎろい
2. 手紙
3. Don't let me downの僕たちをfeat. ななせぐみ
4. ハートビートからKnockしてるBaby(Album Version)
5. 映画
6. レインマン
7. Ring a bell(Album Version)
8. シロモノ
9. メトロポリス、2つの月
10. 暁(Album Version)
11. マリー・ミー

イベント情報

『いずみホール自主事業 荒川ケンタウロス 10th Anniversary -Good Luck Kokubunji-』

2019年11月30日(土)
会場:東京都 国分寺市立いずみホール
料金:4,200円
※3歳以下膝上鑑賞無料

プロフィール

荒川ケンタウロス
荒川ケンタウロス(あらかわけんたうろす)

2009年、東京にて結成された5人編成のバンド。バンド名は「おしゃれ手帖」(長尾謙一郎著)より。2015年、ミニアルバム『玉子の王様』でメジャーデビュー。美しいメロディと胸を打つ詞で、後世に残る名曲をこれからも作る。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

BIM“Wink”

BIMの新作『NOT BUSY』より“Wink”の映像が公開。ゆるめに結んだネクタイは軽妙洒脱でも、背伸びはしない。どこか冴えない繰り返しのなかで<だって俺らの本番はきっとこれから>と、吹っ切れなさもそのままラップして次へ。BIMの現在進行形のかっこよさと人懐っこさがトレースされたようなGIFアニメが最高にチャーミング。(山元)

  1. BiSHから届いた胸が詰まるような手紙。全員で語る空白の数か月間 1

    BiSHから届いた胸が詰まるような手紙。全員で語る空白の数か月間

  2. VTuber集結『NHKバーチャル文化祭』にキズナアイ、シロ、さだまさしら 2

    VTuber集結『NHKバーチャル文化祭』にキズナアイ、シロ、さだまさしら

  3. YOASOBI楽曲の原作小説集『夜に駆ける YOASOBI小説集』9月刊行 3

    YOASOBI楽曲の原作小説集『夜に駆ける YOASOBI小説集』9月刊行

  4. 著名人が選ぶ『ゲーム・オブ・スローンズ』ベストエピソード一挙放送 4

    著名人が選ぶ『ゲーム・オブ・スローンズ』ベストエピソード一挙放送

  5. 芦田愛菜『星の子』永瀬正敏と原田知世が「あやしい宗教」信じる両親役 5

    芦田愛菜『星の子』永瀬正敏と原田知世が「あやしい宗教」信じる両親役

  6. 星野源、去年11月のニューヨークライブの模様をNHK総合で地上波初オンエア 6

    星野源、去年11月のニューヨークライブの模様をNHK総合で地上波初オンエア

  7. 森七菜が歌う“スマイル”カバー配信リリース ホフディランがプロデュース 7

    森七菜が歌う“スマイル”カバー配信リリース ホフディランがプロデュース

  8. 田丸雅智×曽我部恵一が登壇『真夏のショートショート食堂』オンライン開催 8

    田丸雅智×曽我部恵一が登壇『真夏のショートショート食堂』オンライン開催

  9. のん×林遣都が共演 大九明子監督、綿矢りさ原作の映画『私をくいとめて』 9

    のん×林遣都が共演 大九明子監督、綿矢りさ原作の映画『私をくいとめて』

  10. もう、人間と自然は共生できない 環境学者・五箇公一インタビュー 10

    もう、人間と自然は共生できない 環境学者・五箇公一インタビュー