OKAMOTO'Sインタビュー 孤高の10年の先で、はぐれ者たちを繋ぐ

今年10周年イヤーを迎え、1月にはアルバム『BOY』をリリース、6月にはキャリア初の日本武道館ワンマン公演を成功させたOKAMOTO'Sから、早くも新たなアクションが届けられた。この秋、全国東宝系にて公開中の、伊藤智彦監督によるオリジナルアニメーション映画『HELLO WORLD』の主題歌に新曲“新世界”が起用されているのだ。

それだけではない。本作の劇伴は、OKAMOTO'Sがハブとなって集まったプロジェクト「2027Sound」にて制作されている。映画の時代設定が「2027年」であることから名前がつけられたこのプロジェクトには、OKAMOTO'Sを中心に、ともに主題歌を務めるOfficial髭男dism、Nulbarichの2組、さらに、OBKR(小袋成彬)、Yaffle、STUTS、BRIAN SHINSEKAIといったミュージシャンたちが名を連ねている。

孤高の道を歩み続けてきた10年間を経て、今、「ハブ」という役割を求められるに至ったOKAMOTO'S。この『HELLO WORLD』を巡る一連の動きから彼らの現在のモードを探るべく、メンバー全員インタビューを敢行した。

「バンドがバンドの活動を超えていくということが俺たちの理想」(ショウ)

―今回、OKAMOTO'Sが主題歌と劇判を担当するということで、映画『HELLO WORLD』を僕も事前に観させていただいたんですけど。

ショウ(Vo):あ、本当ですか。どうでしたか?

―とても面白かったです。「過去をどう扱うのか?」というテーマ性自体、重くも描けそうなところを青春感のあるボーイミーツガールの物語として描いているし、SFを描くことに対する熱意もものすごく感じました。音楽も本当によかったです。

ショウ:最初に脚本を読んだとき、「めちゃくちゃ面白いな!」って思ったんですよ。俺はSFが好きなんですけど、SF好きがグッときちゃうような要素がたくさん詰まっているような映画で。

ハマ(Ba):あと、キャラクターデザインが堀口(悠紀子)さん(『らき☆すた』や『けいおん!』のキャラクターデザインを手がける)なんですよ。僕らは直撃世代で、堀口さんの絵はアニメに詳しいわけじゃない僕でも知ってるくらいですから。(そうやってちゃんと役者を揃えているところを含めて)今、新海誠さんのような人がメインストリームで戦うこの国のアニメに対して、「一石投じたい」っていう意識が伝わってくるんですよね。それにグッときて。

実際に伊藤(智彦)監督が、頭のなかに描いたものを具体的にしていく過程で苦戦している姿も目にしましたけど、そういうふうに「ものを作る」過程を一緒に経験できてよかったです。監督も変ですし、俺らも変ですし(笑)、「ザ・もの作る人たち」みたいな、変な人ばっかりな制作環境でしたね。

OKAMOTO'S(おかもとず)<br>左から:ハマ・オカモト、オカモトレイジ、オカモトショウ、オカモトコウキ<br>中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンド。2019年1月6日、8枚目となるオリジナルアルバム『BOY』をリリース。さらには6月27日に自身初となる東京・日本武道館でのワンマンライブの開催。9月20日より公開中の映画『HELLO WORLD』のオリジナルサウンドトラックを手がける。
OKAMOTO'S(おかもとず)
左から:ハマ・オカモト、オカモトレイジ、オカモトショウ、オカモトコウキ
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンド。2019年1月6日、8枚目となるオリジナルアルバム『BOY』をリリース。さらには6月27日に自身初となる東京・日本武道館でのワンマンライブの開催。9月20日より公開中の映画『HELLO WORLD』のオリジナルサウンドトラックを手がける。(過去記事:OKAMOTO'Sが大人と少年の間で語る、28歳で迎えた10周年の心境

ショウ:劇伴を作るにあたって、監督ともかなりキャッチボールしたんですよ。言ってしまえば、この映画自体が攻めているじゃないですか。原作なしのオリジナルアニメで、CGアニメで、普段は俳優や女優をやっている人たちに声優をお願いしている。そういう「攻め」のマインドで音楽も書きたいなと思いました。

―最初にお話が来たときは、どのように受け止められましたか?

ショウ:今まで劇伴はやったことがなかったし、単純に嬉しかったです。そもそも、バンドがバンドの活動を超えていくということが俺たちの理想なんですよ。たとえば、YMOが作曲して松本隆さんが作詞した“君に、胸キュン。”がチャートの2位になって、そのときの1位の松田聖子さんの“天国のキッス”も細野晴臣さんが作曲だった、みたいな話があるじゃないですか(ともに1983年リリース)。

そういう「全部あの人たちがやってるじゃん」っていう状況は、音楽好きとしては憧れで。でも、それは意図して通常の活動範囲の外に出て行こうとしないとできないことで。今回の『HELLO WORLD』の話は、これまでいただいたなかでも規模感が一番大きなものだったし、「いい挑戦になるな」と思ってお引き受けしました。

オカモトショウ

―去年はアルバム『BOY』も作られていたと思うんですけど、あの作品は、「内に向かっていく」作品とも言えたわけで。『HELLO WORLD』の劇伴は、ある種、それとは逆のベクトルのOKAMOTO'Sというふうに言えるんですかね。

コウキ(Gt):そうですね。外に出ていく部分も、内に向かっていく部分も、両方あったほうがいいですからね。映画なりなんなり、別の手段を通して自分たちの音楽を広げていくのはいいことだと思うし、まして、今回は劇伴も含めて丸々OKAMOTO'Sに任せてもらえて。こういう機会は初めてだったので、だからこそ、いろいろこだわりました。

ショウ:去年の夏にお話をいただいて1年間ぐらいは作業し続けていたんですけど、この劇伴があったから、「『BOY』は自分たちのことだけ歌えばいいんだ」ってなれたのもあるよね。

OKAMOTO'S『BOY』を聴く(Apple Musicはこちら

Official髭男dismやNulbarichらが、OKAMOTO'Sのもとに集った背景

―今回の劇伴はちょっと特殊な作りになっていて、OKAMOTO'S“新世界”、Official髭男dism“イエスタデイ”、Nulbarich“Lost Game”の3曲が主題歌としてあり、劇伴制作にはOBKR(小袋成彬)さん、Yaffleさん、STUTSさん、BRIAN SHINSEKAIさん、AAAMYYYさんが参加されていますよね。このメンツは、OKAMOTO'Sが主導になって声をかけていったんですか?

ショウ:そうですね。そもそもの依頼として、「あくまでもプロジェクトがあって、その中心にOKAMOTO'Sがいてほしい」っていう形だったんですよね。

レイジ(Dr):「若手のMETAFIVEみたいなものを作ってほしい」って言われたんですよ。

―なるほど(笑)。

コウキ:「新しい映画音楽の形を作りたい」っていう話だったんですよね。「劇伴作家が画に合う音楽をつけるっていう形じゃない、たとえば、Nine Inch Nailsのトレント・レズナーがロックバンドとして映画に音楽をつけるようなイメージで、バンドが劇伴をやっているっていう形にしたい」っていう話をしていただいて。

オカモトコウキ

コウキ:それは面白いなと思ったし、ある種、「バンドとしての個性を出していい」っていうことだと僕らは受け取って。「劇伴作家的なことをしてください」と言われても、僕らはできないし。そうじゃない部分を、OKAMOTO'Sには期待してくれたんだろうと思うんですよ。

ショウ:それで、俺たちがまず一緒にやりたいアーティストの名前を出して、映画のスタッフも含めて相談していった感じでしたね。大きい話なので、俺たちがただ友達を呼ぶことでは通用しない部分もあるし、「その音楽に対して、誰が一番ピッタリはまるか?」っていうことは、映画スタッフも交えて全員でかなり話し合いました。

―そこでOKAMOTO'Sとともに主題歌を手がけているのがOfficial髭男dism(以下、ヒゲダン)とNulbarichっていう、今の日本のバンドシーンにおいても特殊な位置にいる2組ですよね。特にOKAMOTO'Sとヒゲダンが並んでいるのは、結構、意外なんですよね。

ショウ:わかります(笑)。ヒゲダンは、ハマくんから名前が出てきたんだよね?

ハマ:うん。ヒゲダンは今でこそめちゃくちゃ知名度がありますけど、彼らが上京してきたころ、僕が司会をしているテレビ番組に来てくれたのが出会いで。そのときは、「俺のほうが髭はえてるし、よっぽど髭男だわ!」とか言っていたんですけど(笑)。

ハマ・オカモト

―ははははは(笑)。

ハマ:その番組で話したときに、彼らの口から出てくるミュージシャンの名前を聞いて、自分と気が合いそうだなって感じたんですよね。たしか、藤原(聡)くんが1970年代のソウルミュージックを聴いている、みたいな話になって。そのときおすすめした作品を、次の収録のときにはちゃんと聴いてくれていたんですよ。「久しぶりに、同年代のバンドマンとちゃんと音楽の話ができたなぁ」と思って。そのときの印象が強かったんですよね。

―やっぱり、「音楽の話ができる」というのが、なにより結びつきを強めるんですね。

ハマ:おしゃべりができるっていうのは、本当に重要なことで。なので、今回ヒゲダンの名前を出したのは、僕としてはかなり自然な采配だったんですよね。先ほどおっしゃっていた、この映画のボーイミーツガール的なきらめきにも、ヒゲダンは合いそうだなって思いましたし。向こうも快くOKしてくれたので嬉しかったですね。

Official髭男dism“イエスタデイ”を聴く(Apple Musicはこちら

―Nulbarichは、どうですか?

ショウ:Nulbarichは、今年、初めて対バンをして、打ち上げで話したりしていくうちに仲よくなったんですよ。最初は「どうなるんだろう?」って思っていたんですけど、話してみると「こんな人だったんだ!」っていう感じで。

―Nulbarichは僕も何度か取材させていただいたことがありますけど、JQさんはすごく物腰の柔らかな面白い方ですよね。

レイジ:知られざるキャリアもあったもんね。

ショウ:もともとトラックメイカーをやっていたりしてね。そういう部分も含めて、人間的にもかなり好きになって。それに、Nulbarichの“Lost Game”が流れる場面は、ちょっとトーンが高い、切ない声がハマりそうなところだったんですよね。最初は俺が仮で歌っていたんだけど、「ここは、真っ向からそういう歌を歌える人がいいよね」っていうことになり、Nulbarichの名前が挙がったんです。

Nulbarich“Lost Game”を聴く(Apple Musicはこちら

―あと個人的にグッときたのは、このプロジェクトのなかにBRIAN SHINSEKAIさんの名前があったことで。ここにはすごく、OKAMOTO'Sとの歴史と物語を感じたんですよね(参考記事:BRIAN SHINSEKAIの奇抜な個性を、スペシャ高根順次と読み解く)。

ハマ:グッときますよね、これは。ここにBRIANがいることの意味をどれくらいの人が汲んでくれるかは置いておいても、この劇伴のなかで一番グッとくる客演だと僕も思います。

―振り返ると、ズットズレテルズが出演していた『閃光ライオット2009』で、BRIAN SHINSEKAIさんもファイナルに進出していたんですよね。

レイジ:10年前くらいからBRIANのソングライティング力はすごいと俺は思っていて。あいつは、ピアノ1本で曲も作れるポップス職人的な気質があるけど、デヴィッド・ボウイが大好きで自分がステージに立つことに対する美学もあるんですよ。

オカモトレイジ

ハマ:スターとしての自任があるんだよね。そこに対する自己肯定があるのが最高だと思う。

レイジ:それに俺らはずっとバンドでやっているから、こういう劇伴で求められる「泣ける瞬間の音楽」とか「恋に落ちる瞬間の音楽」みたいなものは、作れなくて当たり前で。そういうときに、彼みたいにひとりでずっと作曲やっている人が必要になってくるし、ここでやっとBRIANの存在を世に放てたなって感じっすね。BRIANはマジで最高なやつです。

BRIAN SHINSEKAI“CREATION OF THE WORLD”を聴く(Apple Musicはこちら

ヒップホップとロックバンドの間にある不自然な壁と、OKAMOTO'Sが自覚する「役割」

―また、今回の劇伴に参加されているOBKRさんとYaffleさんは、武道館前のタイミングで“ART(FCO2811)”の彼らによるリミックスが公開されましたよね。

コウキ:小袋くんも、ずっと前から一緒にやっている人ですからね。

―“ROCKY”は、小袋さんと一緒にレコーディングしているんですよね。“ART”のリミックスにはKANDYTOWNのGottzさんをはじめ3人のラッパーがフィーチャリングされていましたけど、やっぱりヒップホップとの密接な繋がりというのも、OKAMOTO'Sの特別さだなと改めて思っていて。

レイジ:そもそも、今の日本はシーンがセパレートしすぎちゃっていますからね。OKAMOTO'Sが活動しているシーンと、彼らが活動しているシーンがまったく交わらない状態になっちゃっている。

邦楽系の大型ロックフェスでも、ヒップホップアーティストはKREVAとSKY-HIしか出ていない状態になってしまっているじゃないですか。これだけラッパーがたくさんいるのに……。もちろん、知名度や集客の問題はあるのかもしれないけど、あまりにも混ざらなすぎだし、それは不自然だなって感じるんですよね。そこはちょっとずつ混ぜていけたらいいなっていう気持ちもあったし。

“ART( OBKR / Yaffle Remix ) feat. Gottz,Tohji,Shurkn Pap”を聴く(Apple Musicはこちら

―そういう部分でも、やっぱりハブとしての役割を果たしていますよね、OKAMOTO'Sは。

レイジ:最近、音楽業界のことばっかり考えちゃうんです。今は新しい時代に突入しすぎちゃっていて正解がないから、「どうしていったらいいもんかなぁ?」って考えるんですけど、考えるだけじゃダメなんですよね。行動に移さないといけない。

自分はロックフェスにも出るし、クラブでDJもするんですけど、「クラブには、これだけ音楽好きがいるんだな」と思うのと同時に、「ここにいる人、OKAMOTO'Sのことは誰も知らないんだろうな」とか考えちゃうんです。OKAMOTO'Sは、そういう人たちにも届いていいのにって思うし。

―みなさんはどう思いますか?

コウキ:バンドはバンドで小さくまとまってしまっているな、とは思います。それこそ海外では、カニエ・ウェストの作品にTame Impalaのケヴィン・パーカーがクレジットされてたりしてクロスオーバーがあるけど、日本だと、仲のいい人たちと対バンして回るだけ、みたいな感じですから。僕らはやってきたけど、上の世代とのコラボレーションもあまりやらないし。そういうところは、もっと広げていければいいなと思う。“ART”のリミックスは、その観点でもすごくよかったと思いますね。

―そうですよね。前回『BOY』の取材時に、今の国内の音楽シーンにおけるOKAMOTO'Sの特異性については語っていただいたんですけど、そうやって、孤独で孤高な立ち位置を10年間貫き通してきた今、この『HELLO WORLD』のようなプロジェクトで「ハブになる」という役割を求められるというのは面白いですよね。少しずつ、なにかが変わってきているような感触があります。

ショウ:「OKAMOTO'Sが真ん中にいると安心する」っていうふうに思ってもらえているっていうことですからね。

コウキ:不思議ですよね。「誰ともわかり合えないんです」っていうことをずっと歌っていたのに、いつの間にか、こういう立場のバンドだと周りには捉えられていて。

ハマ:謎の説得力というか。普通、こういう役割を担うのであれば、メガヒットを飛ばしているのが前提にあったりするじゃないですか。僕らはそういうわけでもないし、「なんで、ヒゲダンじゃなくてあんたらが前に出てるの?」っていうことにもなりかねない。でも、そうなっていないのは嬉しい話で。それは本当に、この10年の自分たちのやり方が功を奏したんだと思います。

「映画の物語に即して言うなら、自分たちの過去を肯定されるような感覚はあります」(ハマ)

―それこそ、この『HELLO WORLD』は「過去」をどのようにして捉えて生きていくのかを問う映画でもあると思うんですけど、それは、OKAMOTO'Sの活動にも当てはまることなのかなって思うんです。OKAMOTO'Sのキャリアにおける「過去」という点でも、OKAMOTO'Sが愛する「過去の音楽」という点においても、「今の自分たちは、それをどういうふうに捉えていくのか?」を問うことは、今すごく大事なことなのかなと。

ショウ:たしかに、そうですよね。それこそ、俺が『BOY』の“Dreaming Man”で歌っていることにも通じるんですけど、単純に、俺たちと同世代の人口が今の2~3倍いたら、もっと違う景色が広がっていたんだと思うんですよ。俺たちが好きなものがもっと世の中を動かしているし、その波の大きさが今とは違ったんだろうなって思う。

ショウ:でも、現実はそうではない以上、アメリカでトラップが流行ったような大きな波って、ここから先、音楽ではもう起こらないと思うんですよね。その代わり、みんなでまとまって「ここにいるんだよ」っていうことを主張したり、自分たちで自分たちの夢を肯定してやることが大事で。

―現実を受け入れ、過去を受け入れていく。それはまさに、この『HELLO WORLD』が描いているものに通じている気がします。

ショウ:でも、今こうやって、OKAMOTO'Sがハブになることができているのも、ハマくんがテレビのMCをやっていたり、レイジがDJをやったりしてきたっていう活動の仕方が大きいのかな?

レイジ:めちゃくちゃ大きいでしょ。

コウキ:それがあってこそだと思うよ。

ハマ:最近、現場マネージャーが変わったんですけど、彼が言っているのは、「リリースがないタイミングでも、待っているだけで、OKAMOTO'Sには仕事の依頼がくる」と。それが衝撃だったらしくて。僕ら自身はちょっと麻痺してる部分があるんですけど、よく考えると、他のバンドに、同じような話がこんなに定期的に来るかといえば、絶対に来ないですからね。

レイジ:新しい挑戦を定期的にいただけるっていうのは、本当にありがたいことだよね。僕らのマネージャーは、ソロアーティスト4人と1バンド、計5組のスケジュールを管理する感じなので、非常に大変なんですけど(笑)。

―ははは(笑)。

ハマ:まぁ、デビューしたころから「OKAMOTO'Sは博学だ」とか、いろんなイメージはずっとついていたりして。「音楽全般に詳しいって思われてんのはシャクだな」とか、いろいろ思ってきたことはずっとあったんですけど、そういう自分たちにまとわりついてきたイメージも、今回の『HELLO WORLD』をきっかけに、いい感じに転換できているんじゃないかと個人的には思っていますね。映画の物語に即して言うなら、自分たちの過去を肯定されるような感覚はあります。

好きなこと、カッコいいと思うことを信じて歩んだ10年。その異端さ、極端さこそが、自分たちの現実

―主題歌の“新世界”はどうですか? 今までのOKAMOTO'Sにはないスケール感を持った1曲ですよね。プロデュースは小林武史さんですし。

ショウ:“新世界”は、まだ他の劇伴の曲を作る前に、最初に脚本を読んだ印象で書いた曲なんですよね。そのあと、他にも何曲か候補は作ったんですけど、監督も「“新世界”しかないよ」って言ってくれて決まりました。

最初に脚本を読んだとき、そのスケール感をプレッシャーにも感じたんですよ。そのスケール感に合わせていくのは俺たちの力だけでは足りないかもしれないっていうことで、小林武史さんに声をかけさせていただいて。……あと実は、“新世界”を録ったのは武道館の3日後くらいだったんですよ。

―そうなんですね。

ショウ:あの景色のあとに、こういう曲を録れるのはすごくいいことだなと思ったんですよね。「あそこまでやったあとに出すOKAMOTO'Sの新曲って、どんなものなんだろう?」ってお客さんが考えたときに、このぐらい振り切っていたほうがいいと思って。「カッコいいな、OKAMOTO'S」って、この曲で思ってもらえたら嬉しいです。

OKAMOTO'S“新世界”を聴く(Apple Musicはこちら

―今日、お話を聞いて改めて、今のOKAMOTO'Sに『HELLO WORLD』に劇伴の依頼が舞い込むというのは、とても象徴的だし、必然的な出来事のような気がしてきました。集まっているメンツも、とても刺激的ですし。

コウキ:このプロジェクトに集まってきた人たちは、独自のことをやっている人が多いですよね。ヒゲダンもNulbarichも、BRIANもそうですけど、誰かと同じようなことをやっている人たちがいない。

レイジ:そうだね、群れてないよね。STUTSもヒップホップ界隈では独特なところにいるし、小袋くんも、世間からしたら謎の存在だろうし。「○○界隈」みたいなところにいる人たちじゃない。横の繋がりが見えにくいというか。

ハマ:「代わりがいない人」っていうのは、大きいよね。そういうところで、OKAMOTO'Sとして感じるシンパシーはあるのかもしれない。

2027Sound『「HELLO WORLD」オリジナル・サウンドトラック』を聴く(Apple Musicはこちら

―その独自性のあるアーティストの集まりの中心に、今、OKAMOTO'Sがいるというのは非常に感慨深いです。

ショウ:俺らの場合は、そうやって自分たちがカッコいいと思うことを信じてやっていくことしかなかったんですよね。もちろん、このやり方で武道館まで行けたし、自信がないっていうことではないんだけど、ただ「俺たちにはこれがある」っていうものがないからこそ、とにかく好きなことを信じてやるしかなかった。そこで生まれてきた自分たちの異端さ、極端さこそが、自分たちの現実で。これからも、このやり方で進み続けていくしかないと思っています。

リリース情報
2027Sound
『「HELLO WORLD」オリジナル・サウンドトラック』(CD)

2019年9月18日(水)発売
価格:3,780円(税込)
BVCL-979

1. オープニングテーマ feat. AAAMYYY / オカモトショウ&オカモトコウキ
2. 弱気な直実 / BRIAN SHINSEKAI
3. 直実の楽しい時間 / オカモトショウ&オカモトコウキ
4. 三本足のカラス / オカモトショウ&オカモトコウキ
5. 謎の男・逃げる直実 / オカモトレイジ
6. クロニクル京都 / オカモトショウ&オカモトコウキ
7. 謎の男の正体 / オカモトショウ&オカモトコウキ
8. マイペースな瑠璃 / BRAIAN SHINSEKAI
9. ナオミの目的 / オカモトショウ&オカモトコウキ
10. 特訓Ⅰ 不思議な手袋 / STUTS&ハマ・オカモト
11. グッドデザイン / オカモトショウ&オカモトコウキ
12. イエスタデイ(Movie ver.) / Official髭男dism
13. 特訓Ⅱ 成長 / STUTS&ハマ・オカモト
14. 恋の予感 / オカモトショウ&オカモトコウキ
15. 特訓Ⅲ 銅から金へ / STUTS&ハマ・オカモト
16. 古本集め / オカモトショウ&オカモトコウキ
17. A Time For Love / BRAIAN SHINSEKAI
18. 図書委員たちと本運び / オカモトショウ&オカモトコウキ
19. 瑠璃のために / オカモトショウ&オカモトコウキ
20. 倒れる直実 / オカモトショウ&オカモトコウキ
21. 直実告白、両思いに / Official髭男dism
22. 宇治川花火大会 / オカモトレイジ
23. 直実 vs 狐面 / First Part: OBKR, STUTS&ハマ・オカモト / Second Part: オカモトショウ&オカモトコウキ
24. キス!? / Official髭男dism
25. ナオミの本当の目的 / オカモトショウ&オカモトコウキ
26. ナオミの回想 / オカモトショウ&オカモトコウキ
27. 一縷の望み / STUTS&ハマ・オカモト
28. 瑠璃を取り戻したい / オカモトショウ&オカモトコウキ
29. 狐面 異物の排除 / OBKR
30. 瑠璃を守る / Yaffle
31. 急げ!大階段へ! / Yaffle
32. ナオミ、瑠璃との別れ / オカモトショウ&オカモトコウキ
33. 直実とナオミのバディ / オカモトショウ&オカモトコウキ
34. 九尾狐 / OBKR
35. Lost Game(Movie ver.) / Nulbarich
36. CREATION OF THE WORLD / BRAIAN SHINSEKAI
37. HELLO WORLD / オカモトショウ&オカモトコウキ
38. 新世界 / OKAMOTO'S

作品情報
『HELLO WORLD』

2019年9月20日(金)から全国東宝系で公開中

監督:伊藤智彦
脚本:野﨑(たつさき)まど
キャラクターデザイン:堀口悠紀子
アニメーション制作:グラフィニカ
主題歌:OKAMOTO'S“新世界”、Official髭男dism“イエスタデイ”、Nulbarich“Lost Game”
声の出演:
北村匠海
松坂桃李
浜辺美波
配給:東宝

プロフィール
OKAMOTO'S (おかもとず)

オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(Gt)、ハマ・オカモト(Ba)、オカモトレイジ(Dr)による、中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンド。2010年、日本人男子としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス『SxSW2010』に出演。2019年1月6日、8枚目となるオリジナルアルバム『BOY』をリリース。さらには6月27日に自身初となる東京・日本武道館でのワンマンライブの開催。9月20日より全国ロードショーとなる映画『HELLO WORLD』のオリジナル・サウンドトラックを手がける。



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