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2020年東京オリンピック以降を問う。美術家と建築家が見る景色

2020年東京オリンピック以降を問う。美術家と建築家が見る景色

『TOKYO 2021』
インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:八田政玄 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

ゼネコンVS建築家、アーティストのような対立関係は考えていない。様々な違いを超えて、共にこれからを考える場が広がればいい。(永山)

最後に、再び藤元と永山に聞く。『TOKYO 2021』の報道資料にあった「開発とアート」という言葉について、彼らはそこにどんな可能性を見るのだろう。

―永山さんは『TOKYO 2021』の記者発表会で、今回の『東京オリンピック・パラリンピック』を機になされるさまざまな開発をめぐり、建築家が必ずしも十分コミットできなかったことへの「モヤモヤ感」を語っていました。これは新国立競技場の設計コンペをめぐる騒動や、ゼネコン主導で各種開発が進んだことなども含めての言葉かと推察します。その上で今回、戸田建設と協働することはどうとらえていますか?

永山:ゼネコンVS建築家、アーティストのような対立関係とは考えていません。もともと建設会社と建築家は協業して街を作っていく関係ですからね。

永山祐子
永山祐子

永山:ただ、2020に向かう動きの中では、私たち建築家の声は届かなかったという思いも確かにある。だからその上で、これから一緒にどんな都市の未来像を描けるか、だと考えています。

それは今回、戸田建設さんの、特に若い方たちと関わる中で実感していることです。様々な違いを超えて、共にこれからを考える場が広がればいい。

藤元:もともと自分の作品『2021』は、美術館やギャラリーではないパブリックな場で問いを投げかける試みでした。それが今回「開発とアート」を考える形に発展してきたのだと思います。

以前、アメリカの大型アートフェア『アート・バーゼル・マイアミ』を観に行ったとき面白かったのが、アートと街の関係でした。アートバーゼルには世界中のアート関係者、オーディエンスが集まります。会期中は地元美術館の最上階で、各界のベテランから若手が、街の将来にアートをどう活かせるかを議論している。

『アート・バーゼル・マイアミ 2018』会期中、ミュージアムで行われた美術家クリストの作品「囲まれた島々」のレクチャー
『アート・バーゼル・マイアミ 2018』会期中、ミュージアムで行われた美術家クリストの作品「囲まれた島々」のレクチャー

藤元:かと思えばダウンタウンでは、ふだんイリーガル(違法)に描かれるグラフィティーが店舗の依頼で街の各所に合法的に現れていたりする。フェアが終わったとたん、一斉に(イリーガルに)上から描き直されるんだけど、それぞれの場とやり方で、街の開発にアートが活用されているのを見ることができたのは、いい経験でした。

イベントの時間が終わると、ローラーで消され、あっという間に上書きされるストリート
イベントの時間が終わると、ローラーで消され、あっという間に上書きされるストリート

丹下健三はすごいけれど、むしろ彼を同時代で見ていた人たちが時代を作ったとも言えるのでは。だから、多くの熱量とアイデアが集中することに期待したい。(藤元)

―今回の『TOKYO 2021』に、どんな成果を期待しますか?

永山:クリエイションと社会の関係を考える上で、この『TOKYO 2021』が意義ある事例になればと願っています。会期後、会場になっている建物は解体されますが、新たな戸田建設社屋はアート等の文化発信機能も検討していると聞いています。

どれだけこれから日本が、文化やクリエイション全般の重要さを将来の経済発展や社会全般とつながるものとして認識していけるのか。これについては危機感を覚えることもあり、だからこそ大切だと思う。

藤元:こうゆうモヤモヤした思考や議論こそアートの意義だし、未来への参加だと思います。そのきっかけは『東京オリンピック・パラリンピック』だし、一番便乗しているのは僕ですからね(笑)。

藤元明
藤元明
『2021 #Kamogawa delta』
『2021 #Kamogawa delta』(Vimeoを見る

―藤元さんは今回の『TOKYO 2021』について、どんな期待をしていますか?

藤元:アーティストの視点から言うと、建築家たちは本当に面白いこと考えている人が多い。ただ破天荒なのでもなく、困難なプロジェクトを現実的に前進させる力に魅力を感じます。

今回は全体がアートプロジェクトなので自由度があって対話もしやすいし、建築展と美術展の2つがあることで生まれる思考の厚みにも期待しています。でも、完璧な答えなんて出ないんですよ、きっと。

丹下健三みたいな人はそういう答を示したかと言えば、彼の提案は「問い」になったんだと思います。アートは答ではなく「問い」だし、その質感が重要なんです。むしろ彼のしたことを同時代で見ていた多くの人たちが時代を作っていったとも言えるのではと思うんです。

だから『TOKYO 2021』でも、多くの人たちというか、熱量とアイデアが集中することに期待したい。完成したものを披露するというより、ここから生まれるものがあると思って取り組んでいます。

Jacket / Cap : ANREALAGE x 2021
Jacket / Cap : ANREALAGE x 2021(Youtubeで見る

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イベント情報

『TOKYO 2021 課題「島京2021」』

2019年8月3日(土)~8月24日(土)
会場:東京都 京橋 TODA BUILDING

『TOKYO 2021 un/real engine - 慰霊のエンジニアリング - 』

2019年9月14日(土)~10月20日(日)(毎週火曜日定休)
会場:東京都 京橋 TODA BUILDING
料金:無料(Peatixサイトより事前登録)

プロフィール

藤元明(ふじもと あきら)

1975年東京生まれ。東京藝術大学美術学部大学院デザイン専攻修了。FABRICA(イタリア)に在籍後、東京藝術大学先端芸術表現科非常勤助手を経てアーティストとして活動。都市における時間的/空間的余白を活用するプロジェクト「ソノ アイダ」を主催。人間では制御出来ない社会現象をモチーフとして、様々な表現手法で作品展示やアートプロジェクトを展開。主なプロジェクトに「NEW RECYCLE®」、広島-New Yorkで核兵器をテーマに展開する「Zero Project」など。2016年より開始した「2021」プロジェクトは現在も進化中。

永山祐子(ながやま ゆうこ)

1975年東京都生まれ。1998年昭和女子大学卒業後、青木淳建築計画事務所を経て、2002年永山祐子建築設計設立。2005年JCDデザイン賞2005奨励賞を受賞した「ルイ・ヴィトン京都大丸店」にて注目を集める。2006年AR Awards(UK)優秀賞「丘のあるいえ」、2014年JIA新人賞「豊島横尾館」、2018年山梨県建築文化賞、JCD Design Award銀賞、東京建築賞優秀賞「女神の森セントラルガーデン」等国内外受賞多数。現在、ドバイ万博日本館(2020年)、新宿歌舞伎町の高層ビル(2022年)などの計画が進行中。

中山英之(なかやま ひでゆき)

1972年福岡県生まれ。1998年東京藝術大学建築学科卒業。2000年同大学院修士課程修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、2007年に中山英之建築設計事務所を設立。2014年より東京藝術大学准教授。主な作品に「2004」、「O邸」、「石の島の石」、「弦と弧」、「mitosaya薬草園蒸留所」、「Printmaking Studio / FMC」主な著書に『中山英之/スケッチング』(新宿書房)、『中山英之|1/1000000000』(LIXIL出版)『, and then: 5 films of 5 architectures/建築のそれからにまつわる5本の映画』(TOTO出版)。

藤村龍至(ふじむら りゅうじ)

建築家。1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。2017年よりアーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長/ディレクター、鳩山町コミュニティ・マルシェ総合ディレクター。2018年より日本建築学会誌『建築雑誌』編集委員長。住宅、集合住宅、公共施設などの設計を手がける他、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメント、ニュータウン活性化、中心市街地再開発のデザインコーディネーターとして公共プロジェクトに数多く携わる。

黒瀬陽平(くろせ ようへい)

1983年、高知生まれ。美術家、美術批評家。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。『思想地図』公募論文でデビュー。美術からアニメ・オタクカルチャーまでを横断する鋭利な批評を展開する。また同時にアートグループ「カオス*ラウンジ」のキュレーターとして展覧会を組織し、アートシーンおよびネット上で大きな反響を呼ぶ。著書に『情報社会の情念 —クリエイティブの条件を問う』(NHK出版)。

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