
渡會将士が塗り替えた自分。強がりを脱いで出会えた人の温かさ
『NEWTOWN 2019』- インタビュー・テキスト・編集
- 中田光貴(CINRA.NET編集部)
- 撮影:山川哲矢(Showcase)
渡會将士の歌には、「旅」を感じさせられる。それはFoZZtoneとして活動していた頃も、ソロミュージシャンとして活動している今も変わらない。
FoZZtone時代には「進めば火星にまで辿り着ける」という壮大なテーマと過剰さすら感じさせる大スケールのサウンドを歌い鳴らしていた渡會将士。しかし2016年から本格的にスタートしたソロ名義での活動では、これまでの歌と逆行するように日常に寄り添う歌へと変化していった。そして今年の5月にリリースされたミニアルバムのタイトルは『ウォーク アンド フーズ』。「散歩とご飯」をテーマに、日々の暮らしを細やかな視点で歌い上げた作品だ。
一見すると、「今ここ」から抜け出すために火星へと旅に出たFoZZtoneの頃とは、全く異なった音楽を奏でているようにも見えるかもしれない。しかし、故郷を思い返して過去の記憶へ立ち返ったり、季節の移り変わりを感じたりといった、日常のささやかなシーンを掬い上げることで、日々の中にも「旅」は存在すると、渡會は歌を通して我々に伝えている。視点こそ違えど、FoZZtoneの頃から一貫して、渡會は「旅」を通して「生きる」という壮大なテーマを歌い続けている。
FoZZtoneとして活動していた自分、ソロとして活動している自分など、これまでの活動のすべてを振り返って、再確認している最中と語る渡會に、今自分が立っている現在地について、そしてこれから向かう行き先について聞いた。
日常に根ざした歌を歌うようになった理由には、バンド時代からの反動もあった。
―FoZZtoneはサウンドとしてもテーマとしても壮大な印象がありました。それがソロになって、グッと日常に根ざした曲が増えてきたと感じられるのですが、ご自身の中で、バンド時代と今の音楽はどう繋がっていると思いますか。
渡會:日常に根ざした歌を歌うようになった理由には、バンド時代からの反動もあったと思いますね。FoZZtone時代は自分の意思で壮大なテーマを書こうとしていたんです。だけど同時に、バンドとしてそれを求めていた部分もあって。とにかく誰もやっていないことをやらないといけない、と自分たちに課しているような。
だけど音楽全体を見渡してみたら、極端な例ですけど「もっと楽しそうに音楽をやってるコミックバンドもいるよな」と心のどこかで思ってもいて。ソロになったときに、それをやってもいいんだと気付いたんですよね。
―意図的に人と違うことをやるというより、ピュアに音楽を楽しむっていう。
渡會:そうですね。それにFoZZtone時代は、「火星」みたいな大きなものの力を借りないと「輝かしいもの」を表現しづらかったんだと思うんです。それがソロになって、もっとシンプルなことをテーマにしても「輝かしいもの」を表現できると思うようになって。

渡會将士(わたらい まさし)
2002年、FoZZtoneを結成。2007年にEMIミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー。2015年2月にバンド活動を休止。その後2016年にはソロミュージシャンとして初となる1stフルアルバム『マスターオブライフ』をリリース。2017年には1stミニアルバム『After Fork in the Road』、2018年10月に2ndフルアルバム『PEOPLE』を発表。2019年5月に2nd ミニアルバム『ウォーク アンド フーズ』をリリースし、東名阪+埼ツアーを行う。今現在、全国弾語りツアー『渡會将士 JAPAN? TOUR』を開催中。
―裏を返せば、一貫して「輝かしいもの」を追い求めているのだと思うのですが、渡會さんにとって「輝かしいもの」ってなんなのでしょうか。
渡會:これが難しくて。FoZZtoneの頃は、メンバーが「この歌詞いいね」って言ってくれても、「いや、なんかキラキラしてないんだよねー!」みたいなことをよく言ってました。本当に頭の悪い会話なんですけど(笑)。でもその「キラキラ」がメンバーには伝わらないんで、「気高い」とか、そういった言い方をしていましたね。
―端から見たら人の心を動かす歌詞でも、渡會さんはそこに「キラキラ」が見出せないと納得できない。その「キラキラ」を言葉として捉えようとするのはなぜですか。
渡會:今考えると、そういった言葉って、結局は俺が自分自身への肯定として歌いたかった言葉だったと思うんですよね。
俺は捻くれてるんで、「大丈夫だよ!」みたいにまっすぐに言われると「なにが大丈夫だよ、馬鹿野郎!」となっちゃうんですよ。だから、人や自分を肯定する歌をもっと高いレベルというか、つっこんだところで表現することを理想としていたんじゃないかなと思います。
―そしてその「キラキラ」や「輝かしいもの」を表現するアプローチが、バンドからソロに移行するにつれて変わっていった、と。
渡會:そうですね。たぶん、「大きいものを追いかけていたい」っていう欲求は今でもあるんです。だけど、1人ぼっちのミュージシャンになって各地を回る中で、大きなものを歌うFoZZtoneの音楽はこの会場に必要ないな、と思ったことがあったんですよね。
それよりもみんなが共感しあえる、もっとグッと身近な話題でも、そこに「輝き」を見出せると思ったんです。
リリース情報

- 渡會将士
『ウォーク アンド フーズ』 -
2019年5月1日(水)
価格:3,000円(税抜)
PML-2003 / PML-3001[CD]
1. カントリーロードアゲイン
2. モーニン
3. ビューティフルガール
4. 前夜祭
5. 区役所に行こう
6. カーディガン[DVD]
1. Ride on Tide(MV)
2. Squall(MV)
3. Tomorrow Boy(MV)
4. モーニン(MV)
5. Weather Report(MV)
イベント情報
- 『JAPAN? TOUR』
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2019年10月11日(金)
会場:大阪府 LIVE Bar 酔夏男2019年10月19日(土)
会場:北海道 musica hall café
※昼公演、夜公演あり
※夜公演はSOLD OUT2019年10月26日(土)
会場:宮崎県 ぱーく
ゲスト:カワサキイタロ、棘侍まる2019年10月27日(日)
会場:佐賀県 ROCK RIDE
ゲスト:シャケトリップ2019年11月2日(土)
会場:青森県 cafe bar ATOM
ゲスト:洞口隆志(SWANKY DOGS) / 小林康平2019年11月3日(日)
会場:岩手県 Club Change
ゲスト:SWANKY DOGS2019年11月4日(月・祝)
会場:栃木県 ASHIKAGA SOUNDHOUSE PICO2019年11月10日(日)
会場:岡山県 城下公会堂2019年12月1日(日)
会場:石川県 もっきりや2019年12月8日(日)
会場:東京都 晴れたら空に豆まいて
※SOLD OUT2019年12月14日(土)
会場:京都府 紫明会館2019年12月15日(日)
会場:島根県 松江B1
ゲスト:後藤謙 / 日向時間
- 『ONIWARA TOUR』
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2019年11月9日(土)
会場:大阪府 OSAKA MUSE
ゲスト:鶴2019年11月16日(土)
会場:東京都 SHINJUKU BLAZE
ゲスト:LUNKHEAD2019年11月30日(土)
会場:愛知県 名古屋 E.L.L.
ゲスト:the quiet room

- 『NEWTOWN 2019』
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2019年10月19日(土)、10月20日(日)
会場:東京都 多摩センター パルテノン大通り、パルテノン多摩
東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)
プロフィール
- 渡會将士(わたらい まさし)
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2002年、FoZZtoneを結成。2007年にEMIミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー。全作品のアートワークと歌詞を手掛け、ほとんどの楽曲を作曲する。枠にとらわれないさまざまなアプローチで活動を展開するが、惜しまれながら2015年2月にバンド活動を休止。その後ベイビーレイズJAPANの10thシングル“Pretty Little Baby”を楽曲提供し、2016年にはソロミュージシャンとして初となる1stフルアルバム『マスターオブライフ』をリリース。2017年には1stミニアルバム『After Fork in the Road』、2018年10月に2ndフルアルバム『PEOPLE』をリリースし、全国ツアー『渡會将士 TOUR 2018 PEOPLE』を行う。2019年5月に2nd ミニアルバム『ウォーク アンド フーズ』をリリースし、東名阪+埼ツアーを行う。今現在、全国弾語りツアー『渡會将士 JAPAN? TOUR』を開催中。