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FIVE NEW OLD、覚醒の理由 「中途半端さ」が武器と気づくまで

FIVE NEW OLD、覚醒の理由 「中途半端さ」が武器と気づくまで

FIVE NEW OLD『Emulsification』
インタビュー・テキスト
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:Kay N 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2019/10/01

FIVE NEW OLDが9月11日にリリースした、メジャー2ndアルバム『Emulsification』。バンドのキャリア上、ダントツの最高作と言っていいだろう。ドライブ感、キメ細やかなサウンドデザイン、そして瑞々しいメロディーをさらに飛ばすリズムの妙。すべてにおいて、FIVE NEW OLDが得てきた武器を4人で解体&再構築したような、視点がビシッと定まった作品だ。

USポップパンクの影響を受けたサウンドを原風景に持ちながら、次第にHIROSHIのルーツであるジャズ、R&B、ソウルの要素を増やし、リズムとグルーヴに重心を置いたトラックの上で流麗なメロディーを聴かせるスタイルへシフトしてきたFIVE NEW OLD。その歴史を振り返り、一旦総括するところからスタートしたという今作では、4人が呼び合うようなアンサンブルが終始躍動している。そのバンド感と生物感には、「FIVE NEW OLDが本当のバンドになった」という言葉が浮かぶ。「乳化」を意味するアルバムタイトルの通り、4音がそれぞれの色を保ったまま共存し合っているのが、この覚醒感の肝だろう。

この作品のツアーが先日始まったばかりだが、強固によられたバンドサウンドが、各地で新たな景色を描き出すだろう。この進化と真価はいかにして鳴らされたのか。音楽の旅を繰り返してきたFIVE NEW OLDとはどこへ向かっていくバンドだと確信できたのか。HIROSHIのソロインタビューで、とことん探った。

僕らにとっての音楽とはつまり、相反するものを共存させる行為なんじゃないかと思った。

―『Emulsification』という、「乳化」を意味するタイトルがついている作品なんですが。まず、どういうコンセプトから始まったアルバムなのかを教えてもらえますか。

HIROSHI:このアルバムを作るにあたって、先に『Emulsification』というタイトルがあったんですよ。FIVE NEW OLDというバンドがやってきたことを振り返ったときに、この「乳化」という言葉が自分たちを表すものとしてくしっくりきたんです。

―自分たちのことをどう振り返って、どう位置付けたから「乳化」がしっくりきたんですか。

HIROSHI:FIVE NEW OLDはずっと「矛盾」を好んできたバンドだと振り返れたんですよ。最初はポップパンクから始まって、今だとシティポップと呼ばれるような音楽性に変化してきて。その結果として、特定のジャンルに立ち位置を作ることもなく、色合いの違う場所で音を鳴らせるバンドになったと思うんです。

なんならバンド名自体にも「NEW」と「OLD」という矛盾した言葉を含んでいるし、前のアルバムも『Too Much Is Never Enough』(2018年)――「過ぎたるは及ばざるが如し」という意味でしたし。どれにも矛盾が含まれてる。

HIROSHI<br>FIVE NEW OLD(ふぁいぶ にゅー おーるど)<br>2010年神戸にて結成。パンクロックバンドとしてキャリアをスタートさせ、次第にR&B、ソウル、ゴスペルなどを昇華したサウンドへと変化。2018年1月にメジャー1stアルバム『Too Much Is Never Enough』をリリースし、2018年7月にSHUN(Ba)が正式加入。2019年4月から初のアジアツアーを開催し、香港・台湾・中国・タイ・日本にて合計10公演を行う。2019年9月11日にメジャー2ndアルバム『Emulsification』をリリースした。
HIROSHI
FIVE NEW OLD(ふぁいぶ にゅー おーるど)
2010年神戸にて結成。パンクロックバンドとしてキャリアをスタートさせ、次第にR&B、ソウル、ゴスペルなどを昇華したサウンドへと変化。2018年1月にメジャー1stアルバム『Too Much Is Never Enough』をリリースし、2018年7月にSHUN(Ba)が正式加入。2019年4月から初のアジアツアーを開催し、香港・台湾・中国・タイ・日本にて合計10公演を行う。2019年9月11日にメジャー2ndアルバム『Emulsification』をリリースした。
FIVE NEW OLD『Too Much Is Never Enough』を聴く(Apple Musicはこちら

HIROSHI:だから、ある種の対比と矛盾を調合してきたバンドなんだっていうのが、自分で腑に落ちたんですよ。それで、まず「矛盾」がテーマになったんです。それを話しているときに、SHUNくん(Ba,Cho)が「この『調合』とか『矛盾』って、ペペロンチーノを作るときのアレじゃない?」って言い出したんですよ(笑)。

―ペペロンチーノ?

HIROSHI:オリーブオイルと茹で汁を混ぜることでパスタに旨味を閉じ込める効果が生まれるんですけど、それを「乳化」って呼ぶんですね。つまり水と油という相反する存在が、小麦の成分を媒介にして共存する。矛盾を好んできた僕らにとっての音楽とはつまり、相反するものを共存させる行為なんじゃないかと。だから「乳化」が僕らのアイデンティティーなんだなって、バンドとしての気づきがあったんです。

―現時点でのテーマというよりもバンドが普遍的に持っているものを捉えたというお話ですよね。そもそも、そうやってFIVE NEW OLDがやってきたことを一旦総括するように振り返ったのはなぜだったんですか。

HIROSHI:うーん……次のチャプターに進むにあたって、もっと自分たちを理解したくなったというか。これまでずっと僕らは感覚だけで曲を作って、後から振り返るっていうやり方をしてきた気がするんです。でも、それ以前に自分たちを深く理解しないと新しいところに進める気がしなかったし、自分たちが何をしてきたかを理解できれば、意識的に壊すことも構築することもできるんじゃないかって。そういう気持ちでしたね。

―先ほど言われた通り、USポップパンクの影響が強い音楽から始まって、ソウルやR&Bをベースにした音楽性に変化してきた。そういう幅の広い道程を振り返ることで、HIROSHIくん自身が自分の芯を掴みたかったということでもあるんですか。

HIROSHI:ああ……確かに、これまでを振り返るのは、自分の表現を突き詰めることでもありましたね。

―そこにある核はどんなものだったんですか。

HIROSHI:……たとえば今って、自分が何を考えているのか自分でわからなくても、ある程度の答えはこいつ(iPhone)が教えてくれちゃうわけですよ。で、その向きはどんどんブーストしている。そうなると行き着く先はAIとかになってきますよね。

あるいは、ただ極端な意見を「正しい」と錯覚させられて、ちょっと間違った人をすぐ叩いたり追い出したりしてしまう現象も同じことだと思ってて。それだと、どんどん窮屈になっていく一方じゃないですか。

―そうですよね。

HIROSHI:じゃあその中で「人間を人間たらしめるものとは」「自分を自分たらしめるものとは」って考えたら、それこそ矛盾を抱えながらも何がベストかを模索してもがいている部分だと思ったんです。そう考えたときに、自分たちの過程にあった矛盾をポジティブに捉えることができたんですよね。

HIROSHI(FIVE NEW OLD)

HIROSHI:ジャンル分布図でいえば中途半端な位置にいるバンドだけど、それこそが人間らしさを表現することに繋がるんじゃないかなって。だから言われた通り、僕自身が歌うことの意味を大事にしていくために、自分の矛盾やダメなところまで振り返って見つめる必要があったんでしょうね。カッコいいことをするために、カッコ悪い自分も出そうとしたというか……情けなさも隠さず自分に素直に生きられたら、もっと人を愛おしく思えるんじゃないかなって思うから。

―それは、この作品を聴くと本当によくわかります。バンドの息遣い、HIROSHIくんの歌のストレートさ、4人の顔がよく見えるアンサンブルが印象に残るアルバムですよね。

HIROSHI:「バンドとして」っていうのはすごく大事にしましたね。人間らしさや矛盾に目を向けてみて思ったのは、やっぱり人間なんて昨日言ったことと今日言うことがバラバラなもので、余白がないと窮屈になるだけだってことで。

窮屈になればモノを言う気も起きなくなるし、そうなると何事も我関せずになっていく。そうやって人と人の分断が深まっていくんですよね。だからこそ、今こうしてバンドで音楽を鳴らしている自分が大事にすべきなのは、4人としてどうするのかを考えることだったんですよ。

左から:WATARU、HIROSHI、SHUN、HAYATO
左から:WATARU、HIROSHI、SHUN、HAYATO
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リリース情報

FIVE NEW OLD『Emulsification』初回限定盤
FIVE NEW OLD
『Emulsification』初回生産限定盤(CD+DVD)

2019年9月11日(水)発売
価格:4,104円(税込)
TFCC-86690

1. Fast Car
2. Keep On Marching
3. Magic
4. What's Gonna Be?
5. In/Out
6. Last Goodbye
7. Pinball
8. Same Old Thing
9. Set Me Free
10. Gotta Find A Light
11. Always On My Mind
12. Please Please Please
13. Bad Behavior

DVD収録内容:
『FIVE NEW OLD ASIA TOUR 2019 / 2019.5.25 at MYNAVI BLITZ AKASAKA』

FIVE NEW OLD『Emulsification』通常盤
FIVE NEW OLD
『Emulsification』通常盤(CD)

2019年9月11日(水)発売
価格:2,700円(税込)
TFCC-86690

1. Fast Car
2. Keep On Marching
3. Magic
4. What's Gonna Be?
5. In/Out
6. Last Goodbye
7. Pinball
8. Same Old Thing
9. Set Me Free
10. Gotta Find A Light
11. Always On My Mind
12. Please Please Please
13. Bad Behavior

ツアー情報

『“Emulsification” Tour』

2019年10月5日(土)
会場:新潟県 新潟 CLUB RIVERST

2019年10月6日(日)
会場:石川県 金沢AZ

2019年10月14日(月・祝)
会場:北海道 札幌cube garden

2019年10月18日(金)
会場:神奈川県 横浜BAYSIS

2019年10月20日(日)
会場:宮城県 仙台MACANA

2019年10月24日(木)
会場:広島県 CAVE-Be

2019年10月26日(土)
会場:香川県 高松DIME

2019年10月27日(日)
会場:愛知県 名古屋BOTTOMLINE

2019年11月9日(土)
会場:大阪府 味園ユニバース

2019年11月22日(金)
会場:福岡県 福岡DRUM Be-1

2019年11月23日(土)
会場:熊本県 熊本Be9.V2

2019年11月24日(日)
会場:山口県 周南LIVE rise

2019年11月29日(金)
会場:東京都 EX THEATER ROPPONGI

プロフィール

FIVE NEW OLD
FIVE NEW OLD(ふぁいぶ にゅー おーるど)

2010年神戸にて結成。パンクロックバンドとしてキャリアをスタートさせ、次第にR&B、ソウル、ゴスペルなどを昇華したサウンドへと変化。2018年1月にメジャー1stアルバム『Too Much Is Never Enough』をリリースし、2018年7月にSHUN(Ba)が正式加入。2019年4月から初のアジアツアーを開催し、香港・台湾・中国・タイ・日本にて合計10公演を行う。2019年9月11日にメジャー2ndアルバム『Emulsification』をリリースした。

関連チケット情報

2019年10月18日(金)〜11月29日(金)
FIVE NEW OLD
会場:BAYSIS(神奈川県)
2019年10月22日(火)
FOMARE
会場:ダイアモンドホール(愛知県)
2019年10月24日(木)〜11月24日(日)
FIVE NEW OLD
会場:広島Cave-Be(広島県)
2019年10月26日(土)
FIVE NEW OLD
会場:DIME(香川県)
2019年10月27日(日)
FIVE NEW OLD
会場:ボトムライン(愛知県)
2019年11月9日(土)
FIVE NEW OLD
会場:味園 ユニバース(大阪府)
2019年11月22日(金)〜11月23日(土)
FIVE NEW OLD
会場:DRUM Be-1(福岡県)

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