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107人の天才に学ぶ「クリエイティブ」困難を乗り越える武器になる

107人の天才に学ぶ「クリエイティブ」困難を乗り越える武器になる

『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:鈴木渉 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

天才の頭の中を、一度でいいから覗いてみたい。そんなふうに考えたことがあるのは、きっと筆者だけではないはずだ。なぜデヴィッド・ボウイは、作品を出すたびに変化し続けることができたのか。なぜホーキング博士は、ブラックホールや相対性理論に関する画期的な研究を推進できたのか。なぜダライ・ラマ法王は、チベット民族の国家的・精神的指導者として今なお圧倒的な支持を受けているのか。

「Why Are You Creative?(なぜ、あなたはクリエイティブなのか?)」10月12日から公開される映画『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』は、そんなシンプルな問いをおよそ30年近く投げ続けてきた、ハーマン・ヴァスケ監督によるドキュメンタリー映画である。カメラとスケッチブックを抱えたヴァスケが、世界中を訪ね歩いて取材をしたのは1000人以上。本作は、その中から厳選された107人によるインタビュー映像で構成される。登場するのは、上に挙げた3人はもちろん、映画監督のクエンティン・タランティーノやジム・ジャームッシュ、北野武、「Yohji Yamamoto」デザイナーの山本耀司らと、錚々たる顔ぶれ。彼らが明かす「クリエイティブ」についての自説は十人十色だが、そこには共通する要素もある。元々は大手広告代理店で、一流企業のコマーシャルにも携わってきたヴァスケ監督。果たして彼は、この長い旅路の末にどんな答えを見つけたのだろうか。

職場や学校、日常の暮らしの中で、クリエイティブな視点を持つにはどうしたらいいのだろうか。本作は、そんな疑問を持つ私たちにも生きる勇気とヒントを与えてくれるだろう。すでに次回作も構想中だというハーマン・ヴァスケ監督に話を聞いた。

アイデアを口に出すことができたとしても、まだクリエイティブとは言えない。アイデアを形にする力を持っているか否かが重要なんだ。

―世界中の著名人に「Why Are You Creative?(なぜ、あなたはクリエイティブなのか?)」を尋ねるという取り組みを、そもそもなぜ始めることになったのでしょうか。

ヴァスケ:1980年代、私は世界大手の広告代理店「サーチ&サーチ」に勤めていた。そこでポール・アーデンという素晴らしいクリエイティブディレクターと出会い、一緒に仕事をして、たくさんの影響を受けたんだ。

ある日、彼と仕事の話など色々しているときに、「そもそも私たちは、なぜものを作っているのだろう」とシンプルな疑問が湧いてきてね。それで、ふと夜空を見上げると「Why Are You Creative?」というフレーズが降ってきた。それ以来、ずっとこのクエスチョンが脳裏から離れず、長い冒険へと旅立つことになった。

ハーマン・ヴァスケ<br>ドイツ・ベルリン出身の映画監督であり作家でありプロデューサー。監督としては、ハーヴェイ・カイテル、デビ・メイザー、スーパーモデルのナジャ・アウアマンが出演の短編映画『Who Killed the Idea?(原題)』(2003年)、マリーナ・アブラモヴィッチ、スラヴォイ・ジジェク、エミール・クストリッツァ、アンジェリーナ・ジョリーらを出演に迎えた『Balkan Spirit(原題)』(2012年)を手掛ける。これまで、グリメ賞受賞をはじめ、カンヌライオンズなどを含め1000以上の賞を受賞している。
ハーマン・ヴァスケ
ドイツ・ベルリン出身の映画監督であり作家でありプロデューサー。監督としては、ハーヴェイ・カイテル、デビ・メイザー、スーパーモデルのナジャ・アウアマンが出演の短編映画『Who Killed the Idea?(原題)』(2003年)、マリーナ・アブラモヴィッチ、スラヴォイ・ジジェク、エミール・クストリッツァ、アンジェリーナ・ジョリーらを出演に迎えた『Balkan Spirit(原題)』(2012年)を手掛ける。これまで、グリメ賞受賞をはじめ、カンヌライオンズなどを含め1000以上の賞を受賞している。

ヴァスケ:結果、この映画が完成し、映画だけでなく本や展覧会などさまざまな形に発展していった。来年はSNSでも大きなキャンペーンを張る予定だよ。

さらに、先日の『ヴェネチア国際映画祭』で私は次回作の構想も発表した。「Why Are You Creative?」に対し、次は「Why Are You Not Creative?(なぜ、あなたはクリエイティブではないのか?)」という質問を投げかけていくもの(笑)。私たちのクリエイティブを阻止する存在について、深く取り上げた映画になる予定だ(日本での公開時期は未定)。

―とても興味深いです。一般的にクリエイティブといわれている人と、そうでない人の差はどこにあるのでしょう。

ヴァスケ:例えばアイデアを持っていて、それを口に出すことができたとしても、その時点ではまだクリエイティブとは言えない。そのアイデアを形にする力を持っているか否かが重要なんだ。デヴィッド・リンチ(アメリカ出身の映画監督。映画『ワイルド・アット・ハート』やテレビドラマ『ツイン・ピークス』などを監督)もこの映画の中で話していたね。「抽象的なものを具現化するプロセスを取ってきたかどうかだ」と。その違いなんじゃないかな。

ハーマン・ヴァスケ
ハーマン・ヴァスケ

―では、クリエイティブではない人は、なぜ行動に移せないのだと思いますか?

ヴァスケ:ダミアン・ハースト(イギリス出身の現代美術家)がBBCの取材を受けたとき、記者から「この作品は私もできそうです」と言われると「しかし君は作ってないよね」と返した。「『自分でもできるはず / できたはず』という考えにどう抗い、どう乗り越えるべきなのかをいつも言い聞かせている」と。

行動できない人の心の中には、おそらく「恐れ」があるのだろう。友人に何を言われるか、周りにどんなことを言われるか、メディアにどう扱われ、国からどう圧力がかかるか。そういったことへの「恐れ」がクリエイティビティを殺し、最も危険な「自主規制」へと向かうのだと思う。

ハーマン・ヴァスケ
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作品情報

『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』
『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』

2019年10月12日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で順次公開

監督:ハーマン・ヴァスケ
出演:
デヴィッド・ボウイ
クエンティン・タランティーノ
ジム・ジャームッシュ
ペドロ・アルモドバル
Bjork
イザベル・ユペール
スティーヴン・ホーキング
マリーナ・アブラモヴィッチ
ヤーセル・アラファト
Bono
ジョージ・ブッシュ
ウィレム・デフォー
ウンベルト・エーコ
ミハイル・ゴルバチョフ
ミヒャエル・ハネケ
ヴェルナー・ヘルツォーク
サミュエル・L・ジャクソン
アンジェリーナ・ジョリー
北野武
ジェフ・クーンズ
ダイアン・クルーガー
スパイク・リー
ネルソン・マンデラ
オノ・ヨーコ
Pussy Riot
ほか
上映時間:88分
配給:アルバトロス・フィルム

プロフィール

ハーマン・ヴァスケ

ドイツ・ベルリン出身の映画監督であり作家でありプロデューサーである。監督としては、ハーヴェイ・カイテル、デビ・メイザー、スーパーモデルのナジャ・アウアマンが出演の短編映画『Who Killed the Idea?(原題)』(2003年)、マリーナ・アブラモヴィッチ、スラヴォイ・ジジェク、エミール・クストリッツァ、アンジェリーナ・ジョリーらを出演に迎えた『Balkan Spirit(原題)』(2012年)を手掛ける。近年は、ダイアン・クルーガー、ヴィム・ヴェンダース、ジュリアン・シュナーベル、マイケル・マドセン、エド・ルシェ、フランク・ゲーリー、クリス・クリストファーソン、ハリー・ディーン・スタントンら出演の『Dennis Hopper: Uneasy Rider(原題)』(2016年)を手掛けた。これまで、グリメ賞(ドイツのエミー賞に匹敵する賞)受賞をはじめ、カンヌライオンズなどを含め1000以上の賞を受賞している。ドイツ・アート・ディレクターズ・クラブの会員であり、トリーア応用芸術科学大学で教授として教鞭をとり、ヨーロピアン・フィルム・アカデミー(EFA)の会員でもある。

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