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107人の天才に学ぶ「クリエイティブ」困難を乗り越える武器になる

107人の天才に学ぶ「クリエイティブ」困難を乗り越える武器になる

『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:鈴木渉 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

フィルターができると必ずそこを抜けていくための道を、人々は創造性を持って模索していくものだ。

―日本でも多くの取材をしているヴァスケ監督はご存知かもしれませんが、日本人は特に「自主規制」が働きやすい国民性なのかなと思います。

ヴァスケ:自主規制については世界的な問題だと私は認識しているが……どうだろう、日本はそんなにひどいのかな?

―「出る杭は打たれる」ということわざがあるくらいで(笑)、個を重んじる欧米の国々に比べて同調圧力も強く、「右に倣え主義」だと事あるごとに指摘されますし、私自身もそう思わざるを得ない局面に何度も遭遇しています。

ヴァスケ:それが本当ならとても興味深いな。次回作『Why Are You Not Creative?』を、日本に届けるのがますます楽しみになってきた(笑)。そしてそのときは、「自主規制」をテーマに日本のオーディエンスたちとディスカッションをしてみたいと思う。

ハーマン・ヴァスケ

―ジャンヌ・モロー(フランス出身の女優。映画『死刑台のエレベーター』『夜』などに出演)は映画の中で、「創造的でいられる環境を維持することは大事。自由な発想ができれば人は健全でいられる。強大な権力を持つ独裁者が現れたら、私たちは自由な意見など一言も言えなくなる。災害などが起きたときも同じ。人々は言葉を失う」と言っていました。

思えば日本人の「自主規制」は、東日本大震災以降さらに強まった気がしています。もちろんそれだけでなく、SNSの普及によりお互いを「監視 / 干渉」し合うようになるなど、さまざまな要因があるとは思うのですが。

ヴァスケ:たしかに君の言う通りだが、その一方でSNSの普及により生まれた「クリエイティビティ」もあるのではないかな。例えば今、香港では「民主化」を求める若者たちの大規模なデモが起きているが、彼らはインターネットを通じて自分たちのメッセージを世界に発信し賛同を求めたり、国内でもAirDropを使ってメッセージを広めたりしているね。

フィルターができると必ずそこを抜けていくための道を、人々は創造性を持って模索していくものだ。いつか彼らが中国の「全体主義」という牙城を崩す日が来ればいいと思っているよ。もちろん政治にもクリエイティビティが必要で、それがあるかないかで打ち出す政策も全く違ってくるだろう。

 

私がこの映画で行なったのは、偉人たちが残した偉大な「落書き」を、アーカイブして伝えていくことだと思っているよ。

―たしかに。こうやってひとつの物事に対し、さまざまな角度から検証するのはとても大切なことだなと思います。ジム・ジャームッシュ(アメリカ出身の映画監督。映画『コーヒー&シガレッツ』『ブロークン・フラワーズ』などを監督)も映画の中で、犬が首をかしげる仕草を例にとって話していましたね。「(犬は)ああやって、物事を違う角度から見ようとしているのだ」と。

ヴァスケ:ジャン=ピエール・ジュネ監督(フランス出身の映画監督。映画『アメリ』『天才スピヴェット』などを監督)はBBCの取材を受ける際、「ただの対面取材では面白くないから」と逆立ちをして語り合うことを提案していた。それに感化された私は、デヴィッド・ボウイへのインタビューで、お互いに全く違う方向を向きながら会話することを提案してみたんだ。

とにかく私は驚きたいし、意外性というものを大切にしている。話の結論を急ぎ、全てが予定調和に収束してしまうことが多い中、何か自分を驚かせてくれるものに出会ったときの「興奮」を求めているのかもしれないな。

劇中でのデヴィッド・ボウイとの対話の様子。左がデヴィッド・ボウイ、右側で窓際にいるのがハーマン・ヴァスケ監督
劇中でのデヴィッド・ボウイとの対話の様子。左がデヴィッド・ボウイ、右側で窓際にいるのがハーマン・ヴァスケ監督

―映画のクライマックスでホーキング博士が、「どこかへたどり着くよりも、希望とともに旅を続けたい」と話していたことにも通じる気がします。安易に結論を出すのではなく、さまざまな可能性を検証してみることが、クリエイティビティをより豊かにするということでしょうか。

ヴァスケ:ホーキング博士のインタビューは、ケンブリッジ大学にコンタクトを取って実現した。当時はまだインターネットがなくて、事前に質問をファックスで送ったのを覚えているよ。当日は、その場で思いついた質問も幾つかさせてもらえて、彼が答えを導き出す過程を目の当たりにすることができたのはラッキーだったな。

クリエイティブというと、多くの人はアートや音楽、映画などを連想するかもしれないが、実は「科学」の分野でも大切な要素だと博士は言っていたよ。

劇中、ホーキング博士へのインタビューの様子
劇中、ホーキング博士へのインタビューの様子

―博士が亡くなってしまったのはとても残念です(2018年3月14日に逝去)。

ヴァスケ:以前、一緒に仕事をしたことのあるデニス・ホッパー(アメリカ出身の俳優、映画監督。出演作品に映画『地獄の黙示録』、監督作品に『イージー・ライダー』など)はこう言っていた。「私たちがこの世にいるのはほんの一瞬でしかない。生きているうちに、壁に落書きを残して消えていくようなものだ」と。私がこの映画で行なったのは、ホーキング博士のような偉人たちが残した偉大な「落書き」を、しっかりとアーカイブして伝えていくことなのだなと思っているよ。

ハーマン・ヴァスケ
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作品情報

『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』
『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』

2019年10月12日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で順次公開

監督:ハーマン・ヴァスケ
出演:
デヴィッド・ボウイ
クエンティン・タランティーノ
ジム・ジャームッシュ
ペドロ・アルモドバル
Bjork
イザベル・ユペール
スティーヴン・ホーキング
マリーナ・アブラモヴィッチ
ヤーセル・アラファト
Bono
ジョージ・ブッシュ
ウィレム・デフォー
ウンベルト・エーコ
ミハイル・ゴルバチョフ
ミヒャエル・ハネケ
ヴェルナー・ヘルツォーク
サミュエル・L・ジャクソン
アンジェリーナ・ジョリー
北野武
ジェフ・クーンズ
ダイアン・クルーガー
スパイク・リー
ネルソン・マンデラ
オノ・ヨーコ
Pussy Riot
ほか
上映時間:88分
配給:アルバトロス・フィルム

プロフィール

ハーマン・ヴァスケ

ドイツ・ベルリン出身の映画監督であり作家でありプロデューサーである。監督としては、ハーヴェイ・カイテル、デビ・メイザー、スーパーモデルのナジャ・アウアマンが出演の短編映画『Who Killed the Idea?(原題)』(2003年)、マリーナ・アブラモヴィッチ、スラヴォイ・ジジェク、エミール・クストリッツァ、アンジェリーナ・ジョリーらを出演に迎えた『Balkan Spirit(原題)』(2012年)を手掛ける。近年は、ダイアン・クルーガー、ヴィム・ヴェンダース、ジュリアン・シュナーベル、マイケル・マドセン、エド・ルシェ、フランク・ゲーリー、クリス・クリストファーソン、ハリー・ディーン・スタントンら出演の『Dennis Hopper: Uneasy Rider(原題)』(2016年)を手掛けた。これまで、グリメ賞(ドイツのエミー賞に匹敵する賞)受賞をはじめ、カンヌライオンズなどを含め1000以上の賞を受賞している。ドイツ・アート・ディレクターズ・クラブの会員であり、トリーア応用芸術科学大学で教授として教鞭をとり、ヨーロピアン・フィルム・アカデミー(EFA)の会員でもある。

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