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ナツノムジナ×ピープル波多野の野外REC&対談 音が音楽になるとき

ナツノムジナ×ピープル波多野の野外REC&対談 音が音楽になるとき

『Punctum』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

音が「音楽」となるということ。両者の思索は、さらなる深みへ

―ここまでのお話を聞いていて、おふたりが今日録った素材をどのように作品にするのか、非常に楽しみになりました。

粟國:今日録音した音の意味を、恣意的に奪い取ったり、利用したりして音楽にするってなると、それはちょっと暴力的な気がして。そうでなく、「実際に自分がそこにいて、この音を録ったんだ」ということを音楽として成立させるーー作曲者として、音楽にすることで、現実との関係を結ぶっていう考え方になるだろうなと思っています。音楽にすることで、現実にあった音を、本当の意味で体験する、知覚する。そういうものになるんじゃないかなと。

波多野:現実ってものすごく複雑だからね。「複雑なものを別の回路を通じて、別のなにかのように見せる。そうすることで、新しい認識に辿り着く」っていうようなことは結構あるはずで、その回路を面白く作るっていう感じですかね。ただ、僕は粟國くんみたいに謙虚な姿勢じゃなくて、めちゃくちゃにしようと思っています。上野をめちゃくちゃにして、別の上野にしてやろうかなって(笑)。

窪田:“悪魔の池袋”みたい(笑)。

波多野:よく知ってるね(笑)。音楽ってものすごく変なものだと思うんですよ。普通に享受しているけど、その実態って実はわからない。さっき話したメタファーっていうのも仮説にすぎなくて、自分たちで「これは〇〇をたとえているのでは?」と着地点を決めてしまった瞬間に意味性は生じる。

最近思うのは、その意味性を惰性で押し進めてしまった結果、意図や意思が表面化してしまうと、音楽にこそ繋ぐことができたはずの回路を閉ざすことになるんじゃないかということです。なので、僕は表面的には答えがないままに宙ぶらりんにしておくべきだと思っています。はっきり「これはこうだ」って言ってしまうと、音楽が現実に及ぼす効力が失われてしまうと思っているんですよね。

―さっきの音楽の抽象度の話とも通じますね。

波多野:僕としては「これはなにかを言おうとしてる」っていう状態がものすごく好きなんです。フィールドレコーディングにしても、音を録った時点ではやっぱり謎ですよね。

波多野裕文(People In The Box)

波多野:意味性以前のものに自分という主体を介入することで、音楽になっていくんだと思う。でも、その音楽以前 / 以後の揺らぎって、結局そのときの「気分」と密接に関係しているなんじゃないかなって思うんですよ。気分って、出ちゃうものじゃないですか?

―そうですね。

波多野:気分っていろんな外的な要素が混ざり合って生成されるもので、「今日はこういう気分になろう」っていうようにコントロール可能なものでもなければ、簡単に把握できるような単純なものでもない。

そうしたぼんやりとしたものを確かな形として外部に敷衍すること(意味のわかりにくい点を、やさしく言い替えたり詳しく述べたりして説明すること)が音楽活動における「作品をリリースする」ということなのかなと思うんですよね。だから、そのときどきの作品の性質や状況に応じて、どのリリース方法が最善かというのも、常に探っています。

音楽に導かれて。「結果」「数字」だけで活動はできないから

―『Tabula Rasa』は、配信とCDの会場限定販売という方法でのリリースでしたね(11月20日にオフィシャルサイトでの通販がスタート)。

波多野:配信は文化としては後発的なものですが、音楽が本来目に見えない、手に取れないものという意味では実は最も自然というか、親和性が高いものだと思うんです。なので、それはそれとして肯定しつつ、その一方で、フィジカルっていう不自然な文化のよさ、本来目に見えないはずのものが物理的に所有できて、かつ愛着の対象になるという魅力もあって、そのふたつは矛盾しないと思う。双方に対しても肯定的なあり方を徹底する、という考え方ですね。

People In The Box『Tabula Rasa』を聴く(Apple Musicはこちら

波多野:流通を通さずにライブで販売するっていうのは、特にトリッキーなことをやっているというつもりはなくて、むしろ、それこそバンドを始めたときからの基本をやっているという感覚ですね。

今は本当にまだ模索中って感じで、世の中に対する認識がどんどん自分のなかで変わっていって、それについていくのが精いっぱいって感じもする。既存のなにかに反発する気は全然なくて、ただ、状況に応じて自覚的にリアクションしているという状態ですね。

窪田:結局、「正しいやり方」っていうのはないと思うんです。たとえば、数字的に結果が出たとして、普通はそれが「正しい」ってことになるのかもしれないけど……それを無視するわけではなく、ちゃんと数字を見つつも、「正しさ」は自分たちで作っていくしかない。そういう意識はナツノムジナにはあると思います。それがフィジカルのアートワークとかにも表れているのかなと思います。

ナツノムジナ『Temporary Reality Numbers』ジャケット
ナツノムジナ『Temporary Reality Numbers』ジャケット(Amazonで見る
12月4日に開催される企画ライブ『Punctum』アートワーク
12月4日に開催される企画ライブ『Punctum』アートワーク(サイトを見る

波多野:全く同感です。世の中にある「結果」という言葉の内実の貧しさというか、そこに関しては、僕は意識的に抵抗したい。ちょっと話が飛躍しますけど、「数」の問題って、突き詰めると「個」をどう扱うかということと関係してくると思うんです。大勢の論理が正しいとして、それは同時に少数派が間違っていることを意味しないはずが、数字の論理が強くなるとその前提を危うくすると思うんですよね。

―「数字」や「結果」について、粟國さんはどう考えますか?

粟國:音楽を発表するとき、自分の音楽がどこに存在して、どう力を発揮してほしいか、ということに導かれてやっていきたいと思っています。リリースしたときの数字とか、そういう結果で「正しかった / 正しくなかった」って言われても、「そうじゃないんだよな」って思うんです。

波多野:それこそ、僕たちはいわゆる「古典」というものの強度を知っているわけですもんね。自分が死んだあとの世界で評価されることもザラにあるわけで、作品本位でいえば、短期的な側面だけで「結果」というものは軽率な考えだと思う。

粟國:そうですね。そういうなかでいい音楽が淘汰されてしまったら、貧しくなる一方だと思うんです。なので、今のこの状況をきちんと見つめつつ、自分は自分たちの音楽自体が導いてくれるところを追いかけていきたい。音楽は自分の意思より以前にあるものだと感じていて、自分から離れて音楽の意識に従うことで、その音楽が現実にちゃんと存在していってほしいんです。僕らにはそういう願いがあります。

中央:波多野裕文(People In The Box)、ナツノムジナ(左から:久富奈良、粟國智彦、 窪田薫、仲松拓弥)
中央:波多野裕文(People In The Box)、ナツノムジナ(左から:久富奈良、粟國智彦、 窪田薫、仲松拓弥)
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イベント情報

『Punctum』
『Punctum』

2019年12月4日(水)
会場:東京都 渋谷 WWW

出演:
ナツノムジナ
People In The Box
CHIIO

リリース情報

ナツノムジナ『Temporary Reality Numbers』
ナツノムジナ
『Temporary Reality Numbers』(CD)

2019年7月10日(水)発売
価格:2,484円(税込)
PCD-83016

1. temporary,reality
2. 煙の花束
3. 優しい怪物
4. 台風
5. 報せ
6. タイトロープ
7. 漸近線
8. 金星
9. (temporary,reality)

People In The Box
『Tabula Rasa』(CD)

2019年9月7日(土)発売
価格:2,5002,700円(税込)
BXWY-024

1. 装置
2. いきている
3. 風景を一瞬で変える方法
4. 忘れる音楽
5. ミネルヴァ
6. 2121
7. 懐胎した犬のブルース
8. まなざし

プロフィール

ナツノムジナ
ナツノムジナ

2010年、沖縄にて、高校の入学を目前に粟國智彦の呼びかけにより小学校の頃の同級生でナツノムジナを結成。同年の10月ごろにベーシストが抜け、現メンバーの窪田薫が加入。2011年7月、bloodthirsty butchersのライブのオープニングアクトを務めたことをきっかけに音源作成を決意。2017年9月、初の全国流通版1stフルアルバム『淼のすみか』をリリース。2018年3月、CINRA.NETの企画で田渕ひさ子氏とライブセッションと対談を行う。2019年7月、2ndアルバム『Temporary Reality Numbers』をリリース。12月4日には、ナツノムジナとPeople In The Boxによる企画ライブ『Punctum』を渋谷WWWにて開催する。

People In The Box
People In The Box(ぴーぷる いん ざ ぼっくす)

2005年に結成した3ピースバンド。2008年に福井健太(Ba)が加入し、現在のメンバーで活動し始める。3ピースの限界にとらわれない、幅広く高い音楽性と、独特な歌の世界観で注目を集めている。2019年9月7日に7thアルバム『Tabula Rasa』をリリース。

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